勇者ヨシヒコと魔法少女   作:ぶんた

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その16

 その翌日。

 

「おはよー」

「オハヨ、オハヨー」

 

 やはり遅めの朝食をとりつつ、ムラサキが少女達に説明する。

 トーレボ王の街が賑わっている要因のもうひとつが、街の近くに巨大な迷宮があるからだそうだ。多くの冒険者がその迷宮に挑み、貴重な品を持ち帰る。まさに一獲千金のゴールドラッシュ!そうしたアイテムの中に炎の宝珠があるのではないかとメレブ達は考えたのだ。

 

「迷宮に入って探す時間はないからね。街中で見つけられればいいのだけど……」

 

 ため息をしつつ、肩をすくめるムラサキを見ていた少女達は視線を交わして頷きあう。

 

「私達も手伝います!」

「ありがとうね」

 

 まどか達の言葉を受け、ムラサキはにっこり微笑んだ。

 

 

 

******

 

 

 

「探し物たってどこから探したものか、見当もつかないよ。異世界だしさ」

 

 そうして街中をうろついていた杏子とさやかは、やたらに大きく派手な建物を見やる。

 

「なぁさやか。あの店さ、きにならないか?」

「看板からすると……カジノじゃない?杏子、遊ぶことばっかり考えて!」

 

 掲げられた看板の文字は読めないが、マークや出入りする人間の雰囲気でなんとなくわかるものだ。楽しそうに、にんまりする杏子をさやかが睨む。

 

「炎の宝珠ってかなりレアなんだろう?そこらのお店にホイホイ売ってるわけないじゃん。カジノの景品にあったりってゆうのはゲームのお約束だろ?」

「そりゃまぁそうだけど……」

「調査だよ、調査!さ、いってみようぜ!」

「もう、しょうがないなぁ」

 

 杏子がテンション高くカジノの扉を開け、さやかが続く。

 カジノの中はとても広く、多くの人で賑わっていた。

 

「カードにダイス、ルーレット。スロットもあるのか。モンスターバトルってなんだ?」

 

 二人は一通りの賭場を眺めて回る。

 

「ほほう……。さやかちゃんのハナがウズいちゃいますね」

 

 とんがり鼻をひくひくさせながら、さやかがざわざわ……とつぶやいた。

 

「さやか。あんた、ギャンブルは得意なのか?」

「ふふ。見滝原のハコテンちゃんといえば、このさやかちゃんさ!」

「さやか……。ハコテンって意味わかってるのかよ?」

「え?箱入り娘的な?」

「……いい。おまえは絶対賭け事するな。絶対するなよ?」

「ええっ!」

 

 杏子の反応に、さやかは目をぱちくり。

 

 ……フリなのかな?ダチョウ的な?

 

 さやかは首を傾げた。

 

「こちらが交換所になりまぁす」

 

 バニーガールの綺麗なお姉さんがにっこり微笑みかけてくる。

 

「ほほう……」

 

 武器や防具のような装備品すらあり、並べられた品々は多岐に渡る。

 

「ね、杏子。あれ、それっぽくない?」

 

 さやかの指さす先には赤い球。ラベルの文字は読めないが、かなりそれっぽい。

 

「うーん。アタリなのかもね……」

「ん?」

 

 なにかいいたそげな杏子の視線の先を、さやかも見やる。そこには……。

 

「くそっ!次こそは勝つるのに!我がホクロに賭けて!」

 

 身ぐるみ剥がされたメレブが正座させられていた……。

 

「おお!キョウコとサヤカ!いいところに!」

 

 関わりあわないようにくるりと背を向けた二人に声が掛かる。

 

「……なんとなくはわかりますけど。一応聞きますね。メレブさん、なにやってるんです?」

 

 さやかが嫌々メレブに尋ねた。

 

「うむ。ついに目的の炎の宝珠を見つけてな。入手しようと奮闘していたわけだが、あと一歩のところでしくじったのよ……」

「要するにギャンブルに負けてスカンピンか……」

「ねえ、メレブさん。あれって高いの?」

「うむ。カジノコイン二万五千枚。なかなかに法外よ」

 

 カジノコインが一枚二十G。まともに買うなら五十万G。ムラサキが準備したという購入資金は一万Gといってたから、足が出るどころかそれこそ丸裸になっても足らない。それを資金にギャンブルするとしても、なかなかに厳しそうだ。

 

「さて。どうしたものかね」

 

 首を傾げ考えをめぐらす杏子の後ろで、いつのまにやらメレブの隣でさやかも正座させられていた……。

 

 

 

*****

 

 

 

 氷の魔女の城。凍気渦巻くその玉座の間。

 

「ええっと。それでなんの御用?」

 

 氷の魔女は来訪者に声を掛ける。

 

「麓の村の人達が困っているんです。せめて冷気を弱めてもらうとか……」

 

 魔女に対峙するは巴マミ。村人達に助けを乞われてこの場に来たのだった。

 

「それはできないわ。こっちにもいろいろ事情があるのよ」

「話し合いで解決したいのですけど……」

「同意するわ。でも無理みたい」

「…………」

「交渉決裂ね。どうするの?」

 

 眉をよせるマミを氷の魔女は楽しそうに見やる。

 

「できればこういうことはしたくなかったのだけれど」

 

 マミがつぶやいたその瞬間。氷の魔女目掛けて無数の黄色いリボンが伸びる!

 

「なっ!」

 

 しかし、驚きの声を上げたのはマミだった。

 全てのリボンは氷の魔女に至る前に動きが止まっていた。その表面が白く霜降りている。

 凍らされた……。マミは息をのむ。

 氷の魔女がパチリ!と指を鳴らすと、凍ったリボンは全て粉々になった。

 瞬時にマミは氷の彫像の陰へと跳躍。次の瞬間、出現させたマスケット銃を両手に構え、すかさず発射した。

 マスケット銃はいつものものより銃口が大きく銃身が短いものだ。殺傷能力を抑えたゴム弾を発射することができる。

 ゴム弾は氷の魔女に命中!だが魔女の姿は白い凍気となって渦を巻いた。

 

「氷の結晶を使って虚像を見せる事もできるんだぞ?」

 

 マミを囲うように複数の氷の魔女が現れる。

 

「そこ!」

 

 マミが直感のまま銃口を向け引き金を引く。

 発射されたゴム弾はなにかしらに弾かれ、明後日の方に飛んだ。

 

「ちょっ……。あなた何者?でも、残念。それくらい防ぐのはわけないわ」

「くっ……」

 

 多くの虚像からいきなり本体を狙い撃たれて、魔女は目を見開いた。

 

「わかるでしょ?人間ではないようだけど、この凍気の中、そう長く行動できないわ。降伏なさい。降伏すれば、好きなポーズで凍らせてあげるわ」

 

 氷の魔女は余裕の笑みを浮かべつつ、圧倒的魔力を漂わせてマミに立ちはだかる。

 

「折角だけど。魔法少女は魔女に屈することはできないの!」

 

 マミは氷の魔女を強く睨みつけた。




あ。さやかがギャンブル弱いは、ねつ造です
運は強いけど、調子にのって台無し!ってイメージ
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