勇者ヨシヒコと魔法少女   作:ぶんた

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その18

「あー私がここの支配人ですけどね。お嬢さん、ここは貴女みたいなクソガキが立ち入るような場所じゃないんですよ」

「悪いけど余裕がなくてね。そっちにも悪くない話になるはずさ」

 

 カジノの支配人と名乗る人物の訝し気な視線を受けつつ、杏子は首を傾げつつ話しかける。

 

「こちらこそクソ悪いんですがね。忙しいんで相手をしてられないんです。つまみだせ」

 

 スーツを着た屈強な男数名と入れ替わるように立ち去ろうとした女だったが。

 

「なあ。話があるっていたろ?」

 

 大きな音に驚いて支配人が後ろを振り返れば、ガードの男達は皆倒れ、紅い少女だけが不敵に、にまりと立っていた。

 

「ほう。大口叩くほどの実力はあるんですか。話を聞きましょう」

 

 支配人は三白眼を細め、杏子を値踏みするように眺めつつ答えた。

 

 

 

*****

 

 

 とある酒場。羽振りの良い人物は、そう語った。

 

 さあさあ、じゃんじゃんやってくれ!ここはボクの奢りだ!

 今日のボクはツイてるからね!まぁ幸運のお裾分けってやつさ!

 なんだいなんだい?何があったか興味深々かい?欲しがるね!いいよ?いくらでも話してあげるよ!

 モンスターバトルは知ってるかい?四体のモンスターでバトルロイヤルをして、どれが生き残るか賭けるカジノのギャンブルさ!

 大穴を当てた?んーそんなんじゃ済まないぜ?

 ボクはね、あれで勝ちに勝ちまくったのさ!

 

 事のはじめは見なれないモンスター、まほうしょうじょのエントリーさ。

 聞いたことないだろ?勿論ボクもさ。名前からして下位の魔法使い系。魔法使い系は魔法は強いが貧弱だからね。モンスターバトルのような乱戦には向いてない。実際、倍率最高の大穴だったよ。

 でもね、ボクにピーン!と、くるものがあってね。それで早速チケットを購入したわけさ!

 

 正直、ゲートから出てきた実物を見た時は後悔したよ。

 だって、そうだろ?紅く長い髪を後ろで一つに結わいた女の子だったんだぜ?同じく長めの裾の赤い服に、槍っぽい杖。案の定、まほうつかい系さ。これはひとたまりもないと、ボクは目を覆ったね。

 実際バトルが始まってモンスターが暴れまわってる中、なにもできずにオロオロと闘いを眺めてるあり様さ。もうボクは気が気じゃあなかったさ!

 だがその結果。他の三匹が共倒れ、まほうしょうじょが生き残るというミラクル!

 これにはね、流石のボクも大興奮さ!

 

 それから、ちょいちょいエントリーされるまほうしょうじょは毎回生き残り、ランクをグングンあげていく。

 いいかい?話の本番はここからさ!

 そして、その日ラストのメインバトルと相成るわけさ!

 

 

 

*****

 

 

 

「サヤカ!キョウコのやつ、すっごいじゃないか!」

「う、うん……」

 

 大穴勝利連発の杏子に大興奮のムラサキに、さやかは生返事をした。

 

 なんだろう、胸騒ぎがする……。

 

 胸元で両手を組み、杏子との少し前のやり取りを思い出す。

 

「いいか、さやか。私がアレに出る。ムラサキさん連れてきてモンスターバトルで私に賭けな」

「杏子、何言ってるの?そんなの危ないって!」

「炎の宝珠を手にするには、まともな手段じゃ時間がかかるのはわかるだろ?それに何戦か観たけれど、たいしたレベルのやつらじゃない。全然余裕さ」

「でも……」

「メレブさんとさやかの借金も含まれてるんだからな。いいからダッシュ!」

 

 笑いながら手を振る杏子は、いつもの様子だった。だけど……。

 

 

 

*****

 

 

 

「さて。あいつらの準備をしてください」

「えっ!TOP3ですか?」

「ええ。予想以上の大盛況ですからね。お礼をしなくてはなりません。なにより、世の中舐めたガキを有頂天で返すわけにもいきません。きっちり、地面舐めさせてやる」

 

 支配人はつまらなそうに首を鳴らした。

 

 

 

*****

 

 

 

 その日のモンスターバトル最終回。

 ゲートが開き、対戦相手を見やった杏子に戦慄が走る!

 

 ドラゴンがあらわれた!

 ギガンテスがあらわれた!

 キラーマシンがあらわれた!

 まほうしょうじょがあらわれた!

 

 これまでのモンスターとは別格の強さが三匹。しかも気配からして意識されているのがわかる。

 

「ちっ。さすがに面倒なことになりそうだね……」

 

 杏子は独り言ちる。いままでのモンスターはおもむくままに闘っていて、杏子の誘導に乗っかってくれた。

 しかし、こいつらは違う。それなりの知能を備え闘技場のルールを理解している。バトルロイヤルでは強者を叩き落としていくのが定石。つまりターゲットは杏子!

 バトルが開始されると、露骨な集中攻撃が開始された!

 杏子に対しギガンテスの持つ棍棒が振り下ろされ、ドラゴンの吐く炎と、キラーマシンの矢が撃ち込まれる。

 

「くっそ。流石にきびしいね……」

 

 サシなら問題ない。二体一でもいけたろう。でも三対一。致命撃をもらわないようにするのが精一杯。削られ続ける。

 小さな勝機を掴もうと回避に徹する杏子の視界の中に、客席のさやかが入った。なにかを叫んでいる。なにをいってるかはわからないが、今にも泣きそうな顔でムラサキに抱き着いている。

 なんだよ、さやか。そんなに危なっかしくみえるのか?まあ、そうなんだろうけどさ。

 でも……。そんな顔して応援されちゃあ、やってやるしかないね。

 杏子の双眸が気合に輝く。

 

 次の瞬間!

 

 ギガンテスのつうこんのいちげき!

 

「杏子っー!」

 

 ギガンテスの持つ棍棒が杏子を直撃したのだ!さやかが目を見開き、口を覆う。

 だが……。振り下ろされたギガンテスの棍棒の下に杏子の姿はなく。代わりに直撃をくらったドラゴンが苦痛の呻きを吐いていた。

 

「……ロッソ・ファンタズマ」

 

 まったく別の場所に、ゆらりと現れた杏子が静かにつぶやく。

 ロッソ・ファンタズマ。相手に幻覚を見せることができる、杏子の固有魔法だ。

 

「おおおおおー!」

「ううっ、きょうこー!」

 

 満員の観客の怒号が沸き起こる。そんな中でも、杏子の耳にはさやかの泣き叫ぶ声が届いていた。

 涙目で叫ぶさやかに杏子は首を傾げて笑いかける。

 

「安心しな。もう無敵さ」

 

 

 

*****

 

 

 

「これでチェックよ」

 

 カチリ。氷の魔女のこめかみに銃口を突きつけ、マミがつぶやいた。

 

「私の負けね。ちょっとー。でも、普通そういうことする?」

「貴女があれだけ追い込んでくれたから、これくらいしか手がなかったんじゃない」

 

 唇をとがらせる氷の魔女に、眉をよせたマミは銃口を外し、ため息を吐く。

 

「それに貴女、全然本気じゃなかったでしょ?」

「失礼ね。あなたほどの相手に対して手を抜くわけないでしょ?」

「……じゃあ、遊びすぎです」

「あは!本当ね!ねぇ、名前を聞いてもいい?」

「巴マミ。正義の魔法少女よ」

「そう。私は氷の魔女……」

 

 自己紹介を済ませ微笑みあう二人だったが。

 

「ん……。さすがにげんかいか、も……」

「あら、ごめん」

 

 へくち!盛大にくしゃみして凍り付く寸前のマミに、テヘペロる氷の魔女だった。




 羽振りの良い人物は何某な女神だと思った?残念!どうでしょうでした!
 支配人はーその時観てたアニメの某だったり!さてーだれでしょうー?
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