勇者ヨシヒコと魔法少女   作:ぶんた

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その2

 ……数日後。

 風見市に戻った杏子の前に、それは現れた。

 

「……ウコー、キョウコー!」

 

 見回せば前回と同じように、雲の合間からおっさんが顔を出していた。

 

「ほとけっ!……さまっ」

 

 杏子なりにあの後、いろいろ考えた。

 これっぽっちの神々しさもない鬱陶しいおっさんではあったが、結果的には大いに助けられた。

 今度会うときには、それ相応の敬意を払わねばなるまい。それが筋ってもんだ。

 

「あれれー?」

 

 そんな杏子の殊勝な素振りを、仏は顎に人差し指を当て、小首傾げて観察する。

 

「ちょっと見ない間に、すっかりいい子ちゃん?感心、かんしーん!」

 

 下卑た高笑いとともに指を指されるとかもう、杏子のイライラ急上昇。

 

「あのね、今日はお願いがあるっていうかー、貸しを返してもらうっていうかさぁ」

 

 仏は体をくねくねしだし、舌っ足らずな口調で話し出す。媚びた視線も含め、可愛いと思っているらしい。

 

「いやさ、私は全然悪くないのよ?ヨシヒコが勝手にドジふんでさ。でも、このままじゃあ世界大ピンチ!まいるよねーまったく!でもさー私が直接なんとかするとかは、ダメなわけ!仏的にさ!そこで、キミの出番なのよ!ちゃちゃっとヨシヒコ助けてやってくんない?ね、ね?ちょっとだけ!もう先っちょだけだから!プリーズ!」

 

 合わせた手を擦りながら、懸命にまくし立てる仏を見て、杏子はため息一つ。

 

「いいよ。このまえの借りがあるからね」

「そんなこといわないでさー仏、一生のおねがい!……ん?ひとゴネもなしに快諾?まじまじ?うっわ!マジ感謝!ホトケ、カンゲキ!」

「そのきたないウインクをすぐやめろ」

 

 しきりとウインクする仏に、杏子は顔をしかめる。

 

「あのね?年頃の女の子にそういうこといわれるとね、おじさん的にきっついんよ?やめたげて!きーっ!」

「いいから話をすすめろよ……」

 

 取り出したハンカチを噛んでいた仏に、杏子の呆れた言葉が投げかけられた。

 

「ん?ああ、そう?そうね。じゃあ気を取り直してっと」

 

 すかさず仏はノリを変える。

 

「じゃあとっととコッチに送っちゃうから、チャッチャとやっちゃって?チャッチャとさ。とう!」

 

 仏が大きく手を振ると、杏子は閃光に目がくらみ一瞬の浮遊感を感じた……。

 

「お、おい。なんだここは……」

 

 恐る恐る目を開けてみればそこは草原の真ん中で、見知った人物が並んでいた。

 

「はぇ?」

 

 びっくりまなこをパチクリしているまどか。

 

「…………」

 

 周囲を警戒している臨戦態勢のほむら。

 

「恭介ぇー……ぇ?」

 

 おかしなポーズで固まっているさやか。

 

「全員集合!おー!」

 

 仏の素っ頓狂な雄たけびが、風の音だけが聞こえる固まった空気をぶち壊し、さらにトドメと激しく拍手!

 

「えーっと。このさきにあるー洞窟みたいなところに……ヨシヒコが捕まっているーようだ……。ヨシヒコを助けたら任務達成!元の世界に戻してあげるからネー!ぐっどらっきゅ!む!カミマミタ!グッドラック!」

 

 キメ顔でサムズアップした仏が薄くなって消えていった。

 

「えーっと、今の声が私を助けてくれたっていうホトケ様?」

 

 さやかがつぶやいたのは、仏が消えてしばらくの後だった。

 

「う、うん……」

 

 まどかが小さく頷く。

 

「そっか、そっか。よくわかんないけど、受けた恩はかえさなきゃね。よーし、がんばるぞ!」

 

 さやかは、ぞいっと胸元でこぶしを握りしめる。

 

「うんうん!わたしも頑張っちゃうよ!」

 

 そんなさやかに、まどかは笑いながら抱き着いた。

 

「おまえら、前向きだなぁ。……まぁ、借りは返さなきゃ気持ち悪いもんな」

 

 やれやれと、杏子は頭の後ろを掻きつつ応じる。

 

「じゃあ、ちゃっちゃといくか」

「おー!」

 

 さやかとまどか、二人がこぶしを上げて笑いながら元気な声を上げた!

 

 もうすぐワルプルギスの夜がくるっていうのに、はやく帰らなくちゃ……。

 そんな三人を見つつ、ほむらは内心の焦燥を抑えていたのだった。

 

 

 

*******

 

 

 

「えーっと、ここは……。私、どうして……?」

 

 一面、ざわわと風に揺れる背の高い草原。その真ん中で巴マミは目を覚ました。

 身を起こし、こめかみに手を添えつつ懸命に思い出そうとするが、答えはでてこなかった……。

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