勇者ヨシヒコと魔法少女   作:ぶんた

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その21。最終話上

 季節外れの大型低気圧の接近。

 伝説の超弩級魔女、ワルプルギスの夜襲来を知らせるものなのだ。

 マミ、杏子、さやか、ほむら、まどか。四人の少女は迎え撃つため、静かにその時を待っていた。

 

「それはいいけどさ。ほむらもマミさんも、いい加減にしときなよ」

 

 杏子が呆れた視線をむけた。

 

「駄目よ。これからの大一番にむけて、まどか成分の補給をしているの。邪魔しないでちょうだい。それと、マミさん。邪魔」

「奇遇ね。私も鹿目さんポイントを貯めなくちゃなの。暁美さんこそ邪魔よ」

 

 まどかは左右にべったり抱き着くマミとほむらに挟まれて、ちょっと困り顔。

 

「二人とも、喧嘩はよくないかなって」

「あ、はい」

 

 二人は、まどかの仲裁に大人しく従い、まどか成分摂取と鹿目さんポイントの確保のため、まどかに身を寄せる。

 

 ――色々あったなぁ。

 

 そんなやりとりを横目でみながら、さやかは思いをはせた。

 

 

***

 

 

 戻ってすぐ、ほむらは全員を自宅に呼び出し、全てを告白したのだ。

 あまりの内容に全員が固まる中、一番取り乱したのはマミだった。

 

「待って!暁美さんが時間を繰り返してる?鹿目さんを魔法少女にしないため?魔女になるってなに?ねえ、なにいってるのよ!」

「……!」

 

 ――しまった!マミさん、まだ知らなかったんだ!

 錯乱するマミに慌てる面々。

 

「私は魔女になるの?魔女になって人を襲うの?そんなっ……!魔法少女が魔女になるなら、今まで倒してきた魔女は、私のような魔法少女だったの?私は人殺しをしていたの?わたし、わたし……」

 

 光を失った瞳を見開き、頭を抱えるマミ。歯をガチガチと鳴らしながらブツブツとつぶやき続ける。

 幾度もの繰り返しの中、高確率でこの事実に押しつぶされるマミを知っているだけに、ほむらには致命的に思えた。

 ああ、折角これだけの条件でワルプルギスの夜を迎え撃てるチャンスなのに!

 また……。また、だめなの?ほむらの顔が絶望に歪む。

 

「マミさん、落ち着いて」

 

 錯乱するマミに、まどかが静かに声を掛ける。

 

「魔法少女が魔女になるんなら、わたしっ……!うううっ!」

「マミさん、だいじょうぶ」

「嘘だっ!!」

「嘘じゃないよ。だいじょうぶ。だいじょうぶだよ!」

 

 泣き崩れるマミを、やさしく抱きしめるまどか。頭を撫でながら、だいじょうぶと耳元で繰り返す。

 心配そうに見守る面々に、大丈夫だとまどかは頷いて見せた。

 そう。まじゅうつかいでマミの支配権を獲得している、まどかの『なだめる』は効果絶大!

 そうして一晩中なだめて安心させることにより、まどかはマミを立ち直らせることに成功したのだが、マミはすっかりまどかに依存してしまったのだった。

 

 

*** 

 

 

 長期間行方不明だったマミが現れたことで世間は大騒ぎとなった。マミは学校に呼び出されたり、警察に呼び出されたりと大忙し。

 

「マミさんはしばらく抜きで、私達だけでもワルプルギスの夜に備えましょ」

 

 ほむらの自宅で、少女達は作戦を練る。

 あちらの世界では一週間を超えるほど過ごしたはずだが、戻ってきても時間差は全くなかった。

 ほむらの話によれば、ワルプルギスの夜に見滝原が襲撃を受けるまで、一~二週間といったところ。それまでにできるだけの準備をしなくてはならない。

 まずはグリーフシードの確保。

 けんじゃのいしによって、ソウルジェムの濁りを癒すことはできるが、激戦での回復には追いつくものではない。余裕のあるグリーフシードの確保は絶対条件だ。

 それとメンバーのレベルアップ。

 いままで最終戦闘に参加しなかった、まどかとさやかの底上げだ。まどか自身は無力だが、まじゅうつかいのアビリティを使って、魔法少女の援護が大いに期待できる。

 そして、ほむらの武器調達。

 杏子がまどかとさやかを連れてグリーフシードを集めつつLVアップに励み、ほむらが武器確保に動く。

 方針は決まった。

 

 杏子、ほむら、さやかは、ジョブの恩恵をあまり感じなかったが、まどかのまじゅうつかいLVが上がっていくと効果は劇的だった。

 まどかのアビリティにより、支配下のモンスターにはボーナスが付くのだ。

 そのサポートを実感できればできるほど、まどかの支配力も増すという困った現象もあった。

 マミはますます依存度を深め、ついにはほむらも堕ちてしまったのだった……。 

 

 

***

 

 

「私は応援することしかできないし。皆が無事に戻ってきてくれるなら、なんだってするよ!」

 

 まどかが杏子に微笑みかける。

 

「な、なんだって……?」

 

 ごくり。マミとほむらが唾をのむ。

 

「ま、まどか……?」

 

 さやかは、二人の異常な気迫の高まりにびくりと身を固める。まどか、あんた、とんでもないこといってる自覚あるの?

 

「ありがとう、さやかちゃん!でも、本当の気持ちだよ。皆の無事のためなら、私は全てを賭けてもいい」

「まどか……」

 

 そう。まどかはいつもそう。他人のために自分を犠牲にする事を厭わない。

 つまり、ご褒美無限大!

 ほむらがこぶしを握った時だった。

 どしゃどしゃ!っと、へんな落下音。

 少女達が振り返った視線の先には、ヨシヒコ、ダンジョー、メレブ、ムラサキがもみくちゃに倒れていた。

 

「えっ、どうして……」

 

 そこに懐かしいメンツを確認し、少女達は目を見開いた!

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