「苦手なものを食べさせるとか絶対駄目だよ?今度やったらイモムシ食べてもらうから」
腕を組んだまどかは、微笑みながら恐ろしい倍返しを宣言した。
……やばい。まどか、すっごい怒ってる。幼馴染であるさやかは冷や汗だらだらだ。まどかの後ろに、威嚇してくる荒ぶるチワワを幻視する……。
「あーちょっとやりすぎた。わるかったよ」
「めんご!めんごね!」
ほむらの前に並んだ杏子とさやかは、ほむらに頭を下げた。
「……もういいわ」
ほむらはいつもの調子でそっぽを向き、手櫛で髪をなびかせる。
「まあ、遊んでる場合でもないんだよね。見張りの順番きめて、さっさと寝ようぜ?」
目を瞬かせる三人に、杏子はかしげた首をめぐらせてにやりと笑いかけた。
*****
――深夜。
暗闇に紛れて何人もの男達が移動していた。
「そろそろだろうなぁ」
「ああ、なれない山道で疲れたところに睡眠薬よ。ぐっすりだろうさ」
「あの様子じゃあ、ここが山賊の村なんて夢にも思うまいよ」
「上玉の娘四人とか、ボロ儲けだな!」
人相の悪い男達が口々にわかりやすい会話をしつつ、ゆっくりと目的の小屋に向かう。到着するとともに包囲する。
「……さあて、邪魔するぜ?」
満面に下卑た笑みを浮かべた門番の男が小屋の戸を開けた。
次の瞬間!その男は錐揉みながら吹っ飛んだ!
「やれやれ。レディの寝室にノックも無しなんてね」
「なっ……!」
驚愕に息をのむ山賊達の前に、深紅の魔法少女は槍を肩にゆっくりと歩を進める。
「ばればれだっての。臭すぎるんだよ、あんたら」
杏子はつまらなそうに山賊達を見回す。
「お、おまえら!とっ捕まえろ!」
「容赦しないよ?おらっ!」
杏子の持つ槍はばらりと分解し鎖で繋がった数珠状の鞭となる。ぶんと振り回されたそれに、一斉に飛びかかった山賊達はギャフン!と弾き飛ばされた。
「ちょっと杏子、暴れすぎ」
白いマントをなびかせた青い魔法少女は肩をすくめる。
「ええ……!やっぱり悪い人達だったんだ……」
おそるおそる顔を出したまどかは、桃色の短めのツインテールをしゅんとさせる。
……あなたはほんとそう。でも。私が守るから、そんなあなたでいてね?
銃を片手に警戒しつつ、ほむらはそっとまどかを見つめていた。
*****
「さて。あんたらが捕まえてるヨシヒコって人はどこさ」
「あ、あっちだ……」
杏子の問いかけに、観念した盗賊は素直に答えた。
そうして……。
案内された牢屋に到着し、囚人を全員解放したのだった。
「やれやれ、苦労したよ。おい、仏……さまー!」
「んんん?こんな夜中になんだってのよ?」
杏子の呼びかけに夜空にもくもくと雲がわき、その中からこれ見よがしなナイトキャップを被った仏が目を擦り擦り現れた。
「あんたのいってた人達を助けてやったよ」
「え、まじで?仕事早くない?惚れちゃいそう!」
「なんでもいいから、元の世界に戻して頂戴!」
杏子と仏のやり取りに、思わず割り込みほむらが叫ぶ。
「えーっと、それでヨシヒコはどこ?」
「えっ!?この人じゃないの?」
さやかの指さす男に、仏が怪訝な視線を向ける。
「……あんた、誰?」
「ヨツヒコ……ですけど」
「!」
仏と娘達に衝撃が走る!
「別人じゃーん!」
深夜の山に、絶叫と悲鳴がこだました……!
*****
「あーあ!なんだよもう!期待して損しちゃったよ!寝てるとこ叩き起こしやがってさ!どうしてくれるんだよ!」
「なっ!アンタの情報がガセだったんだろ?」
「は、俺?俺のせいだっていいたいの?なにそれ。流石の仏だって、怒っちゃうよ?ちゃんと調べたんだぜ?ほら、これにさー」
杏子の抗議に対し、仏は怒りもあらわにタブレット持ち出し操作しだす。
「ほら!ここよ。ここのこれが……。ん?あれ、あれれ?」
仏はあからさまに目をパチクリさせた。
「……んんん?あれー?……ヨツヒコだったみたい。ゴメン!ゴメンネ?や、ほらっ、急いでたししょうがなくない?うんうん!間違えちゃうって!ヨシヒコとヨツヒコよ?ウォーリー並だろうがっ!小学生は絶対引っかかるって!」
「……あなたが小学生並みってことかしら?」
必死の仏は、ほむらの絶対零度の視線に縮み上がる。
「ちょ、きっつ!あ、ほら、ね、ね?仏の顔も三度って言葉しってる?仏が間違っても3回は顔をたててあげようって意味なんだぜ?試験にでたでしょ?残機2機だし、ね?」
「……あんなに謝ってるし、許してあげよう?」
「ナイスッ!ナーイスピンクッ!」
まどかがおずおずと場をとりなすため声を掛ける。救いの手の出現に、嬉しすぎてはしゃいじゃた仏は懸命にテヘペロウインクしつつ、両手でまどかを指さす!
そのあまりの鬱陶しさにまどかの眉がはね、微笑みのまま、びきりと凍り付いた!
「え、えっとー。そこから東の亀王の城にヒントがあるみたいよ?あばよ!」
自ら助け船を轟沈させ、晴れて敵しかいない事を肌で感じた仏は、まくしたてた後、逃げるように、とっつぁーんと消えてしまった。
「……とりあえず寝るかぁ」
杏子は伸びをしつつ大きなあくびをした後、やれやれと肩をすくめたのだった。
*****
「ティロ・フィナーレ!」
マミの放った砲撃は、魔物の群れを吹き飛ばした!
魔法の残滓で創造した紅茶を一口。ふうと、マミは一息つく。
「村は救われたー!」
「お嬢ちゃん、ありがとう!」
「……よかったわ」
歓声を上げる村人たちにマミは微笑みかけた。
……うん。どこだって、いつだって、私は正義の魔法少女だもの!
マミは小さく頷いて、決意を新たにするのだった。
ヨシヒコファンはピンときてるかもですが、マミさんがヒサ枠となります
つまり、なんとかひと段落……
ペース配分ひどい;