「あーしんど。結局1人でやるはめになるとはね……」
全ての亀人間を撃退した杏子は、さすがに「ぶえー」と、へたり込んでいた。
「おつかれ杏子!これでも飲んでよ」
「さんきゅー」
さやかの差し出した竹の水筒に、杏子は口をつける。ぬるいのは残念だが、体を動かした後の水分は格別だ。
「ぷあ!」
杏子は一気に水筒を飲み干し、大きく息を吐く。そんな杏子を見つめつつ、さやかはそっと隣に座った。
「……あの、ありがとうね」
「あ、ああ。まったく感謝してもらいたいね。こちとら、おかげでへとへとさ」
「それもなんだけど……」
さやかが歯切れ悪く言いよどむ。
「私が魔女になったときのことだよ。杏子、すぐ風見野に戻っちゃってお礼いえなかったからさ……」
「……ああ、あれね」
俯くさやかに、杏子は首を傾げてため息を漏らした。
「礼にはおよばないよ。実際私はなにもやっちゃいないしね。仏がきてくれなきゃ、私もまどかもやられてた。まったくもっての考え無しさ」
結果オーライと考えないようにしていたが、魔女を説得するなんて、まともな判断ではなかった。杏子は肩をすくめる。
「……仏様がきてくれたのは二人のおかげなんだ。二人の起こしてくれた奇跡なんだよ」
さやかは膝を抱えて背を丸めた。
「あんなに心配してくれたのに、私いっぱいいっぱいでつっぱねてあの様でさ。だから……ごめん。ほんとごめん」
「……いいじゃないか。奇跡は起きたんだからさ」
ぐずぐずと鼻をすするさやかに、杏子は軽い口調で声をかける。
「折角やりなおせるんだ。今度こそ、正義の魔法少女ってやつを目指して一緒にがんばろうぜ」
正義の魔法少女……。偉大な先輩の後ろ姿がちらりと脳裏をかすめた。
「それにさ……」
「……う、うん?」
さやかは言いよどむ杏子を不思議そうに見る。
「……困ったときはお互いさまだろ?と、友達で、な、仲間なんだしさ……。だから礼とかいいって!」
「…………」
らしくないのを自覚して杏子は顔を赤くする。さやかはそんな杏子を見つつ、目を瞬かせた。
「杏子……。あ、じゃ、あの亀人間おねがいね!なんかもーあれ苦手で全然駄目なんだよね!あははっ!ほんと助かっちゃう!」
「え?あ、お、おう……」
そうしてさやかは手をひらひらさせつつ、笑いながら去っていった。
「……ん?んん?んんんんー?」
いろいろと腑に落ちない杏子がぽつり一人取り残された……。
*****
どどん!と、そびえる亀王城前。
「さて、のりこむか」
杏子を先頭に復活したさやか、ほむら、キノヒコ、まどかが続く。
「マルオ様ー!」
その時、一人の人物が城の中から走りでてきた。
「キノヒコ!マルオ様はどこ?」
「ビッチ姫様!」
ティアラののった流れる金髪。桃色のドレス。絶世の美貌はきょろきょろと周りを見回す。
「マルオ様はお忙しいようでしたので……。仏様の使いの方々とお迎えにきたのです!」
キノヒコは片膝をつき報告した。
「なんてことなの。……女ね。マルオの奴を捜すわよ!」
「姫っ!」
ビッチ姫は般若の表情で走り出した。キノヒコはそれを追いかける。
「ええー……」
「……やれやれ。やっとでていったわい」
ぽかんと取り残されていた少女達の後ろに、のしのしと続いて現れたそれは疲れ切っているようだった。
緑の全身に背負った甲羅。頭に輝く王冠。そしてなにより巨体ッ。その威圧感に少女達は息をのむ。
「あなたは……」
「わしが亀王よ」
いきなりのラスボス登場に少女達に緊張が走る!
「まったく。ビッチ姫のやつマルオの気をひこうと押しかけてきては、誘拐だのなんのと騒ぎ立てるのよ。迷惑でたまらん」
「なんだそりゃ……」
あんまりな展開に少女達が眉をよせた。
「わしは静かに引きこもりたいだけなのよ。さ、まぎれこんだキノコ人と一緒に、おまえらも帰ってくれ!」
*****
「……まったく酷い目にあった」
急展開に門前払いをくらって呆然とする少女達。その横の人影がつぶやいた。
彼女たちの向けた視線の先にいたのは、さらさら金髪のマッシュルームカットの男だった。
「あの、もしかしてヨシヒコさんって知ってます?」
「…………」
おそるおそるの、まどかの問いかけに、その男は小さな咳払いを何度もしつつ、その金髪をなびかせ偉そうに杖を構えた。ローブがばさりと揺れる!
「おやおや。おやおや娘達。娘達?おやおや!それを私に聞くのかい?勇者ヨシヒコパーティの魔術師にして参謀。賢者メレブとは私のことだよ!」
「…………」
高らかに宣言するメレブのあまりのうさん臭さに、少女達の視線の温度はだだりと下がる。
「ははっ!褒めるがよい!褒め称えるがよいぞ?このホクロをっ!」
メレブはドヤ顔で少女達をねめつけた。
*****
「へいへいへい!そこ行くお嬢さん!お茶しようよー!」
「さっきからいってるでしょ?お断りです!」
マミは付きまとう、全身赤い恰好のひげの男に辟易していた。
「そんなこといわないでさ!君のワガママバディにボクのキノコで1UP……」
「ティロ・フィナーレ!」
マミの、いわせねーよ!とばかりに放たれた砲撃が、男に直撃!
「マンマミーヤー!」
ドップラー効果で小さくなる悲鳴の尾を引きながら、赤い不審人物は空の彼方へ飛んで行き……。キラッ☆!と、きたない星となった。
メレブがなかまにくわわった!