勇者ヨシヒコと魔法少女   作:ぶんた

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その8

「あーしんど。結局1人でやるはめになるとはね……」

 

 全ての亀人間を撃退した杏子は、さすがに「ぶえー」と、へたり込んでいた。

 

「おつかれ杏子!これでも飲んでよ」

「さんきゅー」

 

 さやかの差し出した竹の水筒に、杏子は口をつける。ぬるいのは残念だが、体を動かした後の水分は格別だ。

 

「ぷあ!」

 

 杏子は一気に水筒を飲み干し、大きく息を吐く。そんな杏子を見つめつつ、さやかはそっと隣に座った。

 

「……あの、ありがとうね」

「あ、ああ。まったく感謝してもらいたいね。こちとら、おかげでへとへとさ」

「それもなんだけど……」

 

 さやかが歯切れ悪く言いよどむ。

 

「私が魔女になったときのことだよ。杏子、すぐ風見野に戻っちゃってお礼いえなかったからさ……」

「……ああ、あれね」

 

 俯くさやかに、杏子は首を傾げてため息を漏らした。

 

「礼にはおよばないよ。実際私はなにもやっちゃいないしね。仏がきてくれなきゃ、私もまどかもやられてた。まったくもっての考え無しさ」

 

 結果オーライと考えないようにしていたが、魔女を説得するなんて、まともな判断ではなかった。杏子は肩をすくめる。

 

「……仏様がきてくれたのは二人のおかげなんだ。二人の起こしてくれた奇跡なんだよ」

 

 さやかは膝を抱えて背を丸めた。

 

「あんなに心配してくれたのに、私いっぱいいっぱいでつっぱねてあの様でさ。だから……ごめん。ほんとごめん」

「……いいじゃないか。奇跡は起きたんだからさ」

 

 ぐずぐずと鼻をすするさやかに、杏子は軽い口調で声をかける。

 

「折角やりなおせるんだ。今度こそ、正義の魔法少女ってやつを目指して一緒にがんばろうぜ」

 

 正義の魔法少女……。偉大な先輩の後ろ姿がちらりと脳裏をかすめた。

 

「それにさ……」

「……う、うん?」

 

 さやかは言いよどむ杏子を不思議そうに見る。

 

「……困ったときはお互いさまだろ?と、友達で、な、仲間なんだしさ……。だから礼とかいいって!」

「…………」

 

 らしくないのを自覚して杏子は顔を赤くする。さやかはそんな杏子を見つつ、目を瞬かせた。

 

「杏子……。あ、じゃ、あの亀人間おねがいね!なんかもーあれ苦手で全然駄目なんだよね!あははっ!ほんと助かっちゃう!」

「え?あ、お、おう……」

 

 そうしてさやかは手をひらひらさせつつ、笑いながら去っていった。

 

「……ん?んん?んんんんー?」

 

 いろいろと腑に落ちない杏子がぽつり一人取り残された……。

 

 

 

*****

 

 

 

 どどん!と、そびえる亀王城前。

 

「さて、のりこむか」

 

 杏子を先頭に復活したさやか、ほむら、キノヒコ、まどかが続く。

 

「マルオ様ー!」

 

 その時、一人の人物が城の中から走りでてきた。

 

「キノヒコ!マルオ様はどこ?」

「ビッチ姫様!」

 

 ティアラののった流れる金髪。桃色のドレス。絶世の美貌はきょろきょろと周りを見回す。

 

「マルオ様はお忙しいようでしたので……。仏様の使いの方々とお迎えにきたのです!」

 

 キノヒコは片膝をつき報告した。

 

「なんてことなの。……女ね。マルオの奴を捜すわよ!」

「姫っ!」

 

 ビッチ姫は般若の表情で走り出した。キノヒコはそれを追いかける。

 

「ええー……」

「……やれやれ。やっとでていったわい」

 

 ぽかんと取り残されていた少女達の後ろに、のしのしと続いて現れたそれは疲れ切っているようだった。

 緑の全身に背負った甲羅。頭に輝く王冠。そしてなにより巨体ッ。その威圧感に少女達は息をのむ。

 

「あなたは……」

「わしが亀王よ」

 

 いきなりのラスボス登場に少女達に緊張が走る!

 

「まったく。ビッチ姫のやつマルオの気をひこうと押しかけてきては、誘拐だのなんのと騒ぎ立てるのよ。迷惑でたまらん」

「なんだそりゃ……」

 

 あんまりな展開に少女達が眉をよせた。

 

「わしは静かに引きこもりたいだけなのよ。さ、まぎれこんだキノコ人と一緒に、おまえらも帰ってくれ!」

 

 

 

*****

 

 

 

「……まったく酷い目にあった」

 

 急展開に門前払いをくらって呆然とする少女達。その横の人影がつぶやいた。

 彼女たちの向けた視線の先にいたのは、さらさら金髪のマッシュルームカットの男だった。

 

「あの、もしかしてヨシヒコさんって知ってます?」

「…………」

 

 おそるおそるの、まどかの問いかけに、その男は小さな咳払いを何度もしつつ、その金髪をなびかせ偉そうに杖を構えた。ローブがばさりと揺れる!

 

「おやおや。おやおや娘達。娘達?おやおや!それを私に聞くのかい?勇者ヨシヒコパーティの魔術師にして参謀。賢者メレブとは私のことだよ!」

「…………」

 

 高らかに宣言するメレブのあまりのうさん臭さに、少女達の視線の温度はだだりと下がる。

 

「ははっ!褒めるがよい!褒め称えるがよいぞ?このホクロをっ!」

 

 メレブはドヤ顔で少女達をねめつけた。

 

 

 

*****

 

 

 

「へいへいへい!そこ行くお嬢さん!お茶しようよー!」

「さっきからいってるでしょ?お断りです!」

 

 マミは付きまとう、全身赤い恰好のひげの男に辟易していた。

 

「そんなこといわないでさ!君のワガママバディにボクのキノコで1UP……」

「ティロ・フィナーレ!」

 

 マミの、いわせねーよ!とばかりに放たれた砲撃が、男に直撃!

 

「マンマミーヤー!」

 

 ドップラー効果で小さくなる悲鳴の尾を引きながら、赤い不審人物は空の彼方へ飛んで行き……。キラッ☆!と、きたない星となった。




メレブがなかまにくわわった!
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