パソコンのある日常-Daily lives of there's a personal computer-   作:海色 桜斗

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コミケに参加するため、東京都へ旅立った祐都達。

一日目から、それと無くドタバタに巻き込まれながらそれでも何とか熟していく。

そして、ついに彼らの努力が報われ、念願のプールへと向かう事になった。

果たして、彼らを取り巻く恋の行方や如何に。

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女が好きだと言うならば、一部ではなく全てを愛せ



Shift12「コミケ夏の陣、そしてミーミルの泉へ-水辺の天使編-」

「きのう は おたのしみ でしたね」

 

「そこまでは、いっとらんわ」

 

「でも ちー は すごく まんぞくそう でしたよ」

 

「てか、いい加減ファミコン時代のテキスト表示止めろや。軽く作者虐めだぞ」

 

「ものがたり を セーブ しています 。 でんげんを き」

 

「うわぁぁぁぁぁ、かなり大事なところでバグったぁぁぁぁぁ!?」

 

「ぼうけんのしょ が ありません」

 

ふっかつ の じゅもん を にゅうりょく してください 。

 

*********

 

 

「夏だ!」

 

「海だ!」

 

「プールじゃーーーーーーい!!」

 

「ひゃっほぉぉぉぉぉーい!!」

 

鈴の手伝いで参加したコミケが遂に終わりを迎え、その懇親会という意味で向かった都心の最新アトラクションが備わったプールへ来た俺達。俺を含め、男達は女性陣より早く着替え終わり、そのアトラクションを野郎のみで徒党を組んで遊び耽っていた。

 

『おーい、お前ら。如何やら女性陣の着替えが終わったようだぞー、全員集合!』

 

すると、少し遠くの方でメガホンを手にした恭介氏が男性陣に集合を呼びかける姿が見えた。俺はもう少しで滑れる予定だった超巨大なウォータースライダーの列から抜け出し、その場へ大急ぎで向かった。目の保養、超大事!!

 

『よーし、全員揃ったな。では、これから女性陣達による水着コンテストを開催する!』

 

『本来であれば、好きなようにペアでもなんでも組んでと言いたいところだが、それではいつもと同じで張り合いがない。と、いうわけで俺が考えた特別ルールは、これだァッ!』

 

恭介さんが手を掲げると、何処からともなくホワイトボードが現れ、そのホワイトボードにルールを書き込んでいく。ルールは簡単。今から水着に着替えた女性陣が出てくるので、男子陣はそれぞれ自分が気に入った、もしくは可愛いと思った女性に投票。全員が出終わった時点でその女性を遊びに誘い、相手からOKが出ればその時点でペア成立、だという。

 

『それじゃあ、準備はいいな?まずは、エントリーナンバー1番――』

 

 

2025/8/18 10:20

都営プール1F 女子更衣室前休憩スペース

Side:川知 智佳

 

 

「はぁ、水着コンテスト?」

 

「あぁ、やれることなら最後までいつもとは違う事を、と思ってな。参加してくれると助かる」

 

時は私達が男性陣と別れて、水着に着替える為に女子更衣室に入ろうとしたところまで遡る。男性陣にやたらとリスペクトされていたパソコン部のOBで前部長の恭介という男に相談があるといわれ、集まったらこの話なわけだ。正直、私は最初、面倒くさいしやるつもりはなかった。だが。

 

「へぇ、面白そうじゃないか。私は乗ったぞ」

 

最初に美月先輩が乗り。

 

「確かに面白そうだね、私も同行しよう」

 

次に優海がそれに続いて。

 

「あんまり自信ないけど、折角だからやってみようかな」

 

慧巳も当然の如く乗り出して。

 

「あ、いいですね、そういうの!私もやってみたいです!」

 

麻衣も食い気味で乗っかり。

 

「うん、私も参加してみようかな」

 

葵もその勢いに乗るか如く参戦して。

 

「よーし、当然ながら私も面白そうだと思ったから参戦するぜー!」

 

予想通り、鈴も向こう側に付いた。そして、気付けばまだ賛成か反対かの意見を出してない私に周りの視線が集中し出す。そんな私を不憫に思ったのか鈴が近くに来て、私の耳の近くでこっそりと耳打ちをした。

 

「ここでちーが頑張れば、向坂と一緒になれるぞ、頑張ろうぜ!」

 

「・・・・・・ッ!そっか、祐都と一緒に・・・・・・」

 

その名前を聞いた瞬間、私の心臓がトクン、と脈打つ。1日目の夜に勘違いして私が殴り倒してしまった彼が2日目の昼近くに目を覚まして、私を抱き寄せてくれたあの時。ちょっとびっくりしたけど凄く嬉しくて、温かくて。服の上からだったけど、何か凄くがっちりしてた。何回か握ったことがあった手の感触は分かってはいたが。何というか、それ以上。私を守ってくれそうな大きくて立派な身体だった。出来るなら、もう一度ああやって包まれたいと思ってしまう。

 

「祐都・・・・・・選んでくれるかな」

 

「大丈夫だよ、ちー。今の向坂はちーが少し気になってるみたいだから。きっと、いけるよ」

 

前はよく分からなかったこの気持ち。もしかしたら、私は祐都の事が異性として好きなのかもしれない。祐都には私だけを見ててほしい。例えどんなに他の女の子が魅力的でも、祐都の中では自分が一番でありたい。

 

「分かった、私もやる」

 

ねぇ、祐都。お願いだから、ちゃんと私だけを見てて。私だって、今まで祐都に振り向いて貰うために色々頑張ったんだから。私の事も只の幼馴染みじゃなくて、一人の女の子として見てほしい。

 

「よし、全員参加って事でいいな、助かるぜ。それじゃ、俺は司会に専念するから君等の健闘を祈ってるとしよう」

 

「・・・・・・約束だからね、祐都」

 

皆が更衣室に去って行った後、私は一人、そんな事を呟いた。勿論、そこに祐都がいるわけもないので、どうしたってその言葉は届かない。それにしても、何て自分勝手な約束だろうか。本当、最近の自分自身の我儘さには嫌気がさしてくる。

 

 

Side:川知 智佳 END

 

 

そして時は戻り、現在。俺達男性陣は女性陣が出てくるのを期待に胸を膨らませて待った。

 

『エントリーナンバー1番、比賀乃美月!』

 

最初はツイストタイプのビキニを纏って現れた美月先輩。2日前くらいに超至近距離で見た裸体が脳内にチラつくが気にするな、忘れろ。そして、同時にこれは、誰が反応するかなんて既に分かり切った答えだろう。

 

「御姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『続いてエントリーナンバー2番、夢野麻衣!』

 

次は麻衣ちゃん。フリルの付いた可愛らしいワンピースタイプのビキニを着て守りたくなる子ナンバーワンだ。そんな麻衣ちゃんに声を上げたのが。

 

「おおぅ、夢野氏、超絶可愛いお!ktkr!」

 

『まだまだ行くぜ、エントリーナンバー3番、瀬野葵!』

 

そして、葵さんの登場だ。葵さんはシンプルにノーマルタイプのビキニ。真っ白い肌が眩しい!これを見るために生きてきたといっても過言じゃないね、うん!

 

「フ、これは迷ってしまうな。後腐れがない様、選ばねば」

 

『お次はエントリーナンバー4番、川知智佳!』

 

次に出てきたのは智佳、か。長い髪は後ろで束ねてポニーテールにして、リボンタイプのビキニに腰にはパレオを巻いている。おぉ、な、中々似合ってるじゃねぇか。

 

「・・・・・・」

 

とまぁ、こんな調子で全員が全員いい感じの水着を付けて登場してくれたわけだが・・・・・・うーん、誰にしよう。俺が一番可愛いと思ったのは――

 

 

 1.葵さんと遊ぶ

→2.智佳と遊ぶ

 3.選べない、野郎共と遊ぶ

 

 

『さぁ、各自投票は終わったか!?いよいよ、運命の告白タイムだぁーっ!』

 

よし、もうやるしかねぇな。こうなりゃもうどうにでもなれだ!

 

・・・・・・まぁ、尤もOKしてはくれる可能性は高い方ではあるが。どうだろうか。

 

「なぁ、一緒に遊ぼうぜ、智佳」

 

いつもの感じで俺はステージの少し脇の方にいる智佳に声を掛けた。それを受けて振り向いた智佳の頬はピンク色に染まり、ちょっとびっくりした表情をしている。不覚にも可愛いと思った。

 

「えっ、あっ、ゆ、祐都?わ、私でいいの?」

 

「あぁ、お前で・・・・・・いや、お前がいい」

 

「そ、そっか・・・・・・ありがとう、祐都。嬉しい」

 

『おめでとう二人共、ペア成立だ!さぁ、次の挑戦者は誰だぁーっ!?』

 

 

智佳√《幼馴染みと同人誌のある日常》の解放条件1をクリアしました。

 

智佳√《幼馴染みと同人誌のある日常》の解放条件2を解放しました。

 

 

恭介さんが開催している余興冷めやらぬ中で、俺と智佳は浅めのプールに足だけを入れて床に腰を下ろして会話に花を咲かせていた。智佳の新鮮な水着姿が眩しい。

 

「な、何で私を選んでくれたの、祐都?」

 

「何でって・・・・・・いや、実際なんでだろうな。お前の事、何となく、放っておけなかったんだ」

 

敢えてキザったらしく言ってみる。因みにこれは建前。本音としては、単純に智佳の私服姿はガードが固いので、普段見えないところが見えて性癖に刺さったから、である。

 

「祐都・・・・・・」

 

「そ、それと臍がエロかったって言うか何つーか、ははは・・・・・・」

 

「ッ!?・・・・・・も、もぅ、祐都のスケベ」

 

何となく本音の方も伝えてみる。それを聞いた智佳は、いつもみたいに照れてはいるものの、照れ隠しで殴り掛かってくるとかそういう事はせず、優しげな口調でそう言うと、足を組んで、俺の方に身を預けて来た。あ、あれ、俺の幼馴染みってこんなにエロかったか・・・・・・?

 

「ち、智佳!?どっ、どうした急に。お、お前らしくねぇな」

 

「いいから、ちょっとこのままで居させて」

 

「お、おう・・・・・・」

 

ヤベェよ、何かドキドキしてきた!?心臓の鼓動音とか高まりすぎて、智佳の奴に聞こえてそうだ。凄くいい匂いだし、パレオの隙間から除く足のラインが・・・・・・って、ちょっと落ち着け。まだそういう関係でもないのに、勝手に欲情するな、俺?!

 

「ちー、ねぇ、ちーってば。・・・・・・うーん、駄目だね。完全に二人の世界だ」

 

「そうか。此方も手を尽くしているが、祐都の方も駄目そうだ。かなり悶々としている」

 

一方、余興が終わり、アトラクションの方へ二人を誘おうとした鈴とその様子を見かねて助け舟を出した龍が二人を現実に引き戻そうと奮闘していた。が、戦況は芳しくない様子である。

 

「でも、これは私的には願ったり叶ったり!寧ろ、このまま・・・・・・フフフ、S〇X!!」

 

「やめておけ。あまり過激すぎる表現は、この小説のR-15指定に引っかかるぞ」

 

「ちぇー、いいじゃん、いいじゃん!最近はそう言うの過度に避けようとするから、少子化が止まらないんだよ、きっとさ~」

 

鈴が何処か雄輔みたいなことを口にする。しかし、それはまず置いておくとして、だ。取り敢えず今はこの二人をどうにかして現実世界に引き戻さねばならない。打つ手はあるのか。

 

「よし、先に祐都の意識を引き戻す。というわけで、鈴、これを頼んだ」

 

「どれどれ・・・・・・あー、成程!確かにこれは向坂も反応するな、きっと!」

 

如何やら龍に秘策の用意があったらしい。何処からか取り出したメモ帳を渡された鈴は、そこに書いてあった文面を億すことなく読み上げた。

 

「なぁにやってんだ、向坂ァァァァァァァ!!」

 

「・・・・・・はっ!?」

 

それを耳にした祐都の反応は、かなり早いものだった。一瞬で悶々とした精神世界から現実世界へ引き戻され、覚醒。隣の智佳も数秒遅れてだが、意識を引き戻されたようだ。

 

「鈴、それに龍。な、何か用か?」

 

「折角のところ邪魔しちゃってアレだけど、プール来てるんだからさ。アレ、やろうぜ!」

 

そう言って、鈴が指さしたのは、俺が序盤で水着大会の為に列から抜け出して、体験し損ねたアトラクションの超巨大ウォータースライダーだった。あー、そういやすっかり忘れてたわ。

 

「龍も行くのか?」

 

「いや、俺はペアの相手を待たせているのでな。また今度だ」

 

そんな話を聞いて、俺は龍が選んだ相手が誰なのかが無性に気になってきた。なので、龍が去っていった方向を見ると、何とそこには優海さんの姿が。マジか、俺が気付かないうちに二人共そこまでの関係に!?・・・・・・単にクラスメイトだからって事もあり得るけど。

 

「うし、じゃあ、俺達はアトラクションを楽しむか。行こうぜ、智佳」

 

「ん、その、い、一緒に滑ってくれるなら・・・・・・」

 

「おう、そうだな。一緒に楽しもうぜ」

 

「わお、ちーが珍しく素直だ」

 

うん、お陰でさっきから俺がソワソワしてあまり落ち着けないので、出来ればいつものツーンと澄ました感じの智佳に戻ってほしいが。無理かなぁ、本人何故か幸せそうだし。

 

「でも、私的にはちーが幸せそうで安心したかな。偶にはやるじゃん、向坂」

 

「偶にはってお前・・・・・・。悪かったな、あんまり役に立たない男で」

 

「誰もそこまで言ってないって。で、向坂は実際のところ、どうなの?」

 

「どうなの、って何が?」

 

「だからさ、ちーの事、好きなのかそうじゃないのかって事」

 

智佳の事?そりゃあ、好きな方ではあるし、何より大切な幼馴染みだ。もし、智佳を傷付ける奴がいるなら俺はソイツを許さない。まぁ、智佳は元々強いからそんな事態にはならんだろうけど。

 

「違うよ、私が言いたいのは向坂はちーを異性として好きなのかって事」

 

「はぁ!?そっ、そんな事本人の前で言えるわけねーだろ・・・・・・」

 

「多分、大丈夫だと思うよ。ちー、さっきからちょっと夢見心地だし」

 

鈴に言われて、チラリと智佳の方を見る。確かに、いつもの智佳みたいにきりっとした顔で無く、緩み切って少しとろんとした顔をしている。本当に大丈夫か、智佳の奴。

 

「・・・・・・正直、まだ分かんねぇよ。今までそういう対象で見たことがなかったからっつーか、俺にとって智佳は智佳だし」

 

「うーん、長い事幼馴染みやってた故の障害かぁ・・・・・・こればっかりは仕方ないね」

 

智佳は、異性としてみれば十分に魅力的な女の子だ。だからこそ、将来はそれに見合った男と結ばれてほしいし、幸せに暮らしていってほしい。前に智佳は俺と妙な噂が経っても気にしないと言ってくれた。だが、それは別に俺と特別な関係になりたいとかそういう意味じゃない。

 

「俺、今まで全然モテて来なかったしさ。すぐには多分、理解できねぇんだわ、きっと」

 

俺のそんな自虐的な告白を聞いた鈴は、一瞬だけ何処か遠くを見つめているかのような物悲しい表情になった後、すぐにいつもの笑顔になって、ケタケタと笑いながら言った。

 

「そっか、それに関してはもう頑張れとしか言いようがないね。じゃ、相談事終わりッ!兎に角、今は遊ぼうぜ、向坂!」

 

「だな」

 

もしもだ、この先、智佳が自分にとって大切な人が出来たと言った時、俺は果たしてきっちりと笑顔で送り届けられるだろうか。いや、絶対に送り届けねばならない。何故なら、智佳は俺にとって幼馴染みであると共に恩人でもあるのだから。

 

「では、このアトラクションの説明をしますね。まず、一人目が座って――」

 

スライダーの天辺まで続く長蛇の列に並ぶこと30分後。漸く一番先頭まで辿り着き、いざ参らんと言うところで係員から説明を受けていた。

 

「いやー、やっぱり都会のアトラクションは違うね。ちーもそう思うでしょ?」

 

「まぁ、流石にあっちだとここまで大掛かりな物作っても来場者がそうそう来ないものね」

 

「そうなんだよ。でも、せめてもう少し若者が魅力感じる町づくりをですなぁ」

 

「じゃあ、鈴が県知事になってみたら?きっと今の数倍は楽しくなるはずよ」

 

「おおぅ、それはちょっと荷が重いでござる」

 

智佳の奴も鈴と話してる内にいつの間にかいつものテンションに戻ったし。うん、これで心置きなくアトラクションを楽しめるな!マジであのままだと俺がどうにかなりそうだったからさ。

 

「お連れ様は此方の方の前にお座りください」

 

「ほら、ちー、呼ばれてるよ。行っておいで」

 

「ん、分かってるわよ」

 

係員に呼ばれた智佳がゆっくりと俺の足の上に乗っかる形で前に腰かける。流石、背中まで柔らかいとは恐れ入った。やっぱり野郎とは違うな、当たり前だけど。

 

「よ、よろしく、祐都」

 

「お、おう・・・・・・」

 

丁度智佳のお尻の下に俺のイチモツがある感じになった訳だが。間違っても反応するなよ、殺されても文句言えねぇぞ。

 

智佳が滑り落ちないように、後ろから手を回して智佳を軽く抱きしめる。こ、ここはちゃんとお腹の辺りだな、胸には触ってないな。掴み間違いなし、ヨシ!

 

「それではいってらっしゃーい!」

 

そして、ついに超巨大ウォータースライダー内での俺と智佳の冒険が始まった!

 

「ひゃっほーーーい!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「「最高ーーーーーッ!!」」

 

地元にあるプールのウォータースライダーより何倍も長い、果てしなく真っ直ぐだったり、途中で曲がり角が連鎖するグネグネだったりする、何とも不思議な空間内で、俺と智佳はその時だけ一陣の風となった。そして、段々と出口に近づいてきて、二人共が勢いよく開けた空間へ弾き出された!

 

「うぉぉぉぉぉっ、すげぇぇぇ!!」

 

「凄い楽しかった・・・・・・!ねぇ、祐都ッ!もう一回、もう一回やるわよ!」

 

「あぁ、望むところだ!もう一回どころか何度でもやってやるぜー!」

 

ズッパーンと辺りに飛び散る水飛沫。先程まで考えていた暗い思考を一気に吹き飛ばす爽快感。一緒に燥いだことでタカが外れ、今まで見たことがない満面の笑みを見せる智佳。俺はそんな智佳にやっぱり少しドキッとしながらも、一緒にウォータースライダーの周回を繰り返した。一方、俺達のすぐ後ろを滑っていた鈴はというと。

 

「ははっ、二人とも元気すぎるでしょ。まぁ、ちーが珍しく燥いでる姿が見れるのはいい事だけどさ」

 

「向坂の奴も惜しいとこまで来てるからさ。私は最後まで応援してるよ、ちー」

 

出口から少し離れたベンチに腰かけて、二人が何度も燥ぎながら滑り降りて来てはまた昇りに行く様を、温かい眼差しで見守っていた。

 

「あぁ、それともう一つ」

 

「折角ここまで来たんだ。だから、もうちょっと私の茶番に付き合ってくれよな、向坂」

 

鈴がその時呟いた意味深な言葉は、聞き取れなかったし、聞いたとしても恐らく理解はできなかっただろう。まだ、全てのピースは揃わない。

 

 

「もうこんな時間か、あっという間だったわね」

 

「あぁ、そうだな」

 

気付けば早いもので、窓の外に見える夕日が今日という一日の終わりを告げていた。俺と智佳はプールサイドにあるベンチに腰かけて、一緒に外の景色を見つめていた。

「祐都は楽しかった?」

 

「あぁ、お前と遊べて楽しかったぜ」

 

「ッ!?も、もぅ、バカ・・・・・・!」

 

俺が態と気障な感じで発言すると、顔を真っ赤にして俯く智佳。おっと、いかんいかん。最近、智佳と絡むと性格が一時的に鈴とそっくりになる。それだけは駄目だな。

 

「ね、ねぇ、祐都。何で今日は私を選んでくれたの?」

 

「おいおい、その質問、今日で二回目だぞ。ボケるにはまだ早いんじゃあないか」

 

「そうじゃないわよ、バカ・・・・・・」

 

「じゃあ、何だってんだよ」

 

「だ、だって、祐都はその、む、胸が大きい方が好み、なんでしょ?」

 

まぁ、そりゃあね。男だったら一度くらいは大きい胸にロマンを感じずにはいられない時がある。どうせならアレに思いっきり顔をうずめてみたいとかエトセトラ。

 

「・・・・・・」

 

と、言うわけで隣にいる智佳の胸元に気付かれないように視線を向ける。しかし、流石は女子。そういう視線にはすぐに気づくようで、智佳は此方を睨みながら胸元を腕で覆い隠した。

 

「もぅ、馬鹿、変態!」

 

「痛てて、悪かったよ、済まん」

 

「・・・・・・悪かったわよ、小さくて」

 

「別に何も言ってねぇだろ」

 

「ふん、だ」

 

しまった、完全に機嫌悪くしてそっぽを向かれてしまった。因みに智佳は巨乳とはいかないが、美乳の部類だからそこは誇ってもいい所だぞ?直接言ったら殺されるから言わないけど。

 

「別に、そこまで執着してねーよ」

 

「・・・・・・嘘」

 

「嘘じゃねぇって」

 

「・・・・・・」

 

あ、駄目だ、マジで話聞く気がないよ、この人。人が折角、こうやって一生懸命弁明してるというのに。いや、もしかしたらこの場合は逆に、変に取り繕わなくて良いのかもしれん。そうだよな、長年一緒にやってきた幼馴染みだもんな、腹割って話さないと。殺されるかも知れないけど。

 

「まぁ、確かに、デカいのはいい事だが」

 

「嘘つき」

 

「待て。質問した側なら、せめて最後まで聞け」

 

「・・・・・・何よ?」

 

智佳は、相変わらず此方には一切目を向けてくれない。けれど話を聞く気は復活してくれたようで、ふくれっ面になりながらも俺の返答を待ってくれていた。ありがとな、智佳。

 

「良い事、とは言ったけど、必ずしもそうじゃなくてもいいって意味だっての。大体、それじゃなきゃダメってのは、ただの趣味の押し付けになるから筋が通らねぇ」

 

「後、俺の主義に反する。だから、んな事、口が裂けても言うもんか」

 

立て続けにそんな言葉を口にし、俺は再度智佳の方を見る。と、そっぽを向いていた智佳の視線がちょうどいいタイミングで同じように俺に向けられ、一瞬、お互いに見つめ合う感じになってしまう。俺と智佳は何だか気恥ずかしくなって同時にお互いから視線を外す。うーん、気まずい。

 

「そ、そう。ん、取り敢えず、分かった」

 

暫らくの沈黙が続いた後、そう言って智佳は、照れつつも視線を俺に向ける。よく見れば、何かを期待しているかのようなそんな眼差しをしている。あぁ、そう言えばもう一つ言い忘れてたな、大事な事。

 

「そうだ智佳、楽しむのに夢中になりすぎて言うの忘れてたけどさ」

 

「な、何よ」

 

「そのポニーテール、凄く似合ってるぜ」

 

「そ、そう・・・・・・ありがと」

 

あれ、想像してた受け答え方より、大分違ったな。やっぱり、もう少し誇張して言った方がよかったか?うーん、乙女心って難しい。DTには一生懸けても理解出来る気がしませんわ。

 

「ゆ、祐都は、その・・・・・・ポニーテール、好き?」

 

「嫌いじゃない」

 

「ふ、ふーん。じゃ、じゃあ、偶になら、やってあげる」

 

何ですと、それは本当か。それは是非お願いしたい、今だってギャルゲのCG風にイメージ湧いてきたし、超参考資料にするから。

 

「それに、俺はポニーテール萌えだしな!」

 

「ふふふっ、何で変にカッコつけようとしてるのよ。バーカ」

 

「んなっ、人が褒めてる時に馬鹿はねぇだろ、馬鹿は!?」

 

俺の変に格好つかない態度を見て、幾分かいつものペースを取り戻した智佳が、あっかんべーをして俺を揶揄ってくる。くっそぅ、今に見てろよ。何時か痛い目に合わせてやる、絶対にだ!

 

「バーカ、祐都のバーカ!」

 

「テメェこの野郎、言わせておけば何回も人を小馬鹿にしやがってぇ~!」

 

「あははっ、バーカ、バーカ!」

 

まるで小学生の時に戻ったかのような低レベルな争いが勃発した。流れのあるプールへ逃げ込んでいく智佳とそれを追う俺。傍から見れば、ドラマとかの恋人同士がよくやる、「捕まえてごら~ん」とか「待て待てぇ~」とかいう奴にしか見えないが。それでも、まだこの時の俺と智佳は、両想いでもなければ付き合ってもいない。

 

「二人共、元気だな~」

 

「逆にあそこまでお互いが一緒に遊べて楽しいなら、付き合っちゃえばいいのにね」

 

「そこはほら、二人のペースでって奴だぁね♪」

 

「いいなぁ、祐都君と智佳ちゃん。凄く楽しそう」

 

二人のそんな様子は、偶々その場に居合わせた女性陣全員にしっかりと目撃されていたわけだが。男性陣は如何やらその甘々な空気に呆れて、着替えを済ませて、さっさとバスの中へ戻ったらしい。

 

「あ、もうこんな時間。そろそろ戻らないとバスが出発しちゃう」

 

「アタシらは先に戻ってるから、あの二人の回収、すーちゃんに頼んだ♪」

 

「任せとけ!おーい、向坂ー、ちー!もうそろそろ撤退しないと都心に置き去りだぞ~!」

 

鈴は心の中でいっその事、都心で二人きりにしてしまえばもしかしたら色々進展するのでは、とは思いつつもそんな二人がいない日々が少し耐えられそうになかったので、大声を出して、追いかけっこに夢中になっている二人を呼びに近くまで駆け寄っていった。

 

 

それから、数分後。全員がバスの中へ戻り、バスが東京から秋田への帰路に着いた時、彼等パソコン部とその仲間達による、夏休みの楽しい東京旅行の旅が終わりを迎えた。密かな恋が芽生えだした者達、まだ見ぬ恋を待ち続ける者達、気が合いつつも中々意見の合致しない堂々巡りの恋を送る者。そんな彼等がこの先どのような恋物語を紡いでいくのか。我々も決して目を離さず、見守っていくことにしようではないか。これからの彼等の行く先に幸あれ。

 

 

「次回は再び日常回に戻るぞ。先ずは我々も明日に備えて休もうじゃないか」

 

                                                                   Shift12 To be continued...

 

 

Next Shift...

 

『次回、パソコンのある日常第11話!』

 

『違う。次回、パソコンのある日常第13話「夏休み-地獄編-」。如何にも続編っぽいタイトルだけど休息編とは全く関係ないエピソードですってよ、奥さん』

 

『偶には、視点変えて、行ってみようか』

 

『誰なんだよ』

 

『紗々由デスケド?』

 




水着の種類もあんまり知らなかったりする。なので、敢えて全員出さなかった。

服の名称覚えるのムズイ……けど、資料集め頑張る。

皆様、待望のSAOも同時更新ですよ。ささ、お納めください。
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