パソコンのある日常-Daily lives of there's a personal computer-   作:海色 桜斗

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地元ネタはディスった方が面白い


Shift13「夏休み-地獄編-」

――前回の次回予告で、鈴が「視点を変えて」と言ったな?あれは嘘だ。

 

 

 

「あ゛~暑ぃ・・・・・・」

 

時刻は只今、午前7時。いつもならこれより一時間遅く目が覚めるはずなのだが、最近の真夏の本気の出し方は異常すぎる。言うなればまさに、青空に殺される、だ。夏特有の雲一つない晴れ渡った空の下、遮蔽物こそ周りにあるが、日の光は当然高い位置からダイレクトに部屋に差し込んでくるわけで。部屋の中が一時的に地獄と化すのだ。

 

「・・・・・・仕方がない、起きよう」

 

既に汗だくになった身体をスッキリさせるため、服を脱ぎ、風呂でシャワーを浴びる。この時期は冷水で浴びても逆に気持ちがいいのが本当に助かる。ついでに目を覚めるしね。

 

「へへっ、野郎のシャワーシーンとか誰得だよ」

 

そんな事をぼやきながら、シャワーを止め、バスタオルで濡れた体を隈なく拭きあげる。そして、予め脱衣所に用意していた私服に着替え、そのまま台所へ向かい、朝食を作ることにした。そうだな、今日の朝は久々に向坂家特製のスクランブルエッグでも作るか。

 

「あ、そうだ。その前にエアコン付けなきゃ死ぬわ」

 

卵とボウルとフライパンを用意したところで部屋のエアコンの存在を思い出し、リモコンを手に取って付ける。本当は窓を開けて、換気も同時に行いたいが、なんせこの時期だ。部屋の換気は出来るが、風は全く入ってこず、逆に暑くなるだけなのだ。仕方があるまい。

 

「よォし、ささっと作っちまいますか」

 

まず、用意したボウルに卵を二つ割って中身を入れる。続いて、味付けとして砂糖と塩コショウ(醤油でもOK)を少々。この時、二つの調味料の調整を間違うと、片方の特性に特化した(砂糖なら甘く塩コショウならしょっぱい)余りよろしくない味になるのでご注意を。上手くできたら、かき混ぜて溶く。そして、フライパンに油を大さじ1垂らして火をつける。フライパンが温まってきたら、その中に先程溶いた卵を入れ、少し間をおいてから菜箸を使って、卵がそぼろ状になるまで細かく炒め上げる。卵の表面に焼き色がほんのりとついたら、火を消して、お皿へ。はい、これで向坂家特製のスクランブルエッグの出来上がり。忙しい朝にぴったりの速攻で作れる本格(?)メニューだ。

 

「向坂家の伝統の味だ、お上がりよっ!」

 

と、そんな何かのアニメで聞いたキメ台詞と共にテーブルの上にスクランブルエッグの入った皿を乗せる。まぁ、今は俺一人で他は誰もいないんですけどね。こういうのはノリだよ、ノリ。その場のノリに即対応出来る奴こそ、この世で一番に強いのだ。

 

「ほぅ、スクランブルエッグか。折角の同志のお手製を無碍にも出来んな、頂こう」

 

「おう、別にテメェの為に作ったんじゃねぇけど・・・・・・って、何故いる!?」

 

突然、居間の方から声がすると思ったら何とびっくり。そこにはテーブルに着席し、いつの間にかご飯を盛った茶碗とインスタント味噌汁を入れたお椀を並べて、朝食を勝手に食べ進めている紀郷雄輔の姿があった。俺の幼馴染み一の変人の行動は、やはり理解に苦しむより他にない。

 

「何故、とは愚問だな、My同志・向坂。お前がいるのだ、ならば俺がいても不思議はあるまい」

 

「全然分からん」

 

「やれやれ、察しの悪い同志め。深く考えるな、感じろ」

 

そんなこと言われたって無理なもんは無理である。大体、普段から神出鬼没のお前の行動を全て理解出来る奴があるとしたらそいつはきっともう人間じゃない。石仮面被るよりよっぽど安全に人間を辞められる便利機能・・・・・・うわー、要らねー。

 

「まぁ、いいや。飯はそれで足りそうかー?」

 

「フ、そこまで世話は要らんぞ、同志よ。だが、その心意気には感謝しよう」

 

「そうかよ。で、態々来たってことは俺に用事があるんだろ?」

 

「まぁな。しかし、先ずは朝食を食べ終えてからにしようではないか」

 

雄輔が来たのは予想外だったが、別にそのせいで朝食を疎かにする程、間抜けではない。俺はいつものようにご飯を茶碗に盛り、箸を取り出す。スクランブルエッグは奴に取られてしまったので、冷蔵庫からひきわり納豆を取り出し、テーブルへ持って行った。

 

「ほぅ、納豆はひきわり派か。同志よ」

 

「生粋の秋田県民だしな」

 

「そうだな。兎角、我々の生まれたこの地に住む人々は、挙ってひきわり派が多かったか」

 

誰しもが一度くらいは目にしたことがあるはずの、ひきわり納豆。そう、納豆巻きでよく使われている、細かい納豆の事だ。納豆と言ってもこれ以外に大粒、粒、小粒等がある。皆さんは選ぶとしたら果たして何派だろうか。因みに俺がお薦めしたいのは、「細かく刻んだひきわり納豆」。通常のひきわりよりも更に細かく刻んであるのが特徴だ。是非、お試しあれ。

 

「では、生粋の秋田県民な同志に問う。それに砂糖を入れるとすれば?」

 

「いや、普通入れねぇだろ。番組とかでよく聞くけどほぼデマだぞ、それは」

 

「だろうな。斯く言う俺も、そんなゲテモノは遠慮したいものだ」

 

そして、これは他の県の方にも言える事。今時のその手の番組で紹介する内容は、殆ど大げさにやっているものが多く、実際に現地に足を運んだ際、かえって情報が足を引っ張ることが多い。中には本当にそれに当てはまる人もいる為、一概に違うとは言い切れないのも事実だが。

 

「時に、同志向坂。小説の進行具合は如何か?」

 

「まずまずってところかな。一応、話数的なストックも余裕が出来たし、そろそろ更新するつもりだ」

 

「それはいい事を聞いた。愛読者の一人として是非とも楽しみにさせて頂こう」

 

現在、小説投稿サイトに絶賛連載中のファンタジー系小説は、第10話まで更新済みである。最新話の投稿ももう少しで出来そうなことを此処にお知らせしよう(※この物語はフィクションです。向坂祐都作の小説は実際には存在しません、ご了承ください)。

 

「それで、飯食った後はどうすんだ?」

 

「あぁ、気分転換も兼ねて大曲市に足を運んでみようと思っている」

 

大曲市。中心部である秋田市と比べると魅力ある建物に巡り合えないが(というか、秋田市でもめったにない)、その代わりとして夏の風物詩である「花火」が有名な地区。イベント前・当日ともなると、普段はかなり過疎りまくっているその地にも、他県ナンバーの車やそれに乗った観光客が大勢押し寄せて軽くプチパニックになる。

 

「へぇ、大曲ねぇ。何しに行くんだよ」

 

「それは着いてからのお楽しみだ。同志藤堂も参加するが構わないな?」

 

「ナツさん誘ってるのか・・・・・・何つーか、意外な組み合わせだな」

 

「同志藤堂もお前と同じく幼馴染みの一員なのだからな。無論、繋がっているともさ」

 

まぁ、言われてみれば確かに。いつも飄々として何考えているか分からない雄輔と、常時ニコニコしていて何処かほんのりミステリアスな夏希・・・・・・息が合いそうなコンビではある。そんなに交流が深かったようには思えないが。

 

「と言うかこの組み合わせ・・・・・・まさか、智佳と鈴もいるのか?」

 

幼馴染み同士と言うこの組み合わせ、まさか裏で鈴の奴が糸を引いているのでは。そう思って、辺りを見回すが姿は確認できなかった。流石に、これ以上の侵入者がいるはずもないか。いたらいたで我が家(学生寮だけど)、不法侵入されすぎだろうと。

 

「フ、本来なら誘っていたが、()()()()()だ。何だ、二人に来てほしかったか、同志よ」

 

「いや、別に。それに偶には同性だけで絡むのも悪くないしな」

 

「成程、同志はホモだったか」

 

「違げぇよ、何でそうなる」

 

男同士で絡む事を好む=ホモと定義づけるのは、些か早計過ぎではなかろうか。何だかんだ言いつつ結局は皆、同性同士でつるんだ方が気持ち的にも楽なのである。何、リア充とかパリピは違うかもって?知らんよ、俺は非リア充サイドの人間だもの。

 

「御馳走になった。では、そろそろ行こうか、同志よ」

 

「そうかい。じゃ、適当にフラつきますか」

 

朝食を食べ終え、各々で食器を洗面台の籠の中へ放り込んだ俺と雄輔は、そのままバッグを片手にナツさんとの合流先である駅へと向かう事にした。

 

「あ、いたいた。おーい、二人共~こっち、こっち~」

 

駅前に到着すると、駅の公舎のすぐ近く、人が四人くらい座れそうな中くらいのベンチに、見慣れたひょろ長い体の男子・・・・・・ナツさんが俺達を見つけて手を振っていた。彼女か。

 

「随分早い到着だな、同志藤堂。まだ約束の刻限まで15分程余裕があるぞ?」

 

「いやぁ、ははは。ユウくんと祐ちゃんの二人と遊べるの、久しぶりで嬉しくて」

 

だから彼女か、って!何でこの人さっきから妙に乙女チックな言葉遣いな訳!?くそぅ、何かナツさんが段々女に見えて・・・・・・こねーよ。

 

「やはり凄まじいな、直に陽の属性を持つ者は。そうは思わんか、陰の者」

 

「誰が陰の者じゃい。事実だけど」

 

「やれやれ、そこまで自己理解が早いとは。虚しくならんか、同志よ」

 

「どうせ今更、足掻いたところで何も変わらないしな」

 

もう既に切り替えるべき時を穿き違えてしまったのだ、どうにもならん。一応、高校に入ってから特定の人物以外とも関わるようにしてみたけど。やっぱり俺にはそういうリア充的なスタンスが合わないようだ。人生、何事も適材適所がベストだよ。

 

「と、言っているがどう思う、同志藤堂」

 

「そこは裕ちゃんだからね、仕方ないんじゃないかな」

 

「相変わらず甘いな。俺としては寧ろ変化を迅速に促して然るべきと思うが」

 

「そう言うのはきっと俺等より、ちーちゃんに言ってもらった方が効果あるんじゃないかな」

 

「成程、確かに一理あるな。川知嬢以上に同士向坂と言う男を知っている奴は早々おるまい」

 

おや、雄輔とナツさんの間で何だかとんでもない語弊が生まれている気がする。前にも言ったが、智佳とは幼馴染みなだけでそれ以上でも以下でもないんだぞ。分かってる?

 

「おい、そこのお二人さんよ。電車来るが、乗らんのか?」

 

「何、もうそんな時間か。時が経つのは早いものだな、行くぞ同志達よ」

 

「レッツゴー!」

 

ナツさんの暢気な掛け声と共に俺達は、電車が来ているホームへと向かう。因みに、秋田県では基本的に一部の駅でしか「Sumika」や「ikusuke」等の交通系ICカードの類が使えず、未だに切符頼みだ。俺達は定期券持ってるからそんな手間は必要ないわけだが、仮に定期券に表示されている間の駅より先に進みたい場合は切符が必要になる。これでは、駅中に貼ってある「スイスイ行こうぜSumika」の謳い文句で有名な広告が何の意味をも成してない。兎角、クソ田舎は住みにくい。

 

「そいや、祐ちゃんはこの間ちーちゃん達と東京に行ってきたんだよね。どうだった?」

 

休日だというのにあまり人が乗っていない電車に乗って直ぐの事。ナツさんがこの間の話を俺に振ってきた。あぁ、そうか。ナツさんの事は一度誘ったけど練習試合がどうとかで無理だったんだっけ。よし、ここは土産話でも提供してあげますか!

「当然、面白かったさ。いやぁ、流石は都会だ。こんなド田舎とは大違いだったぜ!」

 

「例えばどんな?」

 

「何と言っても充実した品揃えと供給の多さかな。その分、早く無くなりやすいのが欠点だけど」

 

都会のショップでは如何に早く先行予約をするかどうかで発売日に入手できる出来ないが変わってくる。よっぽどマイナーなもの以外はほぼほぼ売れ残らない、まさしく戦場とも呼べるべき場所。都会のオタク達は日々そう言った戦場を駆け抜けているのだ。日々の憂いから解放される術をあまり多く手にできない田舎民としては、憧れの地と言っても過言ではない程に。

 

「一日目の夜は旅館に泊まったな。しかも、俺等で貸切にしてあったんだぜ?最高過ぎるだろ」

 

「え、凄いね!でも、修学旅行とかでもないのに何で貸切出来たの?」

 

「それが、今回の旅行みたいなもんが尚紀の親父さんからの日頃の感謝を返すって意味でもあったらしくてさ、送迎も何もかも西条産業の提供だったわけだ!」

 

「あー、それはいいねぇ。そんなに楽しかったんなら、俺も行きたかったなぁ」

 

一介の学生には余りある程の充実したプランとサービス。ああいうのはあんまり恩恵を受けすぎると今後の金銭感覚が怪しくなりそうだ。うん、もう既にアニメグッズの買いあさりとかで金銭感覚音痴になりかけているわけだけど。今回のはそう言うのと比較するのも烏滸がましい位には、実にブルジョワジーな体験をさせてもらった。中々、味わえないよあの体験は。もうそれこそ、アニメやゲームの中かよって感じで。

 

「プールも凄かったんだぜ。ほら、よくTVでやってるみたいなデカくて長いスライダーがさ」

 

「わぁ~、それは俺もやりたかったなぁ~。次は絶対一緒に行こう!」

 

「いいぜ、ナツさんなら大歓迎だ」

 

流石に旅館の銭湯が混浴しかなくてそこで全裸の美月先輩と遭遇したことや、プールで水着姿の智佳が何かエロ・・・・・・違う、大人っぽくてちょっとドキドキしたのは内緒にしておこう。

 

「あ、それじゃあ、祐ちゃんは学校卒業したら、やっぱり都会の方に行っちゃうの?」

 

「まぁ、考えてなくもないかな。やっぱり充実したオタライフの為には都会住みが一番だしな!」

 

「そっか、寂しくなるねぇ。俺は卒業してもこっちのほうに残ろうと思ってるよ、やっぱり生まれ故郷が一番住みやすいと思うからさ」

 

ほんの少し未来の話にはなるが、今はこうして一緒に馬鹿やれてる奴らとも頻繁に会えなくなると思うと、何だか無性に寂しく感じてしまう。けれど、そこは考えようだ。逆に言えば時間はまだ1年半もあるのだから。

 

「そいや、将来何になるとか決めてるのか、二人共」

 

「俺は学校の先生になりたいかな」

 

「フ、愚問だな。当然、俺は俺の道を行く」

 

「つまり何になるんだよ」

 

「決まっている、個人事業を新たに立ち上げると言う事だ」

 

うわ、出たよ。常識に当てはまらない奴が考えそうな事を言い放つ癖が。まぁ、コイツの場合は実際にやってのけそうだから特に何も言わんでおこう。触らぬ神に祟りなし、だ。

 

「わ~、ユウくん大金持ちになりそうだね」

 

「あぁ。だが、ツイポで金配りはせんぞ。あれは愚者の行いだ」

 

「あ、それ知ってる。RTする人とか凄く多いよね」

 

「うむ。それだけ今のこの国は一個人としての最低限のプライドさえも捨てれる者が後を絶たぬという事だ、実に嘆かわしい事だな」

 

ナツさんとの会話で話題はさらに変化して最近のツイポ事情についての話になっていた。俺もそれについてはよく理解している。いや、理解していると言うのは多分違う。自分が目にすることが出来る場所で裏取引とは何かみたいなものを間接的に目撃しているかのようなそんな感じ。絶対に理解しちゃいけない奴だ。

 

「運のよい事に俺の同志たちは皆、物分りの良い現実主義者だ。抜かりがないようで安心したぞ」

 

「そりゃまぁ、典型的な類は友を呼ぶが連鎖してるからな」

 

「祐ちゃんに影響されてるところもあるからね、俺等」

 

『えー、間もなく大曲~大曲~。お降りの方は足元に気を付け下さいます様、お願い致します』

 

そんなこんなで話をしていたら、如何やら電車が目的地にもうすぐ到着するらしい。お知らせのアナウンスを聞いた俺達は、それぞれの荷物を確認(というかまだ手荷物一つ持ってない訳だが一応)して無事、大曲駅へと降り立ったのであった。

「さて、先ずは何処に向かうとしようか」

 

「いや、目的地はっきりしてるんじゃないのかい」

 

「何、取り分け急ぎという訳でもない。もし、同志に用事があるならそこを優先しても良いぞ」

 

成程、完全に確定したプランではないと言う事か。じゃあ、折角大曲まで来たのだ。尚紀じゃないがあそこに行こう。

 

「ナン倉寄っていいか?」

 

「あぁ、構わんぞ。何だ、同志向坂の目的はエロゲーか?」

 

「違げぇよ、俺は尚紀じゃねえっつの。ガンプラ見てくんだよ」

 

「ふむ、最近同士がお熱だというアレか。その熱意、尊敬に値するぞ」

 

と、俺がガンバムシリーズに嵌るきっかけを作った人物が宣う。そう、あれは確か小学校高学年の頃。当時にしてみれば昔の遺産と言っても過言ではない、据え置きのゲーム機「ゲームキューブ」でプレイしたガンバムのアクション対戦ゲーム。そのゲーム内で有名な大佐を使ったことでそのカッコよさに惚れこんでしまったわけだ。

 

「ホントは大佐のコスとか着てみたいけど、容姿が名前負けする気がしてな」

 

「何、心配は要らん。よっぽどのケツアゴで無ければ、受け入れられるはずだ」

 

「うーん、でも止めておくよ。今の俺はバアル信者だからな」

 

「真のガンバム好きなら、量産機こそ愛してみせるのだな。そのロマンが分かれば一人前だ」

 

はは、雄輔の奴、龍と全く同じこと言ってやがる。ふーん、量産機ねぇ・・・・・・。

 

「しつもーん、デストロイは量産機に入りますか?」

 

「確かに量産されてはいたが・・・・・・そういう事ではないぞ、同志よ」

 

そっかー、雄輔が言う意味の量産機とは違ったかぁ、残念。個人的に好きなんだよなぁ、デカいし。

 

「お前が一番好きだと言ってた鉄血にも色々いただろう」

 

「あー、その中だったらオルガ獅電かなー」

 

「それも量産機ではないだろう」

 

えぇー、同じ獅電なんだし量産機扱いでいいじゃんかよ。大体、その理論じゃシャア専用ザクも条件に入らんじゃんか。

 

「固有名詞に専用と書いてあるのだから、元の機体が量産機だとしても量産機ではなかろう」

 

「むむむ、俺には何のことかさっぱりだなぁ」

 

そんな事を言いながら、頭の上に?マークを大量に浮かべているナツさんの姿が目に入った瞬間

、俺と雄輔は直ぐに我に返る。あ、しまった、ナツさんを置き去りにしてしまった。

 

「おっと、これは済まなかったな、同志藤堂。つい我々だけで盛り上がりすぎてしまった」

 

「あ、ううん、そんなに気にしなくていいよ。俺もちょっと話聞いてて面白そうだなって思ったし」

 

「マジか、ナツさん!じゃあ、俺と一緒にアグニカの思想に目覚めてみようぜ!?」

 

「あー、ごめん。そこまではまだ嵌っていけないかな~」

 

くそぅ、加入させる事に失敗した。フルメカニクスとHGをそれぞれ一体買うだけでいいから出費としてはそんなにかからないんだぞ、お得なんだぞ!?

 

「では、同志よ。仮に薦めるとしてどのようにする?」

「マッキーの機体全部フルメカで制覇させる。そしたら次は鉄華団サイドのガンバムフレームを」

 

「沼に沈める気満々だな」

 

「仕方ないだろ、一つの沼は掘り進めると必ず何処かで全部の沼に繋がってんだよ」

 

「流石はラボライブと言う名の純度100%の沼に住む者だ、面構えが違う」

 

因みに俺はそれらを大体制覇している。故に、現状の目標は第2期の一番盛り上がったところで出てきたMAのハシュマルである。ガンバムシリーズのMAは総じてプラモ化されることがあまりないのでかなり希少だし、何よりハシュマルは見た目がカッコいい。学生の財布に厳しい、しかし買わねば。

 

「薦められても買わないけどね?」

 

「だそうだ。残念だったな、同志よ」

 

「ちっ、じゃあ、早く彼女作れや」

 

「それは横暴過ぎない・・・・・・?」

 

もうここは正直に言おう。俺等の中で唯一オタクっ気がなく、長身でイケメンなナツさんに何故未だに彼女が出来ないのか。個人的今世紀最大の謎である。まさか、今の女性はそれを持ち合わせてもまだ満足できないと!?くっ、では何だ、何が欲しい?金か、金なら幾らでも・・・・・・あるわけないじゃない。

 

「それで、同志の目的地に到着したが、買っていくのか?」

 

「今回は見るだけかな。流石にプチ遠征後の出費は抑えとかないと」

 

「成程、では俺と同志藤堂も同行しようではないか。別に、R-18エリアを見ても構わんぞ?」

 

「だーから、俺は尚紀じゃねぇって言ってんだろが」

 

その道に嵌るオタクとしては公式の出す正式な値段の物をちゃんとしたところで正式な値段で購入して公式にお布施をしたいところだが、何分ここ秋田にはそういった店舗が非常に少ない。故に、もう発売からそれなりの年数が経ったものは、こうして中古屋を除かなければ手に入る事は滅多にない訳で。うん、今度東京行くときは絶対にお台場のガンバムベースに寄って爆買いしてこよう。

 

「うーん、鉄血のラインナップが少ない」

 

「アレは外伝だからな。主軸の宇宙世紀が多くなるのは仕方あるまい」

 

「わぁ、いっぱいあるね~」

 

ナン倉に入るなり、真っすぐにガンプラコーナーへダッシュした俺だったが、目的の鉄血シリーズの機体があまりなく、既に持っているか値段的に少し厳しいものばかりだった。

 

「では、そんな同志にはPGのユニコーンを」

 

「余計に買えんわ」

 

さて、ここでガンプラをよく知らないよと言う方の為に解説しよう。ガンプラにはHG、フルメカ、RG、MG、ハイレゾ、PGと様々な種類がある。HG・RGが1/144スケール、フルメカ・MG・ハイレゾが1/100スケール、PGが1/60スケールと大きさが異なり、当然の如くスケールが上に行けば行く程、値段が高くなる。雄輔が薦めてきたのはその中でも飛びぬけて高いPGだった。一個2~3万は平気でする。学生の財布で買うには余りにも優しくない価格だ。その他にもメタルビルドだとか色々あるんだが、まぁ、そこは推して知るべしといったところである。そうだね、Umazonで調べてみてもいいかもしれない。

 

「ふむ、買うものがないのであればどうする、他に行きたい場所はないか?」

 

「俺は特にないかな」

 

「あんまり時間潰せてない気がするけど、お前の目的地に行こうぜ」

 

「ん、そうか。では、予定より少し早いが当初俺が伝えていた場所へ向かう。行くぞ、同志達よ」

 

 

「着いたぞ、同志達よ。此処が我が目的地だ」

 

「「・・・・・・」」

 

雄輔に案内された場所を見て、俺とナツさんは絶句した。此処に来るまでの道も宛ら、正式な道を外れた者達の集う場所・・・・・・まるで秘密組織のアジトのような建物。武骨なデザインに頑丈そうな鉄製の扉、中を開けたらどこぞのヤクザが裏取引してるんではないかと思えるほどの不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

「なぁ、雄輔。ここ、本当に一般人が出入りしていい所か?」

 

「安心しろ、同志達。見てくれはアレだが、此処はそういう危ないところ等ではないぞ」

 

雄輔はそう言うが、やっぱりどう見ても怪しさたっぷりだ。廃墟という訳ではなく、建物も割と新しめな感じだが。何と言うか、クソ田舎で偶に見かける、人が住んでるかどうかさえ分からない壁伝いに伸び切った植物の蔓や苔がびっしり生えてる家のような、近づきたくない外装であった。

 

「どうした、同志。外装をずっと眺めていてもアハ体験的な事は何も起こらんぞ?」

 

「知ってるよ、んな事は。ただ、俺の第六感が絶対に入るなって言ってんだよ」

 

「全く、どうしようもない程の心配性だな。こっちだ、ついて来い」

 

俺とナツさんが一歩も前に踏み出せない状況の中、雄輔は至って普通に鉄製のドアをこじ開け、中に入っていく。あぁ、畜生。こうなりゃヤケだ、置いてかれる前に黙って付いて行くしかない。

 

「取り敢えず行こうぜ、ナツさん」

 

「う、うん、分かった。行こっか、祐ちゃん」

 

隣にいるナツさんに声を掛け、俺は雄輔の後に続いて、その扉の向こう側へと入っていった。すまんな、俺の第六感。お前が必死に危機的状況を伝えているというのに、如何やら俺は奴の強引さには勝てないらしい。

 

「鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・って、何ですと!?」

 

「あれ、意外と明るいね」

 

外から見た時に窓が一つもなかった為、てっきり中は真っ暗なものだと思っていたが、意外にも中は電気系統の整備がしっかりと行き届いており、部屋の中を煌々と照らしていた。周囲を見回したが、至って普通の部屋と言った感じでキッチンや洗面所、バスルームまでもが完備されている。玄関とフローリングの境もしっかりしており、俺とナツさんは取り敢えずそこで靴を脱いで上がった。

 

「だから言っただろう、その心配は杞憂だと」

 

「いや、言ってねーだろ。つか、何なんだよ、この建物は」

 

「まぁ、待て。まだ屋内の全貌を見せていないだろう」

 

「はぁ、この部屋以外に行き来できる場所なんてあるのか?」

 

もう一度、部屋を見渡す。それなりの広さがあるとはいえ、別の部屋へ繋がる通路やドアなどはなく、上へ続く階段もない。全貌も何もあったもんじゃないね、全く。

 

「常識に囚われ過ぎるから見逃すのだ。次は此処を降りるぞ、ついて来い」

 

そう言って雄輔は部屋の一角にある床のあたりにしゃがみ込み、そこの一面に付いてあった取っ手を握り上方向へ引っ張る。と、その取っ手の付いた部分が上にスライドし、その下から地下へと続く階段のようなものが現れた。何これ、怖い。

 

「わ、本格的に秘密基地みたいになってきたね」

 

「フ、同志藤堂は物分りが良くて助かる。では、行こうか」

 

男なら誰もが憧れる秘密基地仕様になっている仕掛けを前に、男としての性を刺激されたナツさんは雄輔に続いて、その階段をノリノリで下りていく。いや、確かにワクワクする気持ちは分かるけど。大丈夫だよな、普通に見せかけておいての罠とかだったりしないよな。

 

「・・・・・・ここの通路だけは暗いんだな」

 

「事情故な。多少の明かりのみで申し訳ないが、足元に気を付けて進んでくれ」

 

一体、どんな事情があるというのか。そんなツッコミを心の中で雄輔に言いながら、俺は階段を下りていく。少し先を行く雄輔とナツさんのぼんやりとした後ろ姿を追いかけながら。

 

・・・・・・・どれ程の段数を下りただろうか。先程の部屋のすぐ下から、長い事ぐるぐると張り巡らされた螺旋階段を下り続ける事数分。先方の雄輔とナツさんの後ろ姿が徐々に近づいてきたので、俺もすぐ後ろで足を止める。如何やら、一番下まで下り切った様だった。

 

「長らく付き合わせてしまったな。だが、ここまで同行してくれた事、感謝するぞ同志達よ」

 

「何だよ、いきなり。死亡フラグみたいな台詞言いやがって」

 

「同志向坂がやっているようなノベルゲーならばそれもあり得たが、残念ながらそうではない」

 

「しかし、遂に同志達にも披露することになるとは。少し感慨深いものがあるな」

 

おや、雄輔の奴にしては珍しく勿体ぶっている気がする。マズいな、これは相当とんでもないものだぞ。後で、此処を見られたからにはそのまま返すわけにはいかないなぁ、とかなりそう、怖。

 

「では、行こうか、同志達。余りの驚きで腰を抜かしてくれるなよ?」

 

そう言い放ち、自分の手前にあるドアの取っ手を回し、押す。雄輔の指示のもと、俺とナツさんはその扉の先へ覚悟を決めて入った。すると――

 

『HJSBプロトコル、新規バディ二名、登録完了。システム復元します』

 

機械的な音声が流れると同時にその室内に備わっているであろう照明が全て点灯し、部屋の全貌が明らかとなる。部屋の左右一角ずつに最新鋭のパソコンが累計で10台以上並べられ、隣には何やら謎の機械とプリンターが備えられていて、中央部には大勢が座れそうな大きなテーブルがあり、何よりも一番目を引くのが。

 

「HJSB・・・・・・って何だ?」

 

本格的な組織の秘密基地において、絶対になくてはならないもの・・・・・・つまり、組織名のような謎の略称とそのシンボルマークがでかでかと表示された大型モニターが姿を現した。そして、俺がおの部屋の全ての情報を脳で理解する前に、また新たな要因が紛れ込んで来た。

 

「お、漸く来たね」

 

「人を呼び出しておいて、長らく待たせるなんていい根性してるじゃない」

 

「は?」

 

大型モニターのすぐ横にもう一つ扉があり、それがスライドして、中から二人の先客が姿を現す。その二人の姿を見た途端、俺はかなり意表を突かれた。

 

「あれ、智佳ちゃんと鈴ちゃん?何で二人ともここにいるの?」

 

紛れもなくそれは、俺達幼馴染み五人組の残り二人である、川知智佳と紗々由鈴の二人だった。

 

 

                                                                    Shift13 To be continued...

 

 

 

Next Shift...

 

『2週以上も引っ張った上に最後、オマージュ的な締めとか草も生えん』

 

 

『周囲に敵がいない状況で、この展開はないな』

 

 

『まぁ、最近俺のアプリの存在自体忘れられてたからな。そんなものか』

 

 

『という訳で、次回、過疎地域みたいな県に住む若者はどうすりゃいいですか?第十四話、「ようこそ新生パソコン部へ」。お楽しみにッ!』

 

 

『タイトル変わってんじゃねーか』

 

 

 

 

 

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