パソコンのある日常-Daily lives of there's a personal computer-   作:海色 桜斗

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作者のファッション関連の知識が乏しいことが発覚する回です。

女性のファッションの参考資料ってどういうもんを選べばいいんですかね。キャラクターのイラストとかも書いていきたいと思っているので、執筆してる方がいましたら、衣装関連で参考にしているお薦めのものがあればご教授の方よろしくお願いします。


Shift4「斯くして彼は彼女と出会う」

――さて、ここらへんで元からパソコン部所属だった人物達は兎も角、新しく加入した女性陣の中でも特に印象的な出会いのエピソードとなる、尚紀絡みで仲間に加わった藤林慧巳。彼女との出会いの経緯を例の進撃のゴリラ事件の後日談から振り返っていこう。

 

 

2024/7/20(Sun)

ヅャスコ モールフロア3F ヌクベナルド前

向坂 祐都

 

 

「だから、そこはちげぇ言ってんだろ、常考!」

 

「分かってんよ、ミスったんだよ!これやる前に格ゲーやってたから、ついその操作方法でやっちまっただけだって!」

 

「・・・・・・」

 

どういうわけか出かけ先のとある場所でたまたま二人の友人が激しく口論していたところを目撃した。暇な奴は今すぐヅャスコにGO、俺の友人二名の修羅場が見れるぞ!・・・・・・誰が見るか。

 

「あー、砦破壊された、オワタ\(^o^)/」

 

「くそー、あと少しだったってのに・・・・・・」

 

午前10時を刻む時計。外はまるで真夏を思わせる炎天下。俺は、テーブル席に座って口論したり反省会したりしている偶然出会った友人二人に話しかけるべきか話しかけないべきか分からずに、呆然としていた。よし、ジュース買って出直して来よう。

 

「やはり、ここは平凡に宏鷹でも買うか。お茶はいいよな、お茶は」

 

ピッ、ガコンと軽快な音を鳴らして取出し口に落ちてきた商品。それを取出し、キャップを開けて飲む。ぷはー。俺のHPが少々回復した。

 

「しかし、こう一人でふら付いてんのも何だかだよなぁ・・・・・・。せめて二人のゲーム中毒具合が収まるまで誰かと組みたいもんだね」

 

『兄さんっ、メールだよっ♪』

 

その時、オレのポケコンから可愛らしい声でメールの着信を告げられた。あ、やべ・・・・・・聞かれてドン引きされてないといいけど。取りあえず、メールボックスを開く。すると、こんな内容のメールが届いていた。

 

『いつまで空気と化してるつもりだ、こっち来いや』

 

あぁ、気づいてたのな。てっきり全然気づかれてないのかと思ってたわ。呼び出しがかかったって事は先程の案件はけりがついたって事だな。よし、戻るか。

 

「お、ようやく来たか。遅せーよ、待ちくたびれるかと思ったお」

 

「悪かったよ。で、今日は一体何をしに来てたんだ?まさか、日長ここでPSV2をやっている気か、お前等は?」

 

「いや、そんなんだったら態々外出なんてしねーよ。漏れはそこらへんぶらぶらしてみるつもりぜよ。藍園はどうやら新しく導入されたゲーム機で遊ぶ予定らしい」

 

あぁ・・・・・・またあれか。謂わずと知れたお子様の間で人気のアーケードゲーム《鉄仮面ライド-バトルレボリューション-》。日曜日の朝8時より放送中の鉄仮面ライダーシリーズの歴代キャラクター達が登場し、バトルを繰り広げる。・・・・・・そんなゲームだ。

 

「んじゃあ、さっそくしに行こうぜ!あ、面白いからお前らもやってみないか!?」

 

「待て、俺はあんまりそういうのはやらない主義でね。レアカードだとかそれ系集めるのにかなりの金を要すから無理。経済的にそんな恵まれてないわけ」

 

「悪いが、その手のゲームは乗り気にならんお」

 

「何だよ、ノリ悪ィな・・・・・・」

 

ノリ悪いとか仕方ないだろう。普通はどんなに面白くともそこら辺のガキ共と同じ空間で過ごすことなどできるか。というか出来る訳がない。まず五月蝿いから。

 

「そういう事なら俺は今日別の用事出来てるから解散させてもらうぜ、気が向いたらまた会おうや」

 

「漏れも禿同、書店行っていろいろ買い込みするんでよろしくだお。気が向いたらまた会おうず」

 

「気が向く訳あるかぁ!?見てろ、一人で楽しんでやらぁ、ソロプレイヤー舐めんな!!」

 

背後から修二の捨て台詞が聞こえてきた。仕方がないのだ、それぞれ目的が違うのなら尚更に。ていうか、ソロプレイもなにも筐体ゲームって基本ソロでしょうよ、何言ってんの?

 

 

一人になって歩き続ける事、ほんの数分。ようやく目的地が見えてきた。やれやれ、休日にわざわざ人混みの中を突っ切ってここに行こうと思った自分に労いの言葉を送りたいね。そう、ヅャスコ内の正面入り口付近・・・・・・そこに存在するスゥイーツ天国、《マスタードーナツ》。通称《マスド》に来たというこの勇気を!!

 

「うわ・・・・・・どれだけ待たねばならんのだろう」

 

覚悟を決めて、隣にあった装置のボタンを軽く押した。すると毎度のように待ち番号が書かれた紙が出てくる。俺はそれを手に取り番号を確かめた。紙には『待ち番号 085』と書かれていた。

 

「今の待ち番号から大分先の番号を引いちまった、ついてねぇわ」

 

こうなってしまっては仕方がない。まだまだかかりそうなのでそこら辺を散策する事にするか。しかし、その前にやるべきことがある。俺は人気のない三階へ上り、ポケコンを取り出すと迷わず例の名前の長ったらしいアプリを起動させ、その先の誰もいない空間に向かって声をかけた。

 

「杏」

 

『あ、兄さん。どうかしたの?』

 

と、俺の呼びかけにこたえるかのように今まで誰もいなかったポケコンの画面に一人の少女が突如として現れた。そう、彼女こそ俺のマイシスターエンジェル『火迎杏』だ。

 

現在執筆中の俺の小説に登場するメインヒロインなわけだが、何故公式ですらないのにVRとしてアプリに登録されているのか?実は俺が小学校の頃世話になった友人が最近になって自作3Dモデルを作る凄腕プログラマーと化している事を知り、自作小説のヒロインの原画と設定をびっしりと書き込んだノートをファックスで転送したところ、およそ3日後に俺のYphoneにダウンロードアドレスが送られてきたのでそれをスキャン。そうしたら俺の自作キャラ中でも最もお気に入りのキャラクターである彼女がVRとして俺の限定の特殊なアプリなのだ。そういう意味では作者として割と優越感を感じている。

 

「別段用があるわけではないが・・・・・・調子はどうだ?」

 

『ん、えへっ。大丈夫だよ。心配してくれてありがと、兄さん♪』

 

「そうか。んじゃあ、杏はマスドのドーナツで何が好みだ?好きなものを奢ってやる。」

 

『えっ、ほんと!?やったぁ!じゃあ・・・・・・――』

 

現実にいるはずもない人物に現実のものを奢る。何て無意味な金の使い方だろうか。杏は最初から好感度高めで設定されてあるため、素直に喜ぶ。その笑顔に惚れ、ついつい無意味な行為をしてしまう。それにしても、何で普通に会話が成り立つような形式に出来てんスかね?このプログラム、神だろ。というか声優誰さ。

 

暫くして現実に戻ってきた俺はマスドに向かい、無事目的のドーナツを受け取った。そして、ドーナツを席に座ってもふもふと食べながら、この後どう休暇をエンジョイするか考えていた。すると――

 

「あ、あの~・・・・・・」

 

「ん?」

 

――すぐ横を見ると、とある一人の女性が困惑したような表情でこちらを見つめていた。あれ、この人何時か何処かで会ったような・・・・・・???

 

「・・・・・・(まずい、何も出てこない!ど、どうする!?か、考えろ俺!!)」

 

なるべく早急に思い出せ!思い出そうとして・・・・・・思い出した。そうか、この人はあの放課後のゴリラに追われていた人だ!それで、ゴリラは俺が撃退したと報告したら笑顔で御礼を言われて、その笑顔に見とれていたら名前も聞けず別れてしまったあの人だ!ま、まさか、そんな彼女の席に俺は座ってしまったというのか!?

 

「え、えっと、申し訳ない!まさか自分の座った席が君の座っていた席だとは思わなくて・・・・・・あー、えーと、すぐに撤退するであります?!」

 

「あ、いえ、そうじゃなくてです、ね?あの、この前助けてくれた人・・・・・・ですよね?」

 

自身の憶測で勘違いしてつい謝ってしまった俺に対し、彼女はそういうことではないと親切にも言ってくれた。一月前の話。まぁ、よく覚えてくれていたもんだなと軽く感動すら覚えた。さてさて、その話であるならば事実を語るほかないな。やってみよう。

 

「ん、あぁ、まぁ・・・・・・そうだけど?」

 

「あっ、やっぱりですか?偶然ですね!」

 

そう言って、彼女は微笑み向かい側の椅子に座った。うえ、何このリア充感。いやいや、待て待て!彼女は単にあのゴリラの進撃を止めてくれた御礼してるだけだ。俺に何か気があるとかそういうわけではないだろう。うん、絶対にそうだ!

 

「あ、そういや自己紹介まだでしたな。俺、1-Aの向坂祐都。よろしく」

 

「祐都君、か。私は1-Cの藤林慧巳です。こちらこそよろしく」

 

そして、そのまま彼女と自己紹介しあう。成程・・・・・・C組か。そういえば鳴島もC組だったな。試に奴の事を知っているか聞いてみようかな。

 

 

→1.聞いてみる

  2.やめておく

 

 

「へぇ、C組なのか。じゃあ、鳴島って奴知ってる?」

 

「えっ、鳴島くん?う、う~ん・・・・・・一応知ってはいるけど・・・・・・(汗)」

 

「あれ、もしかして苦手なタイプに含まれてる?」

 

「う、ううん、そうじゃないんだけど・・・・・・どう言ったらいいのかなぁ?」

 

ん、何か凄い返答に困っているようだ。やっぱりこの話止めておこう。やっぱり話の選びようってなかなか難しいもんだな。さて、気を取り直して。どんな話題を振ろうか?

 

 

1.スカイクラッド・オンラインの話題

→2.好きなドーナツの種類

3.進撃のゴリラに関する話題

 

 

「藤林さん・・・・・・でいいかな?ここの店で好きなドーナツとかある?」

 

「ふふっ、慧巳でいいよ。あるよ、えっとね・・・・・・フォン・デ・リングとフレンチかな。祐都君は?」

 

「オレは・・・・・・ゴールデンチョコとココナツチョコだな。あのボロボロが堪らん」

 

「へぇ~、ボロボロかぁ~」

 

おぉ、今度の内容はどうやらヒットしたようだ。よし、巻き返しは出来たようだな。さて、お次の話題は――

 

 

→1.スカイクラッド・オンラインの話題

2.好きなドーナツの種類

3.進撃のゴリラに関する話題

 

 

「慧巳さんはさ、スカイクラッド・オンラインって聞いたことある?」

 

「あ、うん、知ってる知ってる。私、それやってるんだ。祐都君もユーザーなのかな?」

 

「ん、まぁな。渡火って名前で暇があったら上級クエで狩りに行ってる。もしよかったらパーティ組まないか?」

 

「えっ、いいの?ありがと、私まだ弱くて全然なんだけど」

 

「気にしなくていいぜ、気軽に付き合うさ」

 

「ふふっ、ありがと。じゃあ、時間あったらお手柔らかに」

 

成程、やはりスカイクラッド・オンラインはかなりの層に普及されているようだ。一つ楽しみの幅が広がったな。さて、次はどんな話題で行こう?

 

 

1.スカイクラッド・オンラインの話題

2.好きなドーナツの種類

→3.進撃のゴリラに関する話題

 

 

「一応、話題にあげたくないとは思うんだけど、その後例の奴からの進撃はどうなった?」

 

「え、ええと・・・・・・あれからは特に音沙汰なかったよ。暫くは流石の彼でも警戒しているみたいだから」

 

「知っているなら、知っている限りでいいから奴の情報を教えてくれないか。今後の対策にしたい」

 

「う~ん・・・・・・あんまり参考にはならないと思うんだけど――」

 

以下、彼女の要点をまとめると奴の実態とやらはこんな感じだった。

 

仙北夢島高校1年B組所属、出席番号10番の通称《西条尚紀》。中学校が同期だった奴等から変わり者のレッテルを貼られ、入学早々から周囲にハブられた悲劇の男子生徒。だが、そのレッテルは真実であり、彼は正真正銘の《中二病患者》である。そんな中、どんな経緯であるかは知らないがあの日から奴の強行かつ粘着質な、彼女へのストーカー行為が始まったのだという。

 

「成程、そこで俺がたまたま通りかかって奴をモップで撃退したところ、大人しくなったと」

 

「う、うん。あのところで祐都君が助けてくれなかったら本気で何かされてたよ~、絶対」

 

「ふむふむ・・・・・・成程、了解。あの日の真実はこうだったんだな」

 

面白ネタ《夢島高校七不思議(?)その一・放課後のゴリラ》の真相が解明された!

 

新機能《エンカウントコミュニケーション》が解放された!

 

新機能《フリー中二病バトル》が解放された!

 

多分、ゲームならこんな追加情報が入る、ハズ。《フリー中二病バトル》って何ぞや。

 

「ねぇ、ここで会えたのも何かの縁だし、もう少しだけ私に付き合ってくれない?」

 

と、ここで彼女の方から何とも素敵すぎるご案内。据え膳食わぬは男の恥、行きたいのは山々だが。本当にそれ、俺みたいな男が同行しても大丈夫な奴?

 

「いいけど、俺みたいな冴えない男連れまわして大丈夫か?」

 

「そんなぁ、祐都君は冴えない男なんかじゃないよ。知ってる?各クラスの女子の間で話題なんだよ、可愛いって」

 

何故、他のクラスで話題になるのか。確かに、話しかけられたときはそれなりに会話はするようにはしている。だが、可愛いとは。『かっこいい』でなく、そう言われるってことは俺は完全に恋愛対象から除外されているらしい。まぁ、間違ってはいない。こんな男を恋愛対象としてみるなんて、物好きにも程があるしな。

 

「あんまり褒められてる気がしませんけどね」

 

「もぅ、そんなことないよ。現に私だってそう思ってるし」

 

モテフラグ完全に積んでるって事っすか。いいや、逆に考えるんだ。俺を対象から外した地点で同学年の女子達はそうそう悪い男に引っかからない素質を持っていると。将来安泰、実に素晴らしい。

 

「分かりましたよ、ご同行いたしましょう」

 

「ほんと、やった!友達に自慢しちゃおっと♪」

 

上機嫌にそう言い放つと、彼女はメッセージアプリの《RAIN》を開いて、友達同士のグループチャットにその件を書き込んでいた。彼女が送信した途端に沢山の既読がつき、『いいなー』とか『写真送ってー』とか『せっかくだから奢ってもらえば?』とか。まぁ、手当たり次第にいろいろ好き勝手書き込まれてきたわけだ。奢る、奢る・・・・・・ねぇ、資金に余裕あったかしら。

 

「写真撮りたいから隣、いいかな?」

 

「お好きにどうぞー」

 

撮れ高はないと思うなぁ。だって、ほら、俺よりも隣の人の方が輝いてるもの。いや、正確には地味な奴がいるから一層輝いて見える、か。人に深層心理、よく理解してるじゃない、この子。

 

「ありがとう。じゃあ、そろそろ移動しよっか、何処に行く?」

 

何処に行く、と言われましても。何せこの俺、向坂祐都は今の今まで彼女いない歴=年齢という悲しい履歴の持ち主でして。しかも、女性の友達ってのもいなかったものでこういう時どこ行ったら正解なのかイマイチわからんのです。どうしようかなぁ。

 

 

→1.ヅャスコ内を探索しつつのウインドウショッピング

  2.藍園と出くわすリスクはあるが、それを承知でゲーセンへ

  3.慧巳さんにリクエストを訪ねる

 

 

「ここは色々見て回りますか。何やかんや、まだ慧巳さんの好きそうなものとか知らないんで」

 

「うん、いいよ。祐都君の好きなものも良かったら教えてね」

 

「理解されるかどうかは置いといて。まぁ、気が向いたら」

 

無難な感じに漕ぎ着けたとはいえ、いつもの通りに巡っていてはきっと彼女は楽しめないだろう。頑張るんだ俺、ここで経験を積んでおけば今後何かの役に立つかもしれんじゃないか。DT力を最大まで引き上げるんだ!

 

「あ、今流行の新作が出てる。どうしよう、買っちゃおうかな・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

最初に行きついた店は衣服店。流行だとか雑誌で人気のとか、非リアの私にゃよくわからん次元でござる。大体、そういうのはほら、イケメンとか可愛い子が着るからいいんであって、微妙な顔つきの奴が気にするべき案件ではないのですよ。偉い人にはそれが分からんのです。

 

「これ、前に優海が着てた奴・・・・・・でも、優海程スタイル良くないしなぁ」

 

「・・・・・・何でこんなにゼロの数が多いんすかね」

 

それでも、ファッションに関する知識的な物を知っておこうと慧巳さんの行動を見様見真似で色々見てはいるが、駄目だ。月々の親からの仕送り金がすぐに吹っ飛びそうな値段をしていた。これよりゲームソフトとかガンプラの方が安いってどんだけ。公式、もっと貢がせろ。

 

「ね、祐都君はこういうお店で洋服買ったりとかする?」

 

「いや、俺はウニクロとかそういう良心的な価格の所で済ませてますね」

 

「へぇ、そうなんだ。確かに、ウニクロは安くていいの置いてあるし、いいよね!」

 

はい。まぁ、ファッションセンスに難ありな奴が行き着く、オシャレ路線の最後の砦みたいなもんですから。DUも然り。やまむらはウニクロより安いけど独特なデザインが多いんで、そこで買うなら下着くらいかなぁ。

 

「まさかとは思いますが、これを私が奢らなきゃならんのですか」

 

「え?あっ、ち、違うよ!?幾ら何でもこんな高いの買って貰ったら申し訳ないよぉ」

 

「そうっすか。一瞬、破産覚悟しました」

 

こうして、俺の今月の諭吉は慧巳さんの良心のお陰で守られたのであった。本当に誰だよ、男性側が全部奢れ論展開した奴。今と昔じゃ金銭問題が違いすぎるんすよ、バブル程の経済力がいつまでもあると思うなよ。

 

「慧巳さんって、いつもこういう店で買ってるんすか、ブルジョア?」

 

「ブルジョアって・・・・・・そんなんじゃないよ。ただ、偶にこういうのも奮発して買わないと私服のレパートリーがなかなか増えないんだよ」

 

へぇ、女子のオシャレ事情はとにかく金がかかるとはこういう事か。服、アクセサリ、化粧品etc...成程、こういう影の努力に報いる形で我々男子が奢りという名目でサポートしなきゃならんのですな。うん、それは分かったんだけど、やっぱり中にはオシャレに女子と同等位の金かけてる人らもいるんですから、ピンチの時は割り勘でもご容赦願いたい。まぁ、今ここで俺がこんなこと言っても意味はないのは理解しているつもりなんですが。

 

「今着てる服も、ここで?」

 

「ううん、これはDUで買ったんだ。自分では気に入ってるんだけど、どうかな?」

 

そう言って、慧巳さんが衣装全体が見やすいように軽くポーズを決める。肩の部分が大胆に開けられた白のオフショルダーと、そこから覗く素足を魅力的に見せる青色のデニムスカート。どことなく清楚感が漂っており、慧巳さんの雰囲気にかなり合っているコーデをしていた。

 

「何か、慧巳さんのイメージぴったりで凄く可愛い、と思います」

 

「えへへっ、ありがとう。やっぱり自分のお気に入りの服装を褒められると嬉しいな」

 

慧巳さんが何かアクションをするたびに、オフショルダーで丸見えになった肩の部分にアクセントでつけられたリボンが静かに揺れる。うーん、服がいいのは見たとおりだが、元となるのが慧巳さん自身だからこそいいんだろうなぁ、きっと。

 

「祐都君の服も、シンプルでかっこいいよ」

 

「ええと・・・・・・何か、その、ありがとうございます」

 

今、『かっこいい』という言葉にちょっとだけドキッとしたのは内緒だ。俺の服装は黒の細身のジーパンに白のポロシャツ。丁度、腹の部分にあたるところには水色と青色の横線が均等に縦並びしている、実にシンプルイズベストなデザイン。一応、上に藍色のカーディガンを羽織っていたが、今は暑くなってきたので、脱いで袖部分をリボンのように軽く結んで腰に巻き付けている感じ。

 

「もしかして、あんまり服装とか褒められたことない?」

 

「あぁ、分かりますか。元々、ファッションとか詳しくないし、センスもいい方で無かったので」

 

「昔の祐都君を知ってるわけじゃないけど、そんなことないと思うな。大丈夫、自信持って」

 

そんなに知り合って間もない間柄というのに、慧巳さんは優しいな。うん、女性にそこまで言われたんなら、例えお世辞でもそう思っておくのが筋ってもんだ。せっかく此方を立ててくれているんだ、それを無碍にしてしまうなど誰が出来ようものか。

 

「んー、さっきのはまた今度来た時に買おうかな。じゃ、別のお店行こう?」

 

「書店とかどうっすか。ちょっと個人的に見たいものもあるので」

 

問題は先程書店の方に行った鳴島がまだ居座っていないか、である。きっとリア充滅べとか出会い頭に言われると思うんで、出来れば慧巳さんと一緒に行動している今は遭遇したくない。

 

「うん、いいよ。因みに、祐都君はどんな本を読むの?」

 

「一般的な小説はあんまり読まない、というかライトノベルが主流ですね」

 

「そっかー、私は普段そういうの読まないからお薦め教えてくれると嬉しいな」

 

お薦め、か。そうだな、俺が今まで読んだ中でもラノベ未読の方でも大丈夫な感じの奴はそれなりにあったからその中から紹介してみようかな。・・・・・・そんな感じで、慧巳さんと雑談をしながら歩いているとすぐに目的地の書店に辿り着いた。一応、店の中に鳴島の奴がいないかざっと見回してみる。が、奴らしき人物は見当たらない辺り、どうやら用事を終えて何処かに移動済みのようだ。

 

「それじゃあ、早速祐都君のお薦めを教えてもらおうかな♪」

 

「そうですね、これなんかどうですか」

 

俺が慧巳さんに差し出した本のタイトルは『世界終焉と世界録』という王道ファンタジー小説。最近、何かとよく、これよく小説として世の中に送り出せたなって具合の低レベルの異世界転生モノの作品が多いせいでこういう純正のファンタジーがないのが嘆かわしい。俺が初めて手にした時、軽く衝撃を覚えるほどの名作っぷりであった。出来れば今すぐ誰かに布教したいくらいには。

 

「へぇ、ファンタジー系、みたいだね」

 

「知ってるんですか?」

 

「ううん、ジャンルにはそんなに詳しくないんだけど。何となくそんな感じだなぁと」

 

「どうやら慧巳さんは、いい感性をお持ちのようで」

 

小説・アニメ・漫画等々、創作物を書く上で大事になってくるのが、物語上に先の話で重要になる伏線を的確に配置、そして最終回に至るまでの話数でそれらをすべて回収できるか、という事。具体的に表すなら『主人公が何故特別に成りえたか?』や『小説内で起こる事象はどういう経緯で起こされていったものなのか?』である。

 

「読んでて難しいところがあれば、読破した範囲で色々教えますよ」

 

「うん、せっかく祐都君がお薦めしてくれたんだし、買っちゃおうかな」

 

そう言って、彼女は俺が渡した『世界終焉と世界録』の1巻を持って、レジに向かっていった。そ、即決ですか、そうですか。だが、自分のお薦めしたものを実際買ってくれるのは、本当に嬉しい。

 

「・・・・・・いつか、川知ともこんな感じで気軽に買い物出来たらな」

 

ふと、今の学校へ入学当初に再会した幼馴染の一人の女子の姿が脳裏をよぎる。前に話しかけてみたら取り付く島もなかったからなぁ、やっぱり川知と以前みたいな交流を図るには、俺があの件に関して向き合わねばならないみたいだ。

 

「祐都君、おまたせ」

 

「ん、じゃあ目的も果たしたんで次行きましょうか」

 

「そうだね、何処に行こうか?」

 

買った小説が入っているレジ袋を大事そうに抱えながら、慧巳さんが帰ってきた。まぁ、取り合えず気の向くままに色々回ってみよう。

 

 

それから、俺と慧巳さんは時間の許す限り色々な場所を巡った。CDショップ、靴屋、楽器店、ホビーショップ、雑貨店etc...そして、気づいた頃には、既に窓辺のあたりから夕陽の光が差し込み、館内がほんのりとオレンジ色に染めあがっていた。ヤバいな、そろそろ駅まで行かないと帰りの電車がなくなっちまう。全く、田舎は一時間に一本しか電車走らんからやってられんのだ。

 

「慧巳さん、そろそろ帰りますか」

 

「うん、もういい時間になっちゃったし、帰らなきゃ寮の門限過ぎちゃうね」

 

そう言って慧巳さんは、夕暮れに染まった街並みを窓辺に寄り添って見つめる。その瞳には、どこか哀愁が漂っているような感じがした。

 

「今日は私に付き合ってくれてありがとう。祐都君にまた恩が出来ちゃったね」

 

「これくらいでよければ何時でもお付き合いしますよ。時間なら幾らでも空いてる、フリーな身の上なんで」

 

「そっか。じゃあお言葉に甘えて、またお付き合いお願いしちゃおうかな」

 

お付き合い、ねぇ。もし、どっかの誰かさんが聞き耳立ててたなら、真っ先に勘違いしてすっ飛んできそうな言葉だ。本来は、交際以外に『用事に付き合う』とかそういう意味もあるというのに。兎角、日本語というのは使い分けが難しい。

 

「ね、祐都君は寮にの部屋に帰った後、何をするのかな?」

 

「いや、特に用事もないんで、そのまま飯作って風呂入って寝るだけですが」

 

彼女の唐突な質問の意図をよく理解できていない俺は、取り合えず普通に過ごすだけだと伝える。まぁ、もしかしたらその合間合間で小説書いてたり、イラストの練習してたりするかもだけど。

 

「それじゃあ、その、お昼頃に言ってたオンラインゲ-ムの話、お願いしちゃっていいかな?」

 

「あぁ、そういう事ですか。いいですよ、あまり遅くならない程度にやりこんじゃいましょうか」

 

「えへへ、約束だよ♪」

 

慧巳さんのほにゃっとした笑みに思わず見惚れてしまう。更には、アグニカ病の症状も現れてしまった。あれは・・・・・・天使だ。

 

「あっ、修二と鳴島の事すっかり忘れてた」

 

「あれ、一人で来てたんじゃなかったんだ?」

 

「えぇ、まぁ。でも、集まって早々に解散して各自自由に行動取ってたので、一人で来たも同然でしたけどね」

 

一応、ヅャスコに呼び出された手前、連絡ぐらいは取っておこうかな。そう思って、メッセージアプリの『REIN』を起動して、鳴島と修二が入っているグループのチャットに今から帰宅する旨を書いたメッセージを送信した。すぐに既読の文字が入り、返信が来た。鳴島からだ。

 

『お、気付いたらもうそんな時間だった罠。本田の奴、まだ熱中しとるんで俺氏も帰るわ』

 

『成程、そうなればテコでも動かんからな、奴は』

 

一通りの返信を交わした後で、俺は真っ先に隣にいる慧巳さんを見た。うん、今ここで黙って立っていれば確実に鳴島に遭遇し、この現状に対してのいちゃもんを付けられる。時刻は只今16時40分。全力でなくても多少急げば17時15分発の夢島行きの電車にギリギリ間に合う。さて、このプランに彼女は乗ってくれるだろうか。

 

「慧巳さん、今からここに鳴島が合流してきますが、如何いたしましょうか」

 

「うーん・・・・・・電車の来る時間まであともうちょっとなんだよね?」

 

「あと35分程ですね。少し急ぎで行けば間に合うかと」

 

「鳴島君も同じ電車に乗るのかな?」

 

「恐らく。ですが、この微妙な時間差だと、奴は市内の実家の方へ帰るかもしれません」

 

俺と慧巳さんは顔を見合わせる。うん、やっぱり直接口にしてはいないが、鳴島が少しばかり苦手らしい。まぁ、確かに気持ちは分かる。となると、だ。

 

「・・・・・・ちょっとだけ急いで帰ろう!」

 

「OK、了解しましたァー!」

 

こうして、俺と慧巳さんはその場から一目散に駆け出し、ヅァスコ付近の最寄り駅を目指した。うん、これは仕方がない、条件反射みたいなものだ。それに鳴島みたいな妖怪リア充殺しを相手取るよりだったら遥かに慧巳さんみたいな美少女と帰るほうが絶対にいい。だからこその戦略的撤退なのだ、許せ鳴島。

 

『向こうで帰り際に買い物してくから17時電に間に合うように行くわ、またな』

 

最後に、鳴島とのトーク画面にそんな上手い言い訳を残して、俺と慧巳さんは見事電車に乗り込むことに成功したのであった。俺は元陸上競技部だったこともあり余裕だったが、慧巳さんの走りっぷりも中々のものだった。小説に使えそうないい資料が新たに手に入った、そんな一日だった。

 

 

そして、後日。この日に色々と意気投合した体験をしたおかげか、何の部活に入ろうか迷っていた慧巳さんがパソコン部に入部してくれたのであった。この時、既に部活内には尚紀もいたのだが、当初から幽霊部員的な扱いになっていた彼の心配をする必要がなく、慧巳さんは安堵の息を漏らしていた。一応、その時にも色々あったことはあったのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。

 

                                                      Shift4 To be continued...

 

 

Next Shift...

 

時期は変わって、暑い夏!いやぁ、夏ってのはやっぱりいいねぇ。海にプールにレジャー三昧、仲間がいればどれもいい思い出になるイベント尽くしだ。そんな中、俺達のパソコン部と軽音楽部がまさかの楽曲提供の為の交流を図ることになって・・・・・・えぇ、学校で噂になっている超天才少女が軽音楽部に!?というわけで、次回、『噂の超天才少女、現る』。幼馴染の修羅場が見れるぞ!




今回の次回予告の元ネタが分かった人には、300アグニカポイント。

やはり、ロボットアニメはいい。心が躍るね。

一応、次の話ですが、執筆ペースがそれと無く早かった場合、今日中に投稿できるかと思われます。
無理そうなら、9/22(火) 15:00位を目安に投稿しておきます。お楽しみに。
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