H×H イル×メル   作:@れんか

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10話 休息×急速

 

 

「いつまでそこに突っ立っているの?」

 

ゆっくり目を開けるとイルミはベッドに腰かけていた。

私は深呼吸をして向かいのベッドに腰を下ろした。

ギシッと音を立てるスプリングは固くいつも自分が使っているベッドがいかに良いものだったのかつい比べてしまう。

 

「何してるの?」

イルミはクリンと首をかしげながら自分が座るベッドのすぐ横をポンポンと叩いていた。

 

「へ?」

隣に来いっていうこと!?

 

「メルってさ、たまに間抜けな声出すよね。とてもじゃないけど暗殺者には思えない」

「おっ、大きなお世話だよ!」

「なんでそっちに座るのさ。早くおいで?」

「っ」

 

ふいにそんなことを言うのはズルい……。

 

メルは顔を赤らめながらゆっくりとイルミの隣へと座る。

同時にふんわりとローズを主体としたフローラルな香りがイルミの鼻を擽った。

ふと視線を落とすと、真っ白な肌が少し赤みを帯びていた。

 

何緊張してるんだろ?

メルって緊張したらすぐに赤くなるんだよね。

色が白いから本当に分かりやすい。

 

イルミは「はい」と、メルにお茶を手渡した。

「あ、ありがとう」

「久しぶりだから緊張してるの?」

「す、少しね」

 

「ふうん。会うの何年ぶりだろうね?4年?5年?」

「そうだね、もうそのくらい立つね」

「メルの噂はよく聞いていたよ。随分活躍してるみたいじゃない?今じゃエルに続いてルイス家を代表する殺し屋みたいだね」

「エル兄様には及ばないけど、結構頑張っていたんだよ」

 

俯いていた顔を上げてメルは嬉しそうにイルミに笑顔を向けた。

「誉めてあげたいところだけど気を抜きすぎだよね。噂が嘘なんじゃないかって思ってしまう程だよ」

 

メルの笑顔はシュンッと消えてしまいまた俯く。

「うぅ……。ごめんなさい。でも久しぶりに会ったんだからもう少し誉めてよぉ」

 

「んー」イルミは人差し指を顎において、メルのいいところを思い浮かべている様だった。

「あ」何か思いついたのかポンと手を打つ。

 

「メルって綺麗だよね」

「へ?」

 

突然の誉め言葉に驚きまた間抜けな声が出てしまう。

それも自分のことを“綺麗”とはっきりいってくれたことがとても嬉しかったのだ。

メルは顔を赤らめてイルミを見ていた。

 

「容姿もそうだけど中身も。全く濁っていないよね?それって何でなの?多少濁るのが普通だと思うんだけどなぁ」

「何で私が濁っていないってわかるの?」

「メルって相手を殺したらどんな相手でも花を手向けてるでしょ?」

 

確かに私は相手を殺したら白薔薇を添えている。

それは初めて人を殺した時から今まで続けている。

 

亡くなる命があるからこそ自分が生きていけるのだ。

私はただの人殺しではない。

 

自分が生きるために奪ったその命が安らかに天に帰れるようにと、

その命をリスペクトしているからこそ私は今でも花を添えている。

 

白薔薇の花言葉は「純潔」「尊敬」。

どんな罪を犯した人間でも還る時は「純潔」に、

今まで生きてきた人生に「尊敬」の意を。

 

「俺が見てきた暗殺者はメル以外そんなこと気にしない奴らばかりだからね」

「仕事に対しては自分なりにちゃんと向き合っているつもりだよ」

揺らぐことの無い瞳はイルミをしっかりと捉えている。

先程まで恥ずかしがってた少女はそこにはいなかった。

 

「変わった暗殺者もいたもんだね」

私今誉めてもらう流れだったよね!?

なんか誉められている気がしないんだけど!?

 

「もういいよ」

メルは頬を少し膨らませる。

 

「あ、もう一つあった」

「なになに!」

 

「メルといると落ち着くんだよねー」

そ、それは素直にうれしい…・…。

 

「オーラにも表れているよね。限りなく澄んだクリアなオーラだし、親和性が高く柔らかい。今までそんなオーラ性質は見たことがないしレアだと思うよ」

「ありがとう」

 

「ま、殺し屋に必要なの?って疑問に思う所もあるけどね」

一言余計なんだよ‼

 

なんて思っているとイルミは私の首に手を回し抱き寄せる様にベッドに横になった。

「!?」

ギシッとスプリングが軋み私たちの体は少し沈み込む。

 

「もう寝ようよ。俺も疲れちゃったし」

イルミは耳元でささやく。

吐息混じりのその声は妙な色っぽさを感じさせる。

 

「こっ、このまま寝るの!?わっ、私向こうのベッドに行くよ!」

「なんで?」

「なんでって、ベッドが2つあるんだし……」

 

イルミは腕の力を緩めるつもりはないらしく、私の先ほどの言葉完全にスルーされた。

 

離れないと……。

心臓の音が聞こえる……‼

 

「メルって昔から良い匂いなんだよね」

ふいにスッと顔を近づけてくるイルミ。

私は緊張して固まってしまう。

 

確信犯なんじゃないかと思ってしまうほどのイルミの行動に私はいちいち胸を高鳴らせた。

しばらくしてイルミから寝息が聞こえてきた。

 

私は少し上を向きイルミを見上げた。

長い睫毛は閉じられており、その姿はまるで彫刻の様に美しい。

 

規則性のある寝息を聞きながら自分も瞳を閉じるとメルは深い眠りへと落ちていった。

 

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