しばらくしてイルミは瞼をゆっくりと開く。
自分の腕の中で眠るメルはスゥスゥと寝息を立てている。
「無防備。マイナス50点。こんな所誰かに襲われたら死ぬよ?」
耳元で囁くと「んん……」と声を漏らすメル。
流石に起きるのかと思いきや、メルはイルミの背中に回していた手を強めて更に体を密着させる。
「イル……ミ……」
寝言で自分の名を呼ぶメルを見てイルミは胸の奥が熱くなっていた。
「俺の夢でも見ているの?」
ゆっくりと頬に手を添える。
白く陶器の様な滑らかな肌は触れると心地良かった。
メルの長い睫毛が影を落とす姿が色っぽく感じさせた。
そしてイルミは優しくメルの額にキスを落とす。
メルは俺の中での“特別”
キルアのことは家族として大事にしているけどメルはまた別。
昔からメルが傷ついたり危険な目に会うのがなぜか嫌だった。
他人に傷つけられるくらいなら縛り付けて誰の目にも晒されない様にとも考えたこともあった。
まぁ、それは妹馬鹿のメルの兄エルやラルがいる限り無理と結論が出て以降諦めた。
俺がメルに対して抱いているこの感情の名は“愛情”。
始めは病気かと思った。
心臓が痛くて締め付けられる様な感覚。
それを感じるのはいつも、メルの事を考えている時だった。
我ながら情けない。
こんな感情ごときでこの俺の行動や考えを簡単に変えてしまうのだから。
メルを縛り付けて置くことが不可能ならば、メル自身が自分の身は自分で守れるように、“最高の暗殺者”に育て上げる方が余程現実的。
だから俺は手塩にかけて昔から厳しくメルを育ててきた。
今はメルを守るルイス家の者はいない。
なら俺がメルを守ってあげる。
誰にも傷つけさせはしない。
メルを抱く手につい力が籠る。
するとメルはむにゃむにゃと寝言を言い始める。
「……ミ……、すき」
イルミがその言葉を聞き逃すはずはない。
ん?
今好きって言ったの?
そういえばヒソカが言っていたな。
メルに好きな人がいるって。
俺の知らない所でメルが知らない男に笑いかけその男のものになるのなんて許さない。
メルは俺のもの。
誰にも渡したりはしない。
今すぐにこの欲望を吐き出してしまいたいけど今はその時ではない。
それよりも先にやることがある。
まずは、その男を見つけ出して殺してしまわないとね。
窓から差し込む光がちかちかとメルの顔を照らす。
メルは重い瞼をゆっくりと上げる。
すると徐々に昨日の出来事が思い出される。
そうだ!私昨日イルミと一緒に寝ちゃったんだ!
なんて思っていると「おはよ」と、上からイルミの声が降ってきた。
メルよりも先に起きていたイルミはベッドの端に座り携帯を片手に、メルを見下ろしている。
「お、おはよう」
「よく寝ていたね。メルってば全く起きなくて驚いたよ。暗殺者なら寝てる時こそ警戒しなきゃね」
イルミの匂いがして、温かくて、安心して眠れた、だなんて言えない……!
「何でだろうねぇ、なんだか昨日は特別よく眠れたんだよねぇ」
ハハハと笑いながら誤魔化すメル。
「ふうん。それより、次の会場にそろそろ着くみたいだよ。顔洗っておいでよ」
「え!そうなの!?早く言ってよ~!」
メルは飛び起きてすぐに支度を始めた。
部屋の窓から顔をのぞかせると、大きな高い塔が見えている。
どうやら次の試験会場はあの塔で行われるみたいだね。
「そろそろ顔変えておこうかな」
「毎回思うけど痛くないの?」
「ん?そりゃ痛いさ。メルもしてあげようか?あまりその顔を多数に晒さない方がいいし」
「いや遠慮しておくよ‼」
メルはブンブンと首を横に振った。
「そ?」
と返事するとイルミは容赦なく自分の顔に針を刺していく。
するとブクブクと顔が変形しあっという間にイルミはギタラクルへと姿を変える。
準備が整った二人は仲良く並んで飛行船を降りる。
すると周囲からは好奇の目を向けてくる。
「ねぇ、イル……、ギタラクルさぁ、もうちょっとまともな顔はなかったの?」
「ん?いいじゃないこれで。誰とも被らないし」
「まぁその顔は被らないと思うけどさ……、まぁギタラクルが良いのならいいけど」
カタカタという奇妙な男と美少女という不思議な組み合わせに周囲は動揺していた。
キルアは遠くから心配そうにメルを見ていた。
メルはキルアの視線に気づき、ひらひらと手を振ると顔を赤くさせながら小さく手を振り返す。
「か……かわいい」
「いいなぁ、俺もしたい」
「ギタラクルはだめだよ。その容姿だしキルアにも少し引かれてるよ?」
「酷いなぁ、やってみないと分からないでしょ」
そう言ってギタラクルはメルと一緒にキルアに手を振った。
するとキルアはぴたりと固まり困惑した表情をしている。
「ほらね!」
「キルアもまだまだだね。あんなに分かりやすく態度に出すなんてさ」
「いや仕方ないよ」
メルは少し笑いながらギタラクルを見る。
にしても、次の試験はどんな内容なんだろうか。
この高さの塔だ。
多分下に降りるのが目的だと思うけど……?
メルはスゥと深呼吸をした。
ハンター試験が始まってから私、わくわくしてる。
未知の世界に飛び込むこの感覚は、新しい分野の本や参考書を見つけた時の高揚感と同じ感覚だ。
ハンターとはこの感覚を常に味わっていけるのかと思うとぞくぞくする!
イルミは楽しそうに笑うメルを見て目を細めるのであった。
イルミとメルの絡みをもっと書きたいのですが書き込めばR15ではおさまらないので我慢です。
見たい人いればコメント下さい♪