目の前にはまた大きな鉄の扉が道を塞いでいた。
3人が扉の前まで立つと、どこからかリッポーの声が響いた。
「この扉の先ではまた一人試させてもらうよ。先ほど戦ったヒソカではなく、残りの二人のうちどちらかに、この先にいる猛者を倒してもらう。時間は何時間でもあるんだ。よく話し合って決めるといい。どちらが戦うか決まればその者が扉を開けること。では、検討を祈る」
ギタラクルはクルッと反転してメルを見た。
「メル、どうする?あの話しぶりじゃ、この扉をクリアしても同じように戦闘を強要されるだろうね。どうせ後で戦うことになりそうだし、俺は今でも後でもどちらでもいいんだけど」
「じゃぁ私が先に行くよ」
「……分かった。メル、油断はー…「しないから大丈夫!」ギタラクルが言い終える前にメルは言い切った。
そしてメルは扉を開けた。
すると再びリッポーの声が響く。
「よく決心した。受験者メル、先へ進みなさい」
扉の先には、空間の中央に円形状に作られた広場へと繋がる一本の細い道が繋がっている。
その周りはそこが見えないほど深い絶壁。
メルはリッポーを指示通りに細い道を歩き広場へと足を進める。
すると今まで歩いてきた道が跡形もなく崩れ落ちる。
「メル以外の後の受験者には別の道を用意してある」
ヒッポーが言い終わると、地響きを立てながら新しい道が出現する。
ヒソカとギタラクルは躊躇なくその道を進むと、少し広いスペースになっており、中央で戦う者を鑑賞する為の椅子まで用意されていた。
席に座るとメルが戦う姿が一番よく見える位置である。
中央広場とギタラクル達がいる小さなスペースとの間は干渉できない程の距離があり、外野席からメルを助けることは不可能であることをギタラクルは悟った。
二人が席に座ってしばらくすると、メルが立つ方とは反対の扉からぞろぞろと大柄な男たちがやってくる。
全員手足には手錠をかけられている。
見たところ囚人のようだけど……?
「メル、君には今から囚人100人と戦ってもらう!全員が死刑囚になるような極悪人だ。遠慮なく君の実力を出し切ってくれたまえ。ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になるまで戦うこと!」
本当に、分かりやすくて助かるわ。
すると今まで囚人たちの手足の自由を拘束していた手錠たちは乾いた音を立てながらすべて外れていく。
「質問だァア!もし俺たちが勝てばこの女を好きにしてもいいのか?」
男たちはメルを見ながら嫌らしい目つきで舐める様に見ていた。
「生きるか死ぬかの戦いになる。戦闘不能にし、その後どうするかは勝者が決める権利がある!つまり、お前たち囚人が勝てば好きにしても構わないということだけ伝えておこう。メル、やめるならば今だ。試験を続行するかね?」
メルは満面の笑みで「えぇ、もちろん」と答える。
「そうか。では検討を祈る」
リッポーの声が聞こえなくなるなり、男たちは一気に騒ぎ始める。
「女ぁ!俺たちが勝って何度も天国にイかせてやるよ!!」
「ありゃ上玉だなぁ!本当にとことん運がねぇぜ?俺たちに死ぬまで可愛がられるなんてよ!」
全く……、下品な人たちだな。
なんで私に勝てると思っているんだろうか。
「私に勝てば好きにしてもらっても構いません。代わりに私は貴方方の命をもらいます」
メルは右手を前へと突き出すと、念で作り上げた刀を具現化させた。
刀身から柄まで美しい純白な刀は怪しい光を灯しているように見えた。
ヒソカは目を輝かせながらその刀に釘付けになっていた。
「へぇ、メルは具現化系なんだねぇ。それにしても美しい刀だ」
囚人たちはメルの手に刀が握られていることを視認した。
瞬きをすると、さっきまで目の前に立っていたはずのメルは姿を消した。
「どこだ!?どこにいった!?」
辺りを見渡す囚人たちは、今まで視認していた人間が一瞬のうちに消えたことに同様していた。
メルは足にオーラを集約させて、常人では追えない程のスピードで上空へと飛び上がっていた。
そして地上へ降りた頃には、刀の間合いにいた囚人の頭部がコトンと冷たい地面へと落ちていた。
それと同時に激しく吹き上がる血しぶきは囚人たちの戦力を喪失させるには十分であった。
「なにが起きているんだ……」
囚人たちは目の前で起きていることを理解することができず、ただただその光景をぼんやりと眺めていた。
メルは舞うように刀を振り下ろしその度に数名の頭を胴から切り離してゆく。
5分が立った頃には、血だまりと肉塊の上にはメルだけがぽつんと立っていた。
ヒソカは興奮して息を荒げていた。
「いい、いいよメル!君、最高だよ♡」
ギタラクルはそんなヒソカを見てまた深いため息をつくのであった。
メル、ヒソカに念能力を見せたことはいただけないな。
でもまぁ、その念刀だけしか能力を使わなかっただけよしとするか。
お蔭で君が、具現化系の能力者だと思っている様だし。
「メル、まさか君が全員を倒してしまうとは思ってもみなかったよ。全員が死刑囚だから死の責任を感じることはないよ。さぁ、次の扉へと進みなさい」
壁にはまた、大きな鉄の扉があった。
ギタラクルとヒソカは別の通路からメルと合流する。
「おつかれ」
そう言いながらギタラクルはメルの顔に付いた血をふき取る。
「随分と楽しい時間だったよ♢」
「それはどうも」
「では次の扉には、最後の受験者ギタラクル。君がその扉を開けるんだ」
「はいはーい。……ヒソカ、分かっているよね?」
ギロリとギタラクルはヒソカをにらみつける。
メルには手を出すな?だろう♡
「分かっているさ♡」
「イル、……ギタラクル!頑張ってね!」
そういうとギタラクルはメルの頭にぽんと手を置く。
「俺がクリアできない筈がないでしょ」
ギタラクルは重たい鉄の扉を開けるのであった。