扉の先は上下左右ガラスの壁で囲まれた部屋になっていた。
メルの時と同様に、この試練を受ける者と観戦する者とで道が分かれている。
「じゃぁ行ってくるよ」
ギタラクルはガラスの部屋へと足を踏み入れる。
メル達は観戦者用の道を進むと、また小さなスペースがあり石の椅子が2つ用意されてる。
ギタラクルが部屋に入るとまたリッポーの声が聞こえてくる。
「ギタラクル、君には15分の間この部屋に仕掛けられた色んな罠を全て避けてもらう。一つでも当たれば死に直結する罠もある。さぁ、どうする?」
「もちろん受けるに決まってるよ」
「いいだろう。では、検討を祈る」
すると突然ギタラクルの背後から鋭く光る電撃が飛んでくる。
ギタラクルは華麗に避けるも次は着地した足元目掛けて沢山の針の嵐。
息つく間もなく繰り返される罠。
普通なら初めの電撃で感電して終わる所だが、暗殺者界を代表とするゾルディック家長男がこの程度の罠を潜り抜けられない筈がない。
全てを華麗に交わしていく。
その様子を見てメルはホッと胸をなでおろした。
ヒソカはにこにこしながらメルを見ている。
その視線に流石に耐えられなくなりメルの方から口を開いた。
「何ですか?」
「さっきの、君の能力があまりにも美しかったから少し驚いていたんだ。刀をわざわざ具現化させたってことはあれ、ただの刀じゃないでしょ?少し教えてよ♧」
「誰かに自分の念能力を見せる筈ないじゃない」
「でもイルミは知っているんだろう?」
「まぁね。だって私に念を基礎を教えてくれたのはイルミだったからね」
クク、イルミが教え込んだ子かぁ。
つくづく興味が湧いてくるよ♡
「ゾルディック家とルイス家って暗殺者の家計同士なのに随分と仲が良いんだねぇ」
「お爺様同士が仲が良くてね。今は協定を結んでる」
「そこは教えてくれるんだ♡」
「知られてても不利になることはないからね。私も、少し聞いていいかしら」
「なんだい?」
メルは少し顔を赤らめながらヒソカを見ていた。
「私イルミと4,5年くらいあっていないの。その間貴方は毎日でないにしろ数回はイルミと会っているでしょう?その……、イルミとどんな所に行ったとか、どんな表情をしてたとか覚えてる限りでいいから教えてくれないかしら」
ヒソカはまた喉を鳴らす。
「やっぱりメルはイルミの事が大好きなんだね♡」
「なっ!ま、まぁそうなんだけど……」
ヒソカに知られてても別に問題はない。
それよりヒソカからイルミの話を聞きたい。その気持ちの方が勝っていた。
「いいよ、教えてあげる」
あぁ、可愛いなぁ♡
僕のこんな言葉で目を輝かせるなんて。
君本当に暗殺者なの?って、つい思ってしまうよ。
「イルミとは5年前ヨークシンって言う街で初めて出会ったんだ。とても美味しそうで楽しそうな香りに釣られて路地裏にこっそりと入ったらそこにイルミがいたんだ。僕を品定めするかの様なあの目は堪らなかったよ♡その間に肌に突き刺さるような鋭い殺気も出してくれていたからね」
「仕事現場を見ちゃったんだね」
「そうみたい♤」
「仕事現場で顔まで見られた場合、相手を殺すという決まりがあるの。なのに殺さなかったということは何か取引でもしたの?」
「その通り。僕と戦ったら自分は怪我をするのは確実だから取引をしようと持ち掛けられたんだ♡」
イルミがそう判断したということはこのヒソカという男……相当強いということ。
一体どんな念能力を使うんだろうか。
「どんな取引を?」
「お互い困ったことがあれば協力する、協力者という関係を結ぶっていう取引さ。案外これが便利でね。メルは僕が殺しを楽しむことは知っているだろう?強者がどこにいるか、何人いるか情報をイルミは渡す。僕は仕事で人数が必要な時に駆り出される特別要員☆僕としては美味しい取引さ♡」
「なるほどね。イルミは随分とヒソカの能力を高く評価してるみたい」
イルミが仕事で他人と組むなんて……!
「嬉しい限りだよ♡僕としては君とも取引をしてもいいんだけどね」
「私と取引?」
「そう♡君はイルミが好き。僕はイルミの情報を渡すし、なんならくっつける手助けまでしてあげてもいい♡それに君が困っていれば助けてあげる」
「なっ、何でそんな取引を急に……」
「僕は気に入った相手でないとこんなことは言わないよ♤僕はイルミと同様に君のこともお気に入りになってしまったからね」
「私は何をすればいいの?」
「そうだなぁ、僕と友達になってよ♢」
予想外な言葉が出てきた為メルは「はぁ!?」と大声を上げた。
「とっ、友達!?」
「そう♡」
もうヒソカが何を考えて何を企んでいるのか全く分からない。
もしかすると何も考えていないのかもしれない。
本当に奇術師の様なつかみどころのない人間だな……。
にしても、友達になるくらいでイルミの情報が手に入るのならば安い!!
「いいわ。友達になりましょう」
「取引成立♡」
メル、気づいているかい?
“友達”っていう言葉は君が考えているよりも相当厄介なんだよ♢
これからよろしくね、メルチャン♡
その頃、ギタラクルは相変わらず美しいフォームのまま華麗に罠を交わしていた。
時折観戦席から見えるヒソカとメルの様子を伺う。
メルってば警戒心なさすぎ。
あんなにヒソカと話をするなんて。
ヒソカもヒソカだ。
あれだけメルには手を出すなと言っておいたのに。
協力者の関係を切ってもいいくらいだ。
あの時は仕事中だったしその後も仕事を何件か抱えていたから取引を持ち掛けたけど、いつでもヒソカを切ってもいいんだよ?そしたら困るのはヒソカの方じゃない?
俺が裏ルートで手に入れた情報があってこそヒソカは自分の欲を満たしてこれた。
それと天秤にかけてもどうやらメルに対して興味を示している。
全く困ったものだ。
すると終了を告げるブザーが部屋中に鳴り響いた。
「終了だ。……まさかこの部屋もクリアしてしまうとは。君たち三人はどうやら“特別”の様だ。さぁ、先へ進みなさい」
ギタラクルは速足でメル達と合流する。
「ギタラクルお疲れ様!流石に傷一つないね!」
「まあね。メルはヒソカと楽しそうにしてたけど何の話をしていたの?」
メルは少し肩をびくつかせる。
「君の話をしていたんだよ♤あまりにも綺麗に避けるから見入ってしまったよ」
ヒソカ……あなたナイスフォロー!
「……ふうん」
「さ、次の扉へいこう!」
鉄の扉を開くとまた薄暗い道が続いていた。
メルたち三人は再び暗闇の中へと姿を消してゆく。