「俺たちにとって楽勝すぎたねー」
ギタラクルは壁にもたれかかって気怠そうな表情をしていた。
「本来なら私たちが通った道はハズレの道だよね。他の受験者にあの道はかなり厳しかっただろうね」
メルはギタラクルの足元で膝を抱えて座り込んでいた。
キルアやゴン達があの道を引かなくてよかった。
キルアはともかく、ゴン達には恐らく無理だ。
あんな道があるくらいだ。他にも危険な道が用意されていても可笑しくはない。
皆無事に合格できればいいんだけど……。
「あと66時間もあるね。何して暇つぶししようか♡」
ヒソカはどこか楽し気に笑顔を見せている。
対照的にギタラクルは面倒くさいと言わんばかりに眉間にしわを寄せる。
「俺は寝るよ?」
「クク、君は相変わらずマイペースだね」
「私も休ませてもらうよ。休める時に休んでおかないとね」
メルはう~んと伸びをして瞳を閉じる。
その言葉を聞きギタラクルはクリンと首をかしげる。
「メルも寝るの?」
「まさかハンター試験で人を殺すなんて思ってなかったからね。もしかしたら次の試験内容はもっと過酷かもしれないから今のうちに休ませてもらうよ」
「ふうん、わかった」
短く返事するとギタラクルはメルとヒソカの間に腰を下ろした。
「クク、心配性なんだから♡僕は何もしやしないよ♢」
「メルはたまに抜けてる所があるからね。さ、寝よう~」
ギタラクルはそういうと早々に瞳を閉じる。
メルは少し顔を赤らめ、次第に眠りに落ちていく。
その様子を見てヒソカは「クク」と喉を鳴らした。
本当にメルと仲が良いね、イルミ。
君は自分の感情に気付いているのかな?
感情は暗殺者には必要ないといつも言っていた君がその感情に振り回されている。
それも一番やっかいな“愛情”とはね。
いつかイルミとも戦いたかったけどいいシチュエーションが思いつかなくてね♡
メルとイルミをくっつけて、今以上に更に強固な関係を結ばせて、昔から大事にしていたメルを殺されたら君はどんな顔をするだろうか。
あぁ、想像しただけでゾクゾクするよ♡君は恐らく前回とは違って協力関係を結ぼうだなんて言いはしない。必ず僕を本気で殺しに来てくれるだろう?♡
メルと戦うのも楽しみだけどその後にもちゃんとイルミという極上のお楽しみが待っている。
「一度で二度おいしいとはこのことだよね」
ペロリと舌なめずりをしながらヒソカは、一人でトランプを積みかねて遊ぶのであった。
それから4時間が経過した。
扉が開く音がしてメルとギタラクルは目を覚ますとツルツルの頭をした男が「クソッ!一番じゃないのかよ」と言いながらやってきた。
「メルおはよう。ちゃんと起きれたんだね」
「さっ、流石に起きるよ!」
「ふうん、昨日は何しても起きなかったからこんなのでやっていけるのか少し心配してたんだよね」
ん?
今“何をしても”って言った!?
「何かしたの!?」
「……ん?さぁ?」
何!その間!!
わーわーと騒いでいるメル達を見てハンゾーは少し顔をしかめた。
あの三人、特別やべぇ。俺は鼻が利きすぎる方だからな。
血の匂いがぷんぷんしてきやがるぜ。
どんな道を通ってきたのかは想像できるが……、問題は誰も傷一つ負っていないことだ。
この匂いに対してなんで誰も傷がない?
それはこいつらがが化け物だってことを現している。
あんな華奢な女の子までいるのに恐らく俺よりも実力は上だろう。
ったく、嫌になるぜっ!!
ハンゾーは「ちっ」と舌打ちをする。
すると何時間かおきにぞくぞくと合格者たちが集まっていく。
そして、試験終了3分前の知らせをビーンズは告げる。
「まだキルア達が来てない!!」
「まぁ、ここで脱落するならそれは実力がなかった。そういうことだよ」
キルアのことを大事にしている癖にこういう時はやけに冷たいんだから。
でも本当は心配しているんでしょ?
さっきからまだ開いていない扉をずっと見てるし。
するとボロボロになったキルア達がようやく到着した。
メルはキルアを見るなり駆け出した。
「心配したよキルア!」
「ワリィ!あ~、危なかった~!!」
「凄く汚れているけど一体どんな道だったの?」
メルはぽんぽんとキルアの土埃を払う。
「いや本当に大変だったんだぜ!?多数決の道ってところだったんだけど、意見が合わないわ誰かさんが女に鼻の下伸ばしたお蔭で時間なくなるわでほんと参ったよ!!最後は全員通れるが長く険しい道を行くか、短くて安全な道だけど一人しか通れないかまた選ばされたんだ!」
「皆いるから長くて険しい道を選んだんだね。だからこんなにボロボロに…」
「違う違う!ゴンのやつがとんでもないこと言い出したんだ!長く険しい道に全員で入って、壁をぶっ壊して隣の短くて安全な道を来たんだ!壁をぶっ壊してた時にもう汗だくでさ、だからこんなになってんの!」
「フッ、なんだか楽しそうだね」
「楽しいもんかー!こっちはハラハラしてたんだぜ!!」
悪態をつきながらも楽しそうに何があったか話すキルアの姿を見て口元が緩んだ。
いい仲間に出会えたんだねキルア。
この仲間はきっとキルアを助けてくれるよ。
キルアは昔から同年代の友達を欲していた節があった。
でもゾルディック家には必要ないとイルミに教えこまれていたから誰一人としてキルアに友達はいない。
ルイス家とゾルディック家の大きな違いとして、ルイス家はその血を受け継ぐ者たちが主となり自分たちが選んだ部下を付ける。ゾルディック家の様に執事はいないけど彼らがその役割を担い、その関係性はもっと分け合いあいとした言わば“友人”や“仲間”と呼ばれる類に等しい。
でもゾルディック家にはその様なものはいない。
私には年も近いイリア達がいてくれたからキルアの様に寂しさをあまり感じなかった。
でもキルアは違う。
きっとずっと寂しかったはずだ。
今こうして笑っているキルアを見ると心から安心する。
良かったね、キルア!
「メルはどんな道だったんだ?」
「ん?私の道は暴虐の道って名前だったよ」
「ぼっ、暴虐って……。ろくな道じゃなかったのは確かだな」
すると第三次試験終了のブザーが鳴り響いた。
「第三次試験終了。通過人数25名」
アナウンスが入るとコンクリートでできた扉が開き、そこからは朝日が差し込んでいる。
ともかく、無事に全員クリアできてよかった!!
次は一体どんな試験なんだろう!
メルは期待に胸を躍らせながら光の中へと足を進めた。