「ところで、最終試験は一体何をするのでしょう?」
サトツを始め、他の試験監督者もそのことを知らなかったのだ。
「ふむ。それじゃが、一風変わった決闘をしてもらうつもりじゃ。まず10人それぞれと話がしたいのぅ」
ネテロの話を聞き、ビーンズは受験者達にアナウンスを入れる。
「受験者の皆様にお知らせします。これより、会長が面談を行います。番号を呼ばれた方から2階の会長室へとお越しください。まず、受験番号44番ヒソカさん」
ヒソカの名前を聞いてゴンは体を固くする。
メルはそんなゴンの肩に手を添えて微笑みかける。
「大丈夫」
「ありがとうメル」
それにしても、これが最後の試験なのかな?
面談が試験って……
ハンター試験の試験内容は本当に様々だな。
一体何を聞かれるんだろうか。
すると「450番、メルさん。お越しください」と私の番号が呼ばれた。
「行ってくるね」
2階の階段を登り、会長室の扉の前までやってきた。
深呼吸をしてからノックをするとネテロ会長の声が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します」
中へ入ると、椅子が用意されている。
「そこにかけておくれ」
「はい」
「早速じゃがメルよ。なぜハンターになりたいのじゃ?」
「ネテロ会長はご存じかと思いますが私は今まで暗殺ばかりしてきました。自分の仕事が嫌になったからとかではなく、仕事には誇りをもって向き合っています」
「ほう、ならば何故ハンターなのじゃ?」
「私は、新しく経験することが好きなのです。この世界のことをもっと知りたい。自分が目を向けてこなかった世界が、あまりにも魅力的だと教えてくれた人物がいるのです。その人はハンターをしていました。私は本で得た知識だけではなく、実際に目で見て、感じたい。その人の様に自由に世界を見たいと思ったのです。幸い、ハンターライセンスは私の仕事にも応用することができるし、このきっかけを大事にしたいと思ったので今回このハンター試験を受けたのです」
ネテロはにこにこしながら髭を撫でていた。
「フォッフォッフォッ、まるで若い頃のお前の父ウィリアムを見ている様じゃ。どうやらお主は父親に似た様じゃな。では次の質問じゃ。お主以外の9人の受験者の中で一番注目しているのは?」
「99番キルアと405番ゴンかな……」
「ほぅ。では最後の質問じゃ。9人の中で今一番戦いたくないのは?」
「99番キルア、405番ゴン、44番ヒソカ、301番イル…ギタラクル。あと、403番レオリオ、404番クラピカもかな……。キルアやゴン、クラピカ、レオリオとは友達だし戦えない。試験なら仕方ないけど……。44番と301番とは、一度戦闘が始まっちゃうと、他の受験者も巻き込んでしまいそうだし試験どころではなくなりそうだからね」
「ふむふむ、なるほど。質問は以上じゃ。もう帰ってよいぞ」
「は、はぁ」
これで終わり?
これって次の試験に向けた面接かな……?
メルはお辞儀をして部屋から出て行った。
全員の面接が終わり、受験者達は広い部屋へと集められた。
ネテロ会長はホワイトボードを持ち寄り、掛けられていた布を捲った。
「最終試験は、一対一のトーナメント形式で行ってもらう」
ということは勝ち残った最後の一人だけが合格ということになるのか。
1人だけだなんて厳しい戦いになりそうだなぁ。
それに、イルミともヒソカとも戦わないといけないとなると骨が折れそうだ。
最悪大怪我を覚悟して挑まないといかない。
メルはゴクッと生唾を飲み込みつい握りこぶしに力が入る。
するとネテロ会長はそんな私の考えとは全く真逆のことを言い始めたのだ。
「たった一勝で合格が決まる。勝ったものが次々と抜けていき、負けたものが上へ登っていくシステムじゃ。つまり、この表の頂点は不合格者を意味するのじゃ。もうお分かりかな?」
要するに…、不合格者はたった一人ということ……!!
「それで、その組み合わせはこうじゃ」
名前が隠されていたテープが捲られる。
私の対戦相手は……、191番ボドロさん!!
「なかなか良い組み合わせじゃろう?誰にも2回以上勝つチャンスがあるのじゃ」
「でも、この組み合わせだと人によっちゃ5回もチャンスがある奴もいるぜ?」
「ふむ。成績できめさせてもらっておるのじゃ。どんな内訳かは言えんがな」
そう言われてしまえば何も言えないな。
私は4回チャンスがある。
イルミは2回しかチャンスがないんだよね……。
まぁ、イルミなら大丈夫か。
「戦い方は単純明快。武器も何を使ってもおっけーじゃ。相手に参ったと言わせれば勝ちじゃ!ただし!!相手を死に至らしめてしまった場合は即失格!!その時点で残りのモノが合格。試験は終了じゃ!!よいな!!」
ネテロ会長の掛け声で早速第一試合が始まった。
まずはハンゾーVSゴン。
今のゴンには実力差がある相手であった。
この試合はすぐに一方的な試合展開へと動き出した。
ハンゾーはゴン以上に力も早さも判断力もどれをとっても格上。
ゴンを気絶させない程度に手刀を打ち込み地面に倒れさせてしまったのだ。
ゴンは軽い脳震盪を起こしていた。
その様子を見てメルは少し目を細める。
あれはきついだろうなぁ。
最悪の気分だろうね。
ハンゾーは何度もゴンに「参ったと言え」と促すもゴンの性格上その言葉は決して口にしなかったのだ。
クラピカ達はゴンが痛めつけられる様を見て体を震わせていた。
会場にはもう何度目かの鈍い音が響き渡っていた。
あれから既に3時間が経過している。
ゴンはもう声を出すこともできなくなっている。
すると、ハンゾーはため息をつきながら倒れるゴンの左腕を背中へと回し抑え込んだ。
「最後だ。参ったと言え。じゃないと、腕を折る」
「っ、嫌だああああ!!」
すると骨が砕け散る音が響き渡る。
メルは静かに目を閉じた。
もう見ていられないな。
早く終わらないかなこの試合。
終わればすぐに直してあげるよ、ゴン。
だがゴンは腕を折られたのに、まだ諦めてはいなかった。
ハンゾーが逆立ちをしながら、自身の生い立ちを話早く参ったと言えと話をしている所に思い切り蹴りを喰らわせたのだ。
ハンゾーは不意打ちを喰らい吹き飛んだ。
メルは目を見開く。
「フッ」
ゴン!さすがだね。
いい根性してるよ。
「くそっ、痛みと長いおしゃべりで頭は少し冷えてきたぞ!!この対決はどっちが強いかじゃない!!最後に参ったって言うか言わないかだもんね!!」
するとハンゾーは素早く起き上がる。
「わざと蹴られてやったのだが?」
と平然と言うが、鼻血を出しているその顔では説得力は皆無であった。
「分かってねぇぜお前は。俺は忠告しているんじゃない。命令していんだぜ?俺の命令が分かりにくかったのか?もう少し分かりやすく言ってやろう。次は、足を切り落とす。取り返しのつかない傷を見ればお前も分かるだろう。だがその前に最後の頼みだ。参ったと言ってくれ」
そう言うと、手に仕込んでいた刃を出しながらゴンへとゆっくりと近づく。
「それは困る!!!!!」
ゴンの発言に全員ぽかんと口を開けた。
「足を斬られちゃうのは嫌だ!!でも降参するのも嫌だ!!!だからもっと別のやり方で戦おう!!!」
ゴンの提案にハンゾーは怒鳴る。
「てめぇ自分の立場が分かっているのか!!」
ゴンの発言にメルは耐えきれなくなり声をあげて笑い出した。
「あっはははは!もうゴンってば面白すぎる!!」
目に涙を貯めて腹を抱えながら笑うメルを筆頭に他の受験者も次々と笑いだす。
「お前!勝手に進行してんじゃねぇ!その足本当にたたっ斬るぞー!!」
「それでも俺は参ったとは言わない。それに、そしたら血がいっぱい出て俺は死んじゃうよ?それじゃぁ失格するのはそっちの方だよね?」
試験管は「はい」と返事をする。
「そうでしょう?だから考えようよ」
ハンゾーはもうどうしたら良いのか分からず歯をかみしめる。
「お前、死んだら次もくそもねぇんだぜ?考えろ。俺はここでお前を死なせてしまっても来年またチャレンジすればいいだけの話だ。俺とお前は対等じゃねぇんだ!!」
ゴンはそれでも参ったとは言わなかった。
「なんでだっ、来年また挑戦すればいいじゃねぇか!命よりも維持が大切だっていうのか!?そんなことで本当にくたばって本当に満足なのか!?」
「……俺は親父に会いに行くんだ。親父はハンターをしている。だから俺は親父みたいなハンターになって親父に会うんだ!!いつか、会えると信じて…。もし、俺がここで諦めたら一生会えない気がする。だから、引かない」
「引かなきゃ、死ぬんだぜ……?」
そう言ってもゴンのまっすぐな瞳は揺らがない。
するとハンゾーは「参った、俺の負けだ」と負けを認めた。
「俺にはお前は殺せない。かといってお前に参ったと言わせるすべが思い当たらない。俺は負け上がりで次へ進む!!」
するとゴンは、「そんなのズルイ!!ちゃんと二人でどうやって勝負するか決めようよ!!」と怒鳴ったのだ。
メルはその言葉にまたツボってしまう。
「あっはは、もう止めてゴン!笑い死んじゃう!!」
自分が気持ちよく勝てるような勝負方法を一緒に考えようと言っているようなものだ。
素直で自分勝手でまっすぐな子。
なんてこれから先が楽しみな子なんだろう。
ゴンはハンゾーに殴られて完全に意識を飛ばしてしまっている。
メルは笑いながら怪我をしたゴンに近づいていく。
骨はどうやら綺麗に折ってくれているみたいだね。
治療がしやすくて助かるよ。
にしても……
「ネテロ会長。ゴンが目を覚ましたら辞退すると思います。不合格者は一人というこのルールならこの後の戦いは無意味になるんじゃないでしょうか」
ネテロは何も言わずに髭を撫でて何か考えている様であった。