H×H イル×メル   作:@れんか

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25話 イルミ×キルア

 

キルアは兄と戦うことなど知らずに会場の中央へと歩き出す。

その背中を見てメルはキルアを呼び止めた。

 

「キル!」

「ん?」

「あの……、頑張ってね」

「おう!」

 

結局何も言えずにメルはキルアを送り出した。

 

 

 

 

イルミのことだ。この戦い、恐らく容赦なんてしない筈。

何事もなければいいのだけど。

 

 

 

 

二人は向き合うと、ギタラクルは「久しぶりだねキルア」と話しかける。

そしてゆっくりと顔に指していた針を抜いていくのであった。

顔が変形し、元の姿をキルアの前に晒したのだ。

 

それを見たキルアの顔は段々と青ざめていく。

「兄貴……!?」

 

長い黒髪をした美少年は片手をあげる。

「や」

 

キルアはあまりの驚きに体が硬直している様子であった。

「母さんとミルキを刺したんだって?」

「…まぁね」

「母さん泣いてたよ?」

 

キルア、キキョウさんとミルキを刺してここへ出てきていたんだ。

まぁ、それくらいしないとあのキキョウさんから逃れられないだろうね。

 

「感激してた。あの子が立派に成長してくれて嬉しいってさ」

その言葉でレオリオはずっこける。

 

「でもやっぱり外に出すのは心配だからって、それとなく様子を見てくるように頼まれたんだけど、奇遇だねぇ。まさかキルアがハンターになりたいと思っていたなんて。俺次の仕事の関係上資格を取りたくてさぁ」

 

「別になりたかったわけじゃないよ。ただなんとなく受けてみただけさ」

キルアは目を反らしながらボソッと口を開く。

 

「そうか、安心したよ。心置きなく忠告できる。お前はハンターには向かない。お前の天職は殺し屋なんだから」

キルアは大きな目を更に大きく見開かせてイルミを見ていた。

 

「お前は熱を持たない闇人形だ。自身は何も望まず何も欲しがらない。影を糧に動くお前が唯一喜びを抱くのは人の死に触れた時。お前は親父と俺にそう育てられた。そんなお前が何を求めてハンターになろうと?」

 

「確かにハンターになりたいと思っているわけじゃない。でも俺にだって欲しいモノくらいある!!」

「ないね」

「ある!!!!」

「……ふうん、言ってごらん。何が望み?」

 

するとキルアは下を向いて俯いてしまう。

「……」

「どうした?本当は望みなんてないんだろう?」

 

「違う!!!」

キルアの小さく握られた拳は震えていた。

「……ゴンと、友達になりたい。もう人殺しなんてうんざりだ!!ゴンと友達になって普通に遊びたいっ!!!」

 

絞り出すような声で言ったのは、普通の子供が当たり前の様にしているあまりにも平凡な願いだった。

 

その言葉を聞いてメルは胸の奥が締め付けられる様に痛くなった。

 

キルアがこんなにも友達を切望していたなんて。

こんなにも、殺し屋になりたくないと思っていたなんて。

喉の奥が熱くなり、メルの目に涙がたまっていく。

 

同時に小さい頃からのキルアとの思い出がフラッシュバックした。

私はキルアに幾つも暗殺術を教えていた。

キルアはそんなの望んでいなかったんだ。

ただ普通の子と同じように友達と遊んだりして普通に生きたかっただけなんだ。

 

私はキルアが友達を欲していることを知っていた。

でも、ゾルディックの事だからと何もしてこなかった。

せめてもと思いキルアの寂しさを紛らわすことができればと、足げなく通い、その度に色んな暗技を教えた。

それはただの私の自己満足で、しかもキルアは望んでいなかった。

 

私はなんてことをしてしまっていたんだろうか。

これ程までにキルアを追い詰めてしまっていたなんて。

こんなにも縛り付けてしまっていたなんて。

 

 

だがイルミは冷酷に言い放つ。

「無理だね。お前に友達なんてできっこないよ。お前は人というものを殺せるか殺せないかでしか判断できない。そう教え込まれたからね。今のお前はゴンが眩しすぎて測りきれないでいるんだ。ゴンと友達になりたい訳じゃない。彼の傍にいれば、いつか殺したくなるよ。殺せるか、殺せないか、試したくなる。なぜならお前は根っからの人殺しだから」

 

その言葉を聞きキルアは小さな体を震わせていた。

 

「イルミ!!……言い過ぎだよ」

試合中にメルは堪らなくなり口をはさんだ。

 

「メルは黙ってなよ」

「黙ってるなんてできない!!」

すると黒服を来た試験管達はメルの前に立ちふさがる。

 

「対戦者に妨害を加えることは禁止されています」

「~っ」

 

「メルはそこで見ていなよ。これはゾルディック家の問題だ」

 

「ゾルディック家の問題だからと言ってもうキルアを放っておくことなんて私にはできないよ!!」

キルアはこんなにも誰かに助けを求めている。

必死に足掻いて足掻いて、でもどうすることもできない現実の中その小さな体で一人で耐えてきたんだ。

 

 

「キルア‼イルミのことは聞き耳持たなくてもいい‼それに、とっくにキルアとゴンは、友達同士なんだだよ!?」

そう叫ぶと、レオリオも加勢する。

 

「メルの言う通りだ‼少なくともゴンはそう思っている筈だぜ‼」

 

するとイルミはクリンと首をかしげる。

「え?そうなの?」

「あったりまえだぜ!!」

 

 

イルミは困ったように右手を口元に添えて何か考え始めている。

「そうか、参ったな。あっちはもう友達のつもりなのか。よし、ゴンを殺そう」

 

 

 

「!?」

いけない。

イルミは本気だ。

 

 

 

 

自分のせいで初めてできた友であるゴンが死ぬ。

その現実はキルアの動きを完全に静止させてしまった。

 

「ゴンはどこ?」

試験管達はイルミを止めようとするも、顔に針を投げ飛ばされブクブクと顔の原型を留めてはいられなくなっていた。

「いぎぎっ……控室に…っ」

「どうも」

 

 

スタスタと歩くイルミ。

その前に、クラピカ、レオリオ、ハンゾーは立ちはだかった。

そして、メルもイルミと対峙する形となった。

 

 

 

「参ったなぁ。メル、君もそっちにつくのかい?」

「行かせない。ゴンは私の友達でもあるからね。殺させはしないよ」

 

「全く、キルもメルも……俺があんなに教えたのになんで友達なんて不必要なモノを作ろうとするの。……仕事の関係上俺は資格が必要なんだけどなぁ。ここで彼らを殺しちゃったら俺が落ちて自動的にキルアが合格しちゃうね。あぁ、いけない。それはゴンをやっても同じか。……そうだ。まず合格してからゴンを殺そう!なら仮にここの、メル以外の人間を殺しても俺の合格が取り消されることはないよね?」

 

するとネテロは「ルール上は問題ない」と答える。

 

「私がそんなことさせない!!」

「メルが?君にそんなことできるのかい?」

 

 

 

私にイルミが止められる?

……恐らくそれは難しい。

私の感情が必ず邪魔をするからだ。

でも……

 

「-っ。そんなの、やってみないと分からない!!」

 

 

するとイルミは深いため息をつく。

「メル、君にはあとからお仕置きだよ。こんなに聞き分けが悪いとはね。少し俺と離れた時間が長かった様だね」

「~っ…」

メルは唇を噛んで俯く。

 

「キル。俺と戦って勝たないとゴンを助けられない。友達の為に俺と戦えるかい?」

キルアは未だに体を震わせている。

 

キルア……

「やめてっ、もうこれ以上キルアに何も言わないで」

メルは蹲りながら涙を流した。

 

「できないね。なぜならお前は友達なんかよりこの俺を倒せるか倒せないかの方が大事だから。そして、お前の中で答えは出ている。俺の力では兄貴は倒せないと。…勝ち目のない敵とは戦うな、俺が口を酸っぱくして教えたよね?」

 

キルアの額を冷たい汗がつたう。

「少しでも動けば戦闘開始の合図とみなす。同じく、お前と俺の体が触れた瞬間から戦闘開始とする。止める方法はひとつ。分かるね?……だが忘れるな。お前と俺が戦わなければ大事なゴンが死ぬことになるよ?」

 

レオリオは「やっちまえキルア!!どっちにしろお前もゴンも殺させやしねぇ!!お前のやりたいようにしろー!!」と叫ぶがキルアの耳には届かなかった。

 

 

「……参った。俺の負けだよ」

それは今にも消え入りそうな声だった。

 

するとイルミはパッと表情を明るくする。

「はー良かった。これで戦闘解除だね。ハハッ、嘘だよキル。ゴンを殺すなんて嘘さ。お前をちょっと試してみたんだよ」

そう言ってキルアの肩に手を置く。

 

 

「でも、お前に友達を作る資格はない。必要もない。今まで通り親父や俺の言うことを聞いて人を殺していればいい。ハンター試験は必要な時期がくれば俺が指示する」

キルアは黙ってイルミの言葉に耳を傾けていた。

 

勝敗が決するとイルミはメルの元へと歩いてやってきた。

「いつまで座り込んでるのさ」

そう言って手を差し伸べる。

 

「全く、キルもメルも俺が教えた筈なのになんでそんなに甘く育っちゃったんだろうね」

メルは目に涙を貯めながら差し出されたその手を見ていた。

 

「しかも、メルは泣き虫になっちゃったのかい?」

そう言って涙をぬぐった。

 

「キルに…っ、酷いこと言わないで」

ひっくひっくと言わせながらボロボロと涙は止まらない。

「だから冗談だって言っただろう。あれは俺がキルに負けを認めさせるために言ったんだよ」

 

 

あれが、冗談?

うそだ。

あれは本気。

イルミの本音だ。

 

 

「…キルアを傷つけないで」

イルミは差し出した手を取らないメルを見て、ため息をつきながら「はいはい」と言いメルを抱きしめた。

 

 

イルミは優しい

でも怖い

簡単に人を傷つける

それが自分の大切な人であっても

 

どうしてだろうか

こんなに嘘つきで怖い人なのに

私はやはりイルミのことを嫌いにはなれない

 

それはキルアを昔から知っているようにイルミの事を知っているからだ

イルミがキルアに抱く感情は明らかに歪んでいる

でも全てゾルディック家の為であり、キルアの為

ゾルディック家という環境に生まれて来た弟を必死に守ろうとしているだけなんだ

その為には手段を選ばないだけ

愛情表現がうまくできないだけ

本当はキルアに傷ついて欲しいとは思っていない

誰よりもキルアを考えているんだよね

私は分かっているよ、イルミ

 

 

でも、イルミが言った言葉はキルアの心を抉るには十分すぎた。

キルアの為とは分かっているが、キルアを思うとどうしようもなくやるせなかった。

 

 

矛盾する自分の気持ちと、キルアを傷つけてしまっていた自分の行いとでメルの感情はぐちゃぐちゃになり余計涙が止まらない。

 

メルはうわーんとイルミの胸で涙を流すのであった。

時折「イルミのバカー!!」と言いながら、ポカポカと叩くメルを宥める様にイルミはよしよしと頭を撫でていた。

 

ひとしきり泣くとメルは目をこすりながらキルアの元へと行き強く抱きしめる。

キルアはぼうっと一点を見つめていた。

 

「キルアごめんね。私キルアが望まないことを教えていたんだね。ごめんね、キルア」

言葉にして出すとまたポロポロと涙が零れ落ちる。

 

 

 

「イルミのバカ。冷徹男!…イルミの言葉なんて聞かなくていいからねキルア。試験が終わったらゴンの所に一緒に行こうね」

「メル?俺を怒らせたいの?」

イルミはクリンと首をかしげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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