H×H イル×メル   作:@れんか

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天空闘技場編
29話 闘技場×デ×修行


 

 

太陽が天頂を通過した頃、5人は電車の中にいた。

「皆はこれからどうするの?」

メルはキルアから貰ったチョコロボクンを口の中でコロコロと転がせながら皆を見ていた。

 

始めに口を開いたのはゴンだった。右手には44番のナンバープレートを握りしめている。

「決まってる!!俺はヒソカにこのプレートを、顔面パンチのおまけつきで叩き返すんだ!!」

メルはその言葉を聞いて「あっははは!」とお腹を抱えて笑い出した。

 

「ゴンいいねぇ、目標は高く持つことが大事だからね。顔面パンチだけじゃなくて、もっとこてんぱんにやってしまおう!!」

「こいつの力量じゃまだそんなこと無理だぜメル?」

キルアは呆れ顔でメルを見つめていた。

 

「まだ、ね。だからこれから修行するんだよ。ゴンには次の段階へ進んでもらうよ」

「「次の段階?」」

ゴンとキルアは口を揃えて首を傾げた。

 

「一般的には知られていない力がこの世界にはあるんだよ。それを教えてあげる」

「それって……メルや兄貴の強さにも関係があるのか?」

キルアは目を見開いて食いついてくる。

 

「その通り」

人差し指を立ててキルアを見ると、自分も教えて欲しいと声に出さなくても伝わってきた。

「キルアの教育はイルミが担当しているからね。あまり好き勝手に教えられなかったんだけど、今はシルバさんからの許しを得て外へ出てるから問題ないね。……いいよ、キルアにも教えてあげる」

「よっしゃ!!」

キルアはグッと握りこぶしをつくり気合を入れていた。

 

「私もその力には興味があるが……、キルアとも再開できたし私は区切りがついた。これからは私の目的の為に動くとするよ」

クラピカのその言葉にメルは反応する。

「クラピカの目的?」

そういえばクラピカってなんでハンターを目指しているんだろう。

 

「あぁ、メルには言っていなかったな。クルタ族、博識の君ならば聞いたことがあるんじゃないか?」

 

「えぇ、世界三大美色に数えられるクルタ族の紅い瞳。裏では有名だからね。クルタ族は幻影旅団、通称蜘蛛に襲われてその瞳を奪われた。今はその瞳が高値で裏競売等で売買されて……」

「流石だ」

私がクルタ族の瞳の事を話していると、クラピカの瞳は徐々に紅く染まっていく。

 

「も、もしかしてクラピカ、あなたは……」

「そう。私はクルタ族の生き残りだ。そして私の目的は、蜘蛛を全員捕縛することだ」

 

メルは昔父ウィリアムに言われた言葉を思い出していた。

“幻影旅団に手を出してはいけない”

父は、今はルイス家の企業の総取締役だが、昔はハクお爺様やエル兄様と共に暗殺業をこなしていた。

 

それもあのシルバさんと張り合える程のかなりの腕だったとか……。

その父が注視していた組織だ。

蜘蛛に関わるのは私の様に教育を受けた人間でも避けなければ危険な組織なのに、まだ念も知らないクラピカが安易に関わってはいけない。

でも、一族を皆殺しにされて自分一人が生き残ってしまったクラピカに、“関わるな”なんてそんな言葉はかけられない。

 

「クラピカ、蜘蛛は私達裏の世界でもなかなか手を出せない組織なんだ。……もしよかったらゴンやキルアの修行にクラピカも一緒に加わらない?」

蜘蛛に少しでも近づくのならば念の習得は必須!

 

「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくよ。これからは本格的なハンターとして雇い主を探し、自分自身で強くなる道を進んでいくよ」

何を言ってもクラピカの意志は固そうだなぁ。

 

「分かった。ならせめてこれをもらってほしい」

メルは鞄からある紙切れを渡した。

 

「私の携帯番号なの!もし行き詰まったり危険なことに直面したら電話して?私すぐに駆け付けるから!」

「ありがとうメル。君は暗殺者なのに本当に優しいんだな。頼りにさせてもらうよ」

少し心配だけどクラピカはとても思慮深い人だ。

むやみに危険に突っ込んで言ったりはしないだろう。

 

「レオリオはどうするの?よかったら一緒に来る?」

レオリオにも声をかけてみるもすぐに断られた。

「俺は元々医者になりたかったんだ。まずは、国立医大に合格する為に猛勉強ってところからだな!」

 

「えっ!レオリオ医者になりたかったんだ!!」

「おう!もしお前が怪我した時にはすぐに呼んでくれよな。お前なら無料で見てやるぜ?」

「ありがとう。じゃあレオリオも困った時には私にも連絡してね」

メルはクレオリオにも携帯番号が書かれた紙を渡した。

 

「サンキューな!!……ところで、ゴン。ヒソカに一発お見舞いさせるのはいいけど居場所に検討があるのか?クラピカも、蜘蛛を探すのはいいけど当てはあるのか?」

 

するとクラピカはトーナメント戦の時ヒソカに耳打ちされたことを話してくれた。

「当てならある。私はあの時、ヒソカから蜘蛛についていいことを教えようと言われた。それが気になって、試験後にヒソカを問いただしたんだ」

 

なるほど、だから試合放棄なんて性格上認めないクラピカが甘んじて受け入れた訳か……。

 

「9月1日、ヨークシンシティで待っていると言われた。9月1日と言えば世界最大のオークションがヨークシンシティで開かれるんだ。世界で一番金が集まる場所だ。奴らは盗賊だ。こんな絶好の機会は逃さないだろう。そういう訳で、その日ヒソカはヨークシンシティのどこかにいるはずだ」

 

なるほどね、ヨークシンのオークションか。

いかにも蜘蛛が現れそうだな。

強者を好むヒソカが蜘蛛を追っていても不思議じゃないし。

9月1日か、あと半年。

一体どこまで鍛えられるだろうか。

 

先を考えるとメルはなんだかワクワクしてきて酷く高揚していた。

新しい世界に飛び込む感覚だ。

私今本当に楽しんでいる。

 

電車は徐々に速度を緩め、次の街へと停車する。

5人は9月1日クークシンシティで会う約束をし、そこでクラピカとレオリオとは別れた。

 

「メル、修行するっつっても一体どこでするつもりだよ?」

「キルアも行ったことがあると思うけど、修行するには打ってつけだと思うんだよね。天空闘技場って場所はね」

「!」

キルアはなるほどと手をぽんっとついた。

「そこなら修行も金儲けもできるな!」

 

ゴンは訳が分からないまま二人に連れられて、天空闘技場の前まで連れてこられていた。

 

「地上251階、高さ991m、世界大4位の高さを誇る建物なの。ここはハンター試験みたいに難しい条件は一切ないんだ。相手を倒せればいいだけ!分かりやすくていいでしょ?さっ、登録しに行くよ!」

ゴンは初めて見る光景に目を輝かせていた。

 

うんうん、気持ち分かるなぁ。

私も小さい頃修行でここに来た時はそんな目でこの建物を見てたよ。

 

ゴン達はそれぞれ受付員に渡された用紙に必要事項を記入する。

「キルアゾルディック様は2054番、ゴンフリークス様は2055番。1F闘技場ではこの番号でお呼びいたしますのでお間違えの無いように」

 

闘技場の中は激しい歓声と熱気が立ち込めていた。

「うわぁ、何も変わっていないなぁ」

「まさかメルも修行で天空闘技場へ来てたなんて思わなかったぜ。俺は6歳の時に放り込まれて200階に行くまで戻ってくるなって言われてさぁ」

 

「私も似たようなものだよ。でもお蔭で体術や戦術は学ばせてもらったよ。キルアは200階まで登ったことあるから普通に相手をしたんじゃ修行にはならない。だから戦いに制限をかけさせてもらうよ?」

「そうじゃないと面白くないぜ!!」

 

 

「フフ。キルアには200階まで目隠しをして試合をしてもらう。手を変形させて鋭くさせたりは駄目。ここではポイント&ノックアウト制だけど相手をノックアウトさせてはいけない。10ポイントを獲得してTKO勝ちにすること。あと、力は4割にセーブすること。いいね?」

「ふうん、目隠しか。あとポイント制での勝利と力のセーブね。分かった、やる」

 

「ゴンは、まず自分自身がどのくらいの強さなのかを認識してほしい。何も考えずに相手を突き飛ばしてみて?」

「それだけでいいの?」

「うん。自分自身を認識することは基本中の基本!まずは自分の力量を把握することから始めよう」

「分かった!」

 

そして二人の名前が呼ばれる。

お互い別々のリングで対戦が始まった。

 

キルアには感覚を研ぎ澄ませる訓練。しばらく裏の世界から離れると嫌でも感覚は鈍ってしまうもの。視覚からの情報を遮断させて五感を研ぎ澄ませる。200階に行く頃にはキルアは仕事をしていた頃の様な鋭い感覚が手に入っている筈。

 

ゴンは戦闘経験が全くと言っていいほどに少なすぎる。まずは戦闘に慣れることが大切。その為に自分の力量の把握が必要不可欠。体の動かし方や相手の動きの捉え方なんかは徐々に教えていけばいい。ゴンは呑み込みが早そうだし200階に行く頃にはそれなりに良い動きができる様になるはず。

 

そして200階に行ってから念の修行を本格的に始める!!

 

メルは頭の中で二人をどのように育てていくか思考を巡らせているうちにゴンとキルアの勝敗が決していた。

ゴンは50階へ。キルアはゴンと一緒に進みたいと言い同じ50階へ進むことになった。

 

「俺、こんなに力がついていたんだね。ただ相手を張り倒しただけなのに!!」

ゴンは自身の手を見つめて己に身についた力を実感していた。

「そう、ゾルディック家の試しの門をクリアしたんだから相手を吹き飛ばすくらいの力はついているわ。でも、吹き飛ばすだけじゃ戦いとは言わない。ゴン、次は相手を攪乱させながらキメのはり手をキメて見せて?ゴンの瞬発力は4次試験の時に少し見せてもらった。いいバネを持っているね。それを最大限生かして戦ってきて欲しい」

 

メルってば本当に教えるのがうまいんだな。

指示も的確で分かりやすい。

「よし!!頑張ってみるよ!!」

 

「キルア、目隠しをしてみてどうだった?」

「んー、相手が弱すぎてなんとも……。でも自分が目に頼りすぎていた事は自覚できたよ」

「そう感じることが大切だよ。相手は少しずつ強くなるから大丈夫。正直キルレベルなら50階の相手でも少し物足りなく感じるかもしれないけど、ゆっくり進んでいこう。様子を見て、更に制限を設けていくから覚悟してね?」

「お、おう!」

 

メルって結構スパルタなんだよなぁ。

強さに関して貪欲というか……

だからあの兄貴の修行にも耐えれてたんだろうけど。

でも、こんなにメルに見てもらえるのは正直ラッキーだ。

ルイス家の中でもメルに修行をつけて欲しいって奴は噂でかなりよく聞いてたし。

食らいついてやる、絶対に兄貴やメルの強さの秘密を暴いてやる!!

 

そして50階での試合が始まる。

ゴンはメルの言った通り、素早い動きで相手を翻弄させて相手の死角から力強い張り手を喰らわせていた。

メルはその様子を見て笑みを浮かべる。

 

速さは申し分ない。

相手の隙をついたあの間も完璧だ。

それにゴンは気配を消すことにかなり長けている。

暗技との相性バッチリなんだけどなぁ。ゴンにその気があればスカウトしたいくらい。

でも性格は全くと言って良いほど暗殺向きではないから無理なんだけどね。

 

そんなことを思っていると次はキルアの試合が始まった。

相手はなんとキルアと同じ背丈の男の子だったのだ。

「あら。キルやゴン以外にも子供がいたんだ」

ボソッと呟くと隣にいた眼鏡をかけた男が少し微笑みながら話しかけてきた。

 

「あの子は私の弟子でね、名をズシと言うんです。貴方の弟子はキルア君ですね?」

「……何でそんなこと知っているんですか?」

不審な目を向けると男は慌てて謝罪した。

 

「これはすみません。まず名乗らせてください!僕はウイングと言います。ネテロ会長から貴方に言伝を頼まれています」

「ネテロ会長から!?」

 

「はい。ハンター試験には続きがあるのです。プロハンターを名乗るためにはそれなりの強さが必須です。ハンターの仕事は念能力者でないと務まらない。でも念の存在を公にすれば能力を悪用するハンター崩れの犯罪者が大量発生しかねない。その為、ハンターライセンス取得者のみに、念について教えるようになっているのです。普通は、1人につき1人に念の修得者が付き教えるのですが、メルさん、貴方は既に念能力を扱える。貴方と、ヒソカ、ギタラクルの三名には教える必要なしと会長は判断された様です。そこで、ゴン君とも仲の良い貴方が、今回ゴン君に念を教えるようにと、会長は仰っています」

 

「ハンター試験はまだ続いていたんですね。でもなぜキルアのことを?キルアは途中で失格になったのですが」

「会長からキルア君についても聞いていますよ。とても才能のある子だとか。会長はこうも言っていました。メルさんはゴン君とキルア君を恐らく連れているだろうと。キルア君に念を教えるか否は君が判断しなさい、と」

 

なるほど。

キルアに念を教えても悪いことに使う訳じゃないからそこは問題ない。

キルは犯罪なんて犯さないから。

それにしても、裏ハンター試験なんてものがあったなんて。

私は稼業が稼業だから念を習得したけど、普通はハンターライセンス取得者じゃないと念の修行ができないんだ。

そんなこと初めて知った。

 

「それにしても、あのキルア君という子は末恐ろしいね。目を隠して力もセーブしている様だけどなんて動きをするんだ」

キルアとズシの試合を見ていたウイングは目を瞬かせていた。

 

「あぁ、キルアのことを会長から聞いてるのならゾルディック家だってことも知っているんですよね?」

「えぇ。聞いております。噂でしか聞いたことの無い世界ですから少し現実離れした様な気になってしまいそうです」

 

「キルアは長く続くゾルディック家の歴史上才能はピカイチって言われているんですよ?それに、さっき戦っていたゴン。ゴンも才能だけで言うとキルアに引けを取らないくらい目を見張るものがあります。この二人が念を習得したらどうなるのか、私は今から楽しみで仕方ないのです」

メルは恍惚とした法悦の輝きを満面に浮かべていた。

 

ウイングは息を飲む。

メルさん貴方……、とんでもない怪物を育てているんじゃ……。

いや、それを育てる貴方自身もまさしく怪物……!!!!

 

キルアは制限内で、着実にポイントを重ねていく。

だが手ごたえの無い違和感を感じていたのだ。

いくら手刀をキメても相手は諦めない。

これだけクリンヒットが入れば、痛む声や体が硬直するような何らかの反応がある筈なのにそれが全く感じなかったのだ。

 

この相手は可笑しい

 

キルアがそう思い始めた頃、ズシという少年は何かを決心したかの様に息を整える。

メルはその様子を見て目を少し見開かせた。

 

「あれは……」

私が呟こうとすると、隣にいたウイングさんは会場中に響き渡る声で「ズウウウシイイイイイイイイイ!!」と叫んだのであった。

 

その怒号にメルは目が点になる。

び、びっくりしたぁ……

 

 

ウイングのその声にズシは今しようとしたことをやめた。

そしてそのままキルアのヒットが続き、10ポイントを制したキルアの勝利となった。

 

 

 

「すみませんメルさん。驚かせてしまいましたね」

「い、いえ。それよりズシ君はもう念が使えるのですか?」

「えぇ。まだまだですけどね」

「いい気迫でした。キルアやゴンと良いライバルになれそうですね。これから何度か対戦するかもしれませんし、宜しくお願いします。では私は二人を迎えに行ってきます。失礼します」

そう言ってメルは席を立った。

 

 

 

 

 

 

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