H×H イル×メル   作:@れんか

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33話  メル×ノ×トラウマ

 

 

 

ゴンがヒソカに殺されかけた時、ある光景が嫌でも思い浮かんでしまう。

もう過去のことなのにまだ囚われているのかと思うと自分の気持ちがいかに脆いか自覚させられる。

「はぁ」

深いため息をつきながらメルは頭を抱える。

 

ゴンは次の日には目を覚まして今では元通り元気になっていた。私の言いつけをしっかり守り、毎日キルと共に凝をいかに長く維持できるか修行をしている。でもここにはいない。

キルとゴンにはヒソカと戦う為にしばらく1人にさせてと言ってある。

 

タキにも休みを取ってもらい、このフロアでは私は今たった1人。

情緒が落ち着かない状態で他に人がいるとつい殺気を向けてしまうかもしれない。

それくらい私は気がたっている。

 

重たい体が沈み込み柔らかいベッドは私をすんなりと受け入れる。

冷たいシーツが迸る体を冷やしてくれて心地よい。

 

瞳を閉じると「メル」と私を呼ぶ声がした。その声はずっと聴きたかった声で、でもこんな姿を1番見られたくはなかった人だった。

起き上がり振り返ると、そこには長い黒髪が月の光に照らされてその美しさを強調させた長身の男が立っていた。

「イルミ……」

 

イルミはスタスタと歩きながらベッドへと近づき腰を掛ける。

「なんて顔してるの?」

イルミはメルの頬に手を添える。

 

「何でここにいるの?」

「キルアから連絡をもらったんだよね。メルの様子がおかしいって」

「キルから?」

「話は少し聞いてるよ。……大丈夫?」

イルミのその言葉で私の瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。

 

 

あれは私が8歳だった頃。

ルイス家に恨みを持った組織がまだ幼い私なら殺せると思いしつこく狙っていた。

その頃の私は、失敗した事もなければ自分が負けるなんて思いもしてなかった。

そんな私の馬鹿な油断のせいで、私を庇った母様は死んだ。

 

ぬくもりが自分の手の中で消えていく瞬間を初めて感じた。

自分がいかに無力だったのか否でも実感した。

自分の失いたくない人が目の前で息絶える顔を初めて見た。

大好きな人がこの世界から消え、残された人の悲しみや怒りを初めて知った。

今まで自分が何気なく奪ってきた命がいかに尊いものだったのか、初めて理解した。

 

その時だ。高貴なる者の義務(ノブレスオブリージュ)の能力が目覚めたのは。

でも、遅かった。

母様はもう私の腕で息絶えていた。

 

私の能力は既に絶命した人間は生き返らせることはできなかった。

 

あれから私は失う事が怖くなった。

大切にしている人間を奪う人をどうしようもなく許せなくなった。

 

 

私は人の命を奪うのに、自分の事になると許さないのかと、自問自答し続けた。

つくづく私は矛盾していて、でも受け入れるしかなく、いくら考えてもそれが私の答えだった。

キルアも恐らくここで悩んだんだろう。

 

でも、私はこの仕事を続けることを選んだ。

私は命を奪う事は仕事と割り切れた。

私の心はどこか歪んでしまっていることも同時に自覚した。

 

イルミは私が1番つらかった時にいつも傍にいてくれた。

私が一人前の暗殺者になれるように一緒に思案して修行をつけてくれた。

 

今も、こうして過去のことを思い出しつらかった時に目の前に来てくれている。

それが堪らなく嬉しくて、私の涙は止まらなかった。

 

「メルの周りにいる人間はかなりの念能力者が集まっているから傷つくことはあっても、命の危機って程追い詰められたりはしないからね。だからゴンがヒソカに殺されそうになった時に反応してしまったんだね」

 

メルはイルミの胸に顔をうずめて黙って頷く。

 

「全く、メルがまだ引きずっているとは思わなかったよ。大丈夫だよメル。メルはあの頃みたいに弱くはないよ。今回だって、ゴンを守れたじゃない」

 

イルミは私が落ち着くまで抱きしめてくれていた。

「自分の大切な人がまた目の前で殺されそうになってっ……ひっく、トラウマが蒸し返されちゃってっ」

 

「うん」

 

「どうしようもなく許せなくて、あの頃の自分の感情が入り交ざってぐちゃぐちゃになってしまってっ……」

 

「うん」

 

イルミは途切れ途切れで聞き取りにくい私の話を丁寧に全部聞いてくれた。

「うわーーーん!!イルミー!!!」

何が言いたいのか訳が分からなくなりしばらくイルミの胸を借りることにした。

 

あれから1時間後。

ようやく落ち着いたメルは、鼻をズビズビと言わせていた。

一通り吐き出したお蔭でメルはすっきりとした表情をしていた。

 

「ごめんねイルミ。服汚しちゃって」

「メルの涙でびちゃびちゃだね。服貸してくれる?」

「私の服入るかなぁ」

呟きながらメルはクローゼットを漁りだす。

 

見つけたのはチャイナ服だ。細身のイルミなら恐らくギリギリ入る。でも丈はどうしようもないからズボンと合わせてイルミに手渡した。

 

「ありがと。じゃぁシャワー貸してね」

そう言ってイルミはシャワー室へと歩いていく。

浴び終えたイルミが寝室へ戻ると、大きなベッドに小さく丸まって眠るメルの姿があった。

 

「あれだけ泣いたなら疲れて寝ても仕方ないか」

 

イルミは眠るメルを見下ろして腫れた瞼にキスを落とす。

 

メルをよくもこんなに泣かせてくれたねヒソカ。

しかもメルと戦うだって?

ハンター試験の時あれだけ手を出すなと言っておいたのにどうやら伝わっていなかったみたいだね。

ヒソカと戦えばいくらメルでも無傷では済まないだろう。

ゴンを傷つけられて自分のトラウマまで掘り返されてメルは戦う気満々だけど、俺はメルに傷ついて欲しくない。

ならやることは決まってる。

ヒソカを先に殺してしまえばいい。

親父か爺ちゃんかに依頼して貰えばそれは問題ない。

でも黙ってヒソカが殺されてくれる筈もないんだよね。

なら、エルやラルにも手伝ってもらおうか。

あの2人ならこのことを話せば必ず協力してくれる。

 

イルミはエルとラルにメールを送る。

“メルが殺されるかもしれない。協力してくれるよね?天空闘技場245Fで待ってるよ”

 

それを送ってから30分も経たないうちに息を切らしながらエル、ラル、イリアがやってきたのだ。

これ程までに早く来れたのはイリアの念能力“異空間(アナザーワールド)”のお蔭だろう。

自分の主であるメルの危機ということで能力を発動することができたのだ。

 

少しキレ気味にエルはイルミに尋ねる。

「どういうことだ」

「ちょっと、静かにしてよね」

イルミは人差し指を口元に当てて「しー」と言う。

 

視線を落とすと、イルミの膝の上で目をはらしたメルの姿があったのだ。

「何があったの?」

ラルは小声で2人に近づいた。

 

「メル!目が腫れてる。泣き疲れて眠ってるの?」

ラルは心配そうにメルを見る。

 

「そ。後、この話聞かれたくないから俺の針も1つさしてるけど、軽い催眠効果しかないモノだから大声だされると起きちゃうから注意してね」

 

「イルミ、メルが殺されるかもしれないとはどういうことだ。早く言え」

 

「ヒソカっていう危ない奴がメルと今度戦うんだよ。ヒソカはかなりの戦闘狂だからどさくさに紛れてメルを殺しちゃっても可笑しくはない。それに強さで言うと、俺やエルと同等くらい手強い相手なんだ」

「なるほどね。それで俺たち2人と協力してメルと戦う前にそいつをヤろうってことだね?」

「そういうこと」

 

「……メルは何で泣いたんだ?」

「あぁそれは、メルの弟子のゴンっていただろ?あいつがヒソカに目の前で殺されかけたんだって。まぁメルがそれを防いだみたいだけど、その光景がメルの母さんを失った状況と重なって見えたみたいでね、トラウマを思い出しちゃったって訳」

 

エルは深いため息をついて「なるほどな」と呟いた。

「なら俺たちはそいつを殺すことはできない」

 

「!?」

ラルはガバッとエルを見る。

 

イルミも予想外な言葉に首を傾げた。

「可笑しいな。お前が、メルが殺されるかもしれないのに何もせずに見ている選択を選ぶなんて」

 

「お前達、メルの気持ちを考えろ。メルはヒソカと戦いたがっているんじゃないか?大切な人間を殺そうとした者を許せないんだろう。メルは弱くないし、ルイス家を代表とする暗殺者の1人だ。だが、万が一メルを殺そうとする瞬間があれば、迷わず俺が始末する。それで良い」

 

「僕もその日メルとヒソカの試合見せてもらうよ。確かに、殺そうとする瞬間に兄さんがいれば止められるしね」

 

「参ったな。まさか2人がヒソカと戦うことを認めてしまうなんてねー。俺はメルに傷1つつけたくないんだよね。その気持ちは同じだと思っていたんだけど」

 

「もちろん傷ついて欲しくはないが、なによりメルの意思を尊重してやりたい。母さんの件はメルの中で未だ昇華できずにいる問題だ。しかも、唯一対面した母さんを殺した相手にもまんまと逃げられている。メルは未だ探し続けているよ。母さんを殺した奴を。メルの気まぐれな皇帝(カプリスエンペラー)を使っても見つけられなかった程の相手だ。メルの中ではどうすることもできない課題の1つなんだよ。今回、弟子を目の前で殺されかけたが、相手ははっきりとしているし、しかもその相手と確実に戦える場が既に用意されている現状に、俺は邪魔したくない。……1番近くで見ていたお前なら理解できるんじゃないのか、イルミ」

 

イルミは深いため息をついて「分かったよ」と投げやりに言った。

「俺も当日天空闘技場にいるよ。少しでも危ないと判断したらエル、お前の登場なんか待たずにヒソカをやるからね」

「好きにしろ。だがメルの気持ちだけは踏みにじるなよ」

「はいはい」

 

なんとか丸く話を終えてずっと黙っていたイリアはホッと胸をなでおろした。

「イルミ、しばらくここにいるんでしょ?」

ラルはメルを見下ろしながら言う。

 

「うん」

「メルのこと頼んだよ。僕仕事中だったんだよね。早く戻らなきゃ」

「エルも仕事中だったの?」

「まぁな。メルの分の案件も同時進行で進めているからな。そろそろ戻らせてもらう。当日は必ず来る。それまでメルを頼んだ。お前に仕事が入っているなら俺につけておけ」

 

「そりゃどうもー。じゃ遠慮なく」

そしてエル達はイリアの“異空間(アナザーワールド)”を通って帰っていった。イリアの能力は自分の主であるメルが少しでも関わっていないと発動できない。帰りは、メルの仕事こなすためという理由で発動することができたのであった。

 

 

しんと静まり返る空間でメルは変わらず規則正しく寝息を立てている。

イルミはメルを撫でながら自身も瞳を閉じるのであった。

 

 

 

 

翌朝。

イルミにかっちりと抱きしめられながら眠っていたことに気付いたメルの「うわああっ!!」という驚いた声でイルミは目を覚ました。

 

「おはようメル。よく寝てたね」

「お、おはようイルミ。まさかまだいてくれてるとは思わなくてびっくりした。仕事は大丈夫なの?」

「うん。しばらくスケジュール空けれたからこっちにいるよ」

「!!」

メルは嬉しくて目を輝かせた。

 

メルはすっかりいつものメルに戻っていて、表情も明るく笑顔も自然に見せていた。

メルとイルミは揃って200Fの部屋にいるキルとゴンを訪ねた。

 

2人ともメルを心配して「大丈夫?」と声をかけてくれた。

「大丈夫だよ。心配かけてしまったね。ちょっと悩んでたことがあったんだけどもう大丈夫だよ。さ、今日から私もビシバシ修行しなきゃね!!!」

 

キルアはちらっと兄イルミを見ていた。

やっぱりメルのことになると兄貴は凄い。

俺にはどうすることもできなかったのに兄貴は一晩でメルを元通りにさせちまうんだから。

 

「なに?キル」

「いっ、いや!!なんでもねぇ!!」

キルアは気まずくなりすぐに目線を反らした。

 

「メル、修行するなら俺が練習相手になってあげるよ。相手はヒソカだろ?そこらの奴で練習しても、全く修行にならないだろうからね」

 

「いいの!?それなら助かるんだけど……」

「時間あるしいいよ。それに、メルがどこまで成長したのか見ておきたいっていうのもあるしね。だって、俺がメルの修行見てたのってメルが13、4歳くらいの頃だろ?6、7年間でメルがどこまで成長したか、実はずっと気になっていたんだよね」

 

「分かった。じゃぁ試合形式でやろうよ!…いい機会だし、キルとゴンも見てってよ。あと、私とイルミが試合してる時は常に凝をしていること!いいね?」

「分かった!!」

「うん!!」

 

全員メルのフロアの練習部屋へと移動する。

 

そしてイルミとメルの試合が始まった。

 

 

 

 

あの兄貴と、メルの戦いが見れるなんて!!!

しっかり分析させてもらうぜ!!

 

キルアはこれから繰り広げられる戦いをわくわくしながら見るのであった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 






ルイス家兄妹とイルミの挿絵を挿入しています。
もう少し画力をあげたいですね( ;∀;)
私の中ではもっとイルミは美形フィルターかかっているのですがうまくかけません。
皆様の目に美形フィルターをかけてご覧ください。

キルゴンの成長が著しいですが、私も話数重ねるたびに画力成長できるように頑張ります!

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