それから1か月後。
ヒソカとの試合当日。
「メル、準備はいい?」
「皆のおかげでバッチリだよ。行ってきます」
そう言ってメルは入場ゲートの中へと入っていく。
この1か月間、マンツーマンでメルの新しい念能力開発に協力してきたけど、まさかあんなとんでもない能力ができるとはね。
ヒソカ、いくらお前でも相当手こずるだろうね。
いっそのこと殺してしまえばいいよメル。
イルミは観戦席へと行くと、足を止めて大きな目を瞬かせる。
キルアとゴンがいるのは分かるが、その隣にはシルバ、キキョウ、ゼノも座っていたのだ。
「何してるの」
「あらイルミ!早くここに座りなさい。メルちゃんが戦うって聞いたらそりゃ見ない訳にはいかないでしょ!」
興奮気味に話すキキョウは、顔に着けているゴーグルをピカピカと点滅させている。
まぁ母さんはメルのことかなり気に入っているから来たのは分かるけど……
「何で父さんや爺ちゃんまで来てるのさ」
「メルの成長を見るためだ。最近あいつの名ばかり聞くからな、どれだけ強くなったか見させてもらうにはいい機会だ」
「あの小さかったメルがどれだけ成長したか気になってここまで来てしまったわい」
メル、ほんと君って凄いよ。うちの家族が全員メルに期待して仕事を調整してまでやってきてるんだからね。
するとその後ろの観戦席から「来たかイルミ」という声が聞こえた。
そちらへ目を向けると、更に驚くべき光景が広がっていた。
そこにはなんと、ルイス家全員が勢ぞろいしていたのだ。
エルとラルがいるのは本人も来ると言ってたから分かるが、表世界の大御所、昔は父さんとも並ぶ程の暗殺者であったメルの父親ウィリアム・ルイス、裏世界で現役で活躍する伝説の暗殺者と呼ばれるメルの祖父ハク・ルイス、かつては絶世の美女と呼ばれ、毒を使った暗殺者で1番に名が挙がる一流の殺し屋、メルの祖母ミラ・ルイス。
イルミも全員が揃ったところを見るのは初めてでありその空気に圧倒される。
青い瞳にプラチナブロンドの髪、整った人間離れした容姿は彫刻の様に美しく、その空間だけがくりぬかれた様に別世界が広がっていた。
「やぁ、イルミ君。メルが随分お世話になっているね」
ウィリアムはにっこりと微笑みながらイルミに声をかけた。
「メルはどうだい?少しは成長できたのかな?」
ベルベットの様な声で娘のことを確認するウィリアムは、どうやら俺の反応を見ている。
その笑みには恐らく色んな意味が含まれており、娘の成長だけではなく俺の気持ちなんかも探っているみたいだ。
「メルの念能力の欠点を少しなくしたんだ。まぁ、負けることはないと思うよ」
その言葉を聞いてウィリアムは嬉しそうに笑う。
「メルを強くしてくれて感謝するよ。僕は仕事を理由になかなかメルを見てあげられなかったからね。シルバ、君の息子はやはり優秀な様だ」
するとニヒルな笑みを浮かべながらシルバは口を開く。
「珍しいな、お前が他人を褒めるなんて」
「フフッ、僕は優秀な人間にはちゃんと評価をする主義だからね。イルミ君、また今度メルと共にうちへおいで。ちゃんと御もてなしをさせて欲しい」
「分かった」
イルミはそう言ってキルアの隣に腰を下ろす。
キルアもゴンも心臓が飛び出てしまいそうな程緊張していた。
なんなんだこのメンツ!!!ヤバすぎるだろ!!!
暗殺界の頂点を取り合う殺し屋が全員この一角に集まってるなんてありえねぇだろ!!
ってかメルの親父すげぇプレッシャーだ!!
なんで兄貴はこんなに平然としてるんだ!?
「にしても、えらい人気だな」
シルバは会場を一瞥する。
「まぁメルちゃん可愛らしいから人気が出るのも分かるわぁ」
するとメルの祖母ミラがにっこりと微笑む。
「あら、キキョウさん。分かっていらっしゃるのねぇ。メルは本当に可愛くて良い子なの。孫の晴れ姿を見られるのは本当に楽しみだわぁ」
キキョウは憧れの存在であるミラに話しかけられたのが嬉しくてゴーグルが赤色から黄色へと点滅させた。
「ゼノよ、お前まだ現役でやっておるのか。早く引退してしまえ」
後ろの席からメルの祖父ハクは茶化すようにゼノを見る。
「お前こそ早く引退してしまえくそジジイ」
「わしがくそジジイならお前もじゃ。特大ぶうめらんというものじゃよゼノ」
ハッハッハッと笑うハクを見てゼノはやれやれと呆れ顔。
「あっ、キルア!そろそろ始まるみたいだよ!」
ゴンはそう言って天井を指さす。
照明は徐々に消え始めて、今から選手たちが戦うリングがライトアップされていく。
『レディイイスアンドジェントルマーン!!今宵の戦いは皆さんが注目しているあの2人!!!チケットは販売してから1分もしないうちに即完売となりましたああ!!今この試合をご覧いただけるそこのあなた!!あなた!!!あなた!!!なんと幸運なんでしょうかああああ!!!では紹介します!!天空闘技場に現れた一輪の花!!!!誰もが手を伸ばしたくなる程美しさ!強さを兼ね備えた最強の選手!!!!!メル選手が登場だああああああ!!』
それと同時に、白い煙が入場ゲートに噴出される。
そこから、深くスリップが入った白のチャイナ服を着て、髪を綺麗に編み込み団子を作った美少女メルが姿を現した。
すると会場のボルテージは一気に高まる。
「メル様ああああああああ!!!!」
「きゃあああああああああああああ!!!!」
「美しすぎる!!!!!」
「踏んでください!!!!!!!」
「罵って下さいいいいいいい!!!!」
『さてさて、美しすぎる最強メル選手の今宵のお相手はあああああ!!!未だ無敗の奇術師!!ヒソカ選手だああああ!!!!!』
すると反対側の入場ゲートから深い笑みを零しながらメルに手を振る奇術師が現れる。
「うおおおおおおおおお!!!」
「ヒソカアアアアアアアアア!!!」
「今日も見せてくれよおおおおおお!!!」
ヒソカは笑いながら手をくるくると捻る。
何も持っていなかったのに右手にはポンッと一輪の花が現れた。
ヒソカはそれをメルの頭にそっと添えた。
「どうも」
「ククク、今日の君はいつも以上に綺麗だね♡」
その光景を見てイルミは眉を顰める。
研ぎ澄まされたヒソカの感覚は、会場に座るイルミの僅かな殺気でさえも捉えた。
あぁイルミ、そこにいたのかい♡
おや?あれは……!!
全員90点台の極上の果実……!!!!
ヒソカはにやりと笑う。
「あらヒソカ。今から私とヤるのに他の人に意識を向けるの?」
「ククク、そんな訳ないよ。君とヤるのは本当に楽しみにしていたんだ。僕、もう滾って仕方ないんだから。早くヤろう」
『それではあああ!!試合、開始いいいいい!!!!』
ヒソカとメルの戦いが今、始まろうとしていた。