H×H イル×メル   作:@れんか

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9話 恋慕×懐旧

ゴン達は難なく、くも鷲の卵を無事持って帰ってきた。

「これで全員合格だね!」

そう言うと、ゴンは嬉しそうに「うん!」と首を縦に振った。

 

次の試験会場には、飛行船で移動することになった。

あたりはすっかり日が落ち、星が輝き始めていた。

 

「残った42名の諸君らに改めて挨拶をしておこうかのう。わしが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」

「秘書のビーンズです」

 

あ!

ナンバープレートを渡してくれた豆さん!

会長の秘書をしていたのね!

 

「本来ならば最終試験で登場するはずじゃったが、一旦こうして現場に出てきてみると、何とも言えん緊張が伝わってきていいもんじゃ。せっかくだからこのまま同行させてもらうわい」

「次の目的地へは、明日の朝8時に到着予定です。食堂に食事も用意しています。各自自由に時間を使ってください。部屋はこちらで適当に決めています。前のホワイトボードに張り出していますので確認してください。では、解散とします」

 

部屋割りとかあるんだ。

ヒソカと一緒な部屋は嫌だ‼

えっと……私の名前名前…、

 

ホワイトボードと睨めっこしていると、後ろから声をかけられた。

「よろしくね」

カタカタと言わせて後ろに立っていたのは、一次試験の時に少し会話した顔に似合わず案外優しいカタカタ男さんだった。

 

「あなた、ギタラクルさんって言うのね。メルです。よろしくお願いします」

「うん」

 

 

ギタラクルと話をしていると、自然と人が遠ざかる。

誰も怪しすぎるギタラクルの近くへは寄りたくないのがひしひしと伝わる。

 

皆そんなに避けなくても。

喋ってみると案外まともな人なんだけどなぁ。

 

「私もう休もうかと思うんだけどギタラクルさんはどうする?」

「んー、じゃぁ俺も休もうかな」

「そう、じゃぁ一緒に行きましょ」

 

ギタラクルの隣を歩くメルを見てキルアは心配そうに見守っていた。

 

あいつ大丈夫かよ。

あんなやばそうなやつと同室かよ。

ついてねぇな。

でもまぁ、メルのことだ。何かあっても何とかするだろう。

 

キルアはゴンと共に飛行船の中の探索へと出かけた。

 

 

メルとギタラクルは部屋の前までやって来ていた。

中へ入ると、壁の両端にシングルベッドが置かれていた。

中央を境に、ベッド、机、椅子が対称に置かれている。

 

普通の部屋だ。

なんだか疲れちゃったし今日は早く寝よう。

 

メルは「う~ん」と言いながら背伸びをした。

「今日は疲れたね。まさか一次試験であんなに走ることになるとはね~」

笑いながらギタラクルの方を見た。

 

「ほんと疲れたよ。顔変えるのって案外神経使うんだよねー」

「へ?」

 

顔を変える?

 

頭に「?」が浮かべているとギタラクルは顔中に指していた針を一つずつ取っていく。

 

メルはその針に見覚えがあった。

というか、服に仕込んである針でなぜ気づかなかったのか。

 

ブクブクと顔の形を変形させながらすっきりしたシャープな顔の輪郭へと変わっていく。

長い黒髪がバサッと宙を舞い、大きくクリっとした瞳をパチパチと瞬かせて美しい男は私をメルを見ていた。

 

「や」

そう言って右手を上げた。

 

「イッ、イルミッ!?」

 

「うん、久しぶりだねメル」

 

「何でイルミがここにっ!?」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

「はぁ」と深いため息をつきながらイルミはてくてくと私との距離を詰めてくる。

自然に私の足は後ずさりしていくも、ドンッと壁へとぶつかり逃げ場所を失った。

イルミは右手をドンと壁につけて、私を見下ろした。

顔の横にひんやりとした艶のある黒髪が時折揺れてくすぐったい。

 

「ねぇ、護衛もつけずに一人で何をしているの?もう少し自覚しなよ。メルの家は俺たちゾルディック家とは違って裏だけじゃなく表でも有名なんだから狙われるリスク半端なく高いの分かっているよね?最近はルイス家に恨みを持った連中が組織を作っただなんて噂も聞くけど?メルならそんなこと知っているよね?なのになんでそんな危ないことするの?」

 

……イルミのこの目。かなり怒っている。

でも……私は自分のやりたいことを見つけたんだ……‼

 

メルはにこっと笑顔を見せた。

「イルミ、私なら大丈夫だよ。イルミに修行を見てもらっていた頃よりも大分強くなったんだよ私。もし命を狙う人達が来ても返り討ちにできるよ」

 

だから退いてくれないかな……

ちょっと距離が近くて心臓が破裂しそうなんで……‼

 

ヒソカに今日突拍子の無い質問をされてつい意識してしまう。

そう、メルがずっと想っていたのはイルミなのだ。

 

メルはイルミの胸に手を置いてグッと押し返す。

普通の人間であれば後ろに押し返せる程の力を使ったつもり。

だが今目の前にいるのは普通の人間ではない。

しかも久しぶりに会えた自分の想い人が目の前にいれば、いくら本気で押し返そうとしてもどこか力が入らない。

 

「そんなんで返り討ちにできるの?」

イルミは微動だにしてはいなかった。

 

「だって目の前にいるのイルミだし……」

するとまたため息が降ってきた。

 

「敵が俺に変装してたらどうするの」

 

「それは流石に分かるよ。」

 

「完璧に真似る念能力があるかもしれないだろ?」

 

そういわれてしまえば否定はできない。

……もしそんな状況があれば私はどうするんだろうか。

敵がいくら完全にイルミに化けているとして、私はそれを殺すことができるんだろうか。

多分……いや、絶対に私は殺せない。

こんなこと素直にイルミに言ったらまた怒られるんだろうな。

……イルミが反対の立場ならどうするんだろうか。

馬鹿だな私は……イルミのことだ。絶対に迷いなく殺すはずだ。

 

自分で考えていただけなのに悲しくなった。

そんな表情を見てかイルミは、ぽんっと私の頭に手を置いた。

「反省しているみたいだし、許してあげるよ。まぁ幸いこの試験、俺も受けてたから何かあればメルを守ってあげられるしね」

「!」

いつまでもイルミの足枷にはなりたくはない!私も一人前の暗殺者として認められていんだから!

「私はもう守ってもらわなくても……!」

そう言いかけた時だ。

 

スッとしなやかな手が私の頬に添えられた。

 

「ふぅん、俺より弱いのに?」

 

イルミは私と同じ目線までかがんだ。

その距離はあと少しで吐息がかかりそうなほど近い。

 

目が離せなかった。

漆黒の瞳につい吸い込まれそうになる。

胸の鼓動が徐々に速くなっていくのを感じていた。

煩い……、煩い‼

早く落ち着けなきゃ

イルミに聞こえてしまう……‼

 

ぎゅっと固く目を瞑った。

すると今まで近くにいたイルミが私から離れたのが分かった。

 

安心したと同時に少し寂しい気持ちになった。

 

本当に馬鹿だな私。

イルミの行動だけでこんなに振り回されている。

 

昔から何をしてもイルミは私の先を歩いていた。

追いつきたくて必死に追いかけていた。

一人前の暗殺者になってからは全くと言っていいほど会えなくなってしまったけど……

子供の時から抱いていたこの気持ちは今も変わらない。

私は、イルミのことが好きだ。

 

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