折角の連休で書き溜めも増えるので、しばらくは更新が続きそうです。
「おらあっ!!」
紅魔館の地下。突如として姿を変えた偽レミリアへ魔理沙が箒で突進する。だが、偽レミリアは避ける素振りも見せない。
「ふん、頭が高いわっ!!」
「何っ!?」
偽レミリアが宙に浮かぶ本を手にすると、それを魔理沙へと向ける。すると魔理沙の体の周りに紫色の魔法陣が現れ、その動きを封じる。
「何だこれ、動けねえっ!?」
「所詮は塵芥。闇に沈むが良いわっ!!」
的同然と化した魔理沙に向かって、偽レミリアは紫色の魔力弾を放つ。
「させないわっ!」
だが囚われの魔理沙を庇う様に、幾つもの盾を持った人形が、魔理沙とレミリアの間に立ちふさがる。
「これでも喰らいなさいっ!!」
「何だこの水は……がぼっ!?」
偽レミリアを襲ったのは、パチュリーが操る水だ。何故か避けることも無く水に飲み込まれた偽レミリアは、身動きも取れず翻弄される。
「っ、この程度!!」
偽レミリアは翼に力を込めると、周囲の水を弾き飛ばす。だがそこへ今度は銀のナイフが迫る。
「ちいっ、何なのだこの体はっ!?」
舌打ちをしながらバリアを張ってナイフを防ぐ。だが自分の思い通りに動かない体に、偽レミリアは憤りを感じていた。
その姿に、魔理沙達は違和感を感じる。
「なあ、あいつ変じゃないか?」
「そうですね、お嬢様とは姿以外は全く似てません……」
「多分だけれど……」
観察を続けていたパチュリーが、前置きをしながら予測を述べる。
「あのレミリアは恐らく、あの魔導書に居た『何か』がレミィの偽物の体を乗っ取った存在じゃないかしら。そしてその何かは吸血鬼のことを知らない」
「なるほどね。だから流水を弱点と知らず、まともに受けたってことね」
「どちらにせよ、さっきまでのレミリアと比べればむしろ戦いやすくなった。一気に決めるぜ!」
意気揚々と魔理沙が箒に乗ると、先程の反省を生かし、拘束されないようにフェイントを織り交ぜながら、縦横無尽に偽レミリアの周囲を飛び回る。
「喰らいなっ!!」
「ぐっ!!」
旋回しながら放たれる魔力弾を前に、偽レミリアは防戦一方である。さらにパチュリー達の援護も有り、徐々に苦境へと迫られる。
「舐めるなあっ!!」
魔理沙から距離を取るべく、偽レミリアは全身からエネルギーを放出する。だが何度も攻撃を受け続けた結果、全身に傷跡が見える。
さすがに慣れない体で一対四は分が悪いと判断した彼女は、歯噛みしながらも足元に紫色の魔法陣を描く。
「貴様ら、この屈辱は絶対に忘れぬっ! 必ずや深淵の闇に叩き落としてくれるっ!!」
「待ちなさいっ!!」
何かをされる前にアリスが人形を操って攻撃を仕掛けるが、その攻撃が到達するよりも魔法陣が起動する方が早かった。光が図書館を満たす。
「っ、あいつは!?」
「……逃げられたわね」
後には偽レミリアの姿は完全に消えていた。それに気づいた魔理沙は、急いで図書館の出口へと急ぐ。
「どうする気なの、魔理沙?」
「そんなもん、決まってるだろ。あいつを捕まえるんだっ!!」
パチュリーの疑問に、勢いよく答える。魔理沙の勘が告げていた。あの偽レミリアは絶対に異変を引き起こす。ならば、首を突っ込まずには居られない。それに、あの魔導書も偽レミリアが持って逃げた。倒すことが出来れば、回収できるかもしれない。
「それじゃあなっ!!」
箒に乗って、勢いよく扉から出ていった魔理沙。その後ろ姿を見ていたパチュリーは、どこか嫌な予感を感じるのだった。
妖怪の山の上空。そこでは高速で飛行する二つの光が戦闘を繰り広げていた。
「フォトンランサーっ!!」
片方は黒いボディスーツと黒いマントを身に纏った金髪の少女。彼女は杖を振るいながら、相対する敵に向かって閃光を放つ。
「喰らえーっ!!」
もう片方は青い髪に青い目。そして黒いシャツを纏った妖精。紅魔館を襲撃し、美鈴によって撃退された偽チルノだ。彼女もまた、青い電光を少女に向かって放つ。
どちらもまるで流星のように妖怪の山を飛び回る。だが、この山に住む妖怪たちが、勝手に入り込み無法を侵す者を見ているだけなわけが無い。
「そこまでです。大人しくこの山から出ていきなさいっ!!」
姿を現すのは、白狼天狗のチーム。この山の警備を行っている彼らは、侵入者に対しては一切の手心無くその刃を向ける。
「くっ!」
金髪の少女は偽チルノの攻撃に加え、襲来する白狼天狗の攻撃にも注意しなくてはならず、徐々に集中力が途切れてくる。
一方の偽チルノはというと、
「邪魔だよっ!!」
なんと、襲ってくる白狼天狗をまるで苦にせず、近寄ってくるものは皆、纏った雷によって打ち倒して見せている。少女に攻撃を加えながらに関わらずだ。それはつまり、偽チルノにはそれだけの実力があるということを示している。
「お前達ごときが、邪魔をするなっ!」
偽チルノが周囲に向かって青い雷撃を放ち、白狼天狗たちを焼き払う。命にこそ別状は無いが、体が痺れしばらくはまともに飛行は出来ないだろう。
そして白狼天狗に気が向いていた少女に向かって、一瞬にして接近して見せる。
「もう、終わらせるよっ!!」
青い電撃を纏った右拳が少女のバリアとぶつかり火花を生む。だが白狼天狗との戦闘で消耗した少女のバリアが破られるのに、そう時間は掛からなかった。
「雷迅拳っ!!」
全力を込めたパンチが少女の左頬を捉える。そして、衝撃で意識が揺らいだ少女の首元を偽チルノが掴んだ。
「折角見つけたんだ。ただで消えて貰うのは困るんだよね」
そう言い放つと、偽チルノの体が青い霧へと変化し、少女の体を包み込む。その光景を、地に落ちた白狼天狗達は見ていることしか出来ない。
「一体何が……?」
一人の白狼天狗の呟きは、静かに風の音に紛れて消えていった。
「っ!」
人里と三途の川を結ぶ中有の道。そこにマテリアルSの姿は有った。
「今の反応……なるほど、王が目覚めたのですね」
彼女が感じ取った気配。それはとても微弱な反応だったが、それは間違いなく彼女が忠誠を誓う王の反応だった。すぐに幻想郷で発生し続ける闇の欠片の反応の中へと消えてしまったが、完全復活すれば居場所もはっきり分かるだろう。
そしてもう一つ。北東の方向へ視線を向ける。その先から感じ取れるのは、活発で無邪気な反応。
「マテリアルLもかなり力を取り戻したようですね……」
これでマテリアル三基が目覚めたことになる。マテリアルSは静かに笑みを浮かべる。これなら『砕け得ぬ闇』の確保もそう遠いことでは無いだろう。
「では、私は活動拠点でも探しましょうか」
王が完全復活を成し遂げた後を考え、この幻想郷で行動を行うための土台作りに着手し始める。出来ることなら、人目から離れた場所の方が良いだろう。紫から聞いた話だと、こちらの目的を邪魔する人間が現れる可能性が高い。彼女の脳裏には、一人の少女の姿が思い浮かぶ。
「博麗の巫女……どれほどの実力なのでしょう」
前の素体で戦った際には、向こうは本気を出した様子は無かった。幾つもの異変を解決したというその実力。ぜひ本気の手合わせをしたい。だがそのためには……
「ああ、スペルカードも作らないといけませんね……」
紫から手渡された紙を見ながら呟く。この幻想郷ではスペルカードを用いた決闘によって勝敗を決める。本気の相手を見るには、こちらも相手に合わせる必要があるだろう。
「忙しくなりますね……」
最も早く復活をした弊害か、やらなくてはならないことが多い。しかし、自分は「理」のマテリアル。王のためであるなら、この程度の労力など苦にはならない。
自分達の目的を叶えるため、彼女は水面下で行動を開始し始めた。