乙女剣士と戦闘狂の暗殺教室 作:ニック
「今日だったわよね?転校生が来るの?」
「あぁ」
といつもの登校日。俺と八重樫さん、いや雫はいつもの通学路を歩いていた。
というのも昨日白崎さんを見送りした後の帰り道雫から言われてのことであり、名前で呼んで欲しいと頼まれたのだ
大体関係が変わったことはあの日から察しがついているが、今のところ問題はないので
「この時期で、しかもこの文章ってことは暗殺者転校生かしら?」
「だろうな」
烏間先生から送られたメールには
『明日から転校生が一人加わる。多少外見で驚くだろうが…あまり騒がずに接して欲しい』
とのことらしい
「でも基本的にこの歳で殺し屋になっているってかなり珍しいって聞いているけど」
「あなたみたいに忍者であるってことも珍しいでしょ?」
「いや?甲賀や伊賀の同世代の奴は結構いるぞ?正直八重樫は元々身内の紹介しかとらないし、雫の婿に継がせようとしていたらしいけど……俺がいるからその心配もなくなったしな。裏はほぼ確実に俺が継ぐことになる。多分高校卒業したら八重樫に苗字が変わるだろうし」
実際俺は八重樫を継ぎたいって思っているし、師範たちのそのつもりでいるらしい。何でも屋についても手伝い程度で結構実績を上げているし
そういえば
「八重樫は将来的に何になりたいのか希望はあるのか?」
「えっ?」
「いや。なりたいものだよ。剣道の道をそのままいくんなら剣道の師範の道を目指せばいいし、それに他の道だってあるだろ?八重樫はまぁ俺が全部で継ぐのもありだから」
「……」
「えっと?もしかして考えてなかった?」
俺の言葉に雫は頷く。
将来設計はしているタイプだと思っていたのでこの返答は意外だった
「えぇ。でもあなたみたいに進路を決めている人は少ないんじゃない」
「そうか?」
「えぇ」
そういうものなのかな?まぁ俺にとって忍術も剣術も大切にしてきたし、今も楽しいってことが多いしな
そんな将来の話をしながら学校へ向かう。そして教室に着いて挨拶しようと俺は教室のドアを開けてとある一点を見てそしてまた閉じた
「どうしたの?」
「いや。今どう見てもおかしなものが見えたような気がして」
「……どういうこと?」
「とりあえず入るか。……ってやっぱり見間違えじゃないのか」
そう呟くのも無理はないだろう修学旅行前にはなかった席に黒い直方体の物体が置かれてある
箱状の液晶モニターからすると顔見たいなものが現れる
「……これは?」
「恐らくAI搭載した兵器だろ?恐らく行動パターンや戦闘行動を学習するイージス艦の応用型として作られたんだと思うけど」
「…なんでもあなた知っているわね」
「なんでもはしらないって。知っていることだけ」
言ってみたかったことの改良型というとすると竹林の目が少し輝いたような気がした
なんとなく仲良くなれそうだと思っているとすると倉橋さんが俺の方を見る
少しだけホッとしたように笑い俺にピースを作り笑う
倉橋さんに軽く手を振るとするとジト目の二人の視線に気づく
「……忍、倉橋さんと何話しているのかしら?」
「いや、普通にお前のことを心配そうだったから」
「忍?」
すると今度は神崎さんが反応する
あれ?一瞬空気冷たくなったような?
少し震えながら矢田さんが聞いてくる
「二人って名前を呼び始めたの?」
「あぁ。別に悠馬や健斗と同じだから別に問題ないし、元々名前で呼ぶのに抵抗ないし、後輩は俺男女構わず全員名前呼びしているから」
「そうなんだ?」
「別に名前で呼んでほしいならそっちに変更するけど?」
「あっ!僕もいいかな?」
すると潮田が先に手を挙げる。いつのまにか固定砲台より、俺のクラスメイトの呼び方に話題がシフトしていた
朝のHR。烏間先生がチョークを手に取り、『自律思考固定砲台』と書いた。
「ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ」
『みなさまよろしくお願いします』
「……よくやるな。人口知能だからなんとか思考能力と顔を持っていることを逆手に契約の裏をかいたんだろうな」
「裏って」
「実際そうだろ?こんなことにならなければ兵器の参入なんて認められないだろ」
俺がそういうと声を詰まらせる烏間先生
実際こんなのは屁理屈でしかない。
「それに教師が認めてもクラスに認めてもらわないといけないだろ?俺だって仕事の前に信用を作るところから始めたんだし、俺だって生徒だしな」
『……生徒に認めてもらう?』
「このことが理解できなかったら何にも話にならないと思うぞ?」
俺は意図を含ませた言葉を送るとすると首を傾げる烏間先生たち。
そして一時間目、予想通りの結末だった
授業中に左右から、恐らくプラスチック製の銃が展開される
密度の高い弾幕が教室に放たれるがやはりというべきか当たらない
当然のことだが当たらない。まぁあっちも最初の暗殺を当たるとは思ってもいないだろう
「ショットガン4門に機関銃2門ですか?濃厚な弾幕ですがここの生徒は当たり前にやっていますよ。それと授業中の発砲は禁止ですよ。それと、井岡くん。どこに行くつもりでしょうか?」
「ん?射撃が終わらないんなら今日は別の教室で自習しようと思ってな」
「にゅや?」
俺の言葉に殺せんせーは少しだけ驚いたようにする
「明らかに邪魔だろ?俺は仕事も合わせているけど最低限度の常識はわきまえるだろ?自分中心的に授業中に射撃をすることなんてしない。というよりも授業にならないし授業の声も聞こえない。それなら他の教室でイリーナ先生の英語の授業でも聞いていた方がマシだ」
「……」
「それにそれが暗殺できるようなら俺たち要らないだろ?勝手に機械相手に授業しとけばいいってことだ。どうせ行動パターンから動きを予測して撃ってくるタイプの機械だからこれから先もこの射撃を続けるんだろ?こんな兵器が教室にいて授業なんてできるわけないし」
「ちょ、ちょっと」
俺は一瞬カルマを見るとすると軽く頷く
布石は打っておいたので意図は伝わっただろう
「そうだね〜俺も授業どころじゃないしこのままであるなら俺も卒業までフケるよ」
「か、カルマくん?」
「だってそうでしょ?授業しているのに授業にならないって。それに実際井岡の言う通りでしょ?」
「……まぁそうわよね〜。私もパスかな」
「中村さん!?」
「俺もパスだ。さすがに邪魔だろ」
すると察しのいい中村は俺の策が分かったらしい。そして次に寺坂たちのグループも立ち上がる
まぁ寺坂たちは多分俺の意図など完全に無視した形であると思うけど
「……俺も正直嫌だな」
「私も」
「ちょ、ちょっと皆さん!!」
するとクラスの大勢がその流れを掴み取り立ち上がる。この時点で烏間先生と殺せんせーは気づいたようだ
全て俺の計算内であることを
「元々ここは生徒と殺せんせーの信頼がなければ成立しない。だからもし外部がどんな介入をするかによって生徒たちの対応も変わる。即ちどんな言い訳をしようが生徒はそいつをクラスメイトと認めないだろうな」
学習能力があるのであればその意味が分かるのであろう。
これ以上授業の邪魔するならとことん潰すと
何千手もある以上俺はクラスの崩壊という手を使ったのだ
そしてこの手を使ったのはもう一つ目的があるのだ
それは二度と防衛省含め暗殺者や兵器の使用に生徒を巻き込まないこと。それであれば暗殺を放棄することだ。
この教室を成立させている人物は殺せんせーのほかに二人いる。そしてその一人の条件に元三年E組の初期メンバーを優先するはずだと予想はついていた
「……分かりました。それと自律思考固定砲台さん。今井岡くんが言った通り授業中の妨げになることはよしてください。これ以上授業中の妨害をするようなら、あなたを生徒と認められません」
『……分かりました』
学習能力はあるらしく、これ以上の射撃はしてこなかった。これで……一件落着というところかと思うと俺は小さく息を吐いた