「よし、これで終わりだ」
「ふぇー…意外と面倒なんだね…」
眠りから覚めた俺は依頼の細かい内容、条件を博士と協議し、それをまとめた紙を作成しクライアントとなる博士に承認して貰う。
傭兵というのは個人差はあるが基本的にはかなり契約にうるさい、口約束で依頼を受けるような事は絶対にしないし契約書の隅から隅までチェックするのが基本だ。
実際、契約書の隅っこに書かれた一文のせいで報酬が無くなった、何てこともあった。
ましては今回は最終的に二年間という長期契約になったのだ、慎重になって当然である。
それに今回の件は俺としてもなんとしてでも話を決めたかった。俺はISと戦い気を失い五日間も眠っていたらしいのだが、その間に俺が亡国機業に目をつけられたという噂が出回ってしまったらしく、端的に言うと干されていたのだ。
亡国機業というのは第二次世界大戦の頃からあると言われている所謂死の商人で裏の世界では絶大な影響力を持っている。
そんな大手に睨まれている傭兵を使いたいと思う奴は居ないだろう、事実眠っていた五日間の間に来た依頼のメールは0だ。普段なら有象無象問わずひっきり無しにメールが来ているのだがお前真面目に雇う気あるのかとつっこみたくなるふざけたメールすら無い。
という俺の事情もあり契約に関する協議は滞りなく終了した。報酬も束博士お手製の専用ISを始め破格の報酬を用意して貰えたし待遇も護衛とデータ取りのため基本的にはラボで博士と生活を共にする事になるのだが博士の許可さえあれば外出も出来るので不満はない。
「これで博士は正式に俺のクライアントだ。これから二年間よろしく頼む」
「博士なんて固い呼び名じゃなくて私の事はらぶりー束さんと呼びたまえ」
「了解した、らぶりー束さん」
「ふぇっ!」
クライアントの言う事は絶対なので言われたとおりに呼んでみると博士は顔を赤くしていた。
恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに
「ところで聞くのを忘れていんだがここはどこなんだ?」
「ふっふっふ、ここは束さんの秘密基地第24号なのだ!」
そういいながららぶりー束さん()はモニターに地図を出した。
「太平洋のど真ん中か、よくもまぁこんな所に拠点を作ったもんだな」
「束さんお手製大工マシンにかかれば海の底だろうとどこだろうと関係なく快適拠点が作れるのだよ!」
確かに快適な空間である。海の底にこんなものを建造出来るのだ、彼女の技術力は常識で考えないほうがいいだろう。
「早速だけどねーくんにはISのテストをやってもらうよ」
博士が俺の手を引き、テスト用のアリーナまで連れて行かれる。
そこには黒いISが鎮座されていた。
「これが束さんお手製、ねーくんの専用IS『ブラック・グリント』だよ!」
ブラック・グリント、黒い閃光といった所か
「最初は白い装甲で名前もホワイト・グリントだったんだけど、ねーくんが起動させちゃってから急いで塗装し直したんだよ!」
「別に黒が好きって訳じゃないんだが…」
「えー、だって『黒の死神』の名で恐れられる『ネロ』くんのISだよ、黒じゃないと締まらないじゃん」
「まぁらぶりー束さんの好意だ、受け取っておくよ」
「それまだ続いてたんだ…」
渡されたスーツに着替えながらそんなやり取りを終え、俺は博士の指示に従いISに体を預けるようにする。
「っ!」
一瞬で頭の中に莫大な量の情報が入ってきて苦痛の声を出してしまう。
そしてISが装甲を展開し、俺の体全身を包んでいく。
「ねーくん大丈夫?」
「問題ない、続けてくれ」
そう言うと博士は空中に表示された二つのキーボードを両手で凄まじい速さで操り始めた。
「よし、フィッティング終了っと」
「随分早いな」
「ねーくんが眠ってる間に必要なデータは入れておいたからね。じゃあちょっと動いてみて」
「了解」
まずは地上でゆっくりと武道の型のような動きをして動きを確かめる。
ISは俺の意思通りに動いてくれまったく違和感は無かった。
「凄いなこれは、まさしく自分の手足ってとこだな」
「ねーくんのデータを入れた専用機ってのもあるけどねーくんのIS適正が高いからだよ、適正が低いとズレが生じるからね」
「そうなのか」
「次は飛んでみてくれる?」
一通り動き、問題ないことを確かめたところで博士から飛ぶよう指示される。
「おっと、出力が高いな」
「少し抑えたほうがいい?」
「いやこれくらいなら乗りこなしてやるさ」
想定以上にスラスターの出力が高くバランスを崩してしまうがすぐに立て直す、ISの操縦はイメージによる直感的な要素が多いと聞いた事はあったが確かに戦闘機やヘリなどの理詰めの操縦とは違いISはイメージするだけである程度動いてくれた。
「地に足が着いてないのは不安だが、空を自由に飛ぶってのは楽しいもんだな。夢が一つ叶った」
「初めてでここまで動かせるなんて凄いよねーくん!」
エルロンロールやインメルマンターンなどの戦闘機動をこなしている俺を見て興奮している博士、もう少し驚かせてみるか。
そう思い先程ISから流れてきた情報の中にあった操作技術の中で今の俺にも出来そうなものをやってみる。
ドヒャア!ドヒャア!
「くぅ…!」
少し無茶をしすぎたか、急激な加速と方向転換によるGが体を襲い激痛が走る。
「二段瞬時加速!?それも連続で…」
博士は唖然とした表情でこちらを見つめていた。
「ご満足頂けたみたいだな」
「流石だね、ねーくん。だけど無茶はだめだよ」
「わかってるさ、流石に連続でやるのは燃費がわりぃしな」
「体の事いってるんだけどなぁ…」
武装はまだ作成中との事らしいので地上に降り、ISを解除した。
ISは指輪となり俺の右手の中指にはめられていた。
「それは待機状態って言って専用機はそうやってアクセサリーになって常に身につけられるようになってるんだよ」
「そいつは便利だな、それでテストの結果はどうだったんだ」
「バッチリだよ!まぁ束さんが手がけたんだから問題なんてある訳ないんだけどね」
「そいつはよかった」
テストパイロットとしての仕事も依頼に入っているので問題があっては困る。
「むしろ問題なのはねーくんの方だよ、IS適正Sってどういう事なの!?」
「それって凄いのか?」
「凄いなんてもんじゃないよ、適正Sはちーちゃんを始めモンドクロッソ優勝者レベルなんだよ!」
「そいつは凄いな」
今までISの事なぞ学んだ事はなかったし、ISを動かせる事が分かった今でも表舞台で派手に乗れるという訳ではないのでありがたみが感じられない。
「初めてで二段瞬時加速までやっちゃうし、ねーくんも私やちーちゃん並の天才かもしれない…」
「それは持ち上げすぎだ、ISの操縦なんてイメージさえ出来れば誰でも形にはなるだろ」
実際あの二段瞬時加速も俺の中では特に難しい事をしたという意識も無い、スラスターの吹かし方など無駄だらけである。
「凡人にはそれが出来ないんだよ…」
「そういうもんか、武装のテストはいつ頃出来そうなんだ?」
「うーん、オーバード・ブーストとアサルトアーマーのテストも一緒にやっちゃいたいから広い場所を確保出来たらかな、ここじゃ手狭だし」
「オーバードなんちゃらとアサルトなんちゃらってのは?」
「『オーバード・ブースト』略してOBはシールドエネルギーを使って莫大な推力を得るシステムで、『アサルトアーマー』略してAAはシールドエネルギーを圧縮、爆発させる事で周囲の敵を攻撃するシステムだね。両方共この機体の目玉だよ。」
「なるほど、しかしシールドエネルギー使っちまうんじゃ継戦能力に難があるんじゃないか?」
確かに強力な武器になるシステムではあるが自分の体力を削るというのは頂けない、どんなにボロボロになっても敵を倒せば終わりのゲームとは違うのだ、戦場を知らない科学者はそれを理解しようとしない奴が多いのが困る。
「戦場を知らない科学者が、なんて考えてる顔だね」
「それは失礼、だが実際俺がこれに乗って戦場に行ったとしてもそのシステムは使わんぞ」
「ふっふっふ、私は天才科学者束さんだよ、そんじょそこらの凡人とは違うよ。もちろん継戦能力を補うためのシステムも積んでるよ」
「継戦能力を補うって言うとバッテリーかなにかか?」
「まぁそんな感じだね、ねーくんならうまく使えると思うよ」
自分の機体の事なのだから詳しく教えて欲しいのだがはぐらかされてしまう、恐らくはシールドエネルギーを補給するバッテリーのようなものでも用意しているのだろう。
俺はISスーツから着替え、博士の所へと戻る。
「そういえばテストの時夢が叶ったって言ってたけど、空を飛ぶのが夢だったの?」
「正確に言うなら夢の一部って所だな、俺の夢は色んな所に行って色んな景色を見てみたいって事だ。色んな景色ってのに空からの風景も含まれてるからな」
「どうしてそんな夢を?」
「俺は物心付いた時から戦場に居てな、テロ組織に拾われて少年兵として育てられてたんだ、その後そのテロ組織が潰された時に傭兵に助けられてその傭兵に世界は広い、空はもっと広い、宇宙はその空より広い、戦場なんて小さな所だけで終わるなって言われてそれからは戦場以外の世界を見てみたいって思ったんだ。いつかは宇宙も見てみたいもんだな」
「私と…同じ…」
俺の独白を聞いた博士は真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「私もね、空を自由に飛べる翼が欲しい、宇宙のその先を見てみたい、その夢のためにISを作ったの、だけどISは世界に認められなかった。それが私は許せなかった、だからあんな事をして歪んだ世界にしちゃってあの子達の役目も歪ませちゃった…」
あんな事、というのは白騎士事件の事だろう、あれがマッチポンプだという事は少し調べればすぐ分かる。それにあの子達というのはISの事か、確かに白騎士事件で既存兵器を凌駕する戦闘を見せたISを宇宙開発用に研究するところは無く、すべて兵器利用目的で研究されている。博士もブラックグリントという戦闘用ISを作っているが、非道な研究を止めるため、自らを守るために苦渋の決断だったのかもしれない。
「もう反省してるんだろ、ならいいじゃねぇか少しずつ償っていけば、俺も付き合ってやるよ」
「どうして…?」
「あんたが俺のクライアントだから、それに同じ夢の同士だから。あんたを手伝うのが俺の夢を叶える一番の近道っぽいからな」
博士が表舞台で動けるようにサポートしてやれば宇宙開発の為の研究も進めやすくなるだろう。
「まぁまだ頼りないだろうが、傭兵としてだけじゃなく同士としても頼ってくれよ」
「ありがとう、ねーくん」
博士と握手を交わす、握手なんてしたのはいつ振りだろうか
「これって友達になったって事でいいのかな…」
「いいんじゃないのか…多分」
どうやら博士、いや束は友達が少ないらしい、世界中から狙われているのだ、仕方ない事だろう。
俺も人の事はいえないのだが、傭兵稼業など世界中を駆け回る上に気の合う仕事仲間を作っても次の仕事では殺しあうなんてのが日常だ、友達など作った事等無い、むしろ織斑姉弟が居るだけ束の方が友達が多いだろう。
「「友達…フヘヘ…」」
慣れない友達を作り、気持ち悪い笑みを浮かべているボッチ二人であった。
ブラック・グリントはVDの奴じゃなくてfAの白栗の黒塗装
VDのもかっこいいんだけどISって感じじゃないし触手とか
てかあれほとんどライールやんけ…それに動きが粗製過ぎて劣化コピー感が拭えない。