「…これでユグドラシルも終わり。全部、全部全部消えて無くなる。」
かつて大人気であったVRMMO【ユグドラシル】のサービス終了日。
王都等に残ったプレイヤーが集まり、盛大ににぎわっている中、1人静かにワールド全域を眺めているプレイヤーがいた。
ギルド【最果て】のギルド長であり、唯一のギルドメンバー【
普段は長いからと、名前の元であるサクラと呼ばれ、人生の青春を捧げていたプレイヤーの一人。
彼女は最果ての塔最上階、ワールドの遥か遠くまで見渡せる展望台の手すりに腰を下ろし、いつも装備している桜の花を模した番傘をクルクルと不規則に回す。特定のどこを見るわけでもなくぼんやりとしていた。
彼女の背後には、最期だからと連れてきた最果て全てに配置していたNPC全て。
第1階層守護者
第2階層守護者
第3階層守護者
第4階層守護者
第5階層守護者
第6階層守護者
守護者統括
守護者達の後ろにはメイド長マルガリータを始めたとしたメイド部隊や庭師などのNPC達。
総数は優に50を超えたその光景に、ソメイヨシノは我ながらよくぞここまで作ったものだと苦笑を浮かべる。
突如、遠くの夜空に花火が咲いた。
運営のささやかなサプライズだろう。次々と夜空に咲く大輪の花々は、最後まで残ったプレイヤーの心を奪う。
終わればもうこの光景は見ることは出来ない。また
―――あぁ、なんてクソッタレな人生なのだろうか!過労死で死ぬくらいなら、いっそのことユグドラシルと共に死んでしまいたいものだ!
30分程前にメッセージで話しかけてきたギルド長を思い出す。良ければ一緒に最期を迎えないかと言われたが、ソメイヨシノは断った。
…きっと、今頃あの愉快な異形ギルドを束ねてきたオーバーロードも、私と似たようなことを考えているのだろう。彼は皆で作ったナザリックをとても愛していたから。
「…ギルドもそうだけど、私はやはりユグドラシルそのものにも愛着を持っているから。……だから、最期は1番眺めのいい“ここ”で。」
そう言ったはいいものの、やはり痛いほどの静寂に寂しい気持ちが溢れてくる。
なにか気を紛らわすものは無いかと思案したところで、思いつく。
今頃寂しがっているであろう友人を巻き込んで遊ぶ、最期のお茶目。
「モモンガさん、魔王ロールプレイノリノリでやってたし、提案に乗ってくれるかな。」
残された時間はそう多くはない。ソメイヨシノは早速モモンガにメッセージを飛ばしてみる。
《サクラさん?何かありましたか?》
《いえ、特に重要なことではありませんが、最期ですし思い出作りとしてモモンガさんとお茶目をしたくなりまして。》
《お茶目、ですか。どんなことをするんですか?》
《終焉ロールプレイしましょ。どーせ誰も聞かないんですし、メッセージ繋いだまま声に出して》
《いいですね、それ!オープンチャットも運営チャットもシャットダウンしてたので少し寂しかったんです》
よかった。先程あちらのお願いを断った手前、こちらも断られる覚悟もしていたから本当にモモンガさんは優しい。
《私もです。では、僭越ながらこちらから始めさせていただきますね。》
《了解です》
「《残りもあと僅か。世界の終焉と言うのはどのようなものなのでしょう。》」
『《さてな。だが、この世界が終わろうと我らのやってきたことは無駄ではない。例え誰の記憶にも、記録にも残ることがなくとも、我々だけが覚えていればいいのだ。》』
「《───えぇ、もちろん忘れませんとも。もし次があるならばまた仲良くしてくださいね、我が盟友モモンガ》」
『《こちらからもよろしくお願いしよう、我が盟友ソメイヨシノよ》』
まもなく終わる。
とても楽しい旅路だった。仮初の世界だとしても私はこの世界の生を一生忘れない。
「《それではさようなら、私の恋したユグドラシル。》」
ユグドラシル終了まで残り10秒。
「《我ら最果てと》」
7
『《アインズ・ウール・ゴウンに》』
5
4
3
2
1
「《『《――――栄光あれ!》』》」
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ソメイヨシノの視界は、ブラックアウトされなかった。
否、それどころか強制シャットダウンもされておらず、最果ての展望台から見える景色が瞬き一つで見慣れた森から、全く違う森へと景色が変貌していた。
「―――――は?」
良ければ感想コメント等よろしくお願いいたします。
絶対とは言い切れませんが創作の励みになります。