仮初めの世界に咲いた日本の桜   作:メルクリオ

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まだナザリック陣営は出ません。
どこで合流させようか…(遠い目)


第二話 最果て

「―――――は?」

 

 

 

 

予想していなかった、予想すらできなかった異常事態にソメイヨシノは思わず立ち上がろうとした。

だが、彼女が座っていた場所は展望台の手摺。

そのような不安定な場所で急に立ち上がろうとすればどうなるだろうか?

 

答えは至極単純明快。

バランスを崩し落ちるだけである。

 

 

「やばっ、」

 

 

ソメイヨシノが手すりからずり落ちる、と思ったその瞬間────────

 

 

「ソメイヨシノ様!!」

 

 

聞き馴染みのない声が響く。

同時に落ちかけていた体が塔の中へと引き戻される。

 

 

「大丈夫でしょうか、ソメイヨシノ様。」

 

 

まだ焦りの残る不安そうな顔が視界に入る。

その顔は見覚えのある顔で、ありえないはずなのに当たり前のように私の傍で喋っている、この子、は…。

 

 

「…………ヤエ…?」

 

「はい、守護者統括ヤエザクラでございます。大丈夫でしょうか?…もしかしてどこかお怪我でも……。」

 

 

NPCであるヤエが喋った?しかも、この状況から察するに…ヤエは落ちそうだった私を助けた、って事になる。コマンドにないはずの行動を、この子がした…?

 

 

 

待て、待て待て待て待て待て!どういう事!?何が起こった!

ユグドラシル終了と共に強制ログアウトさせられるどころか景色が瞬き一つで変わった?ユグドラシルⅡ…いや、流石にあの狂った運営でも続編の続投配信は告知はする…と信じたい。

 

となると何だ…?電脳誘拐か?

でもアレは既に都市伝説レベルまでのものだ。過去に電脳誘拐が発生したらしいが、現在では厳重にセキュリティが敷かれ電脳誘拐なんて出来なくなっている。もし実行出来たとしても即座に、お国のお犬様達が動くらしいじゃないか。罪もかなり重いしやろうと思う馬鹿は居ないはずだ。

 

 

 

 

……それに、()()()()()

優しい甘い匂い。多分、塔や地上に配置した花の匂いに……目の前のヤエの匂い。

 

これは今までのユグドラシル…すべてのゲーム全般でありえなかったこと。現実との区別を付けるために禁止されていること。

 

 

もしかしてと、試しにログアウトやGMコールをしてみるが、そもそもコンソールが出ない。

さらに頭に思い浮かんだ人物へ手当り次第にメッセージを発信してみるも、こちらも全滅。

 

 

「…これは────」

 

「ソメイヨシノ様…?」

 

 

もう一度呼ばれた自分のプレイヤー名に考え事で下に下げていた視線を上げる。

目の前にいるヤエを含め、控えさせていた他のNPC達も皆一様に不安げな顔でこちらを見ている。

 

…今はこっちよりNPC達を優先した方がいいか。

 

 

「ごめんなさいヤエ。心配かけてしまいましたね。」

 

「い、いえ!貴女様が謝ることなどございません!」

 

 

おぉう、勢いが凄い。何て言うか…これは……。

 

 

「お前達にも心配かけてごめんなさいね。私は大丈夫です。」

 

 

立ち上がって後ろにいる子達にも一言声をかければ、ヤエと同じように私が謝る必要はないと騒めき出す。

 

うん、変に幻滅されると色々と不都合が出てきそうだ。下手なことは言えないし下手なことは出来ない。

外の現象についても調べたいが、この塔の隠蔽だな。情報何一つないままギルド襲撃されると全滅する可能性だってある。

 

…気は進まないけど彼女達の前ではソメイヨシノとしてRPした方がいいか。

 

 

 

 

 

 

「聞きなさいお前達。」

 

 

騒めき立っていたのが嘘だったかのように、シンと静まり返る。

 

これはこれでやりづらい…!

いえ、いえ!ここで押されてどうするのです私!

RPは大の得意でしょう!!何度VRTRPGやったと思ってるんですか!

 

 

「現在、我ら最果ては前代未聞の異常事態が起こっています。外の景色を見ての通り、元居たユグドラシルから転移しています。」

 

 

一度言葉を切り、全体を見渡す。

全員、真剣な表情で私の言葉に耳を傾けている。

 

本当に、生きているみたい…いや、()()()()()()()()()()

意志を持ち、魂を持った一つの生命体。

ユグドラシルでは金貨を対価に死亡したNPCの復活は可能だった。でも、それはユグドラシルでの話。この世界で可能であるかは不明。不可能な可能性だって大きいのだ。悪戯に外へ調査させに行って死なせてしまうのはリスクが高すぎる。

 

 

「…誰が、何を使って、どのような理由で私達を転移させたかは不明です。しかし、敵が何であれ、まずは領地の隠蔽を。情報収集はその次です。」

 

 

この中で一番幻術系の術が得意だったのは―――――

 

 

「―――シダレ。」

 

「はい。シダレザクラ、ここに。」

 

 

長く真っ直ぐに垂れた美しい白が前に出る。

髪の所々に桜の髪飾りが飾られ、動くたびに風に揺られた桜のような美しさを醸し出している。

 

シダレザクラは最果ての中で最も幻術に特化させている妖精。

第六階層に配置していたこともあってステータスはもちろん高くなるまで育てた。例えタネが割れていているPL相手であっても、油断してかかると幻術で惑わされている間にその命を刈り取られていたほどには強い。

 

 

「お前に最果ての隠蔽をお願いします。幻術と防護結界を得意とする配下達を纏め早急に仕上げなさい。それと、事がことですので――ベニヤマ。」

 

「はっ。ベニヤマザクラ、ここに。」

 

 

緩くウェーブした紅に近いピンクがシダレの隣に並ぶ。

他のNPCに比べて大きい彼女ではあるが、その美しさは他の者に劣ることはなく、真の通った強かな女性の印象を他者へと与えている。

 

ベニヤマザクラは攻防のバランスが取れた妖精。

タンクとしては勿論、相手を殲滅する力量もしっかりと兼ね備えているため、一時期最果て攻略者からは【動く鉄要塞】と呼ばれてた。ちょっと気に入らなかったから後でしっかりとお灸をすえてやったが。

 

 

「お前はシダレ達が作業している間の護衛を任せます。積極的に敵対する者であれば死亡しない程度に迎撃を。友好的、もしくは中立的であれば丁重にこちらに来てもらうように交渉を。断られてもあちら側から攻撃されない限り荒事は厳禁です。」

 

「了解いたしました。」

 

 

とりあえずはこんなものかな。

隠蔽をしてもしばらくは警戒状態を続けて様子見。特に音沙汰も無ければこの世界の情報集めをしに行ってもらわなければ…。

 

 

「各階層守護者及び他全ての者達に厳命します。」

 

「警戒を怠るな。異常があればすぐに報告せよ。我らの理想郷は我らの領地。何者にも侵させはしない。……されど、私は外のモノを拒まない。安寧を求める者には安寧を。癒しを求める者には癒しを与えよ。土足で踏み荒らさんとする者にはそれ相応の反撃を。」

 

 

ユグドラシルを失い、最果てしか残らなかった私にはここを護る以外の選択肢はない。あったとしても、絶対に選ばない。

故に、かの円卓の物語にも登場した地上の楽園としてあり続けよう。

 

 

「―――――最果て(我々)に永遠あれ。」




今回切りどころが分からなくなって色々と迷走してしまいました。
さーてここからどう持っていきましょうかねぇ(無計画猪突猛進列車)
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