ちな、今回もナザリック陣営不在。
恐らく次か次の話ぐらいにはナザリック陣営と合流すると思います。ナザリック陣営好きな人は申し訳ないです…!!!もう少々お待ちを!
「ん”~~~~~あ”ぁ”~~~~~~~~~~…。」
場所変わってソメイヨシノの自室。
部屋の主はベッドに沈み悶えていた。
「あ、あんな…あんな演説っぽいこと口にすることになるとか…んぅおぁああああああああああああ…!!!!!」
あの後、NPC全員に命じてから彼女はギルド・リングで自室に引きこもっていた。
ゲーム時代からNPCすらも入れることはなかったその部屋はとても簡素だった。
金で縁取られた白いベッド、棚、クローゼット、机にイス。ベランダへ出るための窓はあるが、これもまた真っ白で金の刺繍がされたカーテンで閉め切られている。
枕に沈めていた顔をあげる。外は夜であると言うのに月明かりでとても明るく、カーテンの隙間から部屋を照らしうつす。
「……異世界転移なんてファンタジー過ぎるでしょ…。」
現状の対処に乗じて、見て見ぬふりをしていた現実に頭を痛める。
この世界に転移したのは私達だけか?
直前までメッセージを繋いでいたモモンガさんはどうなっている?
現実の肉体は存在しているのか?
他にも…あぁ、考えることが多すぎる。
可能性の話ではあるが、多くのプレイヤーがユグドラシル終了をサーバーの中で迎えた。だから、私達以外にも転移しているプレイヤーがいてもおかしくはない。
もし、モモンガさんも転移していると仮定すると、ナザリックごと転移した可能性が高い。私もギルド領地ごと転移したし。
発動できるのにメッセージが繋がらないのは転移した弊害か?
プログラムではなくなったのならフレンド機能も消えてるから、メッセージが繋がらないのもあり得る。
「はぁ、疑問が多すぎる。コンソールは出ないがアイテムボックスや装備変更は変わらず使用可能。メッセージも条件が揃えば恐らく使える筈。」
頭に軽く手を当てながらゆったりとした動きで体を起こす。
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、アイテムボックスの中を整理する。
ポーションはほぼ使わなかったから余っている。けど、ガチャなんてできる世界観じゃないから補充は出来ないと仮定。ファンタジー世界ならこの世界ならではの回復薬とかあるかもしれないが――2本常備のほかはボックスに保管にしておこう。
うっわ、余ってた鉱石がごろごろ出てきた。低くもなく高くもないしこれはNPC達が自由に使えるようにするか。割と使用用途広かった気がするしね。
ユグドラシル硬貨…。NPC復活で使えるかもしれないから後で宝物庫に保管してる分も把握しないとなー。
えーと、こっちは余ってる装備達か。中級以下は資金用として売っても問題ないかな?残りの上級・最上級は通常倉庫に片付けて…遺産級以上は宝物庫行きの一部無限の背負い袋かな。
データクリスタルも死ぬほど余ってんな。これも基本使わないから通常倉庫でいいでしょ。
これはネタイベントアイテムじゃないか。難易度いつも通り頭おかしいのに泥アイテムがネタ枠とか本当に頭狂ってんな運営。ふーむ…ほとんどは役に立たないが何かしらに使えるかもしれない。
スクロールも補充は利かないか…?んんん、これは保留でボックスだな。大量に残ってるとは言え、通常時にそうポンポン使うもんでもないし。そもそも使う予定なかったから花嫁装備してる時に面白がって作った高位階魔法だけだし。
えぇと、このアイテムは――――――
アイテムボックス内を整理し続けて約1時間半。
大半のアイテムを整理し終え、凝り固まった肩をほぐすように回す。
ん~、まだまだボックス内にアイテム残ってるけど流石に疲れたや。一旦休もう。
それにしても、この体寝るのか…?未だに睡魔感じない。妖精に睡眠は必要なくて24時間働ける社畜体質とかなのかな?
………めっちゃ嫌な体質に命名するもんじゃないわ、撤回撤回。
っと、そうだ。プレイヤーにメッセージが使えないならNPCならどうだ?丁度休憩入れようかと思ってたし、メッセージで何か飲み物をお願いしてみよう。
「あー…うーんと…。メイド長…マルガリータにメッセージ試そう。」
メッセージの発動はここに来た最初に何となく、感覚で知っている。
こめかみに指を当て、呼びかけたい人を想像し魔力を動かす。
『《はい、お呼びでしょうかお嬢様。》』
感情の揺れを感じない淡々とした声が頭の中に響いた。どうやら(元)NPC相手にはメッセージは有効のようだ。これならプレイヤーとかにも使用可能かな…?条件としては―――まだ確定は出来ないなぁ。
それよりも、マルガリータってお嬢様呼びだったか…。うわ、うっわ、こんなところでも黒歴史踏み抜くとか地雷だらけだなこのギルド!でも手放せないジレンマよ。くっそ…!!
「《少し、一息入れたくなりまして。紅茶をお願いできますか?》」
『《勿論でございます。お嬢様がお望みとあらば我ら
重い重い重い!配下の忠誠心が重ってェ!!
あぁ、誰でもいいから同じ環境下に置かれてるプレイヤーと再会したい。吐きそう。
「《ありがとうマルガリータ。その言葉だけでも私はとても嬉しく思います。紅茶は執務室に、茶葉は…そうね、貴女にお任せします。》」
『《かしこまりました。すぐにお部屋にお持ちいたします。》』
プツリとメッセージを切る。
ベッドから飛び降り、若干着崩れていた服を整え、手櫛で髪を直してから自室から繋がる執務室モドキの扉を開ける。
扉の先には白を基調し、金や赤で装飾された部屋。多少シンプルさはあるものの、一般人であったソメイヨシノからすれば豪華絢爛、という言葉が当てはまるような造りになっている。
部屋の中心部は床ガラスで覆われ、その下には様々な種類の花が咲き広がり、天井からはいくつかシャンデリアも下げられている。これが豪華ではないと言うのならばソメイヨシノは豪華の定義が盛大に分からなくなることだろう。
うん…、完全に作り込み要素で執務室作っただけだから本当にここを使う羽目になる日が来るとはねぇ…。もうちょっとデザイン控えめにすればよかったかな。目が疲れる。
椅子に座って待っていようと思うも、椅子も無駄に豪華にしたせいで落ち着かない。
でもきっとソメイヨシノのアバターだから絵にはなるんだろうなぁ…!!これが私じゃなければ、私じゃなければメシウマ絵になるのになぁ…!!
ソメイヨシノが心の中で血涙を流していると、控えめなノック音とマルガリータの声が聞こえる。
「マルガリータでございます。お嬢様、お飲み物を持ってまいりました。」
「入りなさい。」
ティーワゴンを押して入ってくるのは、クラシカルと一般的に呼ばれる型のメイド服を着こなし腰まで届く黒髪をよつ編みで一纏めにした人間種のNPC。最果てでメイド長の地位に置いているマルガリータ。
かなり初期の段階で作製したNPCではあるが、その実力は最果ての中でも上位の存在である。と言うのも、“
彼女は机の傍に音もなく近寄り、一礼する。
「お待たせして申し訳ございません、お嬢様。準備が整いましたのでお持ちいたしました。茶葉はお任せとのことでしたので、アールグレイをご用意させていただきました。もし、他の茶葉をお楽しみいただきたいとの事でしたら、変えてまいりますが如何でしょうか。」
「大丈夫よ。寧ろ、急な頼みでしたが手早く用意してくれてありがとう。」
「メイド如きに身に余るお言葉、痛み入ります。」
それでは、と彼女が一言置き、一切無駄を感じられない手つきで紅茶の準備が素早く行われる。
ティーカップに紅い液体が注がれ、ふわりと優しい匂いが鼻腔をくすぐる。それだけで疲れが和らいだような感覚を覚える。
気遣い完璧な上に紅茶絶対美味しいヤツだこれぇ!!設定文で完全で瀟洒なメイドって入力した記憶があるけど、それ以上に完全で瀟洒だろうこれは。元ネタのメイドさんもすごいメイドさんだったけど、マルガリータもすごいメイドさんですわ、これは。
正直私が上に立ってるとか役不足な気がして気まずい。
「砂糖にミルク、こちらはいかがされますでしょうか。」
「…そうね、砂糖は2つにミルクは適量お願いします。」
「かしこまりました。」
ここまでやってくれるの、本当至れり尽くせりで申し訳なくなってきちゃう…。
軌道修正したいけど、RPガチにしてると偶にキャラが一人歩きしちゃって軌道修正できないの辛いなぁ。
目の前でミルクが適度に注がれ、角砂糖が二つ沈む。スプーンでカップから零れない程度に前後に揺らし混ぜた後、完成したミルクティーが音も立てず静かに机へ置かれる。
マルガリータは自分の役目は終わったとでも言わんばかりに一つ頭を下げ、数歩後ろに下がった。
多分、これは、飲んでも、問題…ない、よね?
チラリと視線だけで彼女の顔を盗み見て、カップに視線を戻す。
作法はRPの為にちょこっとだけかじった程度だけど、何となくは覚えてるから思いっきり不作法って事はないはず。
えぇと、まずは長すぎる袖から手を出さないと滑り落とすどころか持てないな。
ハンドルの中に指は通さず親指と人差指を沿わすように持って、…下のソーサーは机と椅子が離れてる時ぐらいしか持ったりしないんだっけ?片手だけじゃ溢しそうだから反対側を手で支えよう。
溢さないようにゆっくりとカップを傾け、ミルクティーを口の中に流す。
甘い温もりを感じながら喉を通り、体の中心からぽかぽかと落ち着き始める。
―――美味しい。今まで飲んだことのある中で一番おいしい。
肉体面では問題なくとも、やはり精神面では相当疲れていたようで、無意識に入っていた肩の力がすっと抜ける。
落ち着くなぁ。マルガリータにお願いしてみて良かった。
異世界転移するわー、NPCが自我を持つわー、体はアバターになるわーで頭痛が痛かったけど、よくよく考えてみると割と幸運なのではないだろうか。
向こうの現実世界は仕事に忙殺されかけるし、ただの外に出るだけでもマスクとかしなくちゃ普通に死ぬし、家族は既に土に還ってるしで戻る必要性が微塵も感じられないの逆にすごくない?
しかも今、歴代ゲームの中で最高傑作であるこの
積極的に戦争するつもりないけど、最悪この世界の何かと戦うとしても強さ次第では蹂躙も可能だろうな。
最果てでの生活もー…NPCの忠誠は重いっちゃ重いけど、いずれ慣れることだろうし気にする事じゃないかな。
うん、帰る要素欠片もないね。
ふふふふふ、これが俗にいうチートハーレム転生か!“※転生ではない”ってツッコまれそうだけど!まず男じゃないから百合ハーになっちゃうけど!そもそもキマシタワー建造する予定ないからハーレム要素は皆無か。
ま、いくらチート(仮定)だからって想定外の事はいつだって起こり得る。
今現在思いつく限りの最悪の事態は、NPCの反逆と私と同じく転移しているかもしれない強豪ギルドからの襲撃。
あとは…ユグドラシルで言うワールドアイテム。ユグドラシルのワールドアイテムであれば、多少は事前に対策を立てられるが、未知のワールドアイテムであれば対策のしようがない。こっちは有るか無いかがまだ仮定止まりではあるが十分に注意しておきたいかな。
ぐるぐると思考を巡らせていると、どこからかメッセージが入る。
『《失礼いたします、ソメイヨシノ様。少しご報告したいことがありまして、今お時間大丈夫でしょうか。》』
この声はベニヤマからか。
隠蔽完了の報告か?いや、隠蔽の方であればシダレから来る可能性が高い。
そもそも、彼女らの態度からするとこちらに来て報告しそうな感じもするし…やっぱり転移の元凶が訪ねてきたか、転移の瞬間を目撃した好奇心旺盛な何者かか、ってところだろうか。
「《問題ありません。報告をしなさい。》」
『《はっ、ご報告いたします。先ほどこの世界の住人と思われる人間種と接触。名はクレマンティーヌ。スレイン法国から逃亡中、偶然最果ての塔を目撃し、確認の為に近づいた模様です。》』
スレイン法国?国は予想通りあるか。教育政策次第ではあるが、近くの地理に関して情報が効けるかもしれんが…逃亡者の野次馬ってどういう状況だ。
「《あぁ、やはり一人は目撃者はいましたか。それで、その
『《いえ、敵対的でした》』
ん?過去形?どういうことだ?
「《…瀕死ですか?》」
『《いえ、多少負傷していますが意識はあります。今は大人しく、どちらかと言えば怯えている様ですが。》』
生きてはいるけどプライドへし折った感じだろうか。
まぁいいや、話が効ける程度なら
「《こちらに連れてこられます?》」
『《問題なく。》』
「《状況は把握しました。隠蔽の進行具合は?》」
『《残り3割ほど。恐らくあと一時間もせず終了するかと思われます。》』
思ったより滅茶苦茶早く進んでる。
かなり無茶振りしたと思っていたけど、あとでお礼 ――彼女らには褒美扱いになるのかな―― をしないと。
「《わかりました。ベニヤマ、そちらにはメイド長を向かわせます。彼女が合流したら人の子は引き渡してください。そのまま玉座の間まで案内させますので。お前自身はシダレの護衛を続行しなさい。あぁ、それと人の子は客人として扱うように。》」
『《了解いたしました。》』
メッセージを切り、控えていたマルガリータに目を向ける。
「マルガリータ、ベニヤマの所へ行き
「かしこまりました、お嬢様。」
マルガリータは一度頭を下げ、命令通りにベニヤマの元に居る人を連れてくるために執務室(モドキ)から立ち去る。
「さて、私も玉座の間に行かないと。」
最後の一口だったミルクティーを飲み干し、立ち上がる。
アイテムボックスから
クレマンティーヌって子は大丈夫だろうか。一応元敵対者だから忠誠心がMAXっぽいここの子たちに威圧されないといいけど。
私の客人って言って釘は刺したけど…不安だなぁ。
ソメイヨシノは不安を感じながらも足早に玉座の間へ向かうのだった。
メイドさんの正しい口調わっかんねぇ!!!(大声)あ、マルガリータの元ネタは世界一凶悪な狂犬メイド様と察してる方もいますが完全で瀟洒な従者様です。
ただしこちらのメインウェポンは己の肉体(素手)です。サブで刀とか。
あと、最初の方で言っていたギルド・リングはギルド:アインズ・ウール・ゴウンでのリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの様なものです。名前が思いつかなかったのでそのまま適当にギルド・リング呼びしてます。
外装はシルバーリングに最果てに咲き乱れている花などが色々精密に彫ってあるイメージ。
最後にちろっと出てきたクレマンティーヌは悩んだ末に生存ルートへ。ニグンさん達どうしましょうかねぇ…。
そもそも原作ストーリーどこまで沿って改変するかも行き当たりばったりなところがあってどこまで書く気力が持つか……。