side三人称
あのライブから三ヶ月…
しばらく検査や入院などで身動きの取れなかった天羽奏は久しぶりに太陽の家に遊びに行こうと向かっていた
(まったく…とっくに治ったって言ってんのに…
弦十郎の旦那も心配性だなぁ…)
会場のノイズを倒し終え、奏たちは二課に帰投した
幸い、ネフシュタンの鎧の実験現場にいた弦十郎と了子は大した怪我もなく無事だった
もっとも、それ以外の研究者のほとんどが爆発に巻き込まれたり瓦礫に潰されるなどして大半が命を落とす結果となってしまったが…
というかあの規模の爆発に至近距離で巻き込まれて五体満足無事な弦十郎の肉体が異常と言えるだろう…
了子はそのころたまたまお手洗いに行っていたため無事だったらしいが…
(何度も考えてることだけど、旦那は本当に人間なんだよな…?)
生身で十二天将やシンフォギア装者である自分が束になっても勝てない人間超越者である弦十郎の存在に疑問を覚えながら奏は歩を進める
(……それにしても…)
弦十郎のことは一旦置いといて、奏はネフシュタンの鎧についてを考え始めた…
あの爆発の後、完全聖遺物・ネフシュタンの鎧は行方不明になってしまったという
原因は不明…だが、弦十郎含む二課の面々は
そもそも完全聖遺物の暴走とノイズ出現はなんの因果性もない
タイミングが良すぎるのだ
かつて飛鳥の行っていた通りノイズを操る何者かがおり、その何者かがノイズを操り、その隙をついてネフシュタンの鎧を強奪したのではと二課の一部は考えている
それでも考えすぎなのではという意見もでているが…
(ま、考えても仕方ない…か…)
仮にその仮説が本当だとしても現時点ではどうすることもできない
そういったことは弦十郎や了子に任せ、自分は自分にできることをやろう
そう考えてる内に彼女は太陽の家に到着した
(あの時の礼を言わないとな…)
奏はあの時、絶唱を使い死ぬつもりだった
それを止めてくれたのは他でもない太陽だ
そのことに感謝の意を述べるためにも奏は太陽の家のインターホンをならした
「おーい、遊びにきたぜ!太陽ー!」
するとバタバタという音が聞こえ、ドアから太陽が現れた
「や、やあ奏…お久しぶりですね…」
何故か他人行儀で目線も合わせようとしない太陽に不思議がりながらも奏は太陽の家に上がった
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side太陽
俺は遊びにきた奏を家に上げた
……上げたはいいが
「…………」
「……どうした?太陽?」
緊張して何も話せずにいた…
くっそ!!
駄目だ…どうしても意識しちまう…
『お主が一番大切に思っている異性と手を繋ぐことじゃ』
あの日の神様の言葉のせいか、俺はどうしても奏の事を意識してしまうようになってしまった
何か喋ろうとしても緊張して喉で止まっちまう
奏を見るだけで心臓がすごいバクバク言うようになったのだ…
このままじゃ会話もできない…
どうすれば……
いや、まてよ
そもそも神様も「大切に思ってる異性」って言ってただけだし、仲間として大切に思っているってことなんじゃないのかな?
うん、きっとそうだ!これが恋愛感情なのかどうかはまだ確定したわけじゃないんだから…
そうだよ、これはきっと恋愛感情でもなんでもないはず
ほら、そう思えば奏の顔を見てもなんとも………
駄目だ
めちゃくちゃ可愛く見える
くそ、恨むぜ神様…なんて言葉残してくれやがったんだ…
「なあ…」
そんなことを考えていたら奏が話しかけてきた
やっぱりあんな綺麗な歌声出せるなら声も綺麗だよな…って違うわ!!
「な、なんでございましょうか?」
思わず変な敬語になってしまった俺を一瞬怪訝な顔をしながら見ながらこう言った
「あの時はありがとな!」
一瞬なんのことかわからなかったが多分俺が絶唱とやらを使おうとした奏を止めた事を言ってるんだと察した
「別に礼なんていらないよ
あの時の言葉は本心なんだ!
俺はお前に死んでほしくなかった…
それに、仲間を助けるのは当たり前…なんだろ」
俺は前に奏に助けられた時の言葉を言った
すると奏は一瞬呆けたがすぐにいつもの調子に戻って
「そうだな…」
笑いながらそう答えた
その姿は何よりも綺麗だった…
「あ、そういえばさっきのへんな敬語なんだったんだ?」
「それは聞かない方向でお願いします…」
そこからはいつものように談笑をした
俺も途中から調子を取り戻し、いつも通りに喋れるようになった
そんな中でも久しぶりに笑う奏の顔は天使のように見えた
(やっぱり、神様のいう通りなんだな…)
今回三ヶ月ぶりに会って俺は確信した
俺は…
奏のことが大好きなんだと…
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side白
あのライブから三ヶ月…
私は飛鳥くんと一緒に二課保有の山の中で修行を行っていた
「…やるよ!飛鳥くん…」
「ああ
でも、俺が危険だと思ったらすぐ止めるからな…」
そう言って飛鳥くんは心配そうな顔をしながら私のことを見る
やっぱり飛鳥くんは優しいなぁ…
そんなことを考えながら私は札を取り出し詠唱を唱える
「白虎明鏡符!
そう唱えた瞬間私の指から物凄い激痛が全身を襲った
「う、うわああああああああ!!!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
私は右手の指一本にこの呪装をかけただけ…
にも関わらず、全身を内側から溶かされるような痛みがするのだ
「ま、白!今助け…」
「待って!!飛鳥くん!!!」
まるで体内を巨大な蛇が暴れまわるかのような感覚
でも、私はそれを我慢しながらそういった…
「わ、私はあのライブのとき、大して役に立てなかった…
目の前で何人もの人がノイズに殺されるのを助けることができなかったの…」
私の呪装、白蓮虎砲は飛鳥くんのような機動力特化ではなく破壊力に特化した力だ…
私の呪装は乱戦に向いてない
普段の連携ならまだしも目の前の人を傷つけないように戦うといったことが苦手なんだ
撃てば人を巻き添えにしてしまうかもしれない
そう考えた結果、私は白蓮虎砲を使わず通常の呪装で戦うことになってしまった…
結果として目の前で何人もの人を見殺しにしてしまった
乱戦の中でも白蓮虎砲を使うだけの技量が私にあれば…
そう考えた私は呪力コントロールを重点的に磨くことにした
そして呪力コントロールの極致・纏神呪の修行も始めたのだ
纏神呪は十二天将の秘奥義中の秘奥義…
本来、呪装は衣服や装飾品などにかけるものだ
例えば自らの身を守るための呪装・鎧包業羅は衣服に呪力を通して全身を守るという物だ
白蓮虎砲ならば手袋に白虎の力を送り込んで式神の力を解放する
だが纏神呪は違う…
纏神呪は自らの肉体そのものに式神十二天将の力を呪装するのだ
しかし、そのコントロールの難しさは桁外れ
指一本でこれ程の痛みが襲うのだ…
でも、これをクリアしたということは白蓮虎砲を完璧にコントロールできたということ
逆に言えばクリアできなければこの先似たようなことがあった時、また目の前の人たちを守れなくなってしまうかもしれない…
そして何より…
飛鳥くんを守れなくなるかもしれない
そう考えたとき、私はゾッとした
そんなの絶対いやだ
私は飛鳥くんに助けてもらってばっかりなんだ…
守ってもらってばっかりなんだ…
だから、私は…
「私は、目の前の人達を助けられるくらい強くなりたい…
二つとも全部守れる力がほしい…
だから……」
そして私は痛みに耐えながら右手を空に掲げる
「私は絶対!
そのための力を手に入れて見せる!!!」
そう言った時、私の手を飛鳥くんが握ってくれた
「…わかった
ならばせめて、俺に白を支えさせてくれ…
俺もまだまだ弱い…
俺も青龍が来なければきっと目の前で多くの人を亡くしてただろう…
それでも、俺は必ずお前を守れるくらい強くなる…
お前と一緒に生きるためにも…
だから、二人で、一緒に頑張ろう!!」
そう言って飛鳥くんは私の手を握ってくれる…
ああ、やっぱり飛鳥くんは優しいな…
飛鳥くんが手を握ってくれる…
それだけで私はなんでもできる気がする…
「あれ…」
その瞬間、全身を襲ってた痛みが引いていった
あれだけ体の中が熱かったのに今はほんのり暖かい程度だ…
「おい、見ろ白!!」
「え?あっ!」
私は右手を見ると右手は異質な形状に変化していた…
どうやら指一本どころか手首まで纏神呪に成功したらしい
「すごい…これが纏神呪…」
右手だけでもわかる圧倒的パワー
大きさは白蓮虎砲よりも小さい…
でも込められた呪力が桁違いだ…
これが纏神呪なんだ…
「やったな白!!
凄いじゃないか!!」
「えへへ、ありがとう飛鳥くん
飛鳥くんのおかげだよ…」
(また、助けられちゃったな…)
そう考えながら私は再び変化した右手を眺めた…
(この力をコントロールして、絶対に皆を…飛鳥くんを守ることができる陰陽師になってみせる)
そう思いながら私は修行を続けた
閑話
空白の二年間です