IS〈インフィニット・ストラトス〉いつか此の手に月を【凍結】   作:生そば

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~第四話~《無人機と新装備》(2)

 スラスターを吹かし、左方向に加速する。

 するとそれに反応して敵ISが右腕のビーム砲を放ってくる。その後左腕で威力を押さえて連射。

 

「ブルー・ティアーズより威力が高いな。打鉄でよかった」

 

 今乗っているのが参型だったら防御が疎かになるところだった。

 打鉄は元々の防御性能が高い。

 いや、参型なら避けられるだろうが。

 

「行くぞ、デカブツ!」

 

 敵の背後に回り込めた。

 バックパックのショートリニアキャノンを撃ちながら突進、接触と同時に脚部をクローに変形して取りつく。

 空かさず脚部に搭載されたリニアスピアとアサルトライフル二挺で敵のスラスターを破壊して爆発から逃れ、煙の中にいるであろう敵に脚部のロケットランチャーパックを放つ。

 

「どうだっ!」

 

 爆煙で見えないが、手応えはあった。

 

「まだだ、月夜!」

 

 一夏が叫んだ瞬間、爆煙の中からビームが飛び出した。

 反射的に肩の装甲で防ぐが、ビームは灰色の装甲を真っ赤に変えて消し飛ばす。

 

「シールドエネルギーは使われなかったみたいだな」

 

 アサルトライフル二挺で牽制しながら距離を取る。

 敵はそれを腕で防いだ。

 固い装甲をしているようだ。

 見たところ機動性は元々それほど高くはない様子。

 しかもスラスターを幾つか失い、姿勢制御も難しくなっているはず。

 

「大丈夫か、月夜?」

 

「まあな」

 

「月夜はシールドエネルギーには余裕あるよな?」

 

「何をする気だ?」

 

「俺たち、気付いたんだ。あいつは多分、無人のISなんだって」

 

「無人?」

 

 ISは人が乗らないと動かないはずでは?

 確かに人にしては単調な動きしかしていないし、見たことも聞いたこともない機体ではあるが……。

 でもそんなことができる人間なんて、この世に──

 

「──一人ぐらいしか……」

 

「え、なんだって?」

 

「いや、なんでもない。で、どうするんだ?」

 

「敵はあたしたちが話をしているときはそれを聞くみたいじっとしてるの。だけど、あたしたちが攻撃するとそれに反応するから……」

 

「わかった。俺が引き付ければ良いんだな?」

 

「そして俺と白式が全力で攻撃する」

 

「よし、任せろっ!」

 

 脚部を再びクローに変形し、敵に接近する。

 近接ブレードを構え、肩の装甲で体を隠す。

 敵は強力なビームを発する。それを避け、右腕と頭部に取りつく。

 敵は俺を振り払おうと左腕を向けてくるが、それをブレードで弾く。

 と、その瞬間、アリーナのスピーカーから大声が響いた。

 

「一夏ぁっ!」

 

 キーン……とハウリングが尾を引くその声は、箒のものだった。

 

「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 

 大声。またキーンとハウリングが起こる。

 ハイパーセンサーで数十倍に拡大して箒を見ると、はぁはぁと肩で息をしている。

 その表情も、怒っているような焦っているような不思議な様相をしていた。

 いや、焦るのはこっちだからな!?

 敵は今の館内放送、その発信者に興味を持ったようだった。

 俺たちからセンサーレンズをそらし、じっと箒の方を見ている。

 

「一夏っ!」

 

「鈴、やれ!」

 

「わ、わかったわよ!」

 

 両腕を下げ、肩を押し出すような格好で衝撃砲を構える鈴音。

 最大出力砲撃を行うため、補佐用の力場展開翼が後部に広がった。

 そして一夏が、その射線上に躍り出る。

 

「ちょっ、ちょっと馬鹿! 何してんのよ!? どきなさいよ!」

 

「「いいから撃て!」」

 

 一夏が何をしようとしているのかは分かった。

 

「ああもうっ……! どうなっても知らないわよ!」

 

 ISの操縦技術の中に『瞬時加速』というものがあり、その原理はこうぶスラスター翼からエネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、圧縮して放出する。

 その際に得られる慣性エネルギーを利用して爆発的に加速する。

 そしてそのエネルギーは外部からのものでもいい。

 

「──オオオッ!」

 

 一夏の斬撃に巻き込まれないよう、敵を踏み台にして飛び上がる。

 雪片が強く光を放つ。

 中心の溝から外側に展開したそれは、一回り大きいエネルギー状の刃を形成していた。

 そして一夏の斬撃は敵の右腕を切り落とした。

 しかしその反動で一夏は左拳をモロに受ける。

 さらにその腕の砲口が光りだす。

 ゼロ距離でビームを叩き込むつもりらしい。

 

「「一夏っ!」」

 

 箒と鈴音の叫び声が聞こえる。

 大丈夫、一夏はやらせない。

 

「セシリアさんっ」

 

『狙い撃ちますわ!』

 

 刹那、敵をブルーティアーズのビームが貫いた。

 シールドバリアーが一夏によって破壊された敵は、ボンッ! と小さな爆発を起こして地上に落下する。

 

『ナイスショット』

 

『ギリギリのタイミングでしたわ』

 

『さすがセシリアさんだ』

 

 すると、セシリアさんはひどく狼狽した言葉を返してきた。

 

『そ、そうですの……。……。とっ、当然ですわね! 何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生なのですから!』

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「あぁ。何にしてもこれで終わ──」「一夏っ!」

 

 ──敵ISの再起動を確認!

 

 片方だけ残った左腕。それを、さらに最大出力形態に変形させたISが地上から一夏を狙っていた。

 次の瞬間、ビームが放たれ、一夏が光の中に飛び込んでいったのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、馬鹿やろうが」

 

 茜色に染まった放課後、俺は保健室のベッドに横たわる一夏のお見舞いに来ていた。

 聞くところによると、衝撃砲の最大出力を背中から受けた時、ISの絶対崩御をカットしていたらしい。

 よく死ななかったものだ。 

 

「……なんだ、あんたもいたんだ」

 

 そう言いながら鈴音が保健室に入ってきた。

 

「やっぱり来たんだ。鈴音」

 

「あんたはさ、一夏の何なの?」

 

「何なの……とは?」

 

「友達って言うわりに、こんな時間にお見舞いに来るじゃない」

 

 何かおかしいだろうか。

 

「一夏はあんな性格だから。幼馴染みでも親友でも、誰でも仲の良い友達としか思ってないんだろうけど……」

 

 唐変木・ザ・唐変木だからな。一夏は。

 

「あたしは一夏のことを渡すつもりはないから」

 

「あのさ……鈴音さんや」

 

 俺、前に言ったよね?

 以前。この間。一夏と箒の部屋で。鈴音の前で。

 

「俺は『男』なんだぜ?」

 

「…………は?」

 

 完全に忘れてやがる。

 まあでも。あのときは一夏しか眼中になかったから多目に見てやらんこともないが。

 

「は? じゃなくて、男なの。一夏と同じく、ISを動かせる男の一人」

 

「…………」

 

「俺はノーマルだ。よって、鈴音の恋のライバルは今の所は箒だってことだ」

 

「そ、そうだったんだ」

 

「まったく。恋は盲目っていうより、他のことはアウトオブ眼中じゃないか」

 

「あの、えっと……」

 

「それだけ、一夏のことが好きだってことか」

 

 ニヤリと笑うと鈴音は顔を赤くする。

 

「当たり前じゃない。お、幼馴染み……なんだから」

 

「んじゃ、俺は帰るかな。一夏は『起きそうにない』しな」

 

 起きそうにないを強調してやった。

 俺としては箒も応援してやりたいが、鈴音を見てたらこっちも応援してやりたくなった。

 よって俺は平等に応援してやることにする。

 

「じゃあね。鈴音~」

 

 保健室から出て、扉を閉める。

 するとすぐ後に鈴音の「馬鹿っ!」という声が聞こえた。

 一夏め、起きるタイミングがわるいぞ。

 

「ん、月夜か……」

 

「あ、箒じゃん。一夏、今起きたみたいだよ?」

 

「そうか。私も行ってくるとしよう」

 

「じゃあね、箒」

 

 そして俺は早々にその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのすぐ後、まっすぐとある場所に向かった。

 学園の地下五十メートル。レベル4の権限を持つ関係者しか入れない部屋に俺が入ってくるのを山田先生が見て驚いた。

 

「十六夜くん!?」

 

「いいんだ、山田先生。彼は私が呼んだ」

 

「そゆことです」

 

「十六夜は束のもとで助手をしていたからな。十六夜からの意見を聞きたい」

 

 俺は織斑先生に呼ばれて来たのだ。

 でなければ俺はこの部屋には入れない。

 

「あのISは無人機だったんですよね?」

 

「はい。ですが、どのような方法で動いていたかは不明です。織斑くんの最後の攻撃で機能中枢が焼き切れていました。修復も、おそらく無理かと」

 

「コアはどうだった?」

 

「……それが、登録されていないコアでした」

 

「そうか。やはりな」

 

 どこか確信じみた発言をする織斑先生に、山田先生は怪訝そうな顔をする。

 

「何か心当たりが?」

 

「いや、ない。今はまだな。で、十六夜?」

 

「登録されていないコアを使っているということは、そのコアは新しく作られたもの。そして遠隔操作や独立稼働型の技術も含めて、俺の中でそんなことができるのは一人しかいません。確証はありませんがね」





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