IS〈インフィニット・ストラトス〉いつか此の手に月を【凍結】   作:生そば

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~第九話~《青い空、白い雲》(2)

 

「月夜さん。さっそくお願いしますわ」

 

 俺と一夏がビーチに出ていった少し後のこと。

 ビーチパラソルとシート、それにサンオイルを持ったセシリアが駆け寄ってきた。

 

「ん、そうだったな。悪い一夏、セシリアと約束があったんだ」

 

「そうか。じゃあ後でな」

 

「おう。後でビーチバレーだな」

 

 一夏と別れ、手頃なスペースにシートを敷き、パラソルを立てる。

 ちなみにセシリアの水着は鮮やかなブルーのビキニ。

 腰に巻かれたパレオが優雅で格好いい。

 プロポーションに気を付けているのか、モデルになったら有名になれるかもしれん。

 水着に強調された胸の膨らみは制服で見るよりも扇情的で、とにかく……グッジョブ!

 

「どうかなさいまして?」

 

「いや、何でもない」

 

「コホン。そ、それでは、お願いしますわね」

 

 しゅるりとパレオを脱ぐセシリア。

 その仕草は妙に色っぽく、見ててドキッとしてしまう。

 

「届かないのは、背中だけ……だよな?」

 

「つ、月夜さんがされたいのでしたら、前も結構ですわよ?」

 

「慎んでお断りする」

 

「でしたら──」

 

 いきなりセシリアは組日の後ろで結んでいたブラの紐を解くと、水着の上から胸を押さえつけてシートに寝そべる。

 

「さ、さあ、とうぞ?」

 

「…………(ごくり)」

 

 紐解いた水着はシートと体に挟まれているだけの状態で、セシリアは無防備な背中を俺に見せている。

 体に潰されてむにゅりと形を歪めた乳房は、脇の下から見えていることもあって……なんというか、眼福。

 本当にセクシーだ。セシリアは。

 さらに、うつぶせになっているため、しっかりと発育したお尻の主張がどうにも悩ましい。

 くそぅ。オシリアめ。

 パレオは下半身を隠すため分からなかったが、下の方の水着は結構露出度が高い。

 すらりと伸びた脚線美はこれまた素晴らしい。

 

「月夜さん。まだですの?」

 

「ご、ごめん。じゃあ塗るぞ」

 

「ひゃっ!? つ、月夜さん、サンオイルは少し手で温めてから塗ってくださいな」

 

「そうなのか。ごめん。初めてだから分かんなくてな」

 

「そ、そう。初めてなんですの。それでは、し、仕方がないですわね」

 

 サンオイルを手の中で温め、改めて塗り始める。

 しかし、こういう類いのことは一夏の方が上手そうだ。

 束さん情報では『いっくんはマッサージが上手い!』だそうだ。

 家で千冬さんによくやっていたのだろう。

 たしか二人には両親がいないから、一夏が家事をして千冬さんが稼いでいたそうな。

 ……まるでちょっとした夫婦だな。血が繋がってるけど。

 一夏の唐変木はもしかしたら千冬さんの影響もあるのかもしれん。

 それに“兄弟、姉妹がいると婚期が遅れる”と言うしな。

 

「ん……。いい感じですわ。月夜さん、もっと下の方も」

 

「し、下? 背中……だよな?」

 

「い、いえ、せっかくですし、手の届かないところは全部お願いします。脚と、その、お尻も」

 

 セシリアの言葉に目線が下の方へとずれる。

 サンオイルを塗るだけの状況とはいえお尻を触るのは、さすがにまずい。

 

「お、オシリアめ……」

 

「はい?」

 

「いや、なんでもない」

 

 どうしよう、断れないのか?

 

「あー、セシリアが十六夜君にサンオイル塗ってもらってる!」

 

 しまった! 他の女子に見つかってしまった!

 

「うそっ!? 私もサンオイル取ってくる!」

 

「私はシートを!」

 

「私はパラソルを!」

 

「じゃあ私はサンオイル落としてくる!」

 

 おいおい、塗ってあるならわざわざ俺の手間を増やすな。

 あっと、すてに海に入ってるぅ!?

 早いな、女子。流石の行動力と言っておこう。

 

「こらこら、俺は──」

 

『セシリアだけズルい!』

 

「あまり他の人には言いふらさないで欲しいのだが……」

 

「えぇ?」

 

「ま、マッサージも付けよう!」

 

『交渉成立!』

 

 かくして、この夏限定の“十六夜月夜がサンオイルを塗ってくれるイベント”が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まだ女子の柔肌の感触が残ってる気がする……」

 

 その場にいたセシリアを含め、バレた女子数名(数名でよかった)にサンオイルを塗り、軽くマッサージをし終えた俺はくたくただった。

 ひと夏の貴重な体験であったことは間違いないが。

 ちなみに『人の目の届きにくい場所でやろうか』と言ったら何人かが鼻血を出していた。

 彼女たちは大丈夫なのだろうか。

 『大丈夫か?』とたずねたところ『大丈夫だ、問題ない』などと言っていた。フリじゃなかったんだが。

 

「あ、月夜。ここにいたんだ」

 

 ふと、声に呼ばれて振り向く。

 

「おお、シャル。遅かったな……って、なんだ? そのバスタオル人形」

 

 バスタオル数枚で象られた人形のような存在がシャルの隣にいる。

 

「ほら、出てきなってば。大丈夫だから」

 

「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める……」

 

「その声はラウラか?」

 

 いつも自信に満ちたラウラらしからぬ、随分と弱々しい声だが、ラウラだ。

 シャルはシャルでなにやら説得を試みているが、何があったのだろう。

 

「ほーら、せっかく水着に着替えたんだから、月夜に見てもらわないと」

 

「ま、待て。私にも心の準備というものがあってだな……」

 

「もー。そんなこと言ってさっきから全然出てこないじゃない。月夜のために選んだんでしょ? 何のために頑張ったのさ」

 

 頑張れ、ラウラ。

 なんだかよく分からないが、お前ならできる。

 

「うーん、ラウラが出てこないんなら僕も月夜と遊びに行こうかなぁ」

 

「な、なに?」

 

「うん、そうしよ。月夜、行こっ」

 

 言うなり、シャルは俺の手を取る。

 そのまましゃるっと腕を絡ませて、シャルは波打ち際へと俺を誘う。

 

「ま、待てっ。わ、私も行こう」

 

「「その格好のまんまで?」」

 

「ええい、脱げばいいのだろう、脱げば!」

 

 ばばばっとバスタオル数枚をかなぐり捨て、水着姿のラウラが陽光の下に現れる。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい……!」

 

 黒の水着、しかもレースをふんだんにあしらったもので、一見するとそれは大人の下着にも見える。

 さらにいつも飾り気のない伸ばしたままの髪は左右で一対のアップテールになっている。

 とどめとばかりに、もじもじと落ち着かなそうにしているラウラの仕草が俺に『可愛い』と強く思わせる。

 

「おかしなところなんてないよね、月夜?」

 

「おかしいも何も。可愛いじゃないか」

 

「なっ……!」

 

 俺の言葉が予想外だったのか、ラウラは驚きに一瞬多事炉異だあとそのままカーッと赤面した。

 

「しゃ、社交辞令ならいらん……」

 

「世辞なんて言ってない。なあ、シャル?」

 

「うん。僕も可愛いって褒めてるのに全然信じてくれないんだよ。あ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしたの。せっかくだからおしゃれしなきゃってね」

 

「グッジョブだ。シャルのは……あの時のか」

 

「う、うん。まあね」

 

 あの時とは『一緒に試着室に入った時』のこと。

 入っただけならまだ良かったと言えよう。

 しかし、その時のシャルの行動を思い出してしまうので、しばらくはシャルの水着を見れないかもしれない。

 

「か、可愛い……ぞ?」

 

「う、うん、ありがと。何で疑問形なの?」

 

 さあ、ナンデデショウネ。

 

「いーざよーいくーん!」

 

「さっきの約束! ビーチバレーしようよ!」

 

「わー、つっきーと対戦~。ばきゅんばきゅーん」

 

 さっき約束した女子と、その友達と、のほほんさんだ。

 

「それっ。十六夜君にパース」

 

 ぺしんと叩いたサーブで俺にビーチボールを投げてくる。

 それを受け取って、俺は側にいたメンツを確認。

 

「じゃ、こっちはシャルとラウラでちょうど三対三だな。よし、やるか!」

 

 俺の返事を聞いてから手早くネットを広げる女子二名、のほほんさんは砂の上にコートの線を引いていた。

 うわっ。すっげぇ遅い。

 

「んじゃ、お遊びルールでいいよね。タッチは三回まで、スパイク連発禁止、キリのいい十点先取で一セットねー」

 

「おう。じゃ、そっちのサーブで」

 

 ぽーんとビーチボールを放って渡す。

 受け取った櫛灘さんの目がキランと光った。

 

「ふっふっふっ。七月のサマーデビルと言われたこの私の実力を……見よ!」

 

 櫛灘さんの突然のジャンピングサーブがくり出される。

 言葉通り経験者なのか、スピードといい角度といい申し分ない。

 

「任せて!」

 

 そう言ってくれるのはシャル。

 こういうときにシャルは頼れる仲間だ。

 

「って、わぁっ!?」

 

 どんっ! という音とともにシャルの悲鳴が聞こえる。

 振り向くと、ぼーっと立っていたらしいラウラと、ボールを追いかけたシャルかま思いっきりぶつかったようだった。

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「いたたた……ラウラ、どうしたの?」

 

「か、かわ、可愛いと……言われると、私は……。うぅっ」

 

 俺と目があって、なぜかボッと顔を赤くするラウラ。

 それから、なんと脱兎の如く逃げ出す。

 

「わ、私は────!」

 

「「今反応するの────!?」」

 

 俺とシャルの声よりも早く、ラウラは別館の中へと消えていった。

 取り残されたのは俺とシャルと、ぽかんとした女子三人。

 

「うーん、これはあれかな~。つっきーよ乙女心ブレイカーが作動中なのかなー」

 

 のほほんさんがそんなことを言っている。

 ちなみにのほはんさんが着ているのは水着というよりももはや着ぐるみで、先が黒い尖った耳で全身が黄色いどこかで見たようなデザインの、全身がすっぽりと入るもの。

 

「うーん。まあ、続けるしかないか。ラウラの様子はあとで見とくとするよ」

 

「さんせーい」

 

 そうして数の上では二対三なのだが、実際はのほほんさんの分がマイナスに近いので二対二のビーチバレーが続いた。

 

「そーれっ」

 

 身軽な動きでシャルがスパイクを決める。

 それを真横で見ていた俺はジャンプにつられてぷるんと弾む胸の膨らみをついつい凝視してしまう。

 事実シャルはスタイルがよく、一度意識してしまうとどうしてもそれが気になってしまう。

 しかも、向こうのチームの女子もぴょんぴょんと跳ねてはそのたびに胸が柔らかそうに揺れていた。

 

「……………」

 

「どうしたの、月夜?」

 

「いや~、なんでもない」

 

 女子の体を追う視線がバレたのかと思って、一度心臓が大きく跳ねる。

 俺はその動揺を悟られないように、なるべく平然と返す。

 

「そう?」

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