IS〈インフィニット・ストラトス〉いつか此の手に月を【凍結】   作:生そば

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~第一一話~《強制移行》(1)

 俺が覚えている記憶の中に『カプセルの中の■』というものがある。

 ガラス越しに手を伸ばしても、決して届かない。

 ■はカプセルの中から微笑みかけてくる。

 

「いつも一緒にいるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑先生、どうして月夜さんの捜索を断念したんですの!?」

 

 作戦会議室。

 IS学園の教師たち、そしてセシリア、シャルロット、ラウラ、鈴の中で、セシリアが千冬に詰め寄っていた。

 千冬はため息をつき、その場の全員にレーダーを見せた。

 

「現在の周囲の海域の様子だ」

 

 そうは言うものの、レーダーに映し出されているのは『UNKNOWN』という文字。

 福音を追っていた通信不能領域が突如拡大し、周囲の海域を多い尽くしてしまったのだ。

 

「どういうことですか、織斑先生……」

 

 シャルロットが「あり得ない」と目を丸くする。

 

「通信不能領域を作り出していたISの仕業だ。これでは、十六夜の居場所も福音の居場所すらわからない。そして、これを見ろ。十六夜が戦闘中に送ってきた映像だ」

 

 ディスプレイに写し出されたのは見たこともない三機のIS。

 しかもその三機全てが月夜の零式と同じようにGN粒子のような光の粒子を放出していた。

 そしてその映像は黒いISと深紅のISによる射撃を受けて終わっていた。

 

「我々はこの映像から、今後の作戦を立てなければならない。今のところ、福音はこの通信不能領域から離れてはいないらしい。作戦が立ち次第、お前たちには動いてもらう」

 

「そんなっ! 月夜はどうなるんですか!」

 

「今の映像を見て分かるだろう。十六夜月夜はMIAと見なされた。分かったらお前たちは待機していろ」

 

「MIA……なんて…………」

 

 MIA──missing in action──『戦闘中行方不明』

 つまり『確認していないが、まず助からないだろう』ということだ。

 月夜が落ちた海域は波が高く潮の流れも速い。

 落ちればたちまち波に揉まれ、溺れ死んでしまうだろう。

 それがIS学園の上層部、そして教師陣の意見だったのだ。

 

「嘘だ」

 

 ラウラは拳を握り、乱暴に扉を開けて出ていく。

 それを追って、他の専用機持ちも出ていった。

 

「くそっ……私だって」

 

 千冬は繰り返し再生される三機の無人機を睨み付けて呟く。

 

「私だって、探しに行きたいさ」

 

 部屋を出て、ラウラはすぐに通信機を取り出す。

 

「クラリッサ、私だ」

 

『隊長? どうなさいましたか?』

 

「我々の現在地付近の海域に銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と十六夜月夜、そして三機の未確認ISがいるはずだ。探し出せっ」

 

『はっ、了解しました』

 

「頼む」

 

 あとは連絡を待つだけ。

 ラウラの所属する部隊は優秀だ。ものの数分で探し出してくれるだろう。

 

「ラウラ……」

 

 後から専用機持ちたちが追いかけてきた。

 

「シャルロットか。今、私の部下たちに探してもらっているところだ」

 

「僕も一緒に行くよ」

 

「わかっている。セシリアも同じだろう?」

 

「勿論ですわ!」

 

「鈴音はどうした?」

 

「箒の所へ行ったよ」

 

「ずっと寝たきりでしたわね、一夏さん」

 

 ISの防御機能を貫通して人体に届いた熱波に焼かれ、一夏は身体中に包帯を巻かれて、もう三時間以上も目覚めていない。

 箒はその間ずっと一夏のそばにいたという。

 

「どうしろと言うんだ! もう敵の居所もわからない! 戦えるなら、私だって戦う!」

 

 一夏が眠っている部屋から箒の怒鳴り声が聞こえてきた。

 その声を聞いた三人はその扉を開ける。

 

「皆……」

 

 箒が目に涙を浮かべながら呟いた。

 と、次の瞬間、ラウラの持っている端末にメッセージが届く。

 

「出たぞ。ここから三〇キロ離れた沖合上空に福音、それを取り囲むようにして三機の未確認ISが停滞している。レーダーは使い物にならないが、光学迷彩は持っていないようだな。衛星による目視で発見したぞ。残念ながら月夜は見つからなかったが、希望はある。直接行って生体反応を探す」

 

 それはつまり、一刻でも早く四機のISをすべて倒し月夜の捜索に専念しなければならないということだ。

 鈴音はそれを聞いてにやりと笑う。

 

「さすがドイツ軍特殊部隊。やるわね」

 

「ふん……。お前の方はどうなんだ。準備はできているのか」

 

「当然。甲龍(シェンロン)の攻撃特化パッケージはインストール済みよ。シャルロットとセシリアの方こそどうなのよ」

 

「ああ、それなら──」

 

「たった今完了しましたわ」

 

「準備オッケーだよ。いつでもいける」

 

 それぞれが頷き、そして箒へと視線を向けた。

 

「で、あんたはどうするの?」

 

「私……私は──」

 

 ぎゅうっと拳を握りしめる箒。

 それは次こそは勝つという、決意の表れだった。

 

「戦う……戦って、勝つ! 今度こそ、負けはしない!」

 

「決まりね」

 

 ふふんと腕を組み、鈴音は不敵に笑う。

 

「じゃあ、作戦会議よ。今度こそ確実に墜として、月夜を救い出すわ!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい感覚と共に俺の沈みかけていた意識が浮上していく。

 

 ──月夜。起きた?

 

 目の前に見覚えのある顔がある。俺の■だ。

 まあいいや。それより今は……

 

 ──起きたなら、さっさと返事しなさいよ。

 

 バシンッ 目の前の■が俺の頭を思いっきりぶっ叩く。

 

「いってぇなぁ。何しやがる」

 

 ──狸寝入りこいてる方が悪い。

 

 ■はそっぽを向いて頬を膨らませる。

 子供かよ、お前は。

 

「狸寝入りなんてしてないし」

 

 ──してましたー。意識的に私の言葉を無視してましたー。

 

「だからって、人の頭を思いっきり叩くなよ」

 

 脳細胞が死ぬだろうが。

 ……そういえば、ここはどこだ?

 俺はあの三機に撃ち墜とされて、海に落ちたはずだが……。

 

 ──それより、いいの?

 

「何が?」

 

 ──まだ終わってないんでしょ?

 

「そうは言っても、俺一人の力じゃあの三機を相手にするのは難しいだろうさ」

 

 ──諦めちゃうんだ?

 

「いや、どうやったら倒せるか考え中」

 

 ──ふーん。……月夜らしいね。

 

「ん、そうだ。お前に直接言いたいことがあったんだ」

 

 ──ん、何?

 

「VTシステムだ。ラウラをけしかけたのはお前だろ」

 

 ──あ、やっぱ分かっちゃった?

 

「分かるに決まってんだろ」

 

 ──別に、あの子が迷ってたから後押ししてあげただけだってば。

 

「…………。まあ、そういうことにしといてやる」

 

 ──やった。月夜ってばやっさしぃ!

 

「いつか絶対にお仕置きしてやる」

 

 ──うっ……。で、あの三機を倒す算段はついた?

 

「うっ……。それが、まったく」

 

 ──よ、よかったら……、私が力を貸してあげてもいいけど?

 

「本当か!?」

 

 照れ臭そうにそっぽを向いて、頬をかく■。

 こいつは昔も素直じゃなかった。

 

 ──ま、他ならぬ月夜だからね。

 

「ありがとう、■■。恩に着る」

 

 俺がお礼を言うと顔を赤くしてうつむいた。

 

 ──べ、べつに月夜が死んだら私も死んじゃうからだし。だからって、仕方なくって訳じゃ……

 

 最後の方は聞き取れなかった。

 はっきり言いにくいなら、問い詰めるつもりもないのだが。

 

 ──ただし、三分以上は使わないでね。

 

「任せろ。それまでにケリをつけるさ!」

 

 ──じゃ、頑張って。応援してる。だって、私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも一緒にいるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前がホワイトアウトし、それと同時に俺は海の中で意識を取り戻す。

 そしてそれを待っていたかのように零式が光り出す。

 流れ込んでくる情報の奔流。

 その中にこんなものがあった。

 

 

 

 Compel shift──Acceptance...

 VALKYRJA-System──Release

 

 Twin Drive - system──boot

 

 Count... 180s

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