IS〈インフィニット・ストラトス〉いつか此の手に月を【凍結】   作:生そば

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~第一一話~《強制移行》(3)★

「一夏っ、一夏なのだなっ!? 体は、傷はっ……!」

 

 慌てて声を詰まらせる箒の元へと飛んで、一夏は答える。

 

「おう。待たせたな」

 

「よかっ……よかった……本当に……」

 

「なんだよ、泣いてるのか?」

 

「な、泣いてなどいないっ!」

 

 ぐしぐしと目元をぬぐう箒に、一夏は優しく頭を撫でてやる。

 

「心配かけたな。もう大丈夫だ」

 

「し、心配してなどっ」

 

「イチャイチャするのは後にしてくれないか? 」

 

「「い、イチャイチャなんてしてないっ!」」

 

 あと零式の稼働限界まで一分を切っている。

 一夏の傷が癒え、白式が第二形態移行していることに月夜も驚いているが、それとこれとでは話がちがった。

 

(別に羨ましくなんかないぞ)

 

「ちょっと待ってくれ、月夜。箒、これ」

 

「り、リボン……?」

 

「誕生日、おめでとうな」

 

「あっ……」

 

 七月七日。今日が箒の誕生日。

 一夏が月夜に助けられたあの日。プレゼントに何を買っていいのか迷った一夏は、月夜が誰かにあげるらしいリボンに便乗したものだ。

 

「それ、せっかくだし使えよ」

 

 箒は前の福音との戦闘でリボンがなくなってしまい、いつものポニーテールではなかった。

 

「じゃあ、行ってくる。──まだ、終わってないからな」

 

「行くぞ、一夏!」

 

「ああ!」

 

 福音が胴体から生えた翼を伸ばす。

 次の瞬間、福音の掃射攻撃が始まり、それと同時に一夏が月夜の前に出て左手の装備『雪羅』を構える。

 第二形態に移行したことで現れたこの装備は、状況に応じていくつかのタイプへと切り替えられる。

 

「そう何度も食らうかよ!」

 

 キンッ! という甲高い音を鳴らして雪羅が変形し、それかは光の膜が広がって、福音の弾雨を消していく。

 エネルギーを無効化する、零落白夜のシールドだ。

 当然エネルギー消耗は激しいが、完全に攻撃を無効化できる以上、圧倒的に一夏と月夜側が有利になった。

 

「うおおおっ!」

 

 一夏が右手の雪片と左手の雪羅、それぞれから零落白夜の光刃を作り出して突っ込む。

 

「ぜらあああっ!!」

 

 零落白夜の光刃がエネルギー翼を断つ。

 しかし、両方の翼を斬るのは至難の業で、二撃目を放つも回避されてしまう。

 そうしている間に失った翼は再度構築されて、強力無比な連続射撃を行われる。

 

「一夏、突っ込みすぎるな! エネルギーが持たないぞ!」

 

 リミッターなしの軍用ISがどれほどのエネルギーを持っているのか見当もつかない。

 対して白式と零式はエネルギー補給を行っていないため、稼働限界が早く近づいてくる。

 それは焦燥へと変わって、じわじわとふたりの心を焼いていく。

 

「一夏!」

 

「箒!? お前、ダメージは──」

 

「大丈夫だ! それよりもこれを受け取れ!」

 

 紅椿の手が、白式へと触れる。

 その瞬間、白式のエネルギーが回復していく。

 

「な、なんだ?」

 

 紅椿の能力なのか、これで勝機が見えた。

 

「今は考えるな! 行くぞ、俺と箒で福音の姿勢を崩す!」

 

「わかった!」

 

 月夜と箒が左右に別れ、一夏が一直線に福音に斬りかかる。

 福音はそれを回避、再び一夏を視界に捉えると同時に光の翼を向ける。

 しかしその瞬間、左右から同時に月夜と箒が光の翼を切り裂いた。

 

「「逃がすかぁぁっ!」」

 

 二人は更に切りつけ、残りの翼も奪う。

 すべての翼を無くし、大きく姿勢を崩す福音に一夏が零落白夜を発動して最後のひと突きを繰り出す。

 

「トドメは任せたぞ、一夏!」

 

「おおおおおっ!!」

 

 エネルギー刃特有の手応えを感じながら、さらに一夏は全ブースターを最大出力まであげる。

 地面に叩きつけられても尚、一夏の首へと手を伸ばす福音。

 その指先が喉笛に食い込んだところで、福音はやっと動きを停止した。

 

「終わったな」

 

「ああ……。やっと──……」

 

 箒の言葉に月夜は最後まで返せなかった。

 緊張が解け、今まで波に揉まれた体に疲れが押し寄せてきたのだ。

 そして、月夜はやっと零式からの警告に気づいた。

 

 

 

 ──Compel shift … over time.

 

 

 

 強制移行。月夜が■■に三分以上は使うなと言われたにも関わらず、時間を越えて使用してしまった。

 

「月夜、大丈夫かっ!?」

 

 零式が消え、海に落ちそうになるのを箒が受け止める。

 

「箒、どうした!?」

 

「一夏……」

 

 消え入りそうな意識の中、月夜は一夏の腕を掴む。

 

「俺の……妹を……頼む…………」

 

 それだけを言って、月夜の体から力が抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校から帰ってきた次の日。

 月夜は保健室で寝かされている。

 千冬姉から聞いた話だけど、月夜が意識を失ったのは無人機たちによるダメージと海に沈んでいた時のもののせいで昏睡状態に陥っているのだとか。

 俺は朝早く、月夜のお見舞いに保健室へ向かっている。

 箒たちも誘ったのだが、反省文と懲罰用の特別トレーニングのせいで余裕がないらしい。

 もっと俺が強ければ皆、そして月夜も守ってやれたのかもしれないと思うと、自然と拳に力が入った。

 

「そういえば月夜の零式、あの時形が変わってたよな。全身装甲じゃなくなってたし……」

 

 福音の一件で、俺の白式は第二形態に移行した。

 もしかしたら、零式も第二形態移行を果たしたのかもしれない。

 そんな所も含めて、月夜が起きたら話し合ってみようと思う。

 さて、保健室についた。

 

「失礼しまーす」

 

「え?」

 

 おや、誰かが中にいたらしい。

 保険医の先生はまだ来てなかったようだし……

 

「おお、月夜。起きたの……か……?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 月夜が寝ていたベッドの方を向くと、そこには銀髪の女子がいた。

 ラウラよりも月夜の髪に近い……いや月夜の髪が長くなったような。

 しかもラウラより背は高く、ほんと……月夜を女子にしたらこんな感じかなっていう。

 

「きゃあ!」

 

 その女子は甲高い声をあげる。

 そりゃそうだ。何故って着替え中だったのだから。

 

「わ、わるいっ!」

 

 俺は急いで保健室の外へ飛び出した。

 って、ちょっと待てよ?

 今の女子が着ていたのは、月夜の服じゃなかったか?

 制服も、そして下着も。

 シャルルがシャルロットだってことになってから、俺は月夜と同室だったから覚えてる。

 えっと、つまり、……何て言うのか。

 

 

 

「月夜が女になった!?」

 

 

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