IS〈インフィニット・ストラトス〉いつか此の手に月を【凍結】   作:生そば

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~第二話~《連撃と一撃》(3)

 

 三十分の休憩を挟み、俺と一夏の試合が始まる。

 俺と一夏との試合が始まる前には多くのギャラリーが混雑していた。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「心配ない。物理的なダメージはシールドだけだったし」

 

 どうせ一夏との戦いに《無月》は使えない。

 まさか、白式の武器の名前が雪片弐型だとは思ってもみなかった。

 雪片と言えば、織斑先生の全盛期に使っていたISの武装の名前じゃないか。

 名前が同じならば、きっと性能も同じはず。

 零式の《無月》と同様に自分のシールドエネルギーを使い、雪片はそれを直接攻撃に転用する能力を持っている。

 そして雪片は一撃でシールドエネルギーを全損するほどの攻撃力を誇る。

 つまり一夏から一撃も貰わずに、俺の方が攻撃しなければならないのだが。

 

「…………」

 

 一夏と剣道の勝負したときの事を思い出す。

 俺はあの時、辛うじて受け流す事はできたが何発かは防ぎ切れなかった。

 流石に経験者は違う。

 

「難しいけど、やってみるか」

 

 生身ではできないことでも、零式とならできるはずだ。

 

「行くぞ、二戦目!」

 

「かかってこい!」

 

 試合開始のブザーと共に一夏はまっすぐ突っ込んでくる。

 雪片の刀身が開き、光刃が姿を表す。

 

「もらった!」

 

 雪片が振り下ろされる瞬間、ビームブレードで防ぐ。

 しかしその瞬間、雪片の刃は《月光》のビームの刃を切り裂いた。

 辛うじて斬撃から逃れる。

 雪片弐型の能力は単純に高い攻撃力を持っている訳ではないらしい。

 エネルギー体を無効化する力だ。

 

「厄介なものを」

 

 しかし攻撃の度にシールドエネルギーを消費するとあっては、白式のシールドエネルギーは急速に減っていく事だろう。

 ならば短期決戦を挑んでくる他ない。

 だからと言って、その時まで逃げるきるか?

 零式の機動性ならそれも可能だ。

 でもそれはしない。

 

「俺は、ガチンコの勝負がしたいんだ!」

 

 スラスターを吹かして斬りかかる。

 雪片の光刃はエネルギー体を無効化する。

 しかし、柄と開いた刀身の部分に当てれば弾き返せる。

 

「何っ!?」

 

「せやっ!」

 

 まず一撃。白式のシールドエネルギーを削る。

 そして雪片が振られる前に距離を取り、射撃を警戒してシールドで身を隠す。

 しかし、一夏は撃ってこなかった。

 その代わり、雪片で斬りかかってくる。

 

「しくった! でもっ」

 

 シールドを切られ、サブスラスターを失い左右のバランスが崩れる。

 残ったサブスラスターの位置を修正、背中の真後ろに設置してバランスを整える。

 

「一夏ぁ!」「月夜ぉ!」

 

 両手両足のビームブレードを展開し、一夏の懐に飛び込む。

 一夏の黒目が見開くのが見える。

 一夏は俺が距離を取っても射撃をしてこなかった。

 つまり、射撃武器がないという事だ。

 まあそれは零式も同じ。

 白式も零式も近接格闘型だ。

 

「食らえ!」

 

 右手のブレードで一撃、振り抜いて一夏の後方へ。

 まだいける、二撃目。身を翻して左手のブレードで斬る。

 

「このっ」

 

 一夏が雪片を振る。

 回し蹴りの要領で左足のブレードで雪片を弾き、右足、左足、右足とブレードを振り回す。

 

「させるかっ」

 

 と、一夏に左足を捕まれた。

 

「そう何度も、攻撃させねぇ!」

 

 一夏は雪片を左手に振りかざす。

 逃れようにもガッチリ捕まれて離れられない。

 

「まだだっ!」

 

 俺にはまだ自由な両腕と右足がある。

 雪片の柄を両手で受け止め、右足で白式の装甲を引き寄せる。

 

「良いことを教えてやる。零式のフルスキンの理由をな」

 

 

 

 ──全装甲展開。『名称未定』起動。

 

 

 

「なっ!?」

 

 零式の厚い装甲の部分が開き、その全てから幾つものビームブレードが飛び出す。

 零式の真骨頂は機動性でもジャックでもなく、手数の多さにある。

 両腕に二本、両肘に二本、両肩に二本、腹部に四本、背中に四本、腰回りに六本、太股に二本、脹ら脛に二本、爪先に二本。

 計26のビームブレードをマウントしているのだ。

 それら全てを同時に使うのが今の状態。

 名称はまだ無いが、仮に『ハリネズミ』とでも言っておこう。

 

「終わりだ、一夏」

 

 足で白式を捕らえた状態の今まさに、脚部にマウントされたビームブレードがシールドエネルギーを削っている。

 やがて、試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後八時頃、自室。

 今日の戦闘データを元に零式の調整をしていた。

 一通りの作業を終え、ベッドに横になる。

 俺の部屋は二人部屋なのに居るのは俺一人。

 広々としていて嬉しいやら、その広さを持て余して孤独で寂しいやら。

 そういえば一夏はどうなんだろう。

 俺の部屋が相部屋なのに空いてるから、普通に考えて俺と一夏は一緒の部屋になると思うのだが。

 まあ俺にとっては好都合だ。

 一夏に俺の零式のデータを見せても理解なんてできる訳ないだろうが、念には念を入れて誰にも見せない方がいい。

 なぜなら零式参型のデータは第四世代の元となっているのだから。

 白式の持っている雪片弐型。あれは恐らく束さんが手掛けた第四世代の特徴である『展開装甲』の実験体だろう。

 もともとの雪片は実体剣だった訳だし、最後に見た第四世代の開発状況を考えればそろそろ投入してきてもおかしくない。

 

「もしかしたら、もう第四世代の機体を作ってる頃かもしれないな」

 

 コンコン。「十六夜さん、いらっしゃいます?」

 この声はオルコットさんだ。

 たしか『後程、お部屋にお伺いしますわ』とか言ってたような……。

 わー、どうしよう。部屋で話をするのかな?

 いや、ダメじゃないか?

 俺だって年頃の男子だもの。

 自室に女子を招くなんてそんなの早い──

 コンコン。

 おっと、まずは出ないと。

 

「お、おおお、オルコットさん。こんばんわわわ」

 

 すごく緊張してるぅ!

 落ち着け俺。まだ部屋に入れてすらないぞ!

 

「話って何? 長くなるならお茶入れようか? お菓子食べる?」

 

「いえ、そんなに時間は頂きませんわ」

 

 ほっ。なんか安心っていうか、がっかりっていうか。

 俺の緊張はすぐさま収まった。

 

「まず、十六夜さんには謝ろうと思いましたわ。わたくし、少し天狗になっていたようです。ごめんなさい」

 

「お互い様だな。だから頭を上げて?」

 

「そして仲直りの件ですけど、わたしくしも……その…………仲直りしたいですわ」

 

 ほっ。よかった。

 俺の暗い学園生活の種は、これで完全に取り払われた。

 

「それでその証として、わたくしを名前でお呼び頂けませんこと?」

 

「うん、いいよ。じゃあ俺も『十六夜』じゃなくて『月夜』って呼んでくれよ。セシリアさん」

 

 仲直りの証って感じで取っていいのだろうか。

 俺が名前を呼んだらセシリアさん嬉しそうに「はいっ」って返事するし、やっぱり誰でも笑顔が一番だよな。

 

「では、今日はこれで」

 

「は、はい。おやすみなさい。月夜さん」

 

「おやすみ、セシリアさん」

 

 挨拶をして帰っていくセシリアさんの足取りが、心なしか軽く見えた。

 心のつっかえが取れて晴々したんだな。うん。

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