圧倒的劣等な弟の癒し   作:斉藤努

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とある姉の決意

私は湊友希那、翔也という弟が居る。ブラコンとまでは行かないが、翔也のことを大切な人だと思っている。だが、私達の親は違う。 

 

私達の親、父は昔、バンドをしていた。とても人気があった。スカウトされ、事務所に入った。そしてもっと人気が出た。一見、楽しく演奏しているように見えるが、バンドメンバーは不満だらけだった。

 

その辺りから友希那と翔也の間に大きな溝ができてしまった。その原因は多分親にあると思う。言い訳に聞こえてしまうが実際、そうなのだ。翔也に無くて私にある事を褒めまくる。つまり、皮肉を言っているのだ。しかも、弟であるまだ小さい子に。最初はそれだけで済んだ。バンド解散から何ヶ月か経った時からは言葉だけでは無く、態度で出てきた。私の分のおやつだけ買ってきたり。私的には翔也と2人で分け合えて食べれたので嬉しかったが、翔也は違ったと思う。誕生日プレゼントが無かったり。翔也だけご飯が質素な物だったり。これも今思い返すと些細な事だが、子供の翔也には死より辛かったと思う。

 

そして、いつかだろうか?翔也が私を避け始めたのは。どれだけ親に散在に扱われても、私だけには気を使ってくれた。その優しさに奢れていたのかもしれない。私は全然翔也の事を考えていなかった。『かわいい弟』というだけで悩みを聞いたり、相談に乗ったりしていなかった。だからだろうか?翔也が私を避けるのは。

 

リサと翔也が仲良くなった。今まで姉と弟みたいだったのに、急に距離が近くなった。リサと触れ合う翔也は笑顔だった。私と居る時は見せない、心の底から笑っている様だった。私だけが仲間外れにされている様で悲しかった。私は考えた、どうすればまた昔の様に3人で笑って過ごせるか。答えが出た。音楽だ。私が歌い、リサがベースを奏で、翔也がギターを奏でる。そんな記憶が戻って来た。

 

そんな時だった。翔也がリサの家に住むと親が言ったのだ。嫌だった、行かないでと言いたかった。だけど私が言っても意味がない、そう思うと、ココロが締め付けられる。翔也は寝るとき以外基本的に湊家には居ない。だが、寝る時はいるのだ。話し掛けても無視か、反応しても目を合わしてくれない翔也でも寝ている時は無防備なのだ。

 

寝ている翔也の頭に手を乗せ、撫でる。少しだけ翔也の顔が晴れる、それが愛おしい。一回だけ、私が翔也を撫でると翔也が『リサぁ、すきだよぉ』と呟いた事があった。その時私はリサに憎悪を覚えた。けれどもその感情は直ぐに消え去った、翔也の言葉のお陰で。翔也は「お姉ちゃんもぉ、すきだよぉ』と言ったのだ。“お姉ちゃん”は私なのだろう。昔は私をそう呼んでいたから。翔也に抱き着きたかった、もう何年も触れていない暖かさに。

 

翔也がリサの家に住むと言う事は唯一の翔也の顔が見られなくなると言う事だ。だから私は条件を出した。その内容は翔也の写真を見て撮ってもらう事だった。家では見れない翔也の顔。大好きな弟の顔、考えるだけで胸が熱くなった。そして誓った。

 

『絶対に翔也と仲直りをして、今までのことを謝る』と。

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