…そしてゆっくりと異世界を見る為の物を見ながら…少女は小さく溜め息を吐いた。
「…何よ。他の女子に現を抜かして…」
そんな事を喋りながら、少女は悔しそうに異世界の画面を観続ける。
…其処には、少女が嬉しそうに子供と遊んでいる姿が映っていた。
「どうせあの子も死ぬのよ。人間と一緒に遊ばなきゃ良いのに」
死の別れを経験する度に、あの子はずっと泣いているから。
そんな事を考えながら画面を観ていて…其処から楽しそうに笑っている少女の姿を見て…本当に悔しそうな表情を浮かべた。
「私との約束忘れたのに……なんで人の約束は覚えてるのよ…」
少女はそう言っているが、周囲の神はしょうがないと言うだろう。
何故なら約束したのは“記憶を失って地球に転生する”前なのだ。
彼女が記憶を失ったとしてもそれは当然の事であって、怒られる事は無い。
けれど少女はかなり我儘な神様だった。
「…馬鹿」
出来れば彼女に祝福と……ほんの少しの神罰を与えられる様にと。
少女は適当に男の相手をしながら、祈りを捧げていた。
「…終わりですねぇ」
小さくため息を吐きながら、私はゆっくりと伸びをする。
初心者殺しは確かに強い…のだが、正直大量のスキルを持っていると苦戦しない程度の敵だ。
苦戦する事も無い敵を倒す事に少しだけ作業感を感じつつも、これも依頼を達成するためと自分に言い聞かせて敵を殺しきる。
「まぁ流石に此処まで簡単だとは思いませんでしたが…上げてはドレイン上げてはドレインを繰り返した結果…と言う事なんでしょうかね?」
数十年単位でドレインされまくった人間は私しかいないので、神の加護のお陰なのかドレイン慣れしてしまったのかは分からない。
…こうやって弱者を狩るのは余り楽しいとも思えないし、正直此処に来たのは失敗だったかもしれないと考えてしまう。
「…まぁ、駆け出しの街って話ですしね。しょうがないと言えばしょうがないんでしょうけれど…これでは練習にもなりませんね…」
私は手で鍵束を持て余しながら、ゴブリンや死体から手に入れた武器を使って敵を倒していく。
別に武器を選ばなくてもこれなら、最終的に素手でも良かった気がする。
「…って、素手で虐殺してたらあの初心者殺しと言えどもやってきませんよね」
そもそも依頼の為に殺していたんだと、さっきまで覚えていた事を忘れていた私は小さくため息を吐く。
…やはり不老不死になっても記憶力低下が悩みの種何だろうか?
「って、老後の憂いになっていますね。……ふむ」
今度あのデュラハンに記憶定着術でも教えて貰いに行くかな…なんて事を考えながらも、私は草陰から聞こえた音を聞いてゆっくりと手を握る。
「…さて、やりますか」
血の匂いに誘われて背後からやって来た初心者殺しを見ながら、私は小さく身体を横に逸らす。
それと同時に攻撃をしてきた初心者殺しを殴り付け、地面に落ちた初心者殺しの首元を斬り落とした。
一瞬で絶命をした初心者殺しを背負いつつ、私は街の場所を調べる為に魔法を使い始めた。
「生命共有」
何処かの少女が、アクセルに店を作ると言っていた筈なのでそれを祈って魔法を使ったのだが…
「……駄目ですね。死にましたか」
それか余りにも強くなって私の魔法が解除されてしまったのか。
そんな事を思いながらも、私は頭の中にある地図を思い出しながらゆっくりと歩き始める。
…方角を決め、小さく息を吸ってから歩き…
「…せめて墓でも作ってあげられたら……っ!?」
出す瞬間、私の知っている様で知らない魔力の圧を感じ…思わず仰け反った。
……生命感知をしたのに逆に探知し返された?
そんな事今までされた事無いのに、一体誰が…
「どうやって?」
…誰かと言えば、あのリッチーになった少女だろうか?
いや、あの子の前で私が生命感知系を使った記憶は一切ないが…それだったら一応納得は出来る。
もしこの力を使って人類を滅ぼすのなら、私が直接引導を渡したいな。
「…っと、辿り着きましたか」
初心者殺しを背負いながらという事でまぁまぁ視線を感じるが、何も気にせずにギルドに歩き続ける。
…そして扉を蹴り開ければ……
「ぎゃぁぁぁ!?」
「ちょっ!?扉がこっちに飛んできたんだけど何事!?敵襲?敵来ちゃったの!?」
「魔王か?ゴ〇ゴムの仕業なのか?!」
「ドン〇サウザンドかもしれんぞ!」
「はいはい。我の所為我の所為」
「?昔に比べて扉が脆くなりましたね。前は全力で蹴っても壊れなかったんですけどね」
蹴りの威力によって扉が一気に吹き飛んだのを見て、私は首を傾げつつゆっくりと前の案内嬢に向かって歩き出す。
全員が
「依頼終わりましたのでご連絡を。一応死体持ってきたので依頼完了で良いんですよね?」
「へ?いや…え?」
「報酬は手払いでしたっけ?振込でしたっけ?最近記憶の混濁が激しくて…友人の名前すら覚えられないんですよね」
「あ、いや扉…」
「そうそう。私今まで弁償した事無いんですよね。過去に魔王の城に向かって結界を決壊させたんですけど、魔王の幹部の首飛ばしたら許して貰えたんですよねー。いやーあの頃は楽しか…」
「扉が古かったんですよねー!いやー丁度新しい扉に変えたいとギルド内で話してたんですよー!いやー良かった良かった!」
「そうですか?それだったら脆かったのでアダマンタイト製の金具を使うと良いですよ。扉吹き飛びませんから」
私が笑顔でそう言いながらお金を貰うと、案内の方が何か小さく呟きながら死んだ目をしている。
…最近そういった人達が多いですけど…流行なんですかね?
私はあんまり流行を知らない人だし、今度されたら聞いてみようかな。
「それではまた。報酬が無くなったら新しい依頼を受けに行きますね」
「……やっぱり報酬から差っ引い…あ、お待ちくださいマシロ様!冒険者ギルドのマスターからお手紙が届いています」
「…?えーっと……ああ、ふふふ…バカ、マスターになったんですね」
「ば…いえ、それでお返事は…」
「大丈夫だと思います。どうせ命令ですからね」
私の言葉を聞いて少しだけ驚いた様な表情を浮かべた彼女を見ながら、私は手紙を開けて内容をすぐに横目で見る。
『これが見えているって事は本人だな。毎度お変わりなく元気そうで何よりだクソッタレ。
腰と腕が痛いし時間も無いから要件を書いておく。
今回の件はお前がずっと前から欲しいと言っていた職業を追加しておいた。
勿論お前以外が使おうとしたら速攻で死ぬ。アレはそういう物だ。諦めろよ?
その代わりにお前のスキルは保管される事になる。ま、いい加減冒険者から変われって事だ。
因みにこれは前マスターからの強制命令でもある。
中々にお前は目の上のたん瘤だったらしいな。
最後にこの手紙は五秒後に
最後の文面と共に私が手紙を上に投げ捨てれば、その手紙は周りの空気を吸収した後に瞬時に爆発した。
それと同時に私の周りに爆発が巻き起こり酒場の机が巻き込まれて吹き飛ぶ。
…それを見つつ、私はゆっくりと伸びをしてから微笑みつつ…
「クラスチェンジお願いします。ギルドマスターからの勅命です」
「…は、ハヒ…」
私の一言を聞いて死んだ目をしたまま冒険者カードを使い、私がクラスチェンジをする。
…それと同時に私の身体に何か縛られる様な感覚を感じ…私は少しだけ苦笑した。
どうやら未だに私は条件を達成できている訳ではないらしい。
「…さて、挑戦してみますか。【テレポート】」
私が喋るのと同時に私の身体は浮き上がり、それと同時に景色が瞬時に切り替わる。
爆風で吹き飛んだ冒険者ギルドではなく、私が生まれ育った森の中…その大樹の中の家だ。
…この大樹が喋らなくなってどれくらいが経っただろうか?
枯れる事のない精霊の大樹、彼女と喋る事が一番の暇潰しだったのを思い出す。
「ただいまもど…」
扉を開け、部屋の中に入るのと同時に…私の身体は一瞬で蔓に包まれた。
それと同時に扉が優しく閉められ、私の身体がふわりと浮き上がって小さな手に包まれる。
…そして、私の身体の生命が大量にとられる感覚…慣れてしまったその感覚を受け止めながら私は少女の頭を撫でる。
「…おかえりなさい。おねえさん」
「今日も元気でいました?というか養分大丈夫ですか?」
「……むー。ばかにしすぎ。わたしだってりっぱなあんらくしょうじょなんだから!」
そう言いながらゆっくりと私を抱きしめて微笑む少女を見ながら、私は優しく彼女の実を優しく取ってから食べる。
「もう……何歳だっけ?」
「ひゃくごじゅっさいだよー!そろそろおうじょさまってよばれてもよいとおもうの!」
「王女様ねー…私に甘えたがりの王女様が居るんですかねー?」
「おねえさんはかわいくてやさしいからしょうがないのー!」
私の言葉に頬を膨らませて返事を返しながらも、私の身体から手を放そうとしない。
寧ろ更に強く抱きしめたまま私の生命力を吸い取っているのを見つつ、私は優しく少女の身体を抱きしめた。
「最近は私以外の人間から養分取ってないですよね?」
「あたりまえだよー!おねえさんいがいのようぶんはまずいもんー!おねえさんのようぶんってふしのれいそうみたいなあじなんだー!」
「どんな味ですか」
懐かしい単語を聞きつつ、私は少女の身体を抱きしめて優しくベッドに転がった。
それと同時に私の身体を恐る恐る触り始めた後に…周囲の蔓が私の身体から離れ…私の顔を上目遣いで見つめた。
「…良いですよ」
「はーい……んっ」
私の唇に口付けを落とし、そのまま口を開いて舌を入れ始める。
それを受け入れながら、私はゆっくりと視界を暗闇に落とし始める。
…この安楽少女は本来、かなり遠くの森で養分を取る予定だったらしい。
それを発見した私を見て養分の補充をしようとしたらしいのだが…まぁ、私が不老不死だった為一年くらいずっと補充していた訳である。
そして三年後、折角なら一緒に過ごそうと提案し受け入れられた後に…
『口付けが一番養分を取れるから!絶対!もし口付け許すなら他から養分吸わないから!シよ?』
という有無を言わさない一言と同時にキスをされたのは懐かしい思い出だ。
…一応本人談ではちゃんと養分を吸ってないらしいし、近くの街に行っても安楽少女の噂を聞かないから大丈夫だろう。
「ん~っ!ぁ…ふぁぁ……んっ…」
嬉しそうに声を上げる少女を抱きしめながら、私は力をゆっくりと緩めていく。
それと同時に我先にと舌が私の口を蹂躙するのを感じながら、私は小さく挨拶をするべく口を開く。
「おやふみなふぁい…」
「…おねえさん、おやふみなふぁい……」
挨拶を返すのと同時に、水音が小さく鳴り響き…私は満足して意識を闇に落とした。