この素晴らしい不老不死者に祝福を!   作:よしどら

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-おーきくなったら、およめさんになる!
-ふふ。楽しみに待ってますね。

「……」

月を見ながら、過去の事を思い出す。
…あの子は今何をしているのだろうか?

-…っ!間に合いませんでしたか…
-……マシロ…さん…ごめんなさい…
-何を言ってるんですか!まだ私が解除できないと決まった訳じゃ!

魔力を切らし、体力を限界まで減らして…それでも私達の呪いは解除できない。
…それはそうだろう。彼女は冒険者であって本場のアークプリーストではなかった。
だから直せない事は当然だ。私達が下手打っただけで、悪いのはマシロさんではなかった。

「ごめんなさい。私が少し早ければ…」

そういって泣いていた彼女を、私はなんていえば良かったのだろうか。
…大丈夫だよなんて慰めだ。ごめんなさいなんて、嘲りだ。

-良いんですよ。今回は私達が下手打っただけですからね。
-そうそう。良いんだよ別にさ。明日死ぬかもしれない冒険者家業が一週間で死ぬってだけなんだからさ。
-…でも…

泣きながら皆を抱きしめるあの子を思い出しながら、私は月を見て小さくため息を吐いた。
…ああ、あの子は今も元気だろうか?
元気だろう。もう何百年も前の歴史に登場している人間なのだ。

「…だからこそ、私がリッチーになったんですよ」

悪魔の契約?パーティを助ける為?…違う。
きっと嘘かどうか調べる魔道具があったら鳴っているだろう。
そんな事を考えながら私は家に戻ろうとして…魔力感知に引っ掛かったとある対象を見て思わず口を緩めた。

「…やっと、見つけましたよ。私の下から離れちゃ駄目って言ったんですけれどね…?」

呟いた一言は闇に溶け、私は一人の少女の背中に糸を引く。
…もう二度と居なくならない様に、私が手綱を引いてあげないと。

「…じゃなきゃ、私がリッチーになった理由が無くなっちゃいますからね」


-3話

油断した。失敗した。裏切られた。

後悔後先に立たずとは言うが、流石に今回は後悔したくなる程の裏切り行為だ。

しかも裏切った奴が速攻で死んだと来た。

恨み節を言う相手も居なければ今目の前で戦ってる相手に言い訳を出来る訳でもない。

 

「っ!このやっ…インフェルノ!」

 

相手に向かって上級魔法を使うが、相手は刀を逆に構え…そのまま一閃。

それを見て私は思わず舌打ちをしつつ、新しく魔法を使って相手の視界を完全に塞ぐ。

炎、雷、爆発、炎、水、炎、氷、稲妻、爆発。

全部直撃させた筈なのに大したダメージも無く、私の方を見て瞬時に追い縋る様に腕を斬り付ける。

弾け飛ぶ右腕を掴んで回復魔法を使い、鍵束から杖を手に入れて魔法を多重詠唱を行う。

 

千重詠唱(ミリプレックスキャスト)!インフェルノ…」

 

魔力だけではなく生命力がゴリゴリと削れ、私の首から下が全て動かなくなってしまう。

大量の炎が私達を包み込み、それを見た相手の動きが一瞬だけ止まる。

 

「オリジナル魔法、魔力コンロ!」

 

私の一言と同時に大量のインフェルノが一斉に相手に襲い掛かる。

…それを見た相手が私の炎を斬り付けながら近づき始め、振り下ろされた刀によって私の身体は一瞬で二つに別れる。

それを見て私は左手で魔法を唱えると、そのはじけ飛んだ上半身が時が戻る様に戻っていった。

……それを見た相手が刀についていた血を切り払うのと同時に、私の首筋に刀が押し付けられる。

 

「っ…武士の情けですか?馬鹿にしないで…下さいね!」

 

私が鍵束を使って刀を手に入れるのと同時に、周囲の雪精達が私の周囲に集い始める。

…それと同時に、私の足が少しだけ氷始め……それを見た武士が私の首に押し付けられた刀が振るわれる。

……首がはじけ飛び、私の視界が地面と近くなり……

 

「っ?!」

「始めて驚きましたね雪の武士……いえ、日本の人達(同業者)の方が付けた名前を教えるべきでしょうね。冬将軍」

 

私の一言と同時に、私の首が元の位置に戻り私は刀を使って冬将軍を斬り付ける。

それを見た冬将軍が私の刀を斬り落とそうとするが…神器を切り落とす事が出来なかったのか鍔迫り合いになった。

私は態と力を抜いて上半身を斬られるが…それを見越して私は冬将軍の頭を両手で掴んでそのまま微笑む。

 

「…ふふ。このままサイバイマンごっこしてやりますよ」

 

私の一言と同時に私の身体を振り下ろそうとしてくるが、それを防ぐべく私は頭を抱きしめて魔法を唱え始める。

魔法詠唱、放棄(キャンセル)、詠唱、放棄(キャンセル)、詠唱、放棄(キャンセル)、詠唱、放棄(キャンセル)、詠唱、放棄(キャンセル)、詠唱。

魔法を唱える瞬間に大量の魔力を集め、それを身体の中に溜めながら生命力(HP)魔力(MP)に変換し続ける。

 

「…アハッ。エクスプロージョンの25倍の爆発!耐えきれるなら耐えて見て下さいよ!」

 

私の言葉と同時に私の上半身にため込んだ魔力が暴走し始める。

大量の熱を持ち、私達の傍に居た雪精達が余波で溶けていく。それを見た冬将軍が私を殺そうとするが、既に溶けだした身体にくっ付いている私を剥がす手段は無い。

魔力の影響によって私の身体がボロボロに溶け始め、私の意識と精神が一本の糸の様に解け出す。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゛ぁ゛!!」

 

声を上げて意識を保とうとしているが、意識は朦朧としだし瞼がだんだんと下がっていく。

このまま失神すれば相手を殺せる機会が無くなってしまうので舌を噛んで意識を保ち、私の身体は高温によって溶け出す。

私の魔力の影響で空いた穴に自分の復活した左手を突っ込み、其処に今まで溜まった魔力を全て集める。

 

「っ喰らいなさい!エクスプロード・グランドクロス(十字架)!」

 

私の言葉と同時に、私の左手から白い十字架が発生して私と冬将軍を包み込む。

そのまま瞬時に私達の周囲の雪が消え去り、此処一帯が焦土となる。

…私の意識と身体がゆっくりと戻り始め、まず視界が戻った瞬間…

 

「っ!?」

 

冬将軍が私の首に刀を振るおうとし、そのままの姿勢で止まる。

…よく見れば冬将軍の身体は殆どが溶けかかっており、片足と片手だけで私の方まで辿り着き…そのままの姿で立ち止まったのだろう。

私の首筋と刀の距離は約一cm。後一秒でもあれば私は今日何度目かの死を体験していただろう。

 

「…警告出さないといけませんね。雪精達を狩るのは暫く禁止させた方が良いでしょう」

 

私の冒険者カードには冬将軍と書かれた討伐記録が残っており、目の前には半分だけ残った冬将軍が刀を振り下ろす前の姿勢で止まっていた。

…取り敢えず冬将軍を解体して素材を手に入れて、その後に色々考えを…

 

「んっ…なんですか突然」

 

考えを纏めようとした瞬間、一匹の雪精が私の頬を突き始めた。

攻撃と呼ぶには余りにも弱く、そもそも雪精は攻撃をしない大人しい性格の持ち主だ。

冬将軍がやられたから仕返しに私に攻撃を入れたのだろうか?とも思ったが他の雪精達は特にふわふわと浮いているだけだった。

それを見て私は更に首を傾げるが…雪精が私の服の中に入って身体がひんやりとし始める。

 

「ちょ?!雪山でそれは冷たいんですけど…ひゃ、動かないで下さいよ!…っ~!しまいにゃ斬り付けますよ!」

 

私の言葉に反応したのか、それとも余りの寒さに暖を取って満足したのかは分からないが…満足そうな表情で出てきた雪精を私は思わず睨み付ける。

正直後ちょっとで冷たさで心臓が止まって冬眠(永眠)しそうになったのだ。

これくらいは許されて然るべきだろう。

 

「…何ですか次は。私の手にくっ付いて……ん?この刀を取れって事ですか?」

 

私の言葉を聞いているのか居ないのかは分からないが、私の手に移動してから冬将軍の持っていた刀の方に移動した雪精を見て…私は刀を手に取る。

鋭い刃は氷みたいだが、普通の氷にあるまじき耐久性と鋭利さを兼ね備えている。

そして持ち手は雪を掴んでいる様にふわふわなのに、何故か持っている手から暖かさが伝わってくる。

 

「…これは神器何でしょうか?こんな風な武器を持っていた日本人が居た気がしますが…」

『……これは神器の偽物。本物は遥か遠くに御座います』

「っ?!」

 

私以外の声が聞こえて周囲を振り向けば、八方向に私が倒した筈の冬将軍が現れていた。

…囲まれた。

先程の魔法を使えばもう一度撃退は可能か?とも思いつつも、私は左手に魔力を籠めて周囲を警戒すれば……突然の風によって私の魔力はあらぬ方向に飛ばされた。

 

「っ!?」

『落ち着いて下さい。私達精霊に戦う意思は御座いません…勿論、貴女が望めば戦う事も吝かではないのですが』

「…分かりました。貴方達が襲わないのであればこちらも交戦する意思はありません」

『助かります』

 

私の言葉と同時に、八方向全ての冬将軍達が私に膝を付けてお辞儀をし始める。

…確か合手礼と呼ばれるお辞儀方法だったかな?

 

「この刀は元に戻した方が良いですか?」

『雪精が認めた以上、私からは何も言いませんよ。それは雪精なのですから、本人が認めた以上精霊は何も言えないのです』

「…それは雪精…つまり刀自体が雪精だと?」

『その通りです。冬将軍と戦う時、危険なのにも関わらず雪精達はずっと残っていたでしょう?』

「あれは守り神の様な物が現れたからと思っていたんですが…実際は逆だったんですね」

 

そういえば私が魔法を放つ瞬間も、その魔法に向かって一目散に向かっていた気がする。

あれは一矢報いる為に向かってきたのではなく、冬将軍を回復させる為に向かってきた…と言った所だろうか。

 

「…どうして今日、今まで現れなかった冬将軍が現れたのですか?」

『精霊は人のイメージから具現化します。積み重なったイメージが漸く今日、こういう形で具現化したのです』

「……成程。日本人の所為ですか」

 

私がため息を吐きながら刀を撫でれば、その刀はポンと言う音と同時に雪精の姿に戻った。

…それに驚いていると、目の前の冬将軍の身体に入り込み……傷がだんだんと治っていく。

そして完全に傷が治ると私の方に赤い目を向け、片膝を付けて消えた筈の刀を私に差し出した。

 

「…彼らも不死身なのですか?」

『不死身とはまた違いますね。貴女の自爆に似た技によって確かに目の前の冬将軍はその役目を終えて眠りにつきました』

「……」

『ですが雪精とは無限に存在する物。冬と春が存在する限り雪精は無限に生まれ…そして無限に消える。

それを受け入れて今まで消滅していた雪精達が、貴女達のイメージによって冬将軍に生まれ変わった…という認識が正しいでしょうね』

「つまり冬将軍を完全に抹消させる事は出来ないと?」

 

私の一言と同時に、今まで吹いていた風が吹き止んだ。

…それと同時に、優し気な声から一転し心を鷲掴みする様な声が私の頭の中で響き始めた。

 

『一度固まったイメージはもう二度と覆せない。もし完全に消滅させたいなら生まれてくる雪精を倒し冬将軍を片っ端から斬り飛ばせば良いんです』

「…っ!?」

『最も…それを人類が出来るかどうかと言われれば…無理と言わざるを得ませんけどね』

 

その言葉と同時に、私の首が切断されて瞬時に凍り付く。

…目の前の冬将軍がやった訳ではない。つまり未だ精霊の姿を保っている“ナニカ”が私を殺そうとしたのだろう。

私の首が落ちて八方向に居た冬将軍が消えたのを見てから、私は首を拾って切断面をティンダーで温めて回復魔法でくっつける。

 

「…それでは遠慮なく貰いましょうか」

 

そう言いながら私が冬将軍の刀を取ると、冬将軍はあっさりとその姿を大量の雪に変えた。

…そしてそのまま三匹の雪精達が空に昇り始め…私は漸く終わったとため息を吐いた。

何度も斬られた首を触りながらも、私は持っている武器を見つめて…そして小さくため息を吐く。

 

「……後五十年くらい刀の練習しましょうかね」

 

冬になる度に冬将軍に稽古をつけて貰おうかなと、未来の予定を立てながら…私は自宅に移動する為にテレポートを詠唱した。




-第21256回報告書/冬将軍と持っていた神器について

-贋刀・樹雪(ジュセツ)
-過去に生まれた神器から作られた贋物の刀。
-それは周囲の雪や水を刃を所持者の望む物や鎧に変え、茎から露を垂らされ続けており自らの刃を最善の状態に整えると言った性質を持った…いわば刃の永久機関である。
-周囲の水分をそのまま凍らせたりして冬将軍の様に鎧を作る事も出来るが、周囲の温度が極端に高かったりすると失敗する。
-またこの刀の誕生には雪精と上級精霊の両方が関わっており、新しい転移者が死んでそれが精霊の手に渡ると、第二第三の冬将軍が確認される可能性もある。
-神器所持者の転移者は常に警戒する様に注意されたし。

-著者/暁真白

RE:第21256回報告書/冬将軍と持っていた神器について

今回の件については納得した。
調査並びに冬将軍の討伐、ご苦労であった。お陰でギルドマスターが頭を抱えていたよ。

さてその武器に関してだが既に調査の報告は出ている。
過去にそれに似た様な刀を所持し、去年の冬に戻ってこなかった涼風春香の所持神器である『--』だ。
君には馴染み深い名前じゃないかな?君の警告を無視して雪山に行き…そして精霊に殺されたのだろう。
本来精霊は人間を自分から傷付ける様な奴ではないのだが…奴が逆鱗に触れたのかもしれないな。

偽造神器については幾つか報告を受けている。
その中には君の言った様な武器や防具、そして道具が発見された。
未だ数は其処まで確認されておらず、そもそも神器を持っているだけのモンスターなのか偽造神器なのかは分かっていない。
何れこちらの方から正式に依頼を出すので、調査をお願いしたい。

-追伸
いい加減累計の数字で書くのは止めてくれ。毎回報告書の返事を書く時書き続けるのが面倒だ。
それと神器『----』と『----』の捕獲をお願いしたい。どちらも主から離れて久しい。
後は近々ベルセルク王国の新たな王族が生まれるそうだ。この機会に王都に来て、俺と一杯付き合ってくれよ。
女性好きなサキュバスを連れて待っているぜ。

著者/日本人転生者兼冒険者ギルド副マスター
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