IS×仮面ライダー 炎竜シーズン2 仮面ライダー輝龍 作:柏葉大樹
side三人称
「グオオオオオオアアアアアアアアア!!」(大樹)
突如、その姿を変えた大樹。その姿はアギトそのものであり、その姿は目の前の敵のイーヴィルアギトを思わせるが燃え盛るマグマの様な色をしており、周囲の木々を自然に発火させる程の高熱を発していた。
大樹はその姿になってからずっと大穴が空いた左胸を、すでに傷がふさがっているそこを抑えて痛みに叫んでいた。
「ッ!ッ!ガアアアアア!!」(大樹)
その声は痛みに苦しんでいるようであり、見ている一夏もその様子が尋常では無いことを察する。
「大丈夫か!大樹!」(一夏)
そう一夏が呼び掛けるも大樹はうずくまって痛みに耐えているだけで返事を返すことは無かった。イーヴィルアギトは右手に巨大な双刃の剣、イーヴィルシャイニングカリバーを出現させて大樹へと近づいた。
「大樹!危ない!!」(一夏)
一夏の呼びかけに大樹は反応を見せるも先にイーヴィルアギトが近づく方が先だった。
「お前を殺さないと、五代さんが。だから...。」(イーヴィルアギト)
ザシュッ
その音が一夏の耳に届いた数瞬の後に大樹の絶叫が聞えた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」(大樹)
大樹の右腕が切り落とされており、大樹は切り落とされた自分の腕を、その傷口を抑えていた。
「大樹!!」(一夏)
一夏がそう呼びかけると一夏の耳に山の下の方から足音が聞こえてきた。
「一夏!無事か!?」(秋人)
「父さん!大樹が!」(一夏)
拳銃を構える秋人は一夏の元に駆け寄る。
「あの姿、護龍なのか。」(秋人)
「父さん、大樹が大変なんだ。」(一夏)
目の前で絶叫する大樹の姿を見て驚く秋人。一夏は痛み体に鞭を打ってロックシードを手に立ち上がろうとしていた。
「一夏は下がって。父さんが奴の気を引いているうちに逃げるんだ。」(秋人)
「そんな!父さんを置いて行けるか!それに大樹がやられているのに逃げれるかよ!!」(一夏)
秋人は拳銃を即座に撃てるようにして一夏に言った。一夏は当然ながら秋人の言うことを聞くことは無い。自分も戦おうとしていた。
「たぶん、大樹は大丈夫だよ。
秋人のその言葉に一夏は大樹の方を見る。そこにはイーヴィルアギトが再度イーヴィルシャイニングカリバーを振り下ろそうとしていた。
「大樹!」(一夏)
一夏がそう叫ぶと同時だった。
イーヴィルアギトはイーヴィルシャイニングカリバーを振り下ろした。だが、その刃を大樹は切り落とされたはずの右手であらん限りの力で握りしめていた。
大樹はイーヴィルアギトからイーヴィルシャイニングカリバーを力ずくで奪い取り、完全に治った右腕の拳をイーヴィルアギトの顔面に叩き込んだ。
side大樹
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
一夏を庇ったその瞬間から全身を激痛が走り続けていた。無我夢中だったからどうなっているのか全く分からなかった。ただ、一夏が呼び掛けたのだけは分かったけどその次の瞬間からまた今までに感じたことが無い激痛が走った。その直後に全身がまるで焼かれているように熱くなってどういうわけかそのことになのか傷ついたことになのか怒りがふつふつと湧き出してきた。そのまま耐えていると抑えきれないほどに怒りの炎が燃え上がりだしていた。
今までにそんなことは一度もなかった。そのまま耐えきれそうになかったからすぐ近くにあったものを握った。この怒りの感情をどうにか発散させないと正気が保てなさそうだった。気付けば目の前に翔一さんが戦っていたあのアギトが居た。丁度いいと思った。こいつ相手ならきっと怒りを発散させても大丈夫だと、そう思った。
「ガアッ!!」(大樹)
俺は怒りに任せてそいつの顔面を殴り飛ばす。あいつはそのまま吹っ飛んでいったけど、そんなのは別に気にすることは無い。
その場をジャンプして地面に寝転ぶそいつの上に飛び乗る。そこから馬乗りになって何度も何度も何度も何度も拳を振り下ろす。こいつは両腕をクロスさせてガードするけどそんなのは大して関係ない。そのまま何度も何度も怒りに任せて殴る。その度に拳が痛むが気にせずに殴る、殴る、殴る、殴る。いつの間にかガードが外れたそいつの顔面にあらん限りの力で殴る。
殴るたびに怒りの炎が燃え上がる。痛みが走るたびに怒りの炎が燃え上がる。とにかく、殴らないと、こいつを攻撃しないと、この怒りを発散させないと自分が何をするのか分からない。今のままだときっと大切な人達を傷付ける。絶対に、絶対にそんなことがあってはいけない。そんな事が起きれば俺はきっと正気を保てない。だから、だから...。
「このまま死ねえええええ!!」(大樹)
あらん限りの力を込めてこいつの顔面に右手の拳を叩き込んだ。その瞬間に、脳裏に急に何が流れた。それは...。
side3人称
実際のところは大樹は拳を振り下ろすことはなかった。右手の拳を振り上げたところで止まっていた。
先程まで怒りの感情のままにイーヴィルアギトを激しく殴り続けていたが急に何かに気付いたのか困惑しているようで完全に攻撃の手が止まっていた。
「今の、一体。」(大樹)
そう大樹に隙が生じた瞬間にイーヴィルアギトは上体を勢いよく起こし、大樹にパンチを浴びせた。大樹は咄嗟に右手をかざしてパンチを受け止めていたためにダメージは無かったが馬乗りからそのまま立ち上がってしまいイーヴィルアギトの逃亡を許してしまった。
「待て!」(大樹)
大樹はその後を追おうとしたが急に膝から崩れ落ちて変身が解除してしまった。大樹は自分がかなり消耗していることに初めて気付いた。そのまま山道を下りてどこかへ遠く行ってしまったイーヴィルアギトの後ろ姿を見ることしか出来なかった。
「あの姿は護龍、柏葉家に伝わる守護神。僕はそう玲人さんに、大樹のお父さんに聞いた。」(秋人)
その日の昼頃。大樹は篠ノ之神社にある道場でマドカ、一夏と共に話を聞いていた。
「護龍の始まりは何か超常的な力を持った人間だったと玲人さんは考えていた。護龍のあの姿は、大樹が変身したあの姿は間違いなくアギトだった。恐らく護龍の超常的な力は超能力だったんじゃないかな。」(秋人)
ここまでの話を聞いて大樹は俯いて何かを考えていた。
「さっき、思い出したって言うか。俺、小さい頃の病気だけど。病気の進行が止まって治ったわけじゃないと思う。」(大樹)
「どういうことだよ。」(一夏)
「もしかすると俺、一度本当に死んでいるかも。」(大樹)
大樹のその言葉に一夏が怪訝な表情になった。マドカは大樹の言葉にまさかと言った反応だった。大樹の言葉に秋人はやはりと言った表情を見せた。
「大樹の超能力はたぶんだけど回復能力に関するものだと思う。死に瀕した時にだけ発揮される驚異的な自己再生、それが幼い頃の病気を完治させたと思う。」(秋人)
大樹の言ったことから秋人も自分の見解を話し出した。
「死に際になって初めて覚醒する驚異的な自己再生能力。大樹の病気の進行はこの町に移った時点で終末医療の対象になる、たぶん毎日襲い来る激痛をかなり強い鎮痛薬で治めるレベルの手の施しようがないレベルだったと思う。その時に、どのタイミングかは分からないけど移植した護龍の力で肉体が健康な幼児と全く変わらないレベルまで回復したんだろう。」(秋人)
「あの時に、急に頭の中でどこかの情景が浮かんだ。たぶん、俺が初めて護龍に、アギトに変身した時だったと思う。あそこの、あの山にある研究所の地下で起きた記憶だと思う。」(大樹)
そこまで言った時の大樹の表情から秋人は深く追求することはしなかった。
「なあ、大樹。あの姿になっている時ってどうなんだ?体は平気なのか?」(一夏)
「う~ん、身体はたぶん大丈夫。ただ、あの姿になっている間は全身に痛みが、それも我慢できないレベルの痛みが常時全身を襲っている。」(大樹)
「それは大丈夫じゃないでしょ!!」(マドカ)
マドカが身を乗り出して大声で言う。そのままマドカは大樹に詰め寄る。
「それって病気が治っていないかもしれないってことじゃない!変身する度に体がボロボロになっているかもしれないでしょ!!」(マドカ)
「いや、まだ何も「一夏兄さんは黙って!!」…………。」(一夏)
一夏が口を挟もうとしたがマドカが一蹴する。それに対して一夏はそのまま正座をして黙った。
「たぶん、病気の方はもう大丈夫だよ。」(大樹)
「根拠は?」(マドカ)
「これ。」(大樹)
そう言って大樹は右腕の袖を捲った。そこは先程の戦いでイーヴィルアギトの切り落とされたはずの右腕である。そこには切り落とされたことで生じた切り傷の後がうっすらと残っていた。その傷跡もよく目を凝らさないと分からないほどにうっすらとしていた。
「さっきの戦いであのアギトに切り落とされたけど全く違和感なく動かせる。俺の体の他の傷も痕は薄くなっていてそれも完全に治っている。だから、幼い頃にアギトに変身しているならその時も全く同じことが起きたと思う。」(大樹)
自身の身に起きた過去の出来事、そのことの真実が垣間見えたことで大樹の中にあったあるわだかまりの解消されていた。
「きっと、それを分かったうえで父さんと母さんは俺にアギトの力を移植したんじゃないのかな。」(大樹)
「ああ、きっとそうだと思う。でも、あの姿には、護龍に変身するのは控えた方が良いかもしれない。」(秋人)
「暴走の危険性が大きいから、だよね。さっき、変身した時には怒りの感情が抑えきれなかった。俺も皆のいる前で変身するのはかなり危険があると思うからなるべく変身しないようにする。」(大樹)
「制御のヒントは柳韻さんから聞いてみる。そもそも、篠ノ之神社は柏葉家とかかわりが深い神社だから護龍に関するものも何かあるはずなんだ。」(秋人)
そう秋人が言うと大樹は近くにあった鞄から以前に柳韻から渡された古文書の写しが書かれたノートを出した。
「前に先生から借りたノート。今の状況と似たことが書かれてあるらしくて。」(大樹)
大樹はそのノートを秋人に渡す。秋人はそのノートを開いて最初のページから目を通し始める。その表情は真剣そのもので彼のその表情を大樹たちは初めて見た。
「大樹、しばらく借りても良いかな。」(秋人)
「うん、大丈夫。」(大樹)
大樹は秋人のノートを渡す。それから、4人はその場を解散。マドカは大樹のそばに居ようとするが大樹は翔一に話しをしに行くと言ってそれを断った。それから大樹は翔一の元へ訪ねた。
side大樹
翔一さんは既に回復していて篠ノ之神社の台所に居た。
「あれ、大樹君。どうしたの?」(翔一)
「あの、少し良いですか?」(大樹)
俺の言葉に持っていた包丁を置いた翔一さん。俺は意を決して翔一さんに問うた。
「翔一さんは、自分の肉体が普通ではないことで不安になったことは無いんですか。」(大樹)
俺の問いに対して翔一さんはその表情を変えた。先程までの柔和な笑顔が消えて、真剣な表情になった。でも、すぐにあの笑顔を見せて「う~ん、そんなに不安に感じたことは無いかなぁ。」と言った。
「俺、アギトに変身できるようになった時に記憶をなくしちゃって。だから、今までの俺が思い出せないなら今の俺を受け入れようって思ったんだ。それに、この力で大切な人を守れた。だから、俺はこの力を、アギトの力を受け入れている。」(翔一)
そう言った翔一さんの表情は柔らかな笑顔のままその心の内が透けて見えるのではないのかという程に俺の心に突き刺さった。
「大樹君はやっぱり不安かい?」(翔一)
「まあ。普通じゃないかもしれないってずっと考えていたけど。いざ、答えが出るとそれはそれでやっぱり。」(大樹)
ここじゃない別の世界。仮面ライダーもISも創作物だった世界に生きていた時の記憶はもうほとんどが薄れていた。それでも、薄れていてもその時の感情も、思ったことも覚えている。その中で俺が思ったのは、俺の体は既に普通の人間とは違うものになっていたということを知って俺がいの一番に思ったのは人間ではなくなった自分への大きな不安だった。
今までも兄貴の所為で周りからひどい扱いを受けて疎外感そのものは感じていた。ただ、俺の周りにはマドカ、一夏、千冬姉ちゃんに小父さんと小母さんたちがいたから周りの俺に対する扱い自体はそういうものとして受け止めていたからそこまで不安を掻き立てることはなかった。
俺にとって大きな不安なのは自分がこれ以上大切な人達から大きくかけ離れた存在になってしまうのではないのかということだ。俺は既に人間ではない、それがアギトであればなおさらこれから先その不安が現実のものになる可能性が高い。そうなってしまった時に、俺は自分の心を保てないのが怖い。
「よし、これ食べてよ。」(翔一)
翔一さんがそう言って渡してきたのはさっきから作っていたサンドイッチである。中身を見ると野菜だけが挟まっている。
「なんですか、これ。」(大樹)
失礼だとは思うけど口に出てしまった。だって、きゅうりと大根の薄切りしか挟んでないんだよ。肉とかなしで野菜も漬物、って言うかピクルス?みたいだし。
「俺の店で出してるサンドイッチ。からしマヨネーズを塗ったパンにキュウリの浅漬けに大根の千枚漬けを挟んだんだ。」(翔一)
「すごい、不思議チョイス。」(大樹)
改めてこういう料理を渡されるとすごくこの人の発想って独特だよね。普通、漬物を挟む?サンドイッチに?でも、渡された以上は食べないと失礼だし、味はたぶん大丈夫だろうけど。
「い、いただきます。」(大樹)
俺は数秒ほどサンドイッチを見て一気にガブリついた。口の中で咀嚼するときゅうりの浅漬けの塩気に大根の千枚漬けの甘酸っぱさがからしマヨネーズを塗ったパンと好相性。パンは軽くトーストしてあって、漬物二つもシャキシャキザクザクの歯ごたえが楽しい。
「お、おひしひ。」(大樹)
率直な感想が自然と口から出た。ただ、食べながらだからすごく行儀は悪いけど。
「きゅうりの浅漬けだけどただ塩を振るだけじゃなくて濃いめの出汁醤油に付けてあるんだ。それに合わせて大根の千枚漬けはお酢を強めにしているんだ。そのままだとパンに合わないから特性のマヨネーズにからしを混ぜて焼いたパンに塗ってあるんだ。」(翔一)
翔一さんの説明を聞いているどうか別としてムシャムシャムシャムシャとサンドイッチを食べる俺。その食べっぷりを見た翔一さんは笑いながら俺に新しいサンドイッチを手渡す。それを俺はまた食べて、食べて、とにかく食べた。
しばらく食べると不思議と心が落ち着いていた。
「じゃあ、大丈夫だね。」(翔一)
翔一さんの言葉が何を意味するのか、即座に分かった。俺はそのまま翔一さんと一緒に神社を出た。
side三人称
篠ノ之神社の本殿では秋人が柳韻に例のノートを見ながら話していた。
「制御ねえ、まあ資料の整理は雪子の方が慣れているから何か知っているかもしれねえな。」(柳韻)
「何かわかれば良いんだ。少なくとも先代の護龍についてほんの少しでも分かれば。」(秋人)
本殿の方から二人は神社の御神体などに関わる資料を保管している倉へと向かっていた。
「それで、大樹の変わった姿ってえのがそれか。」(柳韻)
「たぶん。」(秋人)
「なんで、男衆は遅いのよ!!」(雪子)
話しながら歩いていた秋人と柳韻に掛けられたのは雪子の怒鳴り声だった。
「私に力仕事を何でも任せんじゃないわよ!!バカ兄貴!!」(雪子)
「おう、バカだが。」(柳韻)
「それで、護龍について何か分かりましたか?」
「もう。」(雪子)
雪子は奥から出した資料を見せる。
「たぶん、これよ。でも、暴走とかは書かれてないわよ。」(雪子)
「まあ、書かれてあるもんを確認するだけだ。」(柳韻)
「兄さんには聞いていないわよ。」(雪子)
雪子から手渡された資料を見始める秋人。その資料はかなり古く、その書かれている字は古い書き方で書かれていたので読むのに一苦労だった。秋人が苦戦しているのを見た柳韻が代わりに読み始める。
「この資料には今から200年前に居た護龍について書かれてある。恐らく、死んだ柏葉夫妻が大樹の奴に移植した護龍の力の大本はこの資料の護龍だったろうな。」(柳韻)
「その護龍について何か書かれてありますか?」(秋人)
「秋人が言ったようなマグマのような姿については書かれていねえな。基本的には山吹色、今でいう金色の姿が基本だった見てえだな。」(柳韻)
「そう、ですか。」(秋人)
柳韻の言葉に秋人が肩を落とす。だが、柳韻はそのまま資料を読みだす。
「だが、この護龍が怒りに飲まれた時は村一つが無くなったって書いてやがる。その様は燃え盛る焔の如しって残されていることから大分ヤバい状態になったらしい。それがもしかすると大樹の変身したあの姿ってことだろうな。」(柳韻)
「制御する、そもそもその状態にならないっていうことは書いていないの?」(雪子)
「それは書かれていねえな。ただ、双璧を為す蒼き龍の巫女が沈めたとしか残っていねえな。」(柳韻)
「蒼き龍の巫女?」(秋人)
「それしかわからん。秋人の方で何か心当たりはないのか?」(柳韻)
「蒼き龍の巫女...。」(秋人)
秋人はかつて大樹の父、玲人と話した記憶を思い出していた。その中でマドカに対して行ったあることが脳裏をよぎった。
「まさか、あの時に言っていて魔法石がそうなのか?」(秋人)
「心当たり、あるんだな。」(柳韻)
柳韻の言葉に秋人がうなずく。
「停めてあるザルバにも聞いてみる。もしかすると万夏が鍵になるかもしれない。」(秋人)
秋人はそう言って資料を雪子に渡す。
「もう、良いの?」(雪子)
「はい、ありがとうございます。」(秋人)
秋人は倉を出ると神社裏にある駐車場へと向かう。
「これで終わりだ。」(イーヴィルアギト)
東京拘置所、そこにイーヴィルアギトこと別世界の津上翔一が居た。別世界におけるアギトたちの始まりの場所。凶悪犯罪者が霊石に適合した結果、誕生したのが今回の事件を引き起こしたアギトたちだった。その扉の前に立つ彼はそのまま新たに手にした力を発揮して東京拘置所の敷地内へと入って行った。
「先代の護龍は一人では戦っていなかった、そう玲人さんは考えていたんだな。」(秋人)
「たぶんだけどな。先代護龍の遺体、玲人の奴は即身仏って言ってたがそれと一緒に祭られていた魔法石が何かしらの封印の要石だと考えていた。」(Z.A.L.V.A)
秋人は駐車場に泊めていたZ.A.L.V.Aに蒼き龍の巫女と関わりがありそうなことを聞いていた。
「それが万夏に移植した魔法石、ということなんだろ。」(秋人)
「ああ。その魔法石だがただの宝石ってわけじゃない。それは玲人からも聞いているだろ。」(Z.A.L.V.A)
かつて、マドカも大樹と同じように普通の子どもとは違って肉体に問題を抱えていた。大樹のような大病と言うわけでは無かったがある事件と関係の深いマドカはかなり体が弱かった。それこそ、あまりベッドの上から動けないほどに。その彼女が人並みに動けるように、それどころか姉千冬を彷彿させるほどの活躍をISではしているのだ。そのことについては普通ではないことを秋人も春奈も薄々勘付いては居た。
「旧約聖書に出てくる海の怪物、リヴァイアサンが封じ込められている、そう聞いていた。」(秋人)
「まあ、間違ってはいねえな。正確にはその伝説の元になった怪物、ファントムのリヴァイアサンがあの魔法石に封じられた。いや、正確にはあの魔法石に宿っていたって言うのが正しいな。」(Z.A.L.V.A)
Z.A.L.V.Aは秋人の問いに答えていく中でさらに話を続ける。
「あの魔法石に宿っていたリヴァイアサンは先代の護龍と共に戦っていた、というよりはその護龍と関係の深かった人物の精神世界に居た奴らしくてな。そいつが護龍が暴走した時にリヴァイアサンの力を使ったんじゃないかって玲人の奴は言ってたぜ。」(Z.A.L.V.A)
「リヴァイアサンにそう言った力が、相手を鎮静化させる力があったのか?」(秋人)
「さあな。だけど、その力を使うためにウィッチドライバーを作ったって話だからな。それを取りに来たんだろ?」(Z.A.L.V.A)
ザルバの後部にある荷台部分から青色の手形に似たバックルが現れる。
「これがウィッチドライバー。」(秋人)
「他にも魔法を使うための指輪もあるぜ。」(Z.A.L.V.A)
さらに6種類の指輪、ウィザードリングがウィッチドライバーが出た直後に現れた。全てを取り出した秋人にザルバが語り掛ける。
「さて、これで俺の役目を終わったぜ。」(Z.A.L.V.A)
「ザルバ、一体...。」(秋人)
「すべてを渡し終えたら俺は完全に消える、そう玲人の奴がプログラムしたからな。」(Z.A.L.V.A)
「そんな!!」(秋人)
「俺の体は使えるが俺が出来るのはここまでだ。達者でな。」(Z.A.L.V.A)
画面に出てきたのはプログラムの完全消去の進行を示す表示であった。
「お前と出会って、まあ楽しかったぜ。後は頑張れよ。」(Z.A.L.V.A)
「ザルバ!待て!」(秋人)
秋人がそう言うもののザルバのプログラムは完全に消去されてしまった。あとに残されたのは物言わぬ鋼のバイクのみ。かつて、大樹たちが知らぬ中で激しい日々を過ごした秋人。秋人にとってザルバは間違いなく共に戦った仲間であった。
「...相変わらず、勝手に。」(秋人)
そういう秋人の表情には悲しみの色があった。だが、秋人はそのままザルバだったバイクに手をやった。
「ありがとう。これからは大丈夫だ。」(秋人)
秋人はそのままウィッチドライバーを持って神社の境内へと戻った。
東京拘置所は阿鼻叫喚のまさに地獄絵図だった。イーヴィルアギトは次々と拘置所内に居る犯罪者たちを血祭りにあげていく。
「辞めろ!辞めてくれえええええ!!」
グシャッ!
「ヒイイイイイイイイ!!」
ブシャッ!
「あああああああ!!」
ボンッ!
悲鳴が上がるたびに増える死体。すでに拘置所内には生きている人間が一人も存在しなくなった。それでもなおイーヴィルアギトは止まらなかった。
「まだだ。このままじゃあ、ダメだ。もっともっと五代さんを苦しめるやつをコロサナイト。ヒトリモノコラズニコロサナイト。」
漆黒のその姿が徐々に歪に変化していく。ここまでに変身したフレイムタイタンフォーム、ストームペガサスフォーム、バーニングフォームのそれぞれの特徴を得ながらも甲虫らしさを色濃く有した姿であるイーヴィルトリニティフォームへと変化した。
「コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト!!」(イーヴィルアギト)
イーヴィルアギトはクラッシャーを展開、口内に幾本にも生えている牙をぎらつかせる。
イーヴィルアギトは両手に武器を出現させて辺り一面を瓦礫へと変えた。
バイクを走らせていた大樹と翔一が東京拘置所から飛び出したものに気付いた。その飛び出したものを追うために大樹と翔一はバイクの進む方向を変えた。
イーヴィルアギトは東京拘置所から場所を変え、新宿へと来た。都庁の前に降り立ったイーヴィルアギトはそのまま破壊衝動のままに暴れ出した。
「グオオオオオオアアアアアアアアギヤアアアアアガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」(イーヴィルアギト)
最早獣同然の咆哮を上げながら暴れるその姿は既に元々の人を思わせることは無い。元は別の世界に居た津上翔一である彼は悲運の人生を辿っていた。その果てに精神は崩壊、その身に宿った力は歪な進化を遂げてその世界をアギト以外が生存できない荒廃した世界へと変貌した。そして、この世界もその破壊衝動のままに自分の世界と同じ荒廃した世界へと変えようとしていた。
イーヴィルアギトが暴れる中でついに大樹と翔一がその場に到着した。
「大樹君、行くよ!」(翔一)
「はい!!」(大樹)
『ゴールデンドラゴンフルーツ!』
「「変身!!」」
≪ソイヤ!ゴールドドラゴンアームズ!黄龍、アップライジング!!≫
大樹は仮面ライダー輝龍に、翔一は最強の進化形態である白銀に輝く仮面ライダーアギトシャイニングフォームへと変身した。二人は変身を終えるとそのままイーヴィルアギトに向かって走り出した。
輝龍は光龍剣を振るい、イーヴィルアギトに斬りかかる。
アギトシャイニングフォームは流れるような連撃でイーヴィルアギトを攻撃していく。
「ガアアアアアッ!!」(イーヴィルアギト)
バーニングフォーム由来の高い防御力を有する甲殻に全身を覆われているイーヴィルアギトは輝龍とアギトシャイニングフォームの攻撃をものともせずに反撃を行う。
フレイムタイタンソードとストームペガサスボウガンを召喚して力任せの斬撃と全てを吹き飛ばす烈風で輝龍とアギトシャイニングフォームを攻撃する。
輝龍は光龍剣でフレイムタイタンソードの重い斬撃を受け流し、ストームペガサスボウガンの烈風を軽々と躱していく。
「コワス、コワスウウウウウウ!!ゴダイサンヲクルシメルヤツハスベテ!!」(イーヴィルアギト)
既に正気を失いかつての光の名残を護る、いや独占したいという彼自身ですらも気付けなかった歪な思いのままに暴れるイーヴィルアギト。それを見た輝龍は意を決した様子でロックシードを閉じて変身を解除、戦極ドライバーを外したのだった。
「大樹君!?」(仮面ライダーアギト)
「翔一さん、最悪の時は止めてください。」(大樹)
そう言うと大樹は両腕を胸の前でクロスさせ、腰の前まで下げた。その瞬間に大樹の腰にアギトシャイニングフォームのものと酷似した、赤い部分が黒色に銀色の部分が橙色に変化したオルタリングが出現した。オルタリングからブオンブオンと音が鳴る。クロスした両腕を開き、左の拳をオルタリングのボタンの近くへ、右手を前へと突き出した。
「変身。」(大樹)
大樹はオルタリングの左右のボタンを押した。その瞬間にオルタリングから強烈な光が放たれ、大樹の姿はイーヴィルアギトの前で変貌した仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームへと変身した。
「ぐっ!ウウウ!!ハアッ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)
アギトヴォルカニックフォームは一瞬痛みに呻いたが気合の声を発してイーヴィルアギトに向かって走り出した。
「うおおおおお!!」(アギトヴォルカニックフォーム)
「ハアアアアアア!!」(イーヴィルアギト)
イーヴィルアギトは全てを吹き飛ばす烈風を、全てを打ち砕く剛剣をアギトヴォルカニックフォームに放つ。
攻撃が当たるたびに血しぶきが上がり、傷が高熱と共に治るアギトヴォルカニックフォーム。そのまま右手を強く握りイーヴィルアギト目掛けて拳を撃ちだした。
アギトヴォルカニックフォーム、アギトシャイニングフォーム、イーヴィルアギト。3体のアギトによる戦いは激化していく。
激化する戦いの中でアギトヴォルカニックフォーム、大樹はまたも自身の中で燃え上がる怒りの制御に苦しむ。
「大丈夫、一人でなんてさせないから。」
蒼き龍の巫女、その力を受け継ぐマドカがその戦場へ。
「変身!」
≪チェンジオーシャン!ザブーン、ザブーン、ザブーン!≫
熱きマグマを癒す大海の魔法使いが現れる。