IS×仮面ライダー 炎竜シーズン2 仮面ライダー輝龍 作:柏葉大樹
クモインベスとの初戦は俺の文句のつけようがない敗北で終わった。ボロボロになった俺は痛む体に鞭を打って、一夏と共に同じ中学に通っていた友人の弾の家に向かった。
初戦のダメージで学園に簡単に戻ることは出来ず、それどころか弾の実家の定食屋の入り口の前に倒れてしまった。
「おい!朝っぱらから店で何してやがる!!」
その時の俺に気付いたのが弾の祖父の厳さん。勢いよく扉を開けたらボロボロの俺がいて厳さんはかなり驚いていた。
「大坊!どうした!?」
「厳さん、取り敢えず入れて...。」
厳さんは事情を聞かないでくれて店の中に入れてくれた。ボロボロの体に手当をしてもらい、前日の残りの料理で朝食も作ってくれた。
俺は厳さんにお礼を言うと急いで学園に戻った。痛む身体で授業を受けている間、俺はクモインベスとの戦い方を振り返っていた。
その時はまだ俺自身はそんなに戦いについてそこまで危機感を持っていたわけじゃなかった。
「痛てててて。」
学園の寮に帰った俺は傷の手当てをした。その中で、ふとテレビをつけた。
基本、俺は何かをするときには音楽とかテレビのニュースをかけていた。ふとした時にするいつもの週間、その時に見たニュースが俺の今後を決定づけた。その時のニュースでは俺がクモインベスと戦った場所で行方不明者がこの数日で続出していると報道していた。そのニュースを見て背筋が凍った。それからは正直に記憶に残っているわけではなかった。ただ、その時に俺はとてつもない罪悪感に、今までに感じたことがない恐怖を感じた。
俺がクモインベスを倒せなかったから誰かが犠牲になった、その誰かに俺の近しい人が鳴ってしまう可能性があることを理解した。
罪悪感に、恐怖に襲われて動けないということは俺は許さなかった。それから俺はまたクモインベスに戦いを挑んだ。傷が回復する前に何の対策も無く戦うなんて素人がすることじゃない。でも、その時の俺にそんなことを考える余裕なんて無かった。
それから程なくクモインベスと2度目の対戦となった。
相手のクモインベスは俺のことを覚えていたらしく、俺を見つけるや否やすぐさま襲い掛かって来た。
俺は襲われながらも戦極ドライバーを装着、ロックシードを起動した。
その時はとにかく、全身の血液が沸騰するような、全身の筋肉が戦慄く感覚を覚えた。
俺は全身に生じるその感覚のままに2度目の変身を果たした。そして、俺は腰に収まっていた竜炎刀を鞘から勢いよく抜いた。
この時、俺は初めて自分の意思で殺すために剣を振るった。
どうやって戦ったのか、後から思い出そうとしても思い出すことが出来なかった。
ただ、最後は暴れるクモインベスに竜炎刀を突き刺した、それも力づくで押し込んで。
俺は肩で息をしながら、その場に膝を着いた。
終わった後に襲って来たのは全身から走る痛みと倦怠感だった。
俺はクモインベスの遺体を燃やして処分した。
「う~ん、こんなもんか。」(大樹)
大樹は前世での戦い、クモインベスとの戦いを振り返っていた。
薄れ始めている記憶を手掛かりに書き始めていた記録は誰に見せるでもないために、かなりの主観なども入りながら書かれていた。なお、大樹自身はこの記録を誰かに見せるつもりはなく、ただ自身の辿った戦いの道を振り返るためだけのものとして書き始めたそれは大樹にとっての日課になり始めていた。
今、大樹は織斑家の自室にてそれをノートにまとめていた。
まだ、書き始めて間もないその文章を読み返す大樹。
何度も読み返す中で他に書き足す内容があるか思い出そうとする。だが、既に薄れ始めている前世の記憶、その激闘の日々は徐々にだが風化し始めているためにそれ以上に文章を変えることも出来ないように思えた。
「大樹!ごはんよ!!」(春奈)
部屋の外から春奈が昼食を知らせる。それを聞いた大樹はノートをそのままに部屋を出る。
「今、行くよ。」(大樹)
続きを書き始めるが、クモインベスの次の相手は確か、、、。
「こんなに多いなんて、聞いてないって。」(大樹)
クラス代表戦、一夏と鈴の試合が近づく中でレイヨウインベスと戦うことになった。場所は地下にある巨大貯水槽で、そこに数十体の群れで潜んでいた。
「とにかく、さっさと終わらせよう。」(大樹)
なお、この時もとんでもない数の暴力で為す術なく逃げ帰って来た。幸いにも軽傷で済んだが。ドラゴンフルーツアームズで戦った結果、大きな怪我をすることなく逃げることが出来たが複数の敵を相手にするには重武装型のドラゴンフルーツでは正直複数を同時に相手にすることは難しかった。
怪我を負い、逃げ帰った俺はレイヨウインベスの対策を考えた。父さんと母さんから3つのロックシード、各アームズの特性を理解していないととてもじゃないが戦い続けることはできないと思った。
重武装近接特化のドラゴンフルーツアームズは高い防御力と竜炎刀による近接攻撃を主とする。鎧武と斬月が使用したカチドキアームズに近い性能であるこのアームズは1対1の近接戦に向いていた。
残る2つのロックシード、シークワーサーとパッションフルーツの特性を理解する必要があった。
俺はIS学園に戻って、皆が寝静まった夜にシークワーサーとパッションフルーツを試してみることにした。
まずは、シークワーサーを試してみた。オレンジアームズに似た濃緑色の鎧に錫杖型の蒼雷杖を使うシークワーサーは最初はお世辞にも使いやすいとは言えなかった。高い敏捷性を有するこの形態はドラゴンフルーツアームズよりもパワーが劣っていた。さらに杖ということで今までとは違う戦い方をする必要があった。
その次にパッションフルーツを使った。上半身を覆う鎧は鉄砲隊を思わせるサイバーな意匠の鎧でグレネードランチャー型のパッションフレアカノンを使うパッションフルーツは中距離と遠距離に対応したアームズだった。複数の敵を同時に攻撃できるこのアームズはレイヨウインベスとの戦いで有効だと思えた。ただ、火力が高すぎて地下で使うには気が引けた。
俺は戦う場所のことを考えて、シークワーサーを使うことに決めた。それからはシークワーサーアームズに慣れるために訓練を続けた。おかげでしばらくは徹夜続きだった。
シークワーサーアームズの特性に慣れて、俺はレイヨウインベスとの再戦に臨んだ。最初からシークワーサーアームズに変身、蒼雷杖を使って複数の敵を同時に打ち据える。蒼雷杖のリーチを活かして、距離を取りながら俺は戦闘を優位に進めた。始めは10体以上だったレイヨウインベスも残り5体になったときだった。
「なんだ、集まりだした。」(大樹)
集まりだしたレイヨウインベスは急にある一体に他の個体が噛みつき出した。噛みついたレイヨウインベスたちは溶けるように噛みついたレイヨウインベスと一つになっていく。俺の眼の前で巨大な姿に変貌したレイヨウインベス、巨大レイヨウインベスは強化されたパワーで俺に殴りかかる。
巨大になったことでパワーが強化されたレイヨウインベスを前にシークワーサーアームズの俺は回避に専念することを余儀なくされた。だが、巨大になったことは無理にシークワーサーアームズで戦い続ける必要はなかった。俺はそのままドラゴンフルーツアームズにアームズチェンジする。
巨大レイヨウインベスを相手に俺は無双セイバーナギナタモードを使って、果敢に攻撃した。巨大化したことで防御力も上がっていたが、ドラゴンフルーツアームズのパワーなら突破できた。俺はそのまま大技で巨大レイヨウインベスを撃破することができた。
レイヨウインベスを撃破した後、俺の両親と連絡が取れなくなった。研究をしているときに連絡が取れないのはそう珍しくなかった。ただ、その時から最後にその姿を見ることになる年末まで一切の連絡が取れなくなった。同じく、兄貴の方も一切の連絡が取れなくなっていた。
レイヨウインベスの後に、ヘビインベスとワシインベスと戦った。ヘビインベスとは森の中で、ワシインベスとは街の外れの開けた場所で戦った。ヘビインベスにはドラゴンフルーツアームズを使い、ワシインベスにはパッションフルーツアームズを使った。
ヘビインベスはヘビの特性を持っており、厄介な毒や読みにくい挙動からの攻撃を得意としていた。だが、ドラゴンフルーツアームズの装甲を突破できるほどのパワーはなく、そこまで苦戦することなく撃破することができた。
ワシインベスはヘビインベスほどはうまくはいかなかった。相手は高速飛行を得意とするワシの特性を持っていた。上空からの急降下攻撃を多用するワシインベスは上空から何度も何度も急襲してきた。流石に近接戦主体のドラゴンフルーツアームズでは歯が立たなかった。俺はパッションフルーツアームズでワシインベスと戦った。空中から急降下してきた瞬間に、パッションフレアカノンからグレネード弾をぶち当てて撃破した。
最初に転生した世界でのワシインベスのことまでまとめた。まずは、一区切りついたところで背伸びをして、固くなった体をほぐす。肩を回して、俺はふと頭によぎったことを口にした。
「もし、ちゃんと話をしようとしていたら少しでも変わっていたかな。」(大樹)
前世でのことを考えるとふと考える。もしも、あの時に別の決断をしていたら結末は変わっていたかどうか。変わったかもしれないし、変わらなかったかもしれない。もしかすると、父さんと母さんは生きていたかもしれない。ただ、そこだけは変わって俺自身が死ぬ結末が変わらないのが関の山かもしれないが。
コンコン。
大樹が思考していたところにノックが響いた。
「あい?」(大樹)
物思いにふけていたところで響いたノックに気の抜けた返事をする大樹。
「開けるよ。」(万夏)
ノックの主は万夏で彼女はそのまま大樹の部屋の扉を開けた。
「お母さんが、お茶にしようって。大ちゃんの好きなカステラと緑茶もあるよ。」(万夏)
万夏の言葉に大樹は部屋にある時計を見る。時計の針は3時ちょうどを指しており、織斑家では恒例のお茶の時間である。家主の秋人と春奈が家族の時間を大切にするという方針のため、子どもたちがいるときは必ず集まることになっている。なお、大樹は本来居候の身のためあまり積極的ではなかったものの、万夏の誘いであれば断らないことからこのように万夏が呼びに来るのが通例となっていた。さらに、大樹の好物が揃っていることから、それらを用意した人物が有無を言わさないつもりであることは明白だった。
「ああ、分かった。今、行く。」(大樹)
そう言って動き始めた大樹。今やっていることとこのあとのお茶の時間を天秤にかけて、大樹はお茶の時間を優先することにした。
万夏は大樹が勉強机の上でノートに書き込んでいた内容を見る。
「ねえ、何を書いていたの?」(万夏)
「ああ、前世での内容。覚えている範囲だけだけど。」(大樹)
万夏は大樹が書いていたノートの中身を見る。
「私と会う前から戦っていたって言っていたけど、大変じゃなかったの?」(万夏)
ノートの中身を読む万夏は大樹に問いかける。
「いや、まあ。大変だったことは話した通りだけど。」(大樹)
大樹は特に気にしている風でもなく言った。実際に気にしていないことは事実だろう。だが、大樹の戦いを前世から知る万夏はどこか浮かない表情をする。
浮かない表情の理由を察した大樹は話題を変える。
「とにかく、下に行こう。遅いと怒られるし。」(大樹)
「うん、そうだね。」(万夏)
万夏がノートを閉じて、大樹の隣へ並ぶ。
「ねえ、大ちゃん。」(万夏)
「ん?」(大樹)
廊下を歩いている中で万夏が大樹を呼びかける。
「あのノートを書いている時、私も一緒に居て良い?」(万夏)
「良いけど、万夏には話している内容だけど。」(大樹)
「うん。それでも、あの世界での、前世でのことはちゃんと大ちゃんと共有したい。二人だけしかわからないことだから。良い?」(万夏)
「うん、良いよ。」(大樹)
前世での記憶を持っている大樹と万夏。世界で二人だけでしか分からないそれは、二人にとっては苦く苦しい記憶であり、それがなければ今の自分はありえないと言えるほどのものでもあった。
一階のリビングへ行くまでに二人は互いの手を繋いでいた。お互いの存在を確かめるようにも、決して離しはしないと言っているようにも見えた。