IS×仮面ライダー 炎竜シーズン2 仮面ライダー輝龍 作:柏葉大樹
side大樹
IS学園入学から始まり、兄貴との決着、颯斗が対峙した新たなロイミュード、フランスで起きたバグスターウィルスによるテロ事件と色々とあった。そんな今年は異世界からやって来た十三異界覇王という常識を超えた相手との壮絶な戦いだった。前世でのインベスによる事件から数えると何か悪いものが俺に憑いているのではないかと考えてしまう。いや、とんでもない神様には会ったな。もう、ほとんど覚えていないけど。
そんな中で新たな事件が起きるかも(実際には兄貴が流したインベスウィルス関連のインベス退治がちらほら)と身構えていたが世界を揺るがすレベルがそう何度も起きることも無く、クリスマス=俺の誕生日から大晦日、年越しとなった。
「お待たせ。」(万夏)
「ん。」(大樹)
そして、1月1日深夜1時。
玄関前で厚着をしている俺は着物を着た万夏と一緒に初詣へ行く。
俺と万夏が初詣に行くのは篠ノ之神社である。
俺と万夏に限った話ではないが、千冬姉ちゃんや一夏、鈴や弾たち同年代の皆が初詣に行くのは篠ノ之神社である。ちなみに、こんな時間に初詣に行くのは俺と万夏だけ。俺と万夏はあまり人混みが多い場所は得意ではない(二人ともだいぶましになって来たが)ので町の人が寝入っているこの時間に神社へお参りするのが精神的に負担が少ない。今では、と言うよりも万夏と付き合い始めてからは二人だけで居たいのが一番の理由になってきた。
「この時間にお父さんが連れて行ってくれたね。」(万夏)
「俺、ものすごく眠かった記憶があるんだけど。」(大樹)
元は万夏の父さん(十三異界覇王の一人であったアギトの事件から俺も父さんと呼ぶようになった)が俺と万夏を連れてこの時間に初詣に行っていたのが始まりだった。今思えば、いじめられることが多かった万夏に、事件のことで天涯孤独の俺に気に掛けてそうしたのだろう。ただ、小さい頃の俺は眠い目を頑張って開いて家から神社までの道を歩いてた。時折、寝てたけど。
幼い俺と万夏を両手で繋いで、暗い道を怖がる万夏を励ましながら夜道の空を見上げていた父さん。神社に着くと俺と万夏にお参りの仕方を丁寧に教えて、俺と万夏よりも真剣に手を合わせて何かを祈っていた。
(何を祈っていたんだろうな。)(大樹)
空には満天の星空、この空を見ながら父さんは何を考えていたのか。
(まあ、聞けば教えてくれるかな。)(大樹)
「ねえ。」(万夏)
「ん?」(大樹)
万夏が俺に左手を差し出していた。その意図が何なのか、それ自体はすぐに分かった。
いつの頃か万夏の手をつなぐのは俺の役目になっていた。
俺は差し出された万夏の左手を右手で繋いだ。
寒い真冬の夜中、つないだ手のぬくもりを感じていた。
ふと、着物を着ている万夏を見る。紺色の着物に髪を結った万夏の姿は初めて見た姿だった。
お世辞抜きに似合っていて、綺麗だ。そう言う感想よりも今まで一度も見たことないものの出所が知りたいのが先に来てしまうことに内心苦笑いするが、それくらいしか自分から話すきっかけがない。こんな時くらい気楽に話せるネタがない当たり、普段の自分の生活の質がたかが知れている。でも、こんな、こんな平和な時くらいは普通の恋人同士の会話をしたいのが普通だろう。
俺は隣にいる万夏に声を掛ける。
side万夏
繋いだ手から大樹の体温が伝わる。
中学校の途中までは一緒に行けなかった初詣、中学3年生はやっと久しぶりに行けるようになった。
小さい頃、お父さんも含めた3人で真夜中に歩いた道は町並みは変わっても変わらずにあった。
小さい頃はこの暗い夜道が怖かった。そんな私を優しく連れて行ってくれたお父さん、お父さんに連れられてあくびをしながらも頑張って起きていた大樹。一夏兄さんと千冬姉さんは規則正しい生活をしているから一緒に来ることは無かった。
お母さんはいつも私達を笑顔で見送って家で待っていた。夜遅くの初詣、3人で篠ノ之神社まで行ってお参りをして戻るとお汁粉を用意して待ってくれていた。
熱いお汁粉と冷ましてもらっていると大樹がうつらうつらと頭を揺らしながら食べていた。
前世ではこういう行事ごとになんて縁は無かった。それどころか、家族の温もりすらも無かった。
前世の私にとっては手に持っていたナイフと強奪したISが全てだった。
愛されていない、あの場所で聞かされたその言葉が私のことをずっと縛っていた。千冬姉さん、あの計画における最高傑作。姉さんの隣には一夏兄さんがいた。そこは私の場所だと、嫉妬に駆られていた私の前に現れたのが大樹だった。
裏の世界のことなんて知らない一般人、突如として現れたイレギュラー。当時の私は会うその日まで何も思わなかった。でも、初めて会った日にそれが間違えだと思った。お世辞にもISの戦闘に慣れているとは言えなかった。それなのに、その姿はあまりにもそこにいたIS代表候補生と一夏兄さんよりも戦場にいることに違和感が無かった。その姿に、裏の世界を、戦場を知らない奴がどうしてそんなにも戦場に居た人間の佇まいで居られたのか興味を持った。その日の夜、一夏兄さんを強襲した時に変身した大樹と出会った。姿が違っていてもその立ち振る舞いからすぐに大樹だと分かった。
大樹のことが会えば会う程に分からなくなった。そして、私は一夏兄さんへの嫉妬よりも、千冬姉さんへの執着よりも大樹のことが気になりだしていた。
戦いの場で会うたびに私は大樹への興味を強めていった。その日が来るまではあくまで他の男とは違う程度にしか考えていなかった。
私と大樹が初めて心を通わせた京都での出来事。その時に、私の中で大樹は興味を引く男性操縦者から好きな相手、愛する人に変わった。
夜の京都、その時の戦いで一夏兄さんの白式が暴走した。私は、大樹と戦っていた。その戦いの最中で白式の暴走で私は黒騎士の制御を失った。大事にしていたペンダントを取ろうとした時に大樹が私を呼び掛けて手を伸ばして飛んで来た。
私は大樹の手を掴むと大樹は私のことを抱きしめた。初めて誰かに抱きしめられた私は不覚にも胸がときめいた。
私と大樹はそのまま地面に勢いよく落ちた。幸い、私は軽い傷で済んだ。でも、大樹は私を庇って左手を痛めていた。ISが待機状態になっている私達の前にアリに似た怪物、インベスが多数現れた。
「こんな時に。」(大樹)
そう言うと大樹はどこからか黒いバックル、戦極ドライバーを取り出して腰に装着した。
「すぐに片付ける。そこを動かないで。」(大樹)
そういうと大樹は仮面ライダーに変身した。私が初めて見た大樹の変身、ボロボロなのにその姿は変身した姿そのものの武士だった。
「あの、さ。」(大樹)
前世でのことを思い出している時に大樹が言葉を発した。
「どうしたの?」(万夏)
「その、着物さ。どうしたの?初めて見るけど。」(大樹)
私が来ている着物についてらしい。見惚れている、と言うよりも今まで見たことないからどうしたのかということを聞いてきた。
この着物を大樹に見せたのが初めてだからだと思う。だけど、彼女の初めての着物を見てどうしたのは無いと思う。開口一番に褒めるタイプじゃないのは知っているけど、少しは綺麗だねとかを率直に言って欲しい。
「これ、皆と一緒に見に行った時に買ったの。どう?」(万夏)
「ああ、似合っているよ。」(大樹)
似合っている、悪くないけど。正直、それを言って欲しい訳じゃないのに。そんなことを思っていると大樹はそれを察したらしく、
「それと、綺麗だよ。紺色、やっぱり似合うよ。」(大樹)
と言ってくれた。
こうやって、まっすぐに言ってくれるのは何度言われても嬉しい。
「ありがと!」(万夏)
私はそう言って、大樹の腕にしがみつく。こういうやり取りができることが私にとって何にも代えがたい幸せな時間。いつの日か、戦いが終わった時にこういうやり取りをずっとしていたい。そこに、お父さんとお母さん、お姉ちゃんに一夏兄さんが居て、隣に大樹が居て、私達の子どもがいるのが私の望む未来。でも、今は二人だけのこの時間を楽しみたい。
冬の寒さも夜の暗さも気にならなくなっていた。
side大樹
「あけおめ~、だい君、まーちゃん。」(束)
「よっ。」(正則)
篠ノ之神社の鳥居の前では束姉ちゃんと正則兄ちゃんが俺と万夏のことを待っていた。俺と万夏は二人に新年のあいさつをして神社の境内へ。
俺と万夏の初詣のために篠ノ之神社ではその年の1月1日の日の出の時間までは参拝客が来ないようにしている(表向きは深夜におけるトラブルの回避のため)。
そのため、この時間で初詣する参拝客は皆無である。俺と万夏はそのまま参拝の作法にのっとって初詣をした。
おさい銭だが万夏は小さい頃にご縁があるようにということで5円玉を、神社の裏事情を子どもながらに知った俺はいつの頃か5円玉から財布にある小銭の半分(100円以上500円未満)をおさい銭として投げ入れている。
おさい銭を投げ入れ、俺は居もしねえだろと思っていた神様にこれまでの無礼を詫びつつあることを願った、その願いが届くは別としてだが。でも、その願いと言うのは俺が自分の力で叶えられるようにしないと。その決意を、受け継いだ意思を胸に改めて誓う。
参拝を終え、俺と万夏は福引を行う。毎年毎年、凶若しくは大凶という不吉なものが出てしまう俺の運勢。さあ、今年こそはこの不吉な文字から解き放たれるか!!いざ!!
「こいつ!!」(大樹)
「はい。」(正則)
お金を渡し、その場でおみくじを見る。
「来い!」(大樹)
だが、虚しいかな。無情にもおみくじの文字は凶の一文字である。
「あちゃ~、だいくん記録更新だね。」(束)
「本当に面白いくらいに引くよな。」(正則)
今年もどうやら凶と言う文字を背負うさだめにあるらしい。
「束姉ちゃん、お祓いして。」(大樹)
「10年物はどうしようもないかも。」(束)
神社の跡取り娘の天災でも俺に憑いた凶と大凶を払うのは難しいらしい。
それでもなお、今年はそんなに大きな事件が起きないことを祈りつつ、おみくじを結ぶ。
「おし、帰る?」(大樹)
ここまでの流れが終わり、俺は万夏に声を掛ける。
「うん、良いよ。」(万夏)
万夏も終わって家路に戻る。
「ねえ、今年のおみくじは?」(万夏)
手をつないで戻る中で万夏が今年の俺のおみくじについて聞いてきた。
「今年も凶。」(大樹)
「大凶じゃないなら大丈夫じゃない?」(万夏)
そう、大凶については引いた年に必ず悪いことが起きていた。それを考えれば凶を引いたのなら今年も例年通りの1年になる、と考えてもまあ変ではない。
「万夏はどうだった?」(大樹)
俺がそう言うと万夏は引いたおみくじを出してきた。俺と違って結んでいないということはそういうことだ。
「大吉。」(万夏)
満面の笑みでそれを見せてくる万夏。大吉ならまああるけど、それだけが満面の笑みではない。
「ここを見て。」(万夏)
そう言った万夏が指を指したのは恋愛に関することだった。そこには順調、そのままであるべしとあった。なる程、そりゃ嬉しいわ。
「今年もよろしく、万夏。」(大樹)
「うん。」(万夏)
そう言うと万夏が俺の顔を見つめて、顔を近付けてきた。
俺も万夏に顔を近付ける。
俺と万夏の唇が触れ合う。
真冬の深夜、誰も見ない中でお互いの愛情を確かめ合う俺と万夏。冬の寒さの中、お互いの唇同士で伝わる熱が寒さも静けさも気にならなくさせる。
side万夏
私が大樹の変身を初めて見た時、複数のアリインベスを前に大樹が赤い鎧を身に纏い、紅蓮の刀と銃と合体した刀の二刀流で戦った。
その時、私を庇うために左手を痛めているはずなのに、大樹は痛めた左手をそのまま何の問題も無く使っていた。相手の命を奪う、それを目的とした大樹の剣はインベスの甲殻を砕いて、その下にある柔らかい部分を力任せに切り裂いた。
大樹とインベスの戦いは、戦いと呼べるようなそんなものでは無かった。命のやり取り、殺すか殺されるかのやり取り。まさに殺し合いと呼ぶにふさわしい戦いだった。
インベスから攻撃を受けて、一歩も退かず傷だらけになりながら戦う大樹の姿は私には無い強さがあった。でも、剣を振るうたびに、拳を振り下ろす度に、インベスを蹴り上げる度に大樹が苦しんでいるように見えた。その時にはそれがなぜなのか分からなかった。でも、私はIS学園に身柄を拘束されて大樹と話をするようになってやっと分かった。
そもそも、大樹は戦いを好んでいなかった。必要だったから、そうせざるを得なかったから戦っていた。その戦いに勝つために相手を殺す術を自分で磨かなければならなかった。大樹は望んで戦っていたわけではなく、必要に迫られて戦っていただけだった。
大樹は戦うために、傷を負った体を動かせるためにと薬に手を出していた。後になって大樹は体の傷よりも心の傷の方が深かったと思うようになった。その心の傷をごまかすために薬をしていた。麻薬ではないのがまだ良かったのかもしれない、でも、あの時の大樹は間違いなく薬物中毒だったと思う。身も心も文字通りすり減らして戦っていた。
「それでも、戦えちゃうんだよね。」(万夏)
初詣から帰って来てお汁粉を食べた後、すぐに寝てしまった大樹を見ている。
大樹は自分の体も、心もごかますのが得意な人。誰よりも優しいから、誰かに心配を掛けさせたくないからそう言うことが出来てしまう。
思うがままに生きることが出来ればまだ幸せだったかもしれない。でも、大樹はその生き方を出来るように育っていない。前世でも、この世界でもそれは根本的に変わっていない。
「でも、大丈夫だよ。ずっと、私が居るから。ずっと一緒だよ。」(万夏)
だから、私は今度こそは大樹のそばを離れない。大樹のことを守るにはきっとそうしないといけない。
私はその決意を胸に抱き続ける。大樹が本当に戦う必要が無くなるその日まで。