「う、う~ん。ここは家?……だったらよかったな…」
実は夢でしたと思いたかったジンだったが、変わらずマスターガンダムのコックピットだと気づくと涙が出てきた。
眠ってしまったためか機体は停止しており、状況がどうなっているか確認できない。
「それにしても、やっぱりマスターガンダムは凄いけど気になることが……ありすぎるな」
気になることその1は初の戦闘であれほど動くことができたこと。
ジンは健康のために少し鍛えているが、ドモンやマスターアジアのように鍛えているわけでもないし武闘家ではない。
それなのにあそこまで動けることはおかしい。
気になることその2はDG細胞だ。
あれからどのくらい眠っていたかわからないが、自分の体にDG細胞が感染した様子はない。
とはいえ、これはジンがそう感じているだけで感染していないとは確実には言えない。
気になることその3は自分の服装とこの世界ことだ。
自分の服装をよく見るとマスターアジアと同じ服装だ。
何故マスターアジアと同じ格好なのか不思議に思った。
「何だかコスプレしてる感じだな」
他にもこの世界はG武闘伝の世界なのかということだ。
しかし、G武闘伝の世界にあんな黒い生物は存在しなかった。
「とりあえずは周辺を確認するためにガンダムを起動しよう」
立ち上がって深呼吸してジンは息を整える。
「ふぅ~よし!ガンダーーーム!」
機体を起動させて周辺を確認する。
映し出されたのは何処かの施設だった。
「へ?何処だここ?」
自分が最初に見たときは荒野だったが、今は何処かの施設の中だった。
「あ、人がいる。これはチャンスだ!」
作業員と思われる人間を見つけ、彼らから詳しいことを聞けるかもと思った。
しかし、作業員たちはこの機体が動き出したことに慌てだした。
中には銃を構える警備兵もいる。
「ちょ、ちょっと待って!俺は何もしないよ!」
思わず腕を振ってしまい、シンクロしたマスターガンダムも腕を振ってしまった。
そのせいで作業員はさらに慌てだし、警備兵は発砲してきた。
「ひゃぁっ!本当に撃ってきた!」
いくらマスターガンダムのコックピットにいるとはいえ、一般人であったジンからしたら銃を向けられただけでも驚くのに撃たれたのだ。
驚くなというほうが無理なお願いである。
「と、とりあえず外に出よう!」
跳躍して屋根を突き破って外に出て見ると、何処かの基地の中だったようだ。
「とにかく逃げるべきか?でもここで逃げるのも……」
折角人に会えたのにここで逃げるべきかと悩んでいると、数機のMSと思われる緑色の機体が近づいてきた。
「あの~先程のはちょっとした手違いというか、え?」
弁明しようと試みるが、その前にMS隊は滑空砲の砲口をマスターガンダムに向ける。
「いや~な予感がする……」
ジンの予想通りに滑空砲は火を噴き、砲弾はマスターガンダムに飛んできた。
「ちょっ!待って待って!」
攻撃をギリギリで回避しながら呼びかけるも、通信回線が開いてないのか返答は砲弾だった。
「こ、こうなったら…やるしかねえ!」
覚悟を決めて撃ってくるMSに接近する。
「うおりゃぁぁぁぁっ!」
砲弾を回避しながら接近し、敵MSの脚部めがけてチョップや蹴りを繰り出して破壊する。
脚を破壊されたことで立つことができない緑色のMSは倒れる。
「ああ……やってしまった…」
覚悟を決めてやったとはいえ、これではもう何も弁明できなくなった。
「もう、もう逃げるしかない!」
ジンは全速力でこの基地を脱出して逃走するのであった。
「遅かったか……」
驚異的な速度で逃走する黒い機体を人類革新連盟、通称人革連の軍人である『ロシアの荒熊』の異名を持つセルゲイ・スミルノフ中佐は見ていた。
司令部の命令で未確認のMSを本国へ移送するために基地を訪れていた。
セルゲイ自身もこれまでとは全く違うMSに興味がわいていた。
しかし、突如基地内で機体が起動して格納庫を突き破って外に出た。
取り押さえようとした防衛部隊には時間を稼ぐよう通信で命令した。
急いで向かうセルゲイの部隊だったが、到着したころにはティエレン3機は脚部を破壊されて戦闘不能にされていた。
「奴はいったい何者なんだ?」
攻撃を掻い潜って脚部だけを狙って戦闘不能にする技量を持つ機体とパイロットに、セルゲイは大きな不安を覚えるのであった。