「どなどなどーなーどーなー……」
「女神(笑)を乗〜せ〜て〜」
「……お、おいアクア街中なんだからその歌やめてくれ、てかグレイも乗るな」
今私たちは街を歩いているわ、今回のクエストは1名にトラウマを植え付けた以外は特に問題なく終わったからよしよね。
「ボロボロの檻に入って膝を抱えた女運んでる時点で、ただでさえ街の住人の注目集めてるんだからな?というか、もう安全な街の中なんだから、いい加減出て来いよ」
「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらく出ないわ」
「まあまあいいじゃない私は見てて面白いから」
「お前はよくこの視線に耐えられるな」
すると誰かが近づいてきた。
「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、こんな所で!」
突然叫んで、檻に引き篭っているアクアに駆け寄り鉄格子を摑む男。そいつはあろう事か、ワニが齧りついても破壊出来なかった檻の鉄格子を、いとも容易くグニャリと捻じ曲げ、中のアクアに手を差し伸べた。
唖然としているカズマさんとめぐみんを尻目に、その見知らぬ男は、同じく唖然としているアクアの手を……、
「……おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様何者だ?」
男にダクネスが詰め寄った。
男はダクネスを一瞥すると、ため息を吐きながら首を振る。
いかにも、自分は厄介事に巻き込まれたくはないけど仕方がない、といった感じで。
その男の態度に、普段はあまり表情をあらわにしないダクネスが明らかにイラッとした。
「なんだかきな臭くなってきたわね」
「え?め、女神様が2人!?」
とりあえず私は自己紹介をした。
「こんにちは確か……ミツルギくんだったわね、私はグレイ、アクアとは……そうね姉妹みたいなものよよろしくね」
「アクア様の姉妹でしたか、僕は御剣響夜です」
ミツルギくんは納得したように頷いて自己紹介してくれた。
「で、アクアに用だっけ?アクアーいい加減に檻から出たら?」
「……」
「女神様でしょ?」
「女神?……ああっ!女神!そう、そうよ、女神よ私は。それで……あんた誰?」
ああ……確か覚えてなかったわね。
「な、何言ってるんですか女神様!僕です、御剣響夜ですよ!貴女に、魔剣グラムを頂いた!」
「…………?」
アクアはなおも首を傾げているがやっと思い出したのか。
「ああっ!いたわね、そういえばそんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人送ったし、忘れてたってしょうがないわよね!」
若干表情を引き攣らせながらも、ミツルギくんはアクアに笑いかけた。
「ええっと、お久しぶりですアクア様。貴女に選ばれた勇者として、日々頑張っていますよ。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました。……ところで、アクア様は何故ここに?というか、どうして檻の中に閉じ込められていたんですか?」
ミツルギくんは、チラチラとカズマさんを見ながら言ってきました。
「ああ、アクアがクエスト辺りからその檻を気に入ったらしくてね、外に出たがらなかったのよ」
「そうなんですか、ちなみにそのクエストとは?それに何故アクア様とグレイ様がこの世界に?」
それについてはカズマさんがアクアがこの世界に来る事になった経緯や、今までの出来事や今回のクエストをミツルギくんに説明し……。
「……馬鹿な。ありえないそんな事!君は一体何考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?しかも、今回のクエストでは檻に閉じ込めて湖に浸た!?」
カズマさんはミツルギくんに胸ぐらを摑まれていた。
それをアクアが慌てて止める。
「ちょちょ、ちょっと!?いや別に私としては結構楽しい毎日送ってるし、ここに連れてこられたことはもう気にしていないんだけどね?それに、魔王を倒せば帰れるんだし!今日のクエストだって、怖かったけど結果的には誰も怪我せずに無事完了した訳だし。しかも、クエスト報酬三十万よ三十万!それを全部くれるって言うの!」
その言葉に、ミツルギくんは憐憫の眼差しで見る。
「……アクア様、こんな男にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今の貴女の扱いは不当ですよ。そんな目に遭って、たった三十万……?貴女は女神ですよ?それがこんな……。ちなみに、今は何処で寝泊まりしてるんです?」
ミツルギくんの言葉に、アクアが若干押されながらもおずおず答えた。
「え、えっと、みんなと一緒に、馬小屋で寝泊まりしてるけど……」
「は!?」
「いい加減なこと言わないでください」
「ですよね、びっくりした……」
「私以外は馬小屋ですよ私は高級な宿屋に住んでます」
「(絶句)」
あっ……ミツルギくんのカズマさんの胸ぐらを摑む手に力が入りました。
そのミツルギくんの腕を、ダクネスが横から摑みました。
「おい、いい加減にその手を離せ。お前はさっきから何なのだ。カズマとは初対面のようだが礼儀知らずにも程があるだろう」
「まあまあお二人さん落ち着きなさいよ、ダクネス、ミツルギくんにも怒る理由があるのよ言うなれば、恩師が知らないうちに他人のせいで奴隷としてこき使われているようなものね、でもねミツルギくんも落ち着きなさいアクアがこの世界に来たのも自業自得のようなもんなのよさんざんカズマさんを煽ったせいだしね、それでも許せないなら私の顔に免じてカズマさんを許してくれないかしら?」
(奴隷って……)
「……わかりました、佐藤和真先程は悪かった」
「いやいいんだよ、確かにグレイの言った通りミツルギが怒るのも無理ないしさ」
「しかし、アクア様にこんな生活させるのは僕が僕自身を許せなくなる佐藤和真!アクア様を賭けて僕と──うわっ!?」
ブンッ!ザクッ!
「(絶句)」
「な、ななグレイ!何やってるんだよ!」
私が何をやったかって?簡単よミツルギくんに背後から斬りかかったのよ。
「グ、グレイ様何故このようなことを……」
「何故?決まってるでしょ?貴方が馬鹿みたいなこと言おうとしたからよ」
「馬鹿みたいなこと?」
「貴方今カズマさんにアクアをかけて決闘を仕掛けようとしたわね?」
「あ、ああそうだが……」
「まじかよ……」
カズマさんは呆れた顔をしています。
「それが馬鹿みたいなことと言ったのよソードマスターが冒険者に決闘を挑む?何考えているんですか?」
「しかし……」
「しかしも何も無いわよそれに万が一負けでもしたらどうするの?面子丸潰れよ?」
「ぼ、僕は負けません!何故なら僕はアクア様に選ばれた勇者ですから」
「ならカズマさんも負けないわよ?カズマさんは私が選んだ英雄候補だもの」
「グレイ様が選んだ英雄候補……!」
「おい、その設定まだ引きづるのかよ」
「それならば……」
「私からしたらカズマさんが簡単に勝つのは目に見えてるからつまらないのよ、だから代わりに私が相手をするわ」
「な、グレイが?」
「待ってください僕は女性を傷つけることは出来ません!」
「何か勘違いしてるわね?私は貴方より圧倒的に格上よ?」
「!?で、ですが……」
「これはさっき貴方が言ったことを再現してるのよ?冒険者対ソードマスターが人間対神に変わっただけそれとも何かしら?自信が無いのかな?まあ、そうよね貴方は所詮アクアから剣を貰っただけの人間分からなくもないわでも、そんなんじゃ魔王を倒すなんて無理ね」
「やりましょう……」
「ん?」
「やると言ったんですよグレイ様その決闘受けます」
「……(計画通り)」
「おい、今グレイ悪い顔をしたぞ」
「き、気の所為じゃないか」
「じゃあルールを作るわね、決着は先に剣を相手に当てた方が勝ちいいかしら?」
「ああ構わない」
「じゃあこっちはアクアを賭けるんだからそっちも何か賭けなさいよ」
「わかった僕が負けたらなんでも1つ言うことを聞こう」
「Good!」
勝った!
「じゃあ始めましょうか」
「ああ……」
「あーミツルギ終わったな」
「何故ですか?確かにグレイは超がつくほど強いですがあの男はソードマスターの37Lvですよ?剣の勝負では不利ではないですか?」
「だってグレイ」
「はああああ!」
「ヒャダルコ」
ピキン!
「魔法禁止って言ってないし」
「オラァ!!」
ガツン!
「グハッ!」
チーン
「勇者ミツルギ討ち取ったり〜」
「まあだろうな」
~このすば〜
「卑怯者!卑怯者卑怯者卑怯者!」
「あんた最低!最低よ、この卑怯者!正々堂々勝負しなさいよ!」
まあ罵倒は来るわよね、まあでも。
「ビクトリー」
「あ、ああ……」
「確かなんでもって言ってたわよね?じゃあこの魔剣貰うわね」
私は凍っているミツルギくんから魔剣グラムを剥ぎ取った。
「なっ!?バ、バカ言ってるんじゃないわよ!それに、その魔剣はキョウヤにしか「知ってるわよ」な、なら」
「まあ、ただのコレクションとして貰うだけよ、とりあえずミツルギくんには返して欲しければ私の前に来なさいとだけ言っておきなさい、それとも貴女達が取り返すために私と戦うのかしら?その場合は──容赦しないわよ?」
周囲にいてつくはどうの冷気が漂った。
「……!」
「ふーん来ないのね、まあ正解よ来てたら氷結死体が二人出来る所だったからね」
(嘘に聞こえねえ……)
「じゃあ帰りましょうかカズマさん」
づがれだ〜ではアリーヴェデルチ