星のカービィ Wish in the Symphony   作:テンカイザー

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………何で?(ToT)


十三星目 迷えるイノセント

 またしてもダイナフェニックスに逃げられてしまった一同。

 その後、研究所に帰還し、現在はそれぞれ休息に努めていた。

 

 だが、唯一重症を負ったカービィは、メディカルルームにて手当てを受けている。

 

「カービィ……」

 

 響は、カービィのことを尚も心配している。

 響だけではない、ワドルディは勿論、他の装者たちも同様だ。

 その中でも、セレナは一番落ち込んでいる。

 

「ごめんなさい、私を庇ったせいでカービィさんが……」

「そんな、セレナちゃんのせいじゃ―――」

「私のせいなんですッ!」

「…………」

 

 セレナの声に、響は思わず黙ってしまう。

 一方でセレナは、暗い顔で語り出した。

 

「あの時私が首輪を壊したせいであんなことになってしまったんです。私がダイナブレイドさんを助けることばかり考えていたせいで、皆さんまで危険に遭わせてしまって、私があの時もっとしっかりしていれば、こんなことには―――」

「そこまでにしなさい、セレナ」

 

 セレナの話を遮ったのは、ナスターシャだ。

 

「今すべきことは、過去の失敗をいつまでも悔いることではありません。これからどうすべきかを考えることです」

「……マム」

 

 ナスターシャはセレナの失敗を許した訳ではない。

 だが、セレナを責めたところで、事態は何も解決しない。

 今やるべきことは、事態を解決するために何をすべきかを考えることなのだから。

 

「あぁ、その通りだ。それにカービィのことは心配ない、あいつはあの程度でやられるほど柔ではない」

 

 そう綴るのは、メタナイトだ。

 彼は他の者たちとは違い、カービィを心配している様子はない。

 だがそれは、彼のカービィへの信頼故のものである。

 

「うん、そうだね!カービィならきっと大丈夫!その内お腹空いた〜、って起きてくるよ!」

 

 続けてワドルディもセレナを励ます。

 

 セレナはまだ立ち直れてはいない。

 だが、ナスターシャの言う通りだと割り切り、一旦自分を責めるのをやめた。

 

「早速ですが、あなたたちが捕らえて来た男から、尋問を行いました」

 

 すると、ナスターシャは装者たちが捕らえて来た、ダイナフェニックスを操っていた男へと話を移す。

 

 あの後、男はF.I.S.に引き渡し、今回の事件について尋問を行なわれていたのだ。

 

「あの男は、以前スフィアローパーたちに襲撃された研究所の責任者で、『フェニックス計画』と言う計画を取り締まっていたようなのです」

「フェニックス計画……?」

 

 一同はナスターシャの言う『フェニックス計画』と言う用語に疑問を浮かべる。

 

「聖遺物フェニックスの羽を解析し、不死鳥フェニックスの不死身の神秘に迫り、永遠の命を手に入れる。それが『フェニックス計画』だったようです」

 

 ―――永遠の命を手に入れる

 まさに狂気とも言えるその目的に、一同は唖然とする。

 

「そしてその計画のためには、フェニックスの依代となる存在が必要でした。しかし、フェニックスの力に適合しうる存在はこの現世に於いては見つかりませんでした。ですがそんな時、彼等は偶然にも手にしたのです、フェニックスの依代となりうる存在を」

 

 それが何なのか、一同には言わずともわかる。

 ―――ダイナブレイドとダイナベイビーだ

 

「偶然にも良い依代を得た彼等は、それを使ってフェニックスを顕現させる準備をより推し進めました。しかし、一つ問題がありました。それは、フェニックスの羽を起動させるためのフォニックゲインです」

 

 そう、聖遺物を起動させるには、それ相応のフォニックゲインが必要だ。

 だが、フォニックゲインを得るには、聖遺物に適正を持った者の歌声が必要である。研究所にはそれがなかったのだ。

 

「そんな時、スフィアローパーたちの襲撃を受けました。計画の要となる聖遺物とダイナベイビーを失ったことで、一時は計画の凍結を測ったそうです。ですが、あの男は諦めませんでした」

 

 多くの研究者が計画を諦めかけた中、あの男だけは頑なに諦めなかった。

 そのフェニックスへの執着心は中々の物であろう。

 一同はその執着心に、ほんの僅かに身震いする。

 

「そしてその後は、あなたたちの知る通りです」

「待て、いくらなんでも話が出来過ぎていないか……?」

 

 メタナイトの言う通りだ。

 この一連の事態は、男にとって余りにも都合の良いことが重なり過ぎている。

 

 ダイナブレイド親子の確保

 聖遺物を奪ったスフィアローパーの再出現

 装者たちの歌によるフェニックスの羽の起動

 

 どう考えても異様である。

 

「えぇ、ですがあの男は、依代の確保と聖遺物を奪ったスフィアローパーとあなたたちが鉢合わせたのは偶然だとばかり主張するのです」

 

 ナスターシャの言葉から推測出来る答えは二つ。

 

 男が嘘をついているか。

 もしくは、()()()()()()()()()()()()かだ。

 

「この事件には、まだ黒幕が他にもいるということか……」

「えぇ、間違いないでしょう。そのことを裏付ける証拠がもう一つあります」

 

 そう言うと、ナスターシャはコンソールを操作し出す。

 すると、モニターにダイナブレイドを操っていた首輪が写し出される。

 

「これは、あの首輪」

「解析したところ、確かにこれはダイナベイビーにつけられていたのと同じ構造でした。そして、あの男は、この首輪はある者から貰ったと言っていました」

 

 次に写し出されたのは、首輪の内部について細かく書かれた画像だ。

 

『―――!?』

 

 ナスターシャの言葉に、一同は驚愕する。

 

(―――!そう言えば……)

 

 その時、マリアは男が言っていた言葉を思い出す。

 

 ―――くそぉっ!!あいつ、なんて物を渡してるんだ!全然丈夫じゃないじゃないか!!

 

 男が言っていた"あいつ"なる人物。 

 その者こそが首輪を渡した張本人で間違いないであろう。

 

「ですがあの男は、首輪は極秘ルートで送られて来た物で、開発者とは直接会ったことがないと言うのです」

「え?それじゃあ犯人は……」

「残念ながら、現段階では不明です」

 

 響の疑問に、ナスターシャは申し訳なさそうに答える。

 

「待ってくれ、もしかしたら犯人は、我々と同じ次元の者かもしれない」

 

 メタナイトが言ったことに、全員が目を向ける。

 

「どういうこと?」

「犯人はダイナブレイドの存在を知っていた。だからフェニックスの依代になり得ると思ったんだ。ならば、ダイナブレイドを知っている者など―――」

「君たちが元いた次元の者しか、知り得ないと言うことか」

「左様だ」

 

 翼の言葉を、メタナイトは肯定する。

 

 一方で、メタナイトはタダならぬ危機感を覚えている。

 ディメンションホールを開ける者など、普通ではない。それ相応の強大な力を持っているに違いない。

 

 その時、翼はあることが頭を過ぎる。

 

「もしや、この事件の黒幕と、我々が現在追っているリーパーの発生事件の元凶は、同じなのではないのか?」

 

 翼の疑問に、一同が唖然とする。

 確かに翼の推測は真である可能性が高い。

 

 だが、メタナイトにはまだ腑に落ちないことがある。

 

「もしそうだとすれば、私やカービィをこの世界に呼び寄せた理由がわからない」

 

 そう、黒幕がカービィたちと同じ次元に住んでいるのであれば、カービィを知らないとは思えない。

 カービィの名は宇宙中に轟いており、知らぬ者など滅多にいない。

 仮にカービィの存在を知らないとしても、カービィを呼び寄せる理由がない筈だ。

 

「いずれにせよ、この事件はまだ終わっていません。一刻も早くダイナフェニックスを止めなければなりません」

 

 全員が疑問が尽きない中、ナスターシャはそい言って話を切り替える。

 

 ダイナフェニックスは現在制御から解き放たれ、あらゆる物を見境なく襲うほど危険な状態となっている。

 被害が広がる前に何とかして止めなければならない。

 

「―――!?これは……」

 

 だがその時、ナスターシャが操作していたコンピュータに通信が届く。

 それを見ていると、ナスターシャの顔は深刻なものになる。

 

「どうしたの、マム?」

「…… F.I.S.本部からの命令です。ダイナフェニックスを見つけ次第、殺処分せよとのことです」

『―――ッ!?』

 

 ナスターシャの言葉に、一同は愕然となる。

 

「殺処分って、どうしてそんな酷いことを―――!?」

「本部の狙いは、フェニックスの羽でしょう。制御が効かないダイナフェニックスは、本部にとって利用価値はない。フェニックスの羽さえ手に入れば、また次の依代を探して制御する手段を模索すれば良いと考えているのでしょう」

「そんな……」

 

 一同はF.I.S.本部に怒りを感じる。

 尊い命をなんとも思わないばかりか、自分たちの身勝手な理由で平然とその命を切り捨てようとする傲慢さに。

 

 すると、メタナイトは突然一同に背を向け、部屋から出て行こうとする。

 

「待ってメタナイト!どこ行くの!?」

 

 メタナイトの突然の行動に、ワドルディは慌てて待ったを掛ける。

 

「知れたこと、ここを出て行く」

「どうして!?」

「私は君たちとはあくまで利害の一致で行動を共にしていただけだ、この組織に属した覚えはない。故にそのような命令に従う義理はない。私は私のやり方でダイナフェニックスを止める」

 

 メタナイトもまた本部の人間へ怒りを感じていた。

 故に、身勝手な命令には従えない。ここからは自身のやり方で行動しようと考えていたのだ。

 

「待って!ダイナブレイドを助けたいのは私たちも同じよッ!」

 

 そこで待ったをかけたのは、マリアだ。

 マリアの言葉に、メタナイトは足を止める。

 

「ああ、私とて同じだ。なんの罪も無い命を犠牲にするつもりなど毛等もない」

 

 次に言葉を発したのは、翼だ。

 

「勿論私もだよっ!だからお願い、私たちと一緒に戦って!」

 

 次に響が、メタナイトにお願いする。

 

「メタナイト、みんなはダイナブレイドを助けようと必死になってくれてるんだ。力を貸してあげようよ」

「…………」

 

 ワドルディも声をかけるが、メタナイトはだんまりとしてしまう。

 するとメタナイトは、セレナの方を向く。

 

「君はどうなのだ?」

「……え?」

 

 思わぬ所から声をかけられ、セレナは驚いてしまう。

 

「君はダイナベイビーと約束をしたと言っていたな。今はどうなのだ、君はその約束を果たせるのか?」

「…………」

 

 セレナはメタナイトの問いに答えられなかった。

 今でもダイナベイビーとの約束を忘れてなどいない。

 

 だが、今のセレナには自信がない。

 先ほどの戦いで、自身が犯してしまった失敗のせいで、ダイナフェニックスを暴走させたばかりか、皆んなに迷惑を掛けてしまった。

 そんな自分が、果たしてダイナブレイドを救えるのか?

 今のセレナには、とても出来るとは言えない。

 

「だがまあ、カービィを放っておく訳にもいくまい。カービィが目を覚ますまで、もうしばらくいさせてもらうとしよう」

「メタナイト……」

「だが誤解するな、私は命令に従う気はない。ダイナフェニックスが見つかれば、その時は私のやり方で止めさせてもらう」

 

 一先ず、メタナイトはもうしばらく研究所にいることとなった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 一同は、カービィがいるメディカルルームへと赴いていた。

 カービィのことが心配になり、様子を見に来たのだ。

 

 だが、当のカービィは―――

 

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅ……」

 

 気持ち良さそうに寝ていた。

 

 戦いで受けた傷は一切見当たらず、全身を焼き尽くされたというのに、火傷の一つも無い。

 

「……カービィ?」

 

 これには全員が唖然としてしまう。

 だが、ワドルディとメタナイトはやっぱり、と言ったような表情である。

 

「ふ、だから言ったろう、アイツはあの程度でやられるほど柔ではないと」

 

 見ればカービィは、口から涎を垂らしている。

 美味しい物を食べている夢でも見ているのであろう……

 

「あ、これならきっとその内お腹を空かせて起きるね」

「起きたら真っ先に食事か、つくづく立花に似てるな、カービィは」

「ちょっと、翼さんまで〜!」

 

 翼の発言に、響は痛い所を突かれて動揺する。

 

「カービィさん、本当に大丈夫かな……」

「セレナ、まだ気にしているのね」

 

 一方で、セレナはカービィが自身を庇ったことを尚も気にしている。

 

「カービィさん、私を庇ったせいでこんなことになって……」

「本当、私たちと出会った時と同じね。出会ったばかりの私たちを助けようとしてくれて」

「……え?」

 

 マリアの言葉に、セレナは首を傾ける。

 

「私たちもまだカービィと会ってから数日しか経ってないけど、彼がとても優しいってことはよく知ってるわ。初めて会った時も、私たちと一緒に戦ってくれてね。今回もきっと同じよ、カービィはあなたを助けたくて必死だったのよ」

「どうして、出会ったばかりの私のためにそこまで……」

「それがアイツの性分なのさ」

 

 セレナの疑問に、メタナイトが応える。

 

「あなたも、カービィについて知っているのよね?」

「あぁ、アイツはいつも呑気でお気楽だが、困っている人を見過ごせない大のお人好しでな、そのせいで何度か騙されたこともあったな」

 

 メタナイトは仮面越しに苦笑いを浮かべながら語る。

 一方で、マリアは彼の話から、ますますカービィと響の姿を重ねていた。

 

「何度も言うが、今回の件は気にすることはない。カービィの無茶は今に始まったことじゃないからな」

 

 セレナは、メタナイトの話から、カービィの優しさをしみじみと感じとっていた。

 

『お前によく似た奴じゃないか』

「ヴェイグさん……?」

 

 すると、セレナの中から再びヴェイグの声が響く。

 

『甘すぎるくらい優しい奴だが、そのおかげで救われた奴らがいる。お前とよく合ってるじゃないか』

「ヴェイグさん……」

『前にも言ったろ、お前の優しさは弱さなんかじゃない。その優しさがお前の強さなんだ。何も迷わずに、お前のやりたいようにやれば良いのさ、こいつみたいにな』

「私のやりたいこと……」

 

 ヴェイグの言葉が、セレナの心にそっと響く。

 

 セレナが今最もやりたいこと。それは、ダイナブレイドを助けることだ。

 だが、その度にまた迷いが生じてしまう。

 ―――自分に出来るのか、と。

 

 それでも、ヴェイグは何も迷うことはないと言ってくれている。

 

(私は……)

 

 それでも、過去の失敗の記憶が尚もセレナを縛り付けていた。




と言う訳で、カービィは焼かれた程度でどうにかなる訳ないのでした〜
次は来週……に出来ると良いなぁー
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