星のカービィ Wish in the Symphony   作:テンカイザー

16 / 27
今回は予定を変更して、"アイツ"を早めに出すことにしました。



十四星目 不死鳥の幻影

 セレナは一人思い悩んでいた。

 

 ―――ダイナブレイドを助けたい

 その思いは尚も変わってなどいない。

 

 だが、考える度に先の戦いがフラッシュバックする。

 

 暴走するダイナフェニックス

 自身のせいで傷つく仲間

 

 思い出す度に、心の底から湧き上がる"何か"が、セレナを縛り付けていた。

 

(私はどうすれば……)

 

「ぴぃー」

「へっ!?」

 

 すると、近くにいたダイナベイビーが、セレナに向かって寄り添って来る。

 いきなり来たことにセレナは驚いてしまう。

 

「ぴぃー」

 

 ダイナベイビーは、顔をセレナに擦り付ける。

 その顔は、優しさに満ちていた。

 

「心配してくれてるの?」

 

 セレナは嬉しく思うが、同時に不甲斐なくも思う。

 

(この子だって、今すぐにでも親に会いたい筈なのに……あっ―――)

 

 そこでセレナは思い出した。

 ダイナベイビーが今どんな思いかを。

 

(そうだ、この子だって辛い筈なんだ……)

 

 セレナには、両親の記憶がない。

 だからこそ、幼少期から自身を大切に育ててくれた姉が親のような存在だった。

 だが、セレナの姉はもういない。

 今一緒にいるのは、並行世界の別人。決して本人とは言い切れない。

 

 だからこそ、姉がもういないと知った時、とても辛かった。

 前まで当たり前のように感じていた温もりが、もう二度と感じられないと知った時、頭が真っ白になった。

 とても苦しくて、胸が張り裂けそうだった。

 

 セレナは、大切な存在を失う悲しみをよく知っている。

 そして、今自身に笑顔を向ける雛鳥も、それを味わうかもしれないのだ。

 

 本当は誰よりも悲しい筈、怖い筈だ。

 なのに自分を励ましてくれている。

 

 ―――それで良いのか?

 否、良い筈がない。

 

 目の前のまだ幼い雛が、自身のために本当の気持ちを押し殺しているのだ。

 

 だと言うのに、自身がいつまでも迷っている場合か?

 否、迷うよりも先にすべきことがあるではないか。

 

(そうだ、約束したんだ、親に会わせるって―――!)

 

 その瞬間、セレナから迷いは消えた。

 同時に決意を改めて固める。

 

「ありがとう。私はもう大丈夫、必ず親に会わせてあげるからね!」

「ぴぃー!」

 

 セレナはダイナベイビーを抱きしめ、迷いなく言い切った。

 

(ふふ、もうあの子は大丈夫みたいね)

 

 そんなセレナの様子を、背後からそっと見守る影があった。

 ―――マリアだ。

 

 彼女はセレナが迷いを振り払った様子を見て、そっと微笑んでいた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 カービィの様子を確認した一同は、再びナスターシャが待つ部屋へと集まっていた。

 

「マム、ダイナフェニックスは見つかった?」

「残念ながら、現在調査隊が全力をあげて捜索していますが、まだ見つかっておりません」

 

 マリアの問いに、ナスターシャは申し訳なさそうに応える。

 

「ですが、まずはそれよりも考えなければならないことがあります。ダイナフェニックスの再生能力についてです」

 

 そう、戦うにせよまずはあの再生能力をどうにかしなければならない。

 そうでなければまた次もジリ貧になってしまう。

 

「ですが残念なことに、今の私たちにはあれを攻略する手段がありません。そのためにも、一度あなたたちの誰かが元の世界へ一時帰還するべきでしょう」

 

 ナスターシャの言ったことに、全員がうなずく。

 

 この世界にダイナフェニックスの再生能力を攻略する手立てはない。

 だが、別の世界であればそれがあるかもしれない。

 そうでなくとも、ヒントを掴める可能性もある。

 響たちの元いた世界には、そういったことに関しては頼れる仲間(エルフナイン)がいる。

 

 それに、彼女たちは本来ならもっと早くこの事態を報告すべきだった。

 だが、立て続けに事態が起きたため、戻れずにいたのだ。

 そう言う意味も含めて、丁度良い機会であった。

 

 だが、ダイナフェニックスが次にいつ現れるかわからない。

 もし次戦うことになった時、向かえるのがセレナだけでは厳しいだろう。

 故に、誰か一人が行く必要がある。

 

「ふむ、ならば私が戻ろう」

 

 そこで名乗りを上げたのは、翼だ。

 

「所で、異星人の彼らは連れて帰らなくて良いのですか?」

 

 ナスターシャにそう言われ、全員の顔が歪む。

 

「話によれば、彼らは保護対象でありながら無許可でギャラルホルンのゲートを通ったそうですね。この事件に対応してくれているとはいえ、本来なら連れ戻すべきなのでは……?」

 

 ナスターシャの言うことは的をついている。

 確かにカービィたちは本来ならすぐに連れ戻すべきであろう。

 

「わかっています。けど……」

 

 そこで声を上げたのは、響だ。

 

「カービィは、ずっと私たちの力になりたいって思い悩んでたんです。私も、カービィが危険な目に遭うのは嫌だけど、力があるのに、誰かを助けられるのに助けられないなんて、とても辛い。私には、カービィの辛い気持ちがよくわかるんです。だから責めて、今だけでもカービィのやりたいことをやらせてあげたいんです!」

「立花……」

 

 響は、自身の気持ちを精一杯に込めて伝えた。

 

 彼女もカービィを危険な目に遭わせたくないと、戦いに巻き込まないようにしてきた。

 だが、同時にカービィが感じていたもどかしさも充分に理解していたのだ。

 

 自身にはシンフォギアがある。この力のおかげで誰かを助けることが出来る。

 だが、もしこの力を持っていながら誰も助けにいけないとしたら?とても辛いに決まっている。

 助けられる筈のものを、助けられずにいるなど、その苦しみは計りしるない。

 

 カービィは、まさにそう言った苦しみを受けている。

 だからこそ、この世界にいる間だけでもカービィのやりたいことをやらせてあげたかったのだ。

 

「カービィがこの世界にいるって言うのなら、ボクも一人だけ帰る訳にはいかないよ!だってボクたち友だちだから!」

「バンダナくん……」

 

 次に声を上げたのは、ワドルディだ。

 彼も自身の気持ちを精一杯語った。

 

「……本来なら、見過ごせませんね。ですが、あくまでそれはそちらの世界の問題です。今回は目を瞑りましょう」

「ありがとうございます!」

 

 ナスターシャの粋な計らいに、響は笑顔でお礼を言った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 時は遡り―――。

 響たちが並行世界へ向かった少し後。

 

 S.O.N.G.本部では、緊迫した空気が漂っていた。

 

「ったくあのピンク球、また勝手なことしやがって!」

 

 クリスは、カービィの勝手な行動にイラついていた。

 だが、それはカービィを心配するが故の物だ。

 

「ですが、何故カービィさんはギャラホルンのゲートを通れたのでしょう?」

 

 エルフナインが疑問の声を漏らす。その疑問は、この場の誰もが思っていた物だ。

 本来ならギャラルホルンのゲートを通れるのは装者だけ。

 だが、カービィとワドルディは確かにゲートを通れたのだ。

 

「それに、ディメンションホールと同じ反応を示しておきながら、リーパーたちの反応がない。これは一体どう言うことなのでしょう?」

 

 疑問ばかりが尽きないエルフナイン。

 彼女は尚もひたすらコンソールを弄り、必死に調べていた。

 

 その時―――

 

 ブォォォォォォォォンッ!!

 

『―――ッ!?』

 

 突如、アラートの音が部屋全体に響き渡る。

 

「何事だッ!?」

「正体不明の怪物が町を襲っていますッ!」

 

 弦十郎の問いに藤尭が応えると、モニターに画像が写る。

 そこに写っていたのは、全身が炎に包まれた巨大な鳥であった。

 

「なんデスかこれはッ!?」

「話は後だ、今は早急に向かってくれッ!」

『了解(デース)!』

 

 かくして、装者たちは敵の元へと向かった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 辺り一面を炎が包み込む、修羅と化した町。

 そこに佇むのは、一体の巨大な炎の鳥。

 

「おらっ、はちゃめちゃすんのもそこまでにしなッ!」

 

 その場に訪れたのは、装者の三人。

 

 巨大鳥は装者の存在に気づくや否や、火炎放射をお見舞いする。

 

「うわッ!?」

 

 かろじて全員避けたが、その跡は激しく燃えている。あれを喰らったら無事で済まないのは明白だ。

 

「そんなにファイアーダンスが踊りたきゃ、コイツで派手に舞いなッ!」

 

 すると、クリスの腰部アーマーが展開し、そこから大量の小型ミサイルが発射される。

 

 ―――『MEGA DETH PARTY』

 

 ミサイルの雨は巨大鳥に全弾命中する。

 

「次は私たちが―――」

「華麗に舞うのデース!」

 

 今度は調は跳び上がり、両手に持ったヨーヨーを飛ばす。

 するとヨーヨーは縦横無尽に駆け巡り、巨大鳥の身体を切り刻む。

 

 ―――『終β式・縛戒斬鋼』

 

 次に、切歌の肩アーマーからバーニアが噴射される。

 その勢いで高速回転し、巨大な緑の独楽へと姿を変える。

 そしてそのまま、巨大鳥へ激突する。

 

 ―――『災輪・TぃN渦ぁBェル』

 

 火花を散らしながら、巨大鳥を切り刻んで行く。

 

 身体中切り刻んだ所で、切歌は一旦巨大鳥から距離を取る。

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

『―――ッ!?』

 

 すると、突然咆哮をあげると同時に、巨大鳥の身体から傷が消えた。

 

「再生した……ッ!?」

「デデデースッ!?そんなのアリですかッ!?」

 

 巨大鳥の再生能力に驚愕する一同。

 だが、そんなこともお構いなく、巨大鳥は再び回転火炎放射の体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時―――

 

『―――!?』

 

 突然の巨大鳥顔に何かがぶつかり、怯んだ。

 

 巨大鳥にぶつかった何かは、そのまま地面へ落ちる。

 そこにあったのは、()()()()()()()()()()()()であった。

 

「オラっ!!」

 

 次に、謎の影が回転しながら巨大鳥にぶつかる。

 二度までして不意打ちを喰らった巨大鳥は、ほんの僅かに後退する。

 

 やがて謎の影は、地面に着地し、その姿を露にする。

 そこにいたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――木槌を持った、ペンギンのような生き物であった。

 

「……は?」

「ペンギン……?」

 

 謎の生き物は、装者たちの方へ振り向く。

 

「おい、このオレさまが助けてやったと言うのに、何をポカンとしている!」

 

 謎の生き物は、上から目線に話しかけて来た。

 装者たちは、思わずイラッと来る。

 

 だが、それよりも意識は後ろで起きた異変に向けられる。

 

『―――ッ!?』

 

 なんと、巨大鳥の姿が徐々に薄れ始めたのだ。

 

「待てっ!どこへ行く気だダイナブレイドッ!」

 

 一方で、謎の生き物は消えゆく巨大鳥に向かって怒鳴っている。

 しかも、巨大鳥を知っているかのような口振りだ。

 

 だが、巨大鳥はついにその姿を完全に消してしまった。

 

「くそぉ、ダイナブレイドめ……どこへ消えた!」

 

 謎の生き物は、悔しそうに地団駄を踏む。

 

「おいっ」

 

 すると、クリスの呼びかけに反応し、謎の生き物は振り向く。

 

「お前一体何なんだ?あの鳥のこと知ってるのか?」

 

 クリスは謎の生き物に問いかける。

 それに対し謎の生き物は―――

 

「聞きたいのはこっちだ。ここはどこだ?突然飛ばされたと思ったらこんな場所にいるわ、ダイナブレイドがおかしくなってるわ、訳がわからん!?」

 

 クリスの質問を無視し、自分の言いたいことをずがずがと言い放つ。

 余りのマイペース振りに、クリスのイライラは増す。

 

「おいっ、今はこっちが聞いてんだろ!まずはそれに答えろ!」

 

 溜まっていた怒りを、僅かに含めて再度問いかける。

 

「ふん、オレさまを誰だと思っている?」

 

 そう言うと、謎の生き物は木槌を肩にかけ、胸を前に出す。

 

「オレさまこそプププランドの大王、『デデデ大王』様だぞ!」

 

 ――― 『デデデ大王

 

 謎の生き物は、堂々とそう名乗った。

 

 すると、デデデの話を聞いた装者たちの顔が、驚愕に染まる。

 

「プププランドって……」

「前にバンダナワドルディが話してた、カービィたちの故郷の国デス!」

 

 デデデが言った『プププランド』なる名前を聞いて、全員前のワドルディの話を思い出したのだ。

 

 次に反応したのは、デデデの方だ。

 

「なんだと!?お前たち、どこでカービィとバンダナワドルディのことを知った!?アイツ等は今どこにいる!?」

 

 本来なら知らない筈の名前を目の前の者たちは知っている。

 これにはデデデも驚きを隠せずにいた。

 

「それを知りたきゃ、あたしたちの所に着いてきて貰うぞ」

「ふん、何故オレさまがお前たちの指図をうけなければならない?いいから答えろ、アイツ等は今どこにいる?」

 

 クリスとデデデの間に、ギスギスとした空気が流れ始める。

 まさに一触即発となっていた。

 

「ちょっと待つデース!」

「私たちはあなたの敵じゃない。お願いだから、私たちと一緒に来て」

 

 そんな中、調と切歌が二人を止めに入る。

 

「ふん、お前たちを信じる根拠がどこにあると言うのだ?オレさまの言うことが聞けないのなら、力尽くでやったって良いんだぞ?」

 

 だが、デデデは二人の言葉に聞く耳を持たず、尚も彼女たちへ敵意を向けている。

 

「カービィとバンダナワドルディは、私たちの友だちなの」

「……何?」

 

 調の言葉を聞いた途端、デデデの表情が僅かに揺らぐ。

 

「カービィは、突然この世界に迷い混んで大変だったのに、見ず知らずの私たちを助けてくれた。だから私たちは、カービィの力になりたい。あなたがカービィの仲間なのなら、あなたも助けたい。だから、どうか私たちを信じて欲しい」

 

 調の話を聞き、デデデは戸惑い始める。

 

 目の前の者たちの言うことはまだにわかに信じられない。

 だが、もし仮に本当にカービィがこの世界に来ているのなら、彼の性格上目の前の者たちを助けるのも納得だ。

 

 すると、クリスは構えていたアームドギアを突然降ろす。

 

「まあ、あのピンク球には確かに借りがある。お前もピンク球と同じ立場だってんなら、あたしたちに着いて来てくれ。あたしたちで、お前等を元の世界に返す方法を探してやる」

「…………」

 

 クリスの言うことに、デデデは黙り込む。

 

 口だけならなんだって言えるかもしれない。

 だが、目の前の者たちは真剣な眼差しで自身と向き合っている。

 ―――果たして、これが嘘を言う者の眼であろうか?

 デデデには、とてもそうとは思えなかった。

 

 やがてデデデは、構えていた木槌を降ろす。

 

「ふん、オレさまを連れて行くのだろう。さっさと連れて行かんか」

「―――!?お前なぁ……ッ!!」

 

 だが、デデデは態度を曲げず、相変わらずの上から目線であった。




本当ならこの章今年中に終わらせたかったんですけど、ちょっとキツそうです……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。