星のカービィ Wish in the Symphony 作:テンカイザー
「んぅ〜……あれ?」
深い眠りから僅かに目覚めた響は、未だ朧げな意識の中で目を擦る。
その瞬間、彼女の視界に入った物を見て未だ眠りから目覚めきっていない意識は一気に覚醒することとなった。
「ここ、どこ……?」
彼女の視界に入ったのは、辺り一面に広がる緑の大地。あちこちに花が咲き誇り、綺麗な蝶が宙を舞う。優しい風が吹きかかり、身体の隅々まで暖かさが染み渡る。
まさに『平和』という言葉その物を表したかのような光景に、響は唖然としてしまう。
「へ?なんで私こんな所にいるの……?」
何度も頭の奥から記憶を掘り起こそうとするも、何故か彼女の記憶は曖昧な物しか出てこない。
自分はどうやってここへ来たのか。ここへ来る前自分は何をしていたのか。
いくら頭の隅々を掻き回っても、答えは全く出てこなかった。
未だに困惑が解けない響だが、そんな彼女の耳に突然どこからか声が響く。
「ん?あれって……」
声が聞こえて来た方を見てみると、遠くにちっちゃい影がいくつか見える。
気になって近くに行ってみると、そこには響もよく知る姿があった。
「アレって、バンダナくんと同じ……?」
そこには、現在S.O.N.G.本部にて生活している友達のバンダナワドルディとまったく同じ姿をした生き物が数人いた。
だが、そこにいるのはいずれも自身が知っているのとは違い、頭にはバンダナを巻いておらず全員が全く同じ姿であった。
「どうしたんだろう……」
ワドルディたちはいずれもその顔にはどこか暗い表情が浮かんでおり、明らかに様子がおかしいことが明白である。
「お腹すいたなぁ……」
「でも、大王サマがボクたちの食べ物ぜんぶ持っていっちゃったし」
「もうボクたち、食べられるもの何もないよ……」
「え、えぇぇ!?」
彼らが落ち込んでいる理由は、すぐさま明らかになった。
食べ物を取られた、それは人々が誰しも持つことを許される幸せを奪われたも同然。さらに、誰よりもよく食べる響にはその苦しさがとても重く伝わっていた。
「酷い、許せないよ!ごはんはみんな自由に食べていいはずなのに!」
響は目の前の事態に酷く怒りを感じていた。誰よりも食べるのが大好きな彼女だからこそ、食べる喜びを奪われた時の悲しみは計り知れない物だと思っている。だからこそ、そんな悲しみを与えるような輩が非常に許せなかった。
(あれ、でもこんな話どこかで聞いたような……?)
怒りを感じていた響だが、今自身の目の前で起きている一連の事態について何かが引っかかった。
自身はこんな目に遭ったことはない、そもそもこの場所がどこなのかもわからない。だが響はこの光景についてどこかで聞いた記憶が僅かにあった。
そんな時だった。
突如としてまた風が吹いて来たのだ。その風を浴びた途端、何故だか辺りの風景がより温かみを増したかのように感じた。それはまさしく、季節の変わり目を示す春風であった。
そして"ソレ"は、先ほどの春風が運んできたかのごとく現れた。
響の目に先ほどまでいなかった新たな姿が写り込む。だが、響はその姿についてよく知っていた。
「カービィ……?」
そこにいたのは紛れもない自身の友達の姿であった。
ある事件をきっかけに突然現れた宇宙人であり、今では共に戦いごはんを一緒に食べる仲の友達。
だが、彼は響にまったく目もくれずにワドルディたちの方へと駆け寄った。
(カービィ、私のこと見えていない……?)
すぐ近くにいるはずの自身にまったく気づかないカービィに響は違和感を感じた。まるで自身が視界に入ってないかのようだ。
いつもの彼であればあり得ない。いつも自身と会う時は笑顔で手を振るなどと言った反応を見せるはず。こんなに近くにいて気づかないなんてのもおかしい。
一方で、カービィはワドルディたちと何やら話をしていた。
「キミは、ダレ?」
「見ない顔だね、旅の人?」
(……へ?)
またしてもおかしなことが起こった。
響はバンダナワドルディしかみたことないが、目の前にいるのが彼の同族であることは間違いない。以前バンダナワドルディから聞いた話では、カービィは自身たちの間ではそれなりの有名人だと言っていた。
それなのに、目の前の彼らはカービィのことを全く知らないのだ。たまたまという可能性もあるが、妙にしっくりこなかった。
「うぃ!」
「へ?ボクたちの食べ物とりかえしてきてくれるの?」
「でもでも、大王サマとても大きいしそれにすっごく怖いんだよ?」
「ぽよ!」
ワドルディたちは大王の恐ろしさを話し、カービィを引き止めようとする。だが、カービィはそれに引き下がらず尚も自身が食べ物を取り返しに行くと訴える。
(……あっ!)
そんな光景を見ていた響は、ようやく自身の中にあった違和感の正体を思い出した。
それは、まだカービィたちと出会って間もない頃、バンダナワドルディから聞かされた、彼らの故郷に初めてカービィが現れた時の話であった。
(もしかしてここは、カービィの過去の記憶……?)
過去に聞いた話と現在目の前で起きている事を照らし合わせ、響は一つの推測を出した。
ここはカービィの過去の世界。
あまりにも非現実的であり得ない話だが、響にはそれ以外に考えられなかった。
「わかったよ、気をつけてね」
「絶対に無事にかえってきてね」
「はぁーい!」
一方で、ワドルディたちはいくら言っても引き下がらないカービィにとうとう折れたのか、カービィを見送ることにした。
するとどこからともなく、まるで彼の思いに呼応するかの如く現れた彼の愛機------ワープスターに乗り込み、カービィは出発の準備を整えた。
「気をつけてね!」
「ムリしちゃダメだからね!」
「はぁーい!」
カービィはワドルディたちの声を受け取りながら、旅立ちの挨拶として笑顔で手を振る。
そして彼を乗せたワープスターは、彼が挨拶を終えると同時にもの凄い勢いで飛び立っていった。
ここから彼、『星のカービィ』の冒険は始まったのだ。
「……へ?何!?」
その様子を傍から見ていた響に、突然異変が起こる。
突如として彼女の視界が白い光に包まれ、何も見えなくなってしまう。
(------!?カービィ!)
やがて視界が晴れると、そこは先ほどまでとは全く違う風景が広がっていた。
★☆★☆★☆
それからカービィは大王のいる城を目指し、ある時は森の中を突き進み、ある時は海を超え、ある時は空の上を登り、果てしない旅路を彼は超えて行った。ある時は巨大な敵との激しい戦いをも乗り越えた。
そんな彼の様子は響はずっと見ていた。にも関わらず、カービィは愚か誰も響に気づくことがなかった。まるで世界その物に認識されていないかのようであった。
何故そんなことになっているのか、響にはまったく検討がつかない。だがそれでも響はカービィの後を追いかけていった。彼がある程度進むとまた謎の白い光に飛ばされる現象に遭ったが、それでも響はなんとかカービィの後を追っていた。
その過程で、響はカービィの色んな姿を見てきた。時にはお腹を空かせて途中でどこから出てきたのかわからない食べ物を食べたりしながらも、カービィは突き進んだ。ある時は景色に浸ったり、ある時は疲れて居眠りしてしまったり、またある時は敵に立ち向かったりと、彼は呑気ながらも果てしない旅路を止めることはなかった。
全ては、みんなの食べ物を取り戻すため。
そんなカービィの姿が、響の心に強く残っていた。
「ふふっ、カービィも誰かのために頑張ってたんだね」
そんな時響は、以前未来から言われたことを思いだす。
------誰かを助けずにいられない所も、響に似てるなと思って
今のカービィを見ていた響には、その言葉の意味がよりわかった気がした。
そんなカービィにシンパシーを感じたのか、響はなんだか嬉しい気持ちで包まれた。
★☆★☆★☆
やがてカービィは大王の城へと辿り着き、みんなから食べ物を奪った張本人である『デデデ大王』との直接対決が始まった。
結果、デデデは手強い相手であったものの、国中のみんなの思いを背負ったカービィの力の前に敗れた。
そして奪われた食べ物は全て国中の者たちへと返され、プププランドに平和が訪れたのであった。
国を救った勇者であるカービィは、多くの人々から称賛と感謝を受けた。この件をきっかけに、瞬く間にカービィの名は国中へと広まったのであった。
「そっか、カービィはこの時からみんなのヒーローだったんだね」
一部始終を見ていた響は、カービィの姿を見て笑みをこぼしていた。
カービィが数々の危機を救って来た戦士であることは以前から聞いてはいたが、響の知っている彼は友達として自身に接してくれる優しい姿であった。
だが、今の彼は数々の困難を乗り越えみんなの思いに応えた、正真正銘の勇者の姿だ。そんなカービィの姿が、響の心に強く焼き付いていた。
「------!?へ、また!?」
すると、またしても響は謎の白い光に包まれ別の場所へと飛ばされるのであった。
★☆★☆★☆
それから、響は何度も色んな場所へ転々と飛ばされながらカービィの冒険を見てきた。
中には宇宙の危機とも言えるほどの壮大な物まであった。
だが、カービィは数々の旅を経て出来た仲間たちと協力し、時には新たなる奇跡の力を何度も手にし、見事全ての危機を救って来た。
そんな冒険の数々を見て、響は彼がこれまでどれだけ壮大な冒険を繰り広げたのか、いかにして仲間との友情を育んでいったのかを知った。
(そっか、カービィも私たちと同じで、今まで人と繋がってきたんだね)
------繋がり
それは響が戦う理由でもあり、何よりも大切にするものであった。
それを得るまでには何度も辛いこともあった。けどそれでも響たちは最後まで諦めず何度も繋がりを紡いできた。
まるで今までのカービィのように。
(------っ!?)
するとまたしても場所が変わり、今度は最初にみた豊かな緑の大地へと戻ってきた。
「……カービィ?」
そこには、レジャーシートの上でよだれを垂らしながらお弁当を見つめているカービィの姿があった。
今にも食らいついてしまいそうであったが、カービィはなんとかそれを抑えて周囲に声をかけ始めた。
「はぁーい!」
すると、そこに突然たくさんの者が集まって来た。
彼らはこれまでカービィが長い旅の中で得た"友達"であった。
その中にはかつてはカービィと敵同士だったものも混じっていたが、彼らはそんなことを一切気にすることなくみんなでお弁当を食べ初める。
彼らはカービィがこれまで過ごした時間の中で紡いで来た"繋がり"、様々な困難を乗り越えて手に入れた絆の証であった。
そんな彼らの様子を見て、響はとても和やかな気持ちになっている。
今目の前に広がる彼らの繋がりは、響にはとってもとても尊く見えていた。
「------ヒビキ」
「……へ?」
その時、突然カービィの声に思わず響は変な声で驚いてしまう。
先ほどまで自身はカービィには認識されていなかったはず、なのにカービィは今確かに自分を見て、名前を呼んだ。
「何いつまでも突っ立ってんだよバカ」
「……えっ!?」
今度は大分馴染み深い乱暴な台詞が聞こえてきたかと思えば、突然変わっていた目の前の光景に響は驚く。
そこには、いつのまにか自身の仲間である装者たちまでもが混ざっていたのだ。
「立花、一体さっきから何を驚いている?」
「みなさんいつからいたの!?さっきまでいなかったですよね!?」
「……へ?私ずっといたよね切ちゃん」
「当たり前なのデス、響さんはおかしなことを言うデスね調」
「へ、へぇ……!?」
突然起こった事態に響は未だ困惑が収まらない。
先ほどまでいなかったはずの仲間、自身の方がおかしいと言われる立場、響はますますわけがわかんなくなった。
「ヒビキ!」
「はっ、……カービィ?」
そんな響に、カービィはまたしても声をかけた。「いっしょにおいでよ」と。
「ほら、カービィも呼んでるんだし、響も早くこっちに来なよ」
「早くしないと、あの子たちが先にお弁当を平らげちゃうわよ?」
訳がわからない、そもそも眠りから覚めた時から訳がわからないことだらけだった。
「……うん、そうだね。早く行こっか」
「はぁーい!」
だが、響はもう困惑するのをやめ、カービィと共にみんなの和に混ざるのであった。
出会いは偶然だったかもしれない。本来なら起こり得なかった奇跡。
だが、それでも響たちとの出会いは、カービィにとって新たに出来た"繋がり"だ。
今はその繋がりを、みんなで分かち合うのであった。
★☆★☆★☆
「……きて…………きてってば」
「う、うぅん……」
朧げな意識の中、僅かに聞こえる声によって響は眠りから目覚めた。
「未来ぅ……あれ?」
なんとか覚醒した響であったが、目にした光景に彼女は頭にはてなマークを浮かべる。
気づけば自身がいるのはS.O.N.G.基地内の部屋のベッド。そして響の腕には、未だ夢の世界へと旅立っているカービィの姿があった。
「あれ?未来、これどうなってるの?」
「もう、何寝ぼけたこと言ってるの?みんなが準備を終わらせるまでカービィの相手をしててって頼んだんじゃん。なのに響ったら、カービィと一緒に寝ちゃうんだから」
「へ?…………はぁ!」
未だ状況を理解出来ない響であったが、未来の言葉により頭の奥からある大事な記憶が呼び覚まされた。
そう、今日はバンダナワドルディから聞かされたある大事な日なのだ。それを思い出した響は、慌てだした。
「そうだった!未来、準備は!?」
「もうみんなのおかげで終わったよ、二人がぐっすり眠っていたおかげでね」
「うぅ……」
未来の言葉にぐうの音もでず、響はしょんぼりとし出す。
「……ぽよぉ?」
すると、二人の会話によってカービィが夢の世界から戻ってきた。
「あ、カービィおはよう」
「……はぁーい」
「ほら、カービィも起きたんだし、そろそろ行くよ」
「うん、そうだね」
「……ぽよ?」
眠りから覚めたカービィは、二人の会話の内容が全く掴めないままどこかへと連れ出される。
やがて、大きな部屋の扉の前へとたどり着いた。
「それじゃカービィ、いくよ」
「ふふっ、きっと驚くからね」
すると扉は開き、三人は中へ入っていった。
パパパッアァァァンッ!
「ぽよ!?」
部屋に入った途端、突然響いた音にカービィは驚き響の腕の中で思わず飛び上がる。
そこには、クラッカーを持っていた装者たちが立っており、奥には巨大なケーキを取り囲むようにカービィの仲間たちが並んでいた。
そして、みんなが一斉に並べて声を上げた。
『カービィ、お誕生日おめでとう(デース)!!』
なんとか間に合ったぁ……(遅いわ!)
即興で書いたので、雑な部分は多々あるかもしれません、ご指摘は大歓迎です。
という訳で、カービィ30周年おめでとう!!
本当私にとってカービィとの出会いは奇跡でした!という訳でみなさまも、これからもカービィをよろしくお願いします!