星のカービィ Wish in the Symphony 作:テンカイザー
けどこれからも更新が遅れることは度々あると思われますので、そこはどうかご了承下さいませ。
さて、今回からようやく新章突入です。
七星目 迷い鳥
―――とある並行世界
米国連邦聖遺物研究機関『Federal Institutes of Sacrist』。
通称、『F.I.S.』。
その日本支部の研究所にて、―――
「マム、お待たせしました」
部屋に入って来たのは、穏やかな雰囲気の少女である。
茶色い髪を肩まで延ばし、白を基調とし赤の混じった服を着ている。
―――『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ 』
セレナは部屋に入ると、真っ先に部屋にいた青髪の初老の女性へと向かう。
―――『ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ』
この研究所の責任者である。
「えぇ、セレナ。では早速本題に入ります」
セレナが来たのを確認するやいなや、ナスターシャは真剣な顔になる。
「先日、以前交流があった聖遺物研究機関が襲撃を受けたのです」
「ッ…!?」
ナスターシャが言ったことは、セレナを驚愕させる。
「マム!研究機関を襲った敵って……!?」
「それは今から見せます」
ナスターシャがコンソールを操作しだすと、目の前に設置されているモニターに画像が写し出される。
「マム、これは一体……?」
「これは先日現れた"未確認生命体"です」
そこに写っていたのは、丸く光る身体に虫のような羽のついた小型の生物の大群。
さらにその中には、他のやつとは違う、ひと回り大きい身体に鳥のような羽と尾を持つものが一匹紛れ込んでいた。
これまで見てきた敵とはどれも違う異形の敵に、セレナは動揺する。
「先日我々とは別の聖遺物研究機関が、この生命体に襲撃を受けたのです。しかも最悪なことに、襲撃の際、聖遺物の一つをこの生命体に奪われてしまったようなのです」
「聖遺物がッ!?」
ナスターシャの言葉が、またしてもセレナを驚愕させる。
だが無理もない。聖遺物は無力な人類に強大な力をもたらす可能性であるが、同時に使い方を誤ればとてつもない脅威となる危険な物だ。
そんな危険な物が得体の知れない謎の生物に奪われたのだ。何事も起こらない訳がない。
「それで、奪われた聖遺物とはなんなんですかッ!?」
セレナはナスターシャに詰め寄り、今回の事件の要となる存在について聞きだす。
「研究機関からの情報によると、奪われたのは『フェニックスの羽』という物だそうです」
「フェニックスの羽……?」
ナスターシャが語った用語に、セレナは首を傾ける。
「古来より伝承で伝わる不死身の鳥『フェニックス』。その羽の一部といわれています」
ナスターシャが語った聖遺物の内容を踏まえ、セレナは自身の知るフェニックスについての知識を頭の中で掘り起こす。
―――フェニックス
死んでも蘇る肉体を持つ、まさに不死鳥と呼ばれる鳥。
その姿が炎で包まれていることから、火の鳥とも呼ばれている。
自身が知る限りの知識を呼び起こしたセレナだが、それでも奪われたフェニックスの羽の力は想像出来ない。
「話しを戻しますが、この生命体は襲撃の後どこかへ姿を消したようです。それと同時に、フェニックスの羽の反応も消失してしまいました」
未だ聖遺物について疑問が拭えないセレナだが、ナスターシャが話し出したため、即座に気持ちを切り替えて耳を傾ける。
―――謎の生命体と共に聖遺物の反応も消えてしまった
ナスターシャが話した内容は、今度はセレナに不安を与える。
聖遺物が消えてしまったため、探しようもない。
だが、このまま放っておけばどんな危険なことが起こるかわからない。
「この生命体がどこから来て、次にいつ現れるかわかりません。だからこそセレナ、貴方には心得ておいて欲しいのです……」
「マム……」
セレナはナスターシャの顔が辛そうなものに変わったのに気づく。
セレナへの心配もあったが、それよりもナスターシャにはどうしても不甲斐ない思いがあった。
セレナは本来なら実年齢は20歳になるはずであった。
しかし、セレナは7年前に起きたある事故によって重傷を負い、7年間コールドスリープ状態だった。
そのため、セレナは今もなお7年前と同じ、うら若き少女のままなのだ。
故に、ナスターシャはそんな少女であるセレナに危険な戦いを強いるしかない自分を責めていたのだ。
だが、そんなナスターシャとは裏腹に、セレナは笑顔を浮かべる。
「はい、任せて下さい。必ず私が皆を守ってみせます!」
「セレナ……」
ナスターシャの心情を察したセレナは、せめてナスターシャにこれ以上心配しないよう笑顔を向けたのだ。
セレナはこれまで何度もF.I.S.からの圧力により無茶な命令を強いられて来た。だが、セレナはそれに対し何も言わず、命令に従って来た。
当然F.I.S.のためではない。
この世界において人類を脅かす脅威に立ち向かえるのは、セレナだけなのだ。
故に、セレナは弱き人々を守るために、いついかなる時も戦う覚悟はできている。
―――ブオォォォォン!!
『ッ…!?』
そんな時、突如としてけたましい警報音が部屋中に鳴り響く。
「一体何事ですかッ!?」
「……この近くに、例の未確認生命体が現れたようです!」
ナスターシャはすぐさま近くにいた研究員に事態を問う。
返ってきた応えは、彼女を困惑させる。
「マム、私行きます!」
一方で、セレナはすでに覚悟を決め、すぐさま
未だナスターシャは、セレナを戦わせることにもどかしさを感じている。
たが、今は一刻を争うと割り切り、セレナへ目を向ける。
「……セレナ、頼みますよ」
「はいッ!」
セレナは、すぐに駆け出し敵の待つ戦場へと向かった。
★☆★☆★☆
研究所付近の森林。
そこには大量の未確認生命体―――リーパーがいる。
リーパーたちはあてもなく、ただ何かを求めて飛び回っている。
まるで餌をひたすら探し回る飢えた獣のように…。
「あれが未確認生命体……。」
森林に着いたセレナは、リーパーたちの様子を窺っている。
リーパーたちが危険な存在であることはナスターシャから聞いている。だが、このリーパーたちが人を襲ったという報告はまだ届いていない。
たとえ相手が異形とは言え、無抵抗の相手に攻撃するなど、セレナには出来ない。
故に、まずは様子見に徹することにしたのだ。
だが、―――
『来るぞ!』
「ッ……!?」
リーパーの一体がセレナを見つけると、セレナにむけて突進を繰り出す。
だがセレナは自身の中から聞こえてきた声により、なんとかリーパーを避けることが出来た。
「……助かりました、"ヴェイグさん"!」
『礼よりも、周りを見ろ!』
見れば周りにいるリーパーが全員セレナを睨んでいる。
今の彼女の状態は、まさに四面楚歌だ。
―――このままでは自分がやられる
そう悟ったセレナは意を決して、首から下げていたペンダントを握り、詠唱を奏でる。
――― Seilien coffin airget-lamh tron
詠唱が終わると同時に、セレナの全身が光に包まれる。
次の瞬間、光が晴れると、そこには格好が大きく変わったセレナがいた。
白を基調としたインナーの上に、各部に花びらのような意匠を持ち、その姿はまるでおとぎ話にでてくる妖精を連想させる。
これがセレナのシンフォギア―――『アガートラーム』だ。
アームドギアの短剣を構え、自身に向けて突進してくるリーパーから、次々と切り裂いていく。
そして、今度は両手に片手剣を出現させる。
するとどういうことであろうか、セレナの両手から片手剣が一人でに飛び出し、セレナの周りを旋回しだしたではないか。
そしてセレナが左手を前に出したのを合図に、宙を飛んでいた二振りの剣は、リーパーたちへ目掛けて縦横無尽に飛び回り出した。
―――『FAIRIAL†TRICK』
高速で飛び回る刃に、リーパーたちはなす術もなく切り裂かれていく。
ある程度数を減らした所で、剣は元の一振りに戻り、再びセレナの手の中へと収まる。
だが、リーパーたちの数はまだ大分残っており、全員がセレナを見据えている。
そんな時―――
「ぴぃー!」
「……?」
突然森林の奥の方から謎の声がセレナの耳に鳴り響く。
「今のは……?」
疑問を拭えないセレナだが、リーパーたちはそんなセレナの心情などお構いなく再び突進を繰り出す。
咄嗟に避けたセレナは、まずは目の前の敵をどうにかしてから、と割り切る。
そして今度はなんと、セレナは片手剣を上に突き上げ、空高く飛び上がったのだ。
突然舞い上がったセレナを、リーパーたちは見上げる。
次の瞬間、セレナの周りに複数の紫色の球体が出現する。
そしてセレナが片手剣を下へ振り下ろすと同時に、周りに浮いていた紫色の球体が大量の片手剣型のエネルギーとなり、リーパーたちへと降り注いだ。
―――『WARM†LUNALIGHT』
大量に降り注がれる刃の雨は、地上近くを低空飛行していたリーパーたちをまとめて天へと召す。
地上へ降り立ったセレナは、この辺りのリーパーを全員片付けたのを確認すると、すぐさま先ほどの謎の声の元へ駆け出した。
★☆★☆★☆
セレナが向かった森林の奥、そこには、先程よりは少ないが、リーパーたちがまだ複数残っている。
だが、セレナが真っ先に目を向けたのはリーパーたちではない。
見れば、リーパーたちは"なにか"に群がり、次々と体当たりをかましている。
「ぴぃぃ……!」
すると、先ほどセレナが聞いた謎の声が、なんとリーパーたちが群がっている"なにか"から発せられたのだ。
だが、その声はさっきよりも明らかに弱っているではないか。
このままでは声の主が息絶えてしまうことを悟ったセレナは、すぐさまリーパーの群れへと詰め寄る。
「貴方たちッ!そこから離れなさいッ!」
珍しく強気なセリフを発したセレナは、自身に標的を変えたリーパーたちに向かい、片手剣を振り回す。
リーパーたちは、仲間が切り裂かれたことに激情したのか、がむしゃらに体当たりを繰り出す。
だが、それもセレナによって切り裂かれた。
そしてセレナは、今度は片手剣を空へ目掛けて勢いよく投与する。
すると片手剣は、リーパーたちの真上へ来たところで、更に勢いをつけ急降下を始める。
―――『XANA†TEARS』
自身へ迫って来る音に気づき上を見上げるリーパーたちだが、すでに時は遅い。
空から降って来た片手剣は、地面に激突すると同時にとてつもない衝撃波を起こし、辺り一面を吹き飛ばす。
衝撃波が収まると、そこには剣が落ちた場所を中心に巨大なクレーターができており、リーパーたちの姿は亡き者となっていた。
リーパーを全て倒し終えたことを確認したセレナは、先ほどまでリーパーたちが群がっていた"なにか"へ向けて駆け出す。
するとそこにいたのは、―――
赤い衣服のような物を見に纏い、胸に緑色の宝石を付けた、一際大きい鳥であった。
「大丈夫ですかッ!?」
謎の鳥は、弱々しく地面に横たわっており、そのまま動けずにいる。
見る人からすればかなり危ない状態にあるのは明らかだ。
見れば、先ほどのリーパーの襲撃の際に受けたのか、右の翼に怪我をおっているではないか…。
「ッ……!?怪我してる!すぐにマムの所へ……!」
「ぴぃっ!」
「ッ……!?」
翼の怪我に気づき、すぐさま鳥を運ぼうとセレナは詰め寄る。
だが、鳥はこともあろうことか、セレナが触ろうとした途端暴れ出したのだ。
まるでセレナをはね除けるかのように……。
『……あぁ、こりゃ完全に警戒されてんな」
「そんな……」
ヴェイグの言葉に、セレナは気を落としてしまう。
『だが無理もない、こんな大きさだが、こいつはまだ雛なんだ。突然敵に襲われてどうしようもなくて、何もかもに怯えてしまっているんだ』
「……ヴェイグさん」
突然親とはぐれてしまい、理不尽に敵に襲われてしまったらどうであろうか。
きっととても怖がってしまう。
その上、自分がどうすれば良いのかもわからず、ただただ怯えてしまうだろう。
だがセレナは、ならば尚のこと放っておくことは出来ないと意を固め、再び雛鳥に詰め寄る。
「大丈夫ですよ。私は貴方に酷いことは何もしません」
「ぴぃっ!ぴぃっ!」
またしても暴れ出してしまう雛鳥。
だが、セレナは雛鳥が暴れ出してもなお、雛鳥を優しく抱き続ける。
「……怖かったんですよね。親とはぐれてしまって、さっきのにいじめられて……けど、私は大丈夫です。私が貴方を守ってあげます。ちゃんと親とも合わせてあげますから」
「……ぴぃ」
セレナの言葉を理解したのか、雛鳥は徐々におとなしくなっていく。
やがて暴れるのを完全に止め、安心したことで一気に体の重荷が抜けた影響か、セレナに抱きしめられたまま眠ってしまった。
「……さて、マムのところへ連れていって、怪我の手当てをしないと」
『……お前は本当に優しいやつだな』
「えへへ、ありがとうございます、ヴェイグさん」
ヴェイグにお礼を言いながら、セレナは雛鳥を抱え直し、ナスターシャが帰りを待つ研究所を目指して歩き出した。
……ハロウィン回、私も書きたかったなぁ。
こうなったら、なるべく物語を進めて来年こそ……。
あと、シンフォギアの戦闘描写ってやっぱり難しいです……。