悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!
1
「サトウカズマ!あなたを国家転覆罪で逮捕します!」
「俺は無実だぁーー!」
たった二行。たった二言。
機動要塞デストロイヤーの討伐報酬を受け取りに行った和真が受けた仕打ちの全てだ。
「……ついにか。」
「前から風呂上がりのリアを下品な目で見てると思ったのよね…。」
「和真さん…総一さん、刑務所への慰安訪問で歌のお仕事ってありましたっけ?」
「お前らちょっとは奴の無実を信じてやれよ?」
想像以上に塩対応で使った塩をそのまま傷口に塗り込むような冷淡さのジョー達に俺、七海総一は一抹の不安を覚えていた。
「で、和真は今どこに?」
「拘置所ですよ。牢屋の位置ぐらいは分かってるので今夜脱獄させましょう!」
「それで余罪重ねてどうする?
もし失敗して裁判までも連れ込んだらますます有罪に傾くだろ?」
「ソウイチ、アンタは日本生まれだから分かんないだろうけどこの世界の裁判はね、原告の身分が高かったら証拠とか諸々すっ飛ばして死刑よ?
検察は職として有るけど弁護人は基本被告人の知人から選ばれるしでかなり被告人不利なの。」
身元不明の冒険者なんて特に。
と、付け足した馬鹿女神の珍しくマトモな説明になるほど、と半分納得する自分と、まずいな、と少し焦る自分が生まれる。
「因みに罪状は?
確かに和真は出来心で万引きや痴漢ぐらいならするだろいが、そこまでの事は …。」
「3つあって、1つは酒屋のツケに文句言って巨大ゴーレムを暴れさせた。
2つ目は魔王軍と通じてる疑いがある。
3つ目は、コロナタイトをランダムテレポートで領主の屋敷にテレポートさせて更地にした、です。」
ツラツラと言い切っためぐみんに俺たちは思わず『あ……』とつぶやいた。
このシリーズをずっと読んでくれている愛すべき読者の紳士並びに淑女諸君は1つ目は何かお分かりだろうが、残る2つについては説明不足だろう。
それを説明するには時間を少しばかり、デストロイヤー撃破直後まで遡る必要がある。
2
「おい駄犬女神。本当にウィズはこの辺に落ちたんだろうな?」
「誰が駄犬女神よ湯たんぽヒキニート!
少しは女神の邪悪に対する嗅覚を信用なさい!
間違いなくあのアンデッド女はこの辺りにいるわ!」
デストロイヤーごとスーパービックバーストでお星様に変えたはずのウィズの死体とレンジャーキーを回収しに来ていた。
が、アクアが言うにはウィズはアンデッドで、恐らく高位のリッチーだとか。
「めぐみん、ヒキニートはは分かりますけど湯たんぽって何ですか?」
「最近アクアは朝寒いとカズマの布団に潜り込んで温まってるんですよ。」
「駄犬ってか雌猫だな。」
「リア!めぐみん!ジョー!全部聞こえてるわよ!」
なんて言いながら獣道を進んでいると
「だれかー!助けてくださいー!瓦礫に挟まって動けないんですー!
どなたかいらっしゃいませんかー!」
本当にいた。高位のリッチーが瓦礫に挟まって動けなくなっていた。
そのやや手前に煙を上げたレンジャーキーとダークモバイレーツの残骸が残っている。
リアはそれを拾い上げると思い切りウィズを睨みつけ
「あ、あの…」
「ふん!」
思い切り頭を踏みつけた。
「これはギルドスの分!これはブッチーの分!これはゴーカイオーの分!それからこれとこれとこれともう一つこれは私の怒りだこの死体人間がぁあああ!」
「痛い痛いやめて!やめてください!」
「いいわよリア!そのジメジメしたナメクジ女に身の程を分からせてあげなさい!」
「……ジョー、アクアを少し殴れ。」
剣の柄で頭頂部を容赦なくぶん殴られたアクアが悶絶してる間にルカとめぐみんが二人掛かりで興奮しきったリアを離す。
「さーて、それじゃあ
アンタに残された選択肢は三つ。
一つはそこの脳みそは足りないが浄化のパワーは有り余ってる阿保女神に浄化される。」
思わずウィズが涙目のままごくりと唾をのむ。
「二つ。生け捕りにした魔王軍の手先ってことでギルドに突き出す。
きっとリッチーなんて貴重なサンプル腑分けにされて原型が分からなくなるまで実験と研究を繰り返されるんだろうな?
いつの時代も愚かな為政者ってのは不老の力を欲しがるもんだ。
確かリッチーってそうなった瞬間から姿固定だろ?」
さらに目に涙を浮かべて震えだすウィズ。
よし、この怯え様なら間違いなく三番に飛びつく。
「三つめは…このままお前は討伐されたことにして魔王軍とのつながりも店も手放し俺たちに飼われる。」
「はぁ!?ソウイチあんた本気で言ってるの!?
私は絶対こんなのと共同生活なんて嫌だからね!」
「でも俺たち以上のことを知ってる。
ならしゃべらすしかないだろ?
下手に王国に知られてレンジャーキーを独占されたらたまったもんじゃないからな。」
そう言ってウィズに無抵抗を約束させて引っ張り出そうとしたが
「ま、待ってください!実は、さっきのデストロイヤーを破壊した攻撃で、核になっていた魔石、コロナタイトが暴走してて、このままだと爆発するんです!」
コロナタイト!?と総一、和真以外の全員が顔を青ざめさせる。
どうやら爆発したらとんでもないことになる代物らしい。
「今から走って逃げれるか?」
「無理よ今からなんて!ここら辺一体更地になるわよ!」
アクアがわめく。とりあえず落ち着かせようと和真はブリンガーソードの柄でアクアを殴る。
「なあウィズ、テレポートとかできるか?」
「で、できますけど行先ランダムになっちゃいます…。」
もし人のいるところに出ようものなら大惨事だ。
さてどうするか。その時和真は言ったのだ。
「とにかくやろう!大丈夫だこの世界は広いんだ!
人の居ないところの方がきっと大きい!大丈夫だ!
俺は運だけは良いらしい!俺を信じろ!」
3
てなわけでそのあとコロナタイトは今ガレオンの物置を改装した部屋で
「つまり『魔王軍とつながりがあるか?』とか『コロナタイトを送り付けたのはお前か?』とか質問をされた場合、いいえと答えたら嘘発見器が反応する可能性があると?」
「じゃ、じゃあ私のせいでカズマさんが…」
隷属の魔道具である首輪をつけられたウィズが本当に申し訳なさそうに言う。
「こうなったらかなりまずいんじゃないの?
ガレオンもガサいれされてまずい物だらけだし。」
「住所不定なんて冒険者にはよくあることだし、
最悪風雷丸に忍術かけてもらって雲隠れって方法もある。
それに一応和真たちは屋敷に住んでることになってるんだろ?
ならたぶんこっちにまでは来ない。」
だがそれでも証拠隠滅とかいろいろ裁判所で言われるのは確定だから、
このままでは恐らく有罪が確定してしまう。
「じゃあどうするんだ?」
「考えんのさ、こうゆう時、あいつならどうする?」
4
どうも皆さんこんにちわ。リアです。
いま私春香さんと一緒に拘置所に来ています。
恐らく取り調べに来てるであろう検事さんを捕まえて話を聞くためです。
「あ、いたわよリア!あいつ!」
「分かりました!リア!いっきまーす!
あのー!すいませんそこの眼鏡の美人さん!」
「なんでしょう?」
「私、佐藤和真さんの冒険者仲間で、裁判の弁護人になるつもりなんです。
それで、和真さんの罪状やその根拠を教えてほしくて…」
それを聞いて検事さんは少し驚きましたがちょっと小さい声で
「一応弁償は済んだとは聞いていますが、
街の門を破壊したり巨大ゴーレムで暴れたりとしていますからね。
そのゴーレムがどこの記録にもないものですから魔王軍のものなのではないかという疑いがかけられているんです。」
「それで魔王軍関係者の容疑が?」
「はい。それから……色々と悪いうわさも聞きますし。」
ああ、確かに。と、思わずリアは苦笑してしまった。
礼を言ってすぐにその場を後にする。
「どうだった?」
「多分ソウイチさんとルカさんならこの材料でもうまくやれると思います。」
「そっか。じゃあ、私も腕によりをかけちゃおうかしら?」
と、ルカはちょっと悪い笑みを浮かべて腕を鳴らした。
次ーーッ回!第十話!
アクア「異議あり!」
総一「よってわれら弁護側は無罪を主張する!」
裁判長「静粛に!」
ルカ「まさかこの切り札まで切る羽目になるとはね。」
ダクネス「いや、ルカ。ここは私が!」
開廷!異世界裁判!
和真(頼むぞ皆……)