悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!
1
「すいません族長殿、今なんて?」
「だからただの近状報告の手紙ですって!
書いてる途中でつい紅魔族の血が騒いでしまって普通の手紙にならなくてね!」
魔王軍を手早く片して里の周囲をうろついてた自称遊撃部隊(と、いう名のニートども)んみ連れられてやって来た族長の館にて。
はっはっはっ!と、ゴーカイに笑う族長を前に全く会話を聞いてないでうつらうつらしてるアクア以外の全員がぽかん…と、口を開けた。
「ゆんゆん、手紙にはこの手紙が届くころにはもう死んでるかもとか書いてなかったっけ?」
「う、うん。まさかあれも…」
「紅魔族特有の挨拶だよ。学校で習わなかったか?
あ、お前とめぐみんは成績が良すぎて早く卒業したんだったな!」
「そんな常識レベルの事一年の一番初めに教えなさいよ…」
「いやルカ。そこも突っ込むとこだがそもそも書き方がおかしい事に突っ込め。」
もう紅魔族はそうゆう物だとあきらめてるルカは肩をすくめてやれやれと首を振るだけだった。
他の面子もどこか遠い目でゆんゆんに関節技を駆けられ悲鳴を上げる族長を見ている。
「もういい。めぐみん、
この里どっか宿屋みたいな場所…無いか。」
「どうする?この大人数で行くわけにも…」
「誰か一人私を家までおぶって行ってくれるだけでいいですよ。
どうせ家に帰ってもシャバシャバの水で嵩増ししまくった雑炊しかありませんし。
皆さんにお出しするだけあるはずが…」
「「「「「……。」」」」」
「えっと…理由聞いても?」
「うちの父は魔道具職人なんですが、
腕は確かなのに毎度毎度お菓子なアイデアの浪漫武器しか作らないせいで毎月家計は火の車で…」
「さっさとガレオン戻るわよ!昨日ジョーが上げたドーナツまだ残ってたわよね!?」
「食料も買い込んでたはずだ!
行くぞお前ら!今日はめぐみん家で満漢全席だ!」
2
「母さん一番高いお茶!きっちっと人数分!」
「やだわあなた!家にお茶なんて一種類しかないじゃないの!」
三時間後、めぐみんと食材とお菓子を背負ってやって来た和真たちをめぐみんの一家は歓迎してくれた。
ちなみにそれぞれ和真、アクア、ダクネスが運んできた。
総一たちは『そんなに大勢で行っても迷惑だし、お前らの食う分減っちまうだろ?』と、断った。
「果たして正しかったのか…」
総一たちを連れてこなかったこと?
態々食材を大量に持参したこと?
それともアクアとダクネスを連れてこなかったこと?
「母さん、肉はワシに任せろ。白菜は美容に良いと聞く。
これたらふく食べていつまでも美しくいてくれ。」
「あらやだあなたこそ。最近頭が寂しくなってきてないかしら?
付け合わせの海藻サラダでも食べていたら?」
「ほんとうにぜんぶいいの?こんなうちのお父さんが三日三晩どころか三か月三十晩ぶっ続けで働かないと出てこないようなご飯たべていいの?」
「ええ!たんと食べなさい!
全部そこのカズマさんのおごりだから!」
「か、カズマ?私はその、恥ずかしながらちゃぶ台で鍋を囲むのが初めてなんだ。
その、これで合ってるか?何か間違えてないか?」
全部だ。
極限状態で生活をつづけた人間は久方ぶりの疲れ切った娘をほっておいて飯にしか目が行かなくなるようにさせるとか知りたくなかった。
アクアはめぐみんの妹(こめっこというらしい)に内を吹き込むか気が気じゃないしダクネスへの対応はハッキリ言ってめんどくさい。
(あー…けど、畳にちゃぶ台。
つついてるのは鍋。なんか、久しぶりに日本にいるみたいだ。)
若干郷愁に浸りながら和真はダクネスに箸を同時に二つ以上入れなければそんなに気にしなくていいとだけ言って純粋に食事を楽しむことにした。
3
一方その頃ガレオンでは。
「風呂お先っしたー。」
先に入浴を済ませた総一が着替えて出て来た。
唯一入っていなかったジョーが最後に入る。
「和真さんたち今頃何してるんでしょうか?」
「うまいもん食ってんだろ?
なんせこっちの食料大体あの怪力女神と筋肉乙女に積んだからな。」
「流石のアクアも生野菜をつまみ食いしないでしょうしね。
にしても里帰りかぁ…私らは出来ないからねー。」
「あー、物理的に不可能だもんな。」
総一は日本出身で、ルカとジョーは魔王軍に滅ぼされた亡国の民だ。
リアに至っては失われた記憶の彼方。
必然的に里帰りと呼べるレベルで古郷から離れてはいる人間はめぐみんだけになる。
「なあ、あのちび魔王をぶっ倒したらお前らの国に連れてってくれよ。
それが終わったら俺の故郷も案内してやるよ。」
「へー、いいじゃん。金目の物とか有んの?」
「まず金か!美味いもんとか景色良い場所とかもっとあるだろ。
とことん色気も食気もねえ奴だな!」
「まあそれがルカさんですしね。」
「それに!リアの故郷に行くまでの旅費ならいくらあってもいいじゃない。」
「……そーだな。」
「和真さんたち、付き合ってくれますかね?」
「付き合ってくれたらくれたで、
面倒だらけだと思うけどな。」
そう言って三人は笑いあった。
4
(どうしてこうなった!?)
場所を戻しめぐみんの実家にて。
和真が風呂に入ってる間に和真が屋敷に住んでる事とか結構な財産が有る事とか目を付けためぐみんの母、ゆいゆいの策略により酔いつぶれたアクアとなぜか急に糸が切れた人形のように眠りについたダクネスは居間に寝かされ、和真はめぐみんと彼女が昔使っていた部屋で寝ていた!
(マジでどうしよう…俺マジでどうしたらいいの?
そうだ!変身すればいいじゃねえか!
そしたら無理して一個しかない布団を使う事も…ん?
1つしかない布団?)
外はまだ寒く、意外と小さな風も馬鹿にならないこの異世界。
そして部屋には布団が一つ。
そして小柄な自分とめぐみんなら少し無理をすれば入れる。
(そう!これはお互いの命を守る為の好意でありやましい事は何もない!
そう何もないんだ!一切何にも!問題ない!)
自分のかえの服で二人分のモバイレーツとキーをくるんで部屋の端に放置厳重に保管し、布団にもぐる。
枕は一個しかないが、何にも問題ない。
(そう、大事なのは暖を取ること。
だからこうして手を握るのは何にも悪い事じゃない。)
後はゆっくりと眠りにつくだけだ。
そう思って和真はゆっくりと目を閉じて心を落ち着け…
「本当に何もしないんですか?」
「え?」
思わず横を見る。そこには目を閉じ動かないめぐみんの横顔しかない。
耳を澄ませてみても、規則的な呼吸の音しか聞こえない。
和真はもう一度目を閉じ心を落ち着けた。
「……鈍感。」
「聞こえてるぞ。」
生憎難聴ではない和真は普通の音量でそう返した。
5
「ふあー……寝よ」
欠伸を一つして総一はいつも通りベッドに剣を立てかけて布団にもぐった。
日本にいたころから丸まって寝る癖のある総一だが、ここ最近はそんなこともない。
「なー!」
「ネコもどき…お前また来たのか?」
いつも総一の腹の上で眠るこの魔物のような何かを総一は特に何もしていなかった。
朝起きた時にはいないし食料が荒らされてるわけでもない。
毎日とは言わないが掃除をしてても糞尿の跡が見つかったりもしないので、
この変な生き物に寝床を渡すぐらい問題ないか、と思っているのだ。
「それより早く寝よ。明日は観光がてら里を巡りたいし…」
と、つぶやき今度こそ寝入ろうとすると、派手にガラスを割る音が響く。
飛び起きた総一は枕もとの剣を引き抜き割れた窓にひっ掛かっていた縄を切り落とした。
野太い男の悲鳴が聞こえる。
(和真じゃねえ!間違いなく魔王軍!)
総一は何とかブーツだけ履くと部屋を出た。
「なんだお前も来るのか?」
「なー!」
「いいけど攻撃ぐらい自力で避けろよ?」
背中に乗ってきたネコもどきにそう言うと総一は居間に急いだ。
見るともう武装を整えた残り三人が集まっており、
一人の妙齢の女性の形をした魔物と対峙していた。
「赤き海賊団…まさかお前たちが持っているとは思わなかったわ。
本当はレンジャーキーだけ頂いて帰るつもりだったけど、予定変更ね。」
鞭を構えながらそう言う女魔物。
一同首を傾げた。レンジャーキーと自分たちの命以外狙われるようなものなどない。
「お前一体なんこと言ってんだ?」
「そいつのことよ!そいつを返せ!
お前の肩に乗っているこの私の半身を!
そうすれば私は完璧になる!湯治の必要なんて二ぐらいに!」
びしっ!と指さす先にいるのは、今しがたガレオンに入って来た総一のみ。
そしてその肩に乗っているのは…
「なー!」
「そいつって、まさかこいつ!?
このネコもどきが!?うそぉ!それに湯治って…てめえあのキチガイ温泉にスライム野郎と混浴してたやつか!」
何と魔王軍幹部の半身だった。
こんなサイズのこんな愛らしい見た目で。
次ーーッ回!第二十七話!
アクア「いったい何の問題があるの?」
ジョー「……え?」
和真「俺、魔王軍に寝返る…」
一同「「「「はぁ!?」」」
シルビア「これが私の真の姿!」
ウォルバグ「わ、私の半身…」
めぐみん「いやこれ今回消化しきれなかったとこ全部じゃないですか!」
和真「まー、新学期とワクチン副作用の中書いたんだしこんなもんです。はい。」