スーパー戦隊このすばメガフォース   作:伊勢村誠三

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冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


逆襲のスーパーライブロボ!

ライブマン専用のライブクーガーに乗った和真、アクア、リアは急いでギルドを目指した。

そこに行くともう既に結構な数の冒険者が集まっている。

どうやら戦闘に気を取られて聞いていなかっただけで、もう既に招集がかかっているようだ。

 

「いた!総一さん!ルカさんも!」

 

「お前ら来たか。ジョーとダクネスは?」

 

「ソウイチ!皆!」

 

「すまん。遅くなった。」

 

だいたい人の出入りがやんだところで、食堂のテーブルが集められて即席の作戦本部が作られる。

 

「お集りの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えてくださり大変ありがとうございます!

只今より、対機動要塞デストロイヤー討伐の、緊急クエストを行います!」

 

「機動要塞デストロイヤー!?」

 

「みんな早く荷物をまとめに戻りましょう!

逃げるしかないわよ!」

 

「おいアホ女神。暴れるより先に説明しろよ。」

 

「なんだその『ぼくのかんがえたさいきょうのようさい』みたいなソレ?」

 

「逆にアンタ達知らないの?」

 

「リア、お前は知ってたか?」

 

「全く…」

 

総一、和真、リアはじめ何人かの冒険者は司会役の女性職員に説明を求める。

すると彼女は神妙な顔で頷き、

 

「機動要塞デストロイヤーは元々は対魔王軍用に技術大国ノイズが作り上げた超大型ゴーレムです。

国家予算を投じて造られたこのゴーレムは蜘蛛のような外観を持ち、

小さな城ぐらいの大きさを誇ります。

魔法金属がふんだんに使われており、非常に軽量で八本足で馬も超えるスピードを出せます。」

 

「ならうちのゴーカイオーの出番だ!

まっすぐ突っ込んでくるだけなら十分対応できる。

真正面から受け止めてやる!」

 

総一がそう叫ぶと会場内でどよめきが起こった。

 

「あの酒場に魔法兵器打ち込んだ巨大ゴーレムのことか!」

 

「ああ!そのあと壁の修理とかやってた…」

 

「確かにあれならいい勝負になるんじゃないか!?」

 

これから立ち向かう強大な敵に劣らない味方の存在に期待する一同。

そこでダクネスが手を上げ

 

「なら操縦は私に任せてくれ!

操縦桿は齧り付いてでも離さん。」

 

「ダクネス…お前いくらドМだからってこの非常時に…」

 

「カズマ!私にはこの街を守る使命がある。

いつか話すかもしれんが今じゃない。

それにこれは前にも言ったが私は民の盾、聖騎士にしてイエローレンジャーだ!」

 

「……わかった。

けどお前が死にそうになったら殺してでも引っ張り出す。

いいな?総一さんもいいですよね?」

 

「ああ。俺らの砦、お前に預ける!」

 

そう言って総一はダクネスにゴーカイレッドのキーを渡す。

 

「しかし大丈夫ですか?

機動要塞デストロイヤーの特筆すべき機能に強力な魔法結界があります。

一国の技術の粋が集められた物で常時展開型。

ゴーレム同士の格闘戦なら人型のゴーカイオー?

が有利かもしれませんが、消耗戦に持ち込まれるとこちらからの援護は全くできないまま戦うことになりますが…。」

 

「つまり一瞬でもいいから奴に隙を作らないといけない、と。」

 

総一がそういうとリアが手を挙げて

 

「シンプルですけど落とし穴とかはどうですか?

結構大きいの掘らないとだめですけど、

一瞬でもバランスを崩せれば…」

 

「かつてその作戦がとられたことがあるのですが、

なんと八本足でジャンプしてよけられてしまいました。」

 

「じゃあ下手したらゴーカイオーも飛び越えられるってこと!?」

 

「ゴーカイオーは45メートルだ。

飛び越えられはしないだろうけど、

思い切り上半身にのしかかられたらきつくないか?」

 

ルカとジョーの掛け合いに微妙に表情の暗くなる一同。

 

「ならあの爆裂バカの爆裂魔法は?

あれならどうにか足の一本ぐらいは取れそうな気がするぞ?」

 

「あのレベルの魔法も弾けるほどデストロイヤーの魔法結界は強力です。」

 

皆の顔色が悪くなってくる。

どれだけ強力な敵を相手にしてるかわかってきたからだ。

 

「じゃあ直接乗り込んで内側から結界をどうにかできないのか?」

 

「空からの攻撃に対処するための自立型ゴーレムと備え付けの小型バリスタが多数配備されています。

胴体にも戦闘用ゴーレムが。

今も中から開発者である科学者が指示を下している、とされています。」

 

そこまで言い切られたところで会議はストップしてしまう。

あーでもないこーでもないとゴーカイオーという最強の切り札(エース)を有効に使うための役がそろわない。

 

「なあアクア。プリーストの技に確かスペルブレイクってあったよな?

あれでデストロイヤーの魔法結界を破れたりしないか?」

 

「魔王軍本拠地の結界でも結界維持してる幹部が三人以下まで減らせれば何とかなるけど、私デストロイヤーを実際に見たことないから何とも言えないわ?」

 

「……なら、作戦はある。」

 

和真は椅子の上に乗ると

 

「みんな聞いてくれぇえええ!

アクアならもしかしたら結界を破れるかもしれないそうだ!

そこに爆裂魔法をどうにか打ち込めればゴーカイオーで抑えてる間に俺たちで中に入って内側から機能停止させれば何とかならないか!?」

 

「なんだって!?」

 

「芸人の姉ちゃん!出来るのか!?」

 

「か、確約はできないわよ!?」

 

「よしダクネス!さっさとガレオンに戻ってめぐみんと来い。

奴さん歓迎会はこっちで準備しとく。」

 

「わかった。すぐ戻る!」

 

飛び出していくダクネス。

彼女だけに任せると変な操縦をされかねないのでアクアもついていった。

 

「あと必要なのはもう一人爆裂魔法が使えるやつか。」

 

そう和真がつぶやくと見計らったようにギルドの扉が開かれ

 

「遅くなりました………っ!ウィズ魔道具店の店主です。

一応アークウィザードとして冒険者登録してるのでお手伝いに…。

あれ?どうしたんですか皆さん私のほうを見て…」

 

「貧乏店主さん!ナイスタイミングすぎるぜ!」

 

ギルド中が歓声に包まれる。

カードはそろった。あとはそれを場に出して相手の出方をうかがうだけだ。

 

 

 

クリエイター職の冒険者から土木会社の人たちまで集まって街の前、今回の決戦場に突貫でバリケードが作られている前で仁王立ちするゴーカイオーを見上げながら俺、七海総一は若干雲行きの怪しさを感じていた。

 

どうやらそれを感じているのは俺だけらしく、

爆裂魔法で壊し損ねた足を破壊する部隊に配属されたジョーはこの前の戦利品のギガゾメタルの剣を自慢しており、

リアは若い連中に頼まれて何か歌っていて、

アクアは何やらウィズにちょっかい出してあの魔剣の…キサラギ君だかミゾロギ君だかに窘められている。

普段あのくそ女神の首輪の手綱を握ってる和真は緊張でガッチガチになっためぐみんを励ましている。

 

「どったのソーイチ。浮かない顔じゃん。」

 

同じ部隊、デストロイヤーの本丸に突入する部隊に選ばれたのは俺とルカだ。

 

「ああ。ゴーカイオーにアクア。めぐみんにウィズ。

手札がそろい過ぎてる。まるで用意されたみたいにな。

ちょっと出来過ぎな気がしなくないか?」

 

「まあそうだけど、その幸運を喜ばない?

うまくやればデストロイヤーの討伐報酬で借金ちゃらよ?」

 

まあそうなんだがどうにも嫌な予感がぬぐえない。

 

「おそらくこの街にデストロイヤーを呼んだのは魔王軍、もっと言えばメレだ。

敵は多分ギルドスの件で自分の真実を知ったブッチーを暴走させてそれを囮にこの作戦を隠し通した。

……本当にそれだけか?

デストロイヤーは感知できたうえにこうして万端の準備まで出来てる。

奴らにしちゃあ詰めが甘い。」

 

それを言われて考え込むルカだったがアーチャー職の仲間に弓矢のことで話しかけられると注意だけはしとくと言って離れていった。

 

「……参謀に知恵を借りるか」

 

俺はモバイレーツを取り出すと和真の奴に電話を掛けた。

数コールの後に和真が出る。

 

『和真です。どちら様でしょうか?』

 

「総一だ。ちょっと聞きたいことがあってな。

もし、もし魔王軍がこの局面を利用して邪魔してくるとしたらどのタイミングだと思う?」

 

しばらくどちらの声もしなくなる。

和真のほうを見ると、こちらの真意をうかがうようにじっとこっちを見ている。

 

『そうですね…間違いなくデストロイヤーが来てから…それもこっちが切り札を切った後。

ゴーカイオーとデストロイヤーが取っ組み合ってて、なおかつ爆裂魔法が使われた後、あるいは使う瞬間、ですかね?』

 

「わかった。ありがとな。」

 

俺はそう言って通話を切ると近くにいたアーチャー職の奴に声をかける。

もし俺の見込みが外れてくれるならそれに越したことはないが…もしそうなら必要だからな。

 

 

 

刻一刻とその時が近付く中俺、佐藤和真はどうにも落ち着かない感触を覚えていた。

さっきの総一さんの電話、あれは何だったんのか?

確かにこの局面で最悪を想定して動けるようにしておくのは悪い事じゃないが…考えすぎても仕方ないんじゃないのか?

もしかして何か根拠が?

 

「カズマ?急に黙ってどうしたんですか?」

 

「いや、なんでもそれより…来たぞ。」

 

「な!なんですかあれ!予想よりもでかいですね…」

 

多分ダイナマンのキーを上乗せしてめぐみんが命を削るレベルで力を振り絞っても倒せるかどうか。

それぐらいのでかさの怪物が猛スピードで突っ込んでくる。

 

「オイ!これ無理じゃないのか!?ゴーカイオーは耐えれるのか!?」

 

誰かが慌てたように言うが、こうなったらもうやるしかない。

 

「『クリエイト・アースゴーレム』!」

 

クリエイター職の皆さんが地面の土でゴーレムを生み出す。

駆け出しばっかのこの街のクリエイターたちではできるだけ強いゴーレムを出そうと思ったら活動時間を削るしかないようだ。

生成されたゴーレムたちはゴーカイオーに先んじて果敢にもデストロイヤーに向かっていく。

 

「デケェ!そして早ぇ!予想外にこえぇ!」

 

パニックになりかける冒険者たち。

しかし祖入れを鼓舞するようにゴーカイオーがわざとらしく地面を踏み鳴らし注目を集めるとデストロイヤーと真正面からぶつかる!

 

一番前の二本の脚を両手でつかみ、空手で言うところの前屈立ちで踏ん張る。

メリメリとかかとで地面をえぐりながらもゴーカイオーはデストロイヤーを押さえることに成功した。

 

「おおお!」

 

「やったぞ!」

 

俺は右手を上げてウィズとアクアのほうに合図を送った。

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に……」

 

詠唱が始まると太陽のような色の魔法陣が二つ。

デストロイヤーと浮かび上がる。

 

「我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒の時きたれり!

無謬(むびゅう)の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて、現出せよ!」」

 

エネルギーが最高まで高まり、めぐみんはデストロイヤーに杖を向ける!

 

「「『エクスプロージョン』ッ!」」

 

紅蓮の炸裂がデストロイヤーの脚を消し飛ばす!

……右側だけ。

もう一撃目の爆裂魔法はなんとゴーカイオーの右肩に炸裂した!

 

「え?……な、なにが!?」

 

「い、今貧乏店主さんのほうの魔法陣が…ずれた?」

 

ただし、ゴーカイオーの胴体の方から急に。

ゴーカイオーは一瞬バランスを崩したが、デストロイヤーも同様だったので何とか持ち直した。

 

「ソーイチ、あんた…」

 

ウィズの魔法陣をずらしたのは総一だった。

彼の手に握られたゴーカイガンの銃口から煙が立っている。

 

「お前だろ?魔王軍のメレは。」

 

「なぜ、私だと?」

 

「正直ギリギリまでどうかな?と思ったけど…この作戦で最も重要なポジションは三人。

ダクネス、とアンタにめぐみん。

ダクネスはあの時の言葉が嘘じゃないと和真が判断したんなら間違いない。

めぐみんも同様。いくら上がりきってても俺らより付き合い長い和真なら気づくだろうとあいつの眼を信頼してな。」

 

ぶっちゃけ、消去法だよ。

そう言い切るとウィズは肩を震わせ…

 

「あっは!ははははははははははははははははははは!

格下でもマグレはあるのね!ええそうよ!私こそが!」

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

取り出したダークモバイレーツにキーを差し込みウィズはメレに変身するとデストロイヤーに飛び乗り、黒いエネルギーを打ち込んだ。

するとどうだろう?デストロイヤーは失った右側の脚をエネルギーで補うと復活し、ゴーカイオーを轢き潰さんと猛進し始める!

 

「ッッッ!こんのおおおおおお!」

 

ダクネスは絶叫とともに操縦桿を握りしめゴーカイオーを踏ん張らせる。

だがバチバチと火花を散らす右腕は限界が近い。

 

「踏ん張れぇええええ!」

 

ここだけは通すわけにはいかない。

ダクネスの使命であり願いであり意地だった。

 

(突破させない!私の育った街を!

お母さまが愛した街を突破させやしない!)

 

「絶対に行かせない!絶対に!この先にある命を踏み荒らさせはしない!」

 

ダクネスがそう叫んだ時、彼女の懐にあったレンジャーキーが輝き始めた!

 

「これは!力を貸してくれるのか?」

 

ダクネスはそれをすかさず変形させて操縦桿の真ん中のスロットに突き刺す!

 

「レンジャーキーセット!レッツゴー!」

 

どうにか一度デストロイヤーを押し返し、すべてのハッチを開く!

中から五つの動物のマークが飛び出し、頭に赤いファルコン、胴体に黄色いライオン、下半身に青いイルカ、右手に緑色のサイ、左手に黒いバイソンのエネルギーが与えられる。

 

「おい見ろ!傷が治ってく!」

 

「それだけじゃない姿まで変わった!」

 

「ば、ばかな!これが、スーパー戦隊の大いなる力!?」

 

「ああ。ゴーカイオーは不死身だ!

いや、今だけはこう呼ぶべきだな。スーパーライブロボ!」

 

「こ、これは…いったい何が……」

 

ただ一人コックピットのダクネスは何が起こっているかわからなかった。

何しいきなりコックピットの中まで様変わりして他の四つの操縦席にはさっきまでいなかったブルードルフィン、イエローライオン、グリーンサイ、ブラックバイソンが乗っているのだ。

 

「行くぞ!スーパービックバーストだ!」

 

「「「おー!」」」

 

「お、おー!」

 

イエローライオンの号令にダクネスはだいぶ様変わりした操縦桿を前に倒す。

スーパーライブロボはズンズンと早足気味に進みだした。

 

「それじゃない!」

 

「え?こ、こうか?」

 

ブレーキを探してスイッチを押すがそれはパンチのボタンだった。

至近距離で放たれた鉄拳はデストロイヤー貫く!

 

「何やってんだよ抜けないじゃん!」

 

「す、すまん!えっと、どうすれば…」

 

「もうお前触んな!」

 

大慌てのコックピット内の事情なんて知らない地上のほうはと言うと

 

「おお!やったぞー!」

 

「いいぞがんばれ!」

 

「俺たちも負けてられないぞ!」

 

デストロイヤーの物理材質で構成されている足に攻撃を始める。

ミツルギの魔剣やジョーのギガゾメタルの剣が足を破壊しデストロイヤーはバランスを崩して沈む。

スーパーライブロボも同時に倒れこんだ。

 

「うぎゃああああ!」

 

真上に乗ったメレをつぶすように。

起き上がってみると完全に伸びたウィズが目を回して気絶している。

スーパーライブロボは器用につまむ和真たちのほうに放り投げた。

 

「よし!あとはこいつをぉおお!」

 

スーパーライブロボは思い切りデストロイヤーを担ぎ上げるとその場で回転し、ジャイアントスイングの要領で天高く投げ飛ばす!

 

「今度こそ行くぞ!」

 

「「「「「スーパービックバースト!」」」」」

 

胸部のライオンの胸から放たれたエネルギーがデストロイヤーを粉々に打ち砕く!

爆風とがれきを遺してこの世界を恐怖にさらし続けた機動要塞は空に消えた!

 

「やった!」

 

「やったぞぉおお!」

 

疲労感にダクネスは椅子に座り込む。

ふいにその肩をイエローライオンが叩いた。

 

「お疲れさん。これからも俺たちライブマンの力、正しく使ってくれよ?」

 

そう言ってレンジャーキーに戻るとダクネスの手に収まる。

それを見て小さくありがとうとつぶやくダクネスだった。




次ーーッ回!第九話!

検事「サトウカズマ!あなたを国家転覆罪で逮捕します!」

和真「俺は無実だぁーー!」

めぐみん「脱獄させましょう!」

総一「それで余罪重ねてどうする?」

ジョー「じゃあどうするんだ?」

冤罪!?犯罪者サトウカズマ!

総一「考えんのさ、こうゆう時、あいつならどうする?」

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