『ハーメルン小説完走RTA』-00:02:27:57 作:チルドレン
一つの道路に、一人の青年が走っている。
「うートイレトイレ」
その青年は公園に向かって足を向けており、そして尚且つ少しだけ男性に興味がある人間だった。
青年が日課の散歩をしている時に急に尿意が現れ、家に帰るにはかなり中途半端な距離だった為、道路を挟んだトイレに向かっているのだ。
そんなこんなで信号が青になった時、公園にとある人物が見えた。
青いツナギを着ていて、公園のベンチに腰掛ける姿は配管工の工事が終わった後にも、工事中の人間が一休みしている様にも感じる。
「…あの人は…?」
青年が横断歩道の途中で足を止めていると、運悪くトラックが突っ込んでくる。
本来なら青信号なので突っ込む事も無かったが…どうやら今日は青年の運が無かったらしい。
何時もなら走って逃げれる青年も、あの青いツナギの男に目を奪われていて突っ込んでくるトラックには気付いていなかった。
居眠り運転をしていたトラックの運ちゃんは、はっと目が覚めて警告するべくクラクションを鳴らす。
青年はやっとトラックに気付いて慌てて逃げようとするが、急な尿意によって上手く走れず…彼は失禁しながら死んでしまった。
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「…此処は何処だろう?」
「此処は天国じゃよ。そしてわしは君達で言う所の神様じゃ」
「そうなんですか」
トラックに轢かれた彼は、死んでしまった事に気付いたが特に慌てなかった。
それよりも漏らしてしまった事と、あの青いツナギの男と話せなかった方がかなり辛い事だろう。
けれど神はそんな事に気付かず、まだ現実を受け止め切れてないと考えている様だ。
「君はまだ若く、先行く未来も明るかったのじゃが……本当に申し訳ない」
「もしかして神様が殺しちゃったんですか?」
「そうじゃ。トラックの運転手が疲れて居た様なので眠らせていたのじゃが…彼の足がアクセルを踏んだままだった事を忘れて居ての」
その言葉を聞いて、青年は苦笑をする。
もしこれがトラックの運転手から言われたのなら切れるだろうが、神様がやってしまったのなら仕方がないだろう。
長い物には巻かれろが彼の大事にしている言葉だ。
「…それでなんじゃが…もし君が宜しければ異世界転生をしてもらいたい」
「えぇ!?異世界転生って、あの異世界転生何ですか?」
青年が驚いた。
それもそうだろう。青年はオタクで男性に少しだけ興味があって、そしてニートなのだ。
夢にまで見た転生物の主人公になれると分かったのなら、嬉しさもひとしおだ。
「そうじゃ。何なら転生特典も付けてやろう。何が欲しい?」
「神様が好きに選んでください。僕から望む事は特にないですよ」
「そうかそうか!お主はかなり良い人間じゃのう…それなら…もう君が死なない様に身体を強化して…後は強い武器も上げよう」
その言葉を聞いて青年はガッツポーズをした。
いきなり自分の身体の強化と武器を貰えるのだ。向こうに行けばモテモテ間違いなしのウハウハ人生が待っている。
それを見た神様は嬉しそうに頷きながら、彼に一つの質問を投げかける。
「所で君は、今の性別に不満を覚えていないかの?」
「どういう事でしょう?」
「君が同性愛者って事は知っておる。ただ…向こうの世界でも同じ性別同士の結婚は難しいのじゃ」
「そうなんですか…でも良いです神様。やっぱり恋愛はハードルが高い方が燃えますから!」
神様が嬉しそうにその言葉に対して頷くと、青年に対して小さく呪文を唱える。
青年はその事に少しだけ首を傾げるが…神様は特に気にしない様に首を横に振って…そして小さくお茶を飲んだ。
「さて、このままもう少しだけゆっくりするか?」
「いえ。向こうの世界の情報を聞きたいです。魔王とかに襲われているんですか?」
「そうじゃ。このままいけば向こうの人間は全て魔王の支配下になるだろう」
「そんな!あんまりじゃないか!」
魔王の所業を聞く事もなく、青年は憤りを感じる。
魔王なんて名前をしているから悪いに違いないと考えているが、今回はその通りなので神様も頷いた。
「そうじゃ。なので君には魔王の討伐を依頼したい…ああ勿論、やれる時だけで良いぞ?」
「任せて下さい神様!僕に掛かればそんな悪逆非道の魔王なんて二日くらいで倒してやりますよ!」
「ほっほっほ。期待しておるぞ?」
その言葉を聞いて嬉しそうに笑った神様は、青年の足元に魔法陣を描き上げた。
一瞬の事に青年の目が点になるが、神様はそれすらも楽しそうに見ている。
「また会う日を楽しみに待っておるぞ!」
「はい!後それと僕の名前は穂澄木馬です!気軽にホズミかモクバと呼んでください!」
「そうかモクバ!また会おう!」
その言葉と同時に、青年の姿が神様の居る世界から消え去る。
そしてもう一度小さくお茶を飲むと…小さくため息を吐いた。
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異世界に辿り着いた青年は、自分の武器を持っては微笑んだ。
彼が持っている武器はあのアーサー王が使ったとされるエクスカリバー…ではなく、魔剣グラムだ。
神様から貰った剣が魔剣というのもおかしな話だが、青年は特に気にせずにこれからの事を考えていた。
困っている人を助け、一瞬で魔王の居る城の情報を集めて神様に言われた通り魔王を殺す。
「よし。これで行こう」
その言葉と同時に、青年の耳に小さな悲鳴が聞こえた。
彼は神様から貰った身体能力を活かして全力でその悲鳴の下まで行くと…どうやらゴブリンに襲われているらしい。
「誰か助けてー!ごめんなさい!もう一人で薬草なんて取りに行きませんからぁ!」
その言葉と同時に、少女を襲っていたゴブリンに青年が武器を振るう。
武器を扱う才能も何もない青年だが、どうやら神様から貰った特典によってかなり強化されている様だ。
「わっ…こんなあっさり!」
「大丈夫かい?僕の名前は穂澄木馬」
「ホズミモクバ?随分不思議な名前をしているんですね…?」
「そうなのかい?此処に来たのが初めてで」
「…確か東洋の国にはそんな風に名乗る風習があると聞いています。もしかして貴方は東洋の方なんですか?」
「そうだね」
青年はその言葉に便乗した。
彼の中で東洋と言ったら異世界の日本擬きなのだ。
なので此処で東洋出身と言っても嘘ではないだろうと思いつつ、彼は小さく彼女に対して質問をする。
「怪我はないかい?」
「はい!…でも依頼の為の薬草が全然取れなくて…」
「僕も手伝うよ!」
「そんなっ!?元々私が悪いんですから、大丈夫です!」
「困ってる時はお互い様だよ!それにさっきの戦いを見て分かってるでしょ?僕は強いんだ」
「…それもそうですね。それなら薬草を取る間護衛をお願いできますか?」
「それくらいお安い御用だよ!」
その言葉を聞いて少女が嬉しそうに息を吐いた。
そして周囲の森に入っていくのと同時に…彼は小さく首を傾げる。
「此処で薬草を取っているのかい?」
「はい。此処は本来狼が出てくるんですが、香辛料を使って追い払っているんです……まぁ、今はもうないですが…」
「そうなんだ」
「でも大丈夫!なんていったって私の英雄のモクバさんが居ますからね!」
その言葉を聞いて青年が大袈裟だよと小さく苦笑した。
「いえいえ!命の恩人であるモクバさんを、私の英雄と言わずしてなんと言いますか!」
「…うーん。英雄は恥ずかしいなぁ」
「そうですか?男の人って大抵英雄に憧れてるんだと思いました」
青年はその言葉に小さく微笑みながら、確かにそうだなぁと思い耽る。
…転生する前は確かにこういった存在になれる事に憧れていたのだ。
そんな事を考えていると…奥からガサゴソと大きな音が聞こえる。
「えっ…嘘…」
「どうしたの?」
「この足音…普通の狼じゃありません…これって…もしかして!」
その言葉と同時に、かなり巨体の狼が少女と青年の前に現れる。
「やっぱり!特殊個体です!」
「特殊個体?」
「はい!特殊個体とは普通の個体とは違ってかなり強いんです!でもどうしてこんなところに…?」
「やっぱり魔王の影響なんだよ」
「やはり魔王の影響でしたか。最近魔王が活動を再開したとは聞きましたが…まさかこんな所まで魔の手が…」
その言葉を聞いて、青年は小さく歯噛みした。
…特殊個体とは言えど狼、けれど彼女の前で二度もスプラッターなシーンを見せる訳にはいかないと、青年は少しだけ剣を握りしめる。
「逃げましょう!此処は私が囮になりますから!」
「そんなのは駄目だ!可愛い女の子である君を置いて逃げる訳にはいかない!」
その言葉を聞いて少女の心がドキリとなる。
頬を赤く染めて可愛いと連呼しているが、目の前の狼が吠えてから突進するのを見て、桜色の妄想を沈めて声を荒げた。
「でもこの特殊個体はかなり強いんです!先程のゴブリンよりも全然…」
「大丈夫。僕に任せてよ」
その言葉と同時に、魔剣グラムを振り下ろす。
…余りにも滅茶苦茶な速度で振り下ろされた魔剣は、呆然と眺めている狼と一緒に大地を斬り抉った。
当然狼は絶命しており、それを見た少女は目をぱちくりとする。
「嘘…あんなに強い特殊個体が、一撃で…」
「やっぱり狼は狼だね」
「……モクバ君!凄い凄い!こんなの初めて見ちゃいました!」
そう言いながら青年の周囲を嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる彼女を見て、青年も小さく苦笑しながら武器を仕舞った。
…そして数分経って我に返った少女がすいませんというのと同時に…
「大丈夫だよ。それよりも怪我はないかい?」
「はい。…でも本当にすごいですね。一撃で特殊個体を倒しちゃうなんて」
「あれくらい屁でもないよ。所で、薬草は集めたのかい?」
「はい!森に入ってから少しずつ集めましたので、ここら辺の薬草も集めたら終わります!」
その言葉を満足そうに聞く青年を見て、彼女は嬉しそうに周囲の薬草を集めだす。
…そしてそのままゆっくりとウルフの死体を見て、小さく眉を顰めた。
「…これどうしよう?」
「冒険者ギルドに行けば買い取って貰えますよ!特殊個体なのでかなり良いお値段になると思います」
「そうなんだ。それなら僕と一緒に冒険者ギルドに行ってくれないかな?」
「はい!勿論です!」
そう言いながら彼女は嬉しそうに微笑む。
「私の名前はシルビア!今は魔法を使えませんが、神官になる予定です!是非シルビィと呼んで下さい」