『ハーメルン小説完走RTA』-00:02:27:57 作:チルドレン
その言葉と同時に、少女の背中から黒い翼が四本生えてくる。
それを見た青年は驚いた表情を浮かべるが、少女は泣きながら微笑んだ。
「私はね?この世界を混沌にする為に生まれた魔王なんだ」
「…どうして。そんな事を…」
「生まれたんだよ!私だってなりたくなかったんだ!」
その言葉を聞いて、青年は一歩引いた。
「…私だって、普通の女の子として恋愛をしたかった!でも無理だった!」
「そんなの、魔王って事を隠せば…」
「駄目なんだよ。私にとって魔王は呪いなの。死なないと治らない疫病なんだ」
青年はその言葉を聞き、一歩前に出る。
そして握りしめた剣の柄をゆっくりと放し、小さく息を吐いた。
「…そんな事は無い」
「あるの。どんなに幸せを噛みしめても、私が魔王って事を思い出す…それなのに、どうして魔王を倒そうとする貴方が私を止めるの?」
「こんな風だと思えなかったんだ」
「私だって嫌だった!だけどやらなきゃ駄目だったの!」
その言葉を聞いて、青年の手の震えが止まった。
…それを見た少女の目をぱちくりとさせ…そして小さく首を傾げた。
「…つまり、君は死にたいって事?」
「うん」
「死んだら、何になりたい?」
「何に…って……そうだなぁ…」
青年の急な質問に瞬きをし続けた少女は…少しだけありもしない情景を思い浮かべる。
…其処には青年と少女が、優しく微笑んでいる世界。
今日一日で自分の心を思い出させてくれた、目の前の優しい人間と寄り添いたい。
「…うん。私は生まれ変わっても、モクバ君の隣に居たいな」
「待ってるよ」
「……っ…ありがとう」
その言葉と同時に、四枚の翼から羽根が抜け落ちて四人の戦士が現れる。
…どれも歴戦の風格を醸し出しており、並大抵の戦士なら一瞬で逃げるか死ぬかを選ばされるだろう。
「…君が、この子達よりも強い事を願うよ…殺って!」
少女の命令は、四人の戦士を全力で動かした。
それと同時に魔剣を握った青年は、小さく口を歪ませながら攻撃をする。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
一人目の敵が死ぬ。
彼らの目にも止まらぬ剣撃は、周囲に人が居れば剣舞の様にも見えるだろう。
けれど死闘をしていた戦士達からすれば、その刃は自分の命を脅かす物にしかならない。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
二人目の敵も息絶える。
二人目の敵は三匹目の敵がヘイトを取った隙に攻撃をしたのだが、それを読んでいた青年の一撃によっていとも容易く細切れへと変身した。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
三人目の敵は首を刎ねれられる。
ずっと先頭で戦っていた三匹目も、一瞬の気の緩みによって首を刎ねられた。
其処には青年を化物の様な目で見つめる四匹目しか居ない。
「…そ、そんな…四天王がこんな容易く…」
「…お、俺は逃げ…」
「待ちなさい。まだ手はあります」
最後の一匹が逃げ出そうとした瞬間、魔王が大きく翼をはためかせた。
それと同時に四匹目の身体に大量の羽根が纏わり付き……
「うご…ガッ……ゥゴゴォォ!?」
大量の羽根は彼の身体を蝕んでいき…最終的にはサイクロプスに変貌を遂げた。
…それを見て満足そうな表情を浮かべた魔王を見て、青年が覚悟を決めた様に魔剣を握りしめる。
「行きなさい。その手で奴を倒すのです!」
「ゥガァァァァァァァ!」
その言葉と同時に、サイクロプスが巨体を生かした突進をする。
それを半歩横にずれる事で避けた青年は、小さく目を瞬かせながら小さく頷いた。
「成程。強化をする代わりに知性を失ったのか」
「そう。忠誠を誓わない愚かな魔族を、正しい道に導かせる為に生み出された…魔王にのみ許されたスキル。それが狂化」
「狂化……」
その言葉と同時に、サイクロプスが突進を止めて振り向き…そのまま一気にもう一度突進をする。
「…」
それを今度は避ける事すらせず、そのまま瞬時に両足を開いて両手に力を籠めだした。
「今更何をしても無駄よ!そのサイクロプスは私が許可を出すまで止める事は出来ないわ!貴方がどんなに強くても、それを防ぐだけの再生能力もある!不死となった四天王に、今の貴方が止められるはずがない!」
「…それはどうかな?」
その言葉を聞いて、魔王が小さく首を傾げる。
…そしてそのままグラムを強く握りしめ…そしてそのままグラムを投げる体勢を取った。
「…何をする心算!?」
「この武器を投げる」
その言葉と同時に、青年がグラムを全力で投擲をする。
…投げつけられたグラムはサイクロプスの腰に突き刺さり…再生力と拮抗して地面に縫い付けられる。
「…なっ…お、起き上がりなさいサイクロ…」
「もう無理だよ。地面事あいつを突き刺した。もう起き上がる事は無い」
その言葉と同時に、サイクロプスの身体の再生が完全に回復したのか、サイクロプスがゆっくりと動こうとする。
…しかし、身体が上手く動かずに悶え苦しむ結果となり…
「もういいわ。抵抗を止めて其処で大人しくしてなさい。役立たず」
魔王が命令をする事によって、サイクロプスの動きが止まった。
…それを見て青年が魔王を睨み付けるが、彼女は特に気にせずにゆっくりと空を飛びあがる。
「…よくぞ四天王を倒した。その褒美に一つ願いを叶えてやろう」
「……お前に叶えて貰う願いなんて無い」
「よくぞ吠えた。それでこそ勇者だ。……なら、此処で死ね!」
その言葉と同時に、空から大量の魔法が放たれる。
…それは炎であり、雷でもあり、氷であり、風であり…そしてその全てでもあった。
「空を飛べず、武器は既になく、そして魔法も使えないんでしょう?今なら降参しても見逃してあげるよ?」
「…降参なんてしない。俺はお前を殺す」
「………そう。よくわかったわ」
その言葉と同時に、大量の魔法が青年の傍で止まる。
…それを見て青年が小さく首を傾げるが…魔王の言葉によって…
「じゃあ、死んで」
その表情を驚愕に染めた。
それと同時に魔王が指を鳴らし、今まで止まっていた魔法が全て動き出して青年に向かっていく。
…大量の弾幕と、其処にある死体の姿を考えながら…魔王は小さく何かを呟く。
それと同時に一本の槍が少女の手に向かって届き、それを少女が掴んでそのまま投げつける。
…目指すは先程まであった彼の身体の部分。
魔王の計算結果を元に身体があるであろう場所に少女が槍を投げるのと同時に…
「…これなら、あの化物と言えど…」
小さく、何かが投げられた。
…それを確認する事も出来ず、少女は自分の身体を精一杯動かして避ける。
それと同時に、魔王が魔法を唱えるが…
「…漸く分かった。お前らは二人で一人の存在なんだな?」
その言葉と同時に、少女の肩の少し上に先程投げられた槍が投げられる。
…その攻撃を少女が避けずに立ち止まるのと同時に……小さく、微笑んだ。
「…なんで、分かったんですか?」
「分かったのは今さっきだ。身体の動かし方が完全に出会った時のお前そのままだったからな」
「……正解です」
「精神を操っているのは魔王、けれど肉体はお前しか動かせない。だけど二人はどっちも動かしたい…そんな感じか?」
その言葉に小さく頷いた少女は…地面を蹴り上げて飛んできた青年に気付かなかった。
…そして魔王は、気付いたのにも関わらず身体が動かせず…
「…その願い、叶えてやるよ」
その言葉と同時に、手にしたグラムを少女の後ろに向かって振り下ろす。
…それと同時に、何処からか遠くで悲鳴が聞こえ始めた。
「何をしたんですか?」
「簡単だ。お前の精神を操っている魔王に一撃入れてやっただけだ」
その言葉と同時に、青年の姿がブレ始める。
…そして次の瞬間には、老人が一人地面に倒れ伏していた。
「…御爺様」
「何故だ…わしの術は完璧だったのに…」
「ああ。完璧だっただろうな。…だがもう、無意味だ」
「……どういう…」
その言葉と同時に、老人を遠くに投げ飛ばした。
小さく老人の悲鳴を聞きながらも、ゆっくりと目を向けた。
少女は嬉しそうに微笑みながら…青年を優しく抱きしめた。
「ありがとうございます!お陰で助かりました!」
「…そうか。これからどうするんだ?」
「そうですね…折角ですし貴方と一緒に旅をしたいです。ずっと一緒に居ましょうね?」
「……ああ」
青年の生返事も気にせず、少女は小さく微笑んだまま嬉しそうに身体を揺らした。
…そしてそれと同時に、ゆっくりと離れていった少女を見て…彼は息を吐く。
「…さぁ。帰ろうか」
「そうですね!魔王を討伐したって全国的に触れ回りましょう!」
「……」
青年が返事をしないのを、少女が首を傾げた。
…青年は小さく息を吐いた後に……本当に悲しそうに喋りかける。
「…本当に、終わりなのか?」
「はい。もう終わりですよ!魔王が倒された今、貴方は本当の勇者になったんです!」
その言葉を聞いて、青年は小さく安堵の息を吐いた後に…ゆっくりと街の方に向かって歩いていく。
…どうやら街はまだ異変に気付いていない様だ。
その事に安堵しつつ、ゆっくりと少女の方を向こうとして…
「…っ…」
自分のお腹に、槍が刺さっていた。
…それを見て青年が距離を取ると、少女は面白そうに笑っていた。
「…ふふふ。騙されましたね」
「……なんのことだ?」
「あの御爺様なんて、本当は何の役にも立たない制御装置。本体を開放してくれてありがとうございます」
「…そうか」
その言葉を聞いて、青年は小さくため息を吐いた。
…それを見た少女は首を傾げるが…
「…グラムには、こんな逸話がある」
「本来は冥途の土産に教える立場なんですが…良いでしょう。行ってみなさい」
その言葉と同時に、青年は必要最小限の動きで槍を抜き…二刀流の構えを取る。
「自分を刺した愚か者に対して、投げて腰に当てたという逸話だ」
それと同時に青年が魔剣をもう一度投げ、そして序でに心臓に向かって槍を投げる。
放たれた槍と剣は両方音を置き去りにする程の速度で少女の下に向かっていき……
「…へ?」
少女の素っ頓狂な声と同時に、少女の身体から大量の血が溢れ出す。
…そして倒れた少女が死ぬのと同時に、青年の身体は光に包まれていった。