「そのカリスマで私を救ってよ、お姉様」   作:小鈴ともえ

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平仮名が多いと幼い、または狂気的な印象になる気がします


昔話わんだーらんど

フランの部屋の前に着くと然も当然のようにドアが開いた。前まではこんな仕掛け無かったような気がしていたのだが思い違いだろうか。少し館を空けている間に頭から抜け落ちていた?

あり得ない。そんなに頭が弱いとは思わないし、そもそもフラン絡みの事ならばそう簡単に忘れないはずだ。となるとやはり新たに魔法がかけられたと認識すべきだろう。

 

「お帰り、お姉様。予定よりも随分遅くなっちゃったみたいだけど何かトラブルでもあったの?」

「えぇ、ちょっとね」

 

当然の事だがフラン自身はもう食事を済ませてしまっていたようだ。私がいない間もきちんと食事は届けられていたようで一安心だ。使用人を信じていないわけではないが、彼らにも恐怖があるだろうから少しだけ心配していたのだ。

 

「それよりもフラン自身は何も無かったかしら? 食事に変な物を混ぜられたりだとか」

 

「ないない、そんなことされてたら今頃使用人の数が減ってるよ。…とにかく私の方は特に問題なかったよ。それでお姉様は何があったの?」

 

聞かれたのなら答えるしかないだろう。元々フランには言っておくつもりでいたし黙っておく必要もない。

 

「旅自体は順調だったわ。ただ中国で厄介な妖怪に絡まれてね、情けないことに負けてしまったのよね。でもその妖怪も暇だったらしいからこの館で働いてくれることになったわ」

 

「ふーん……端折り過ぎじゃない? 正直なところ私じゃなかったらさっぱり理解できない話だったと思うよ」

 

そういう事を言われるとどうしようもない。細々話しても余計に訳が分からなくなりそうだしこれくらい大雑把な話の方が良いと思ったんだけど。

フランに通じたのならまあ良しとしても良いだろう。他の者に話すときにはもう少し考えて話すことにすれば良い。どうしてフランに通じたのかはわからないが。

 

「で? その妖怪は来てないみたいだけど……迷っているわけでもなさそうだし」

 

そう言えば地下には魔力検知の仕掛けがあったのだったか。それに引っかかった者がいなかったという事は迷っている者もいないという事である。

 

「まだこの館にも来ていないもの。三日後にまた私が迎えに行く予定になっているわ。その時にはまた紹介しに来るわ」

 

「そうだったんだね。それは楽しみ…かな? お姉様に勝つくらい強い妖怪はちょっと怖いけど。ふわぁ…そろそろ眠たくなってきたわ」

 

フランは私より起きるのが早い分寝るのも早い。かく言う私も長旅から帰って来たばかりで疲れているのでもう寝たいところだったのだ。このタイミングでのフランのこの発言は実はかなりありがたい。

 

「なら私も上に戻るわ。また夜にね。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 

話をしながら食事する事はもう私の中で普通になってしまった。これをお父様やお母様が知ったらどう言うのだろうか。行儀が悪いとでも言うだろうか。

でも私としては静かで暗い食卓よりも賑やかで明るい食卓が望ましい。その方が料理も美味しく感じるのは明白だし家族のつながりを実感できるからだ。この館では私がルール。当主である私が良いというのだから、地獄にいるだろうお父様やお母様も文句は言えないと思いたい。

 

 

 

 

 

「良いのか? レミリア。聞くところによれば妹さんは随分と危険な吸血鬼のようだが」

 

無事に商人たちの護衛も終わらせてレミリアの館に来たはいいものの、出会った使用人たちからはレミリアの妹とやらには極力近寄らない方が良いとの助言を頂いた。

主に心酔している使用人たちがその妹を嫌悪するとは思えない。恐らく近寄ると危険だからなのだろう。幼子に簡単にやられるほどやわではないつもりだが警戒はしておいた方が良いかもしれない。

 

「馬鹿言わないでよ。フランが危険とか抜かしているのはあの子の能力しか見ていない奴らだわ。まあ私が近寄らせないようにしているだけかもしれないんだけど、実際ああいう事を言っている奴らのうちフランを直接見たことがあるのはいないと思うわ」

 

地下で生活して館で働いている者たちともほとんど接点を持たない、それはかなり異常なことである。それにしても地下に幽閉されるほどに危険な能力なのか。

 

「で、そのフランとやらが持っている能力が具体的にどのような物なのか聞いても?」

 

「…『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』。その名の通り、対象が物質ならばそれが持つ力に無関係に破壊することができる能力よ。それこそ肉体でも武器でも、ね」

 

なるほど。それは確かに危険極まりない能力だ。対象を選ばず破壊できるのなら私でも簡単にやられてしまうだろう。破壊に至るまでの詳しい過程は知らないが、もし一瞬のうちに行動が完了してしまうのなら対策を講じることすらできない。

 

「でもあの子は能力をほとんど使わない。私でさえたった二度しか知らないわ。あの子が地下に行く直前とお父様たちが死んだ日の二度よ。あの子はあまりにも優しすぎる。

美鈴はあの子の能力が危険だから今でも地下に幽閉されているのだと思っているでしょう? 昔は確かにそうだったわ。でも今はそうではない。今はあの子自身の希望よ。そもそもの話あの子の前に幽閉など成り立たないわ」

 

強い能力を持っている者は力を誇示したがる傾向がある。人間も妖怪もそのような者は何度も見てきたし戦ってきた。大抵は能力に頼り切った弱者だったが。

レミリアの妹が持っている能力はそれらにも劣らない、というか凶悪性なら最高峰である。誇示しないのはレミリアという姉がいるからなのか、それとも自分に自信がないからなのか。

 

「着いたわよ。どうやら美鈴も迷わずに来られたようね。良かったわ」

 

? ずっとレミリアと話しながら来たのに迷う事などあるのだろうか。

 

 

 

 

 

流石に道を知っている者と一緒に歩いているならば地下迷宮でさまよう事にもならないらしい。最悪の場合はフランに捜索してもらえれば良かったのだが、主人としては初日から美鈴を迷宮に残すことにならなくて良かった。もしそうなっていたら事前にフランに確認を取っていなかった私の責任になる。

 

フランの能力を聞いて初めは緊張していた美鈴もすっかり打ち解けたようで今はフランとなにやら話しているようだ。美鈴がフランをどう呼ぶかというわけのわからない議論が少しの時間交わされた後、結局フランちゃん呼びに落ち着いたようだ。

何か真剣な顔で議論をする必要はあったのだろうか。あったからしていたのかもしれないが私には終ぞ理解できなかった。

 

「お姉様もそんな所でつっ立ってないでご飯食べようよ。三人で食べるのなんて初めてだから楽しみだわ」

 

私はお父様やお母様と三人で食べていたからそうでもないが、フランは確かに初めてだ。折角の料理が冷めてしまうのももったいないし早く食べるとしましょうか。

 

「ではいただきましょうか」

「おっと、こんな豪勢な料理を食べるのは初めてだよ。作法とかはあるのかい?」

 

そう言えば美鈴は商人の護衛をしていただけだからまともな西洋料理は初めてなのかもしれない。

 

「特に気にしなくて大丈夫よ。間違って怒るような者はこの場にいないし、私たちだって完璧に覚えていないもの」

 

私は次期当主として散々叩きこまれたがフランは違う。そもそもお父様たちがフランと食事した事などないのではないだろうか。今フランが持っている作法の知識は恐らく独学で身に付けた物。基本的には不要であるがあって困ることはないから学んだのだろう。そのせいでかなり荒削りだが、先ほど美鈴にも言ったように気にする者はここにいない。

 

「そうそう、私だってかなり適当だけど何も言われた事ないよ。そんなことより美鈴の話聞かせてよ。お姉様にも勝ったんでしょ?」

 

「はは…レミリアがまだまだ青いから勝てただけなんだけどねぇ。まあいいよ。少しばかり昔話でもしようかね」

 

確かに私の髪は青っぽいがそれが強さと何か関係あるのだろうか。強くなるたびに美鈴のように紅くなっていくとかなのだろうか。

今の髪色は気に入っているからなるべく変わってほしくないのだが強くなる代償なら仕方ないのかな。フランも強くなったら翼でしか私と見分けがつかなくなりそうだが。

 

「……という事があったんだよ。で、レミリアに誘われたからここに来たというわけ」

「へぇ。お姉様でもまだまだなんだねぇ」

 

「美鈴がたまたま強かっただけよ。そこらの妖怪になんて遅れは取らないわ。

そんなことより美鈴に頼みたいことがあるのよ。貴方にしか頼めないのだけど良いかしら?」

 

断られてもとても困るというわけではないから別に良いのだが、美鈴なら断らないだろう。断りにくくなるようなずるい聞き方をしていることもあるし。

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